五七五のわずか17音で綴られた物語「俳句」。
小林一茶は「子ども」や「すずめ」「かえる」などの小動物をテーマにした俳句が多いことで有名な俳人です。一茶の作品はどれも温かく、親しみ感じます。
今回は、小林一茶が詠んだ数多くの俳句の中から春・夏・秋・冬の代表的な作品を35句紹介していきます。
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俳句仙人
小林一茶の特徴や人物像
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(小林一茶 出典:Wikipedia)
小林一茶(こばやし いっさ)は、1763年(宝暦13年)に長野県の北部、北国街道柏原宿(現信濃町)の農家に生まれました。
本名を小林弥太郎といい、松尾芭蕉、与謝蕪村と並び「江戸の三大俳人」として称されています。
一茶は、わずか3歳で生母を亡くします。その後再婚した父が迎えた継母とは折り合いが悪く、新しい家族にあまり馴染むことができませんでした。唯一の味方であった祖母を亡くすと、一茶は長男であったにもかかわらず、江戸へ奉公に出されます。
そして25歳のころ、「俳諧(はいかい)」を学び始めたといわれています。
その後39歳のときに、病に倒れた父の看病で故郷に戻りますが、看病の甲斐なく父はまもなく亡くなってしまいます。父の死後、遺産相続問題で継母や異母兄弟との間で争いがおこり、和解まで、実に12年もの月日を要したといわれています。
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(52歳結婚する直前に一茶に相続された土蔵 出典:Wikipedia)
一茶は52歳で初めて結婚します。生涯三度結婚して子どもを5人授かるも、最後に生まれた娘を除き、全て幼いうちに亡くなっています。家庭運には恵まれていなかったようです…。
人生における数々の苦労からか、一茶の句は日常の些細な出来事や身近な風景が描かれることが多く、温かく、親しみを覚える作風が特徴です。
また、一茶の作品は、子どもや小動物に対する優しさが滲み出ている「情のあるもの」が多いです。
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一茶は生涯に2万句もの俳句を詠んだといわれ、『おらが春』や『一茶発句集』という俳句文集を残しています。
小林一茶の有名俳句・代表作【35選】
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(雪景色の一茶家の土蔵 出典:Wikipedia)
春の俳句【9選】
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【NO.1】
『 おらが世や そこらの草も 餅になる 』
季語:草(も)餅(春)
現代語訳:春ともなれば、そこら辺に生えている蓬(ヨモギ)の若草を摘んで、草餅にして食べよう。有難い世になったものだなぁ。
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「おらが世や」で始まるこちらの句は、上五の「おらが世や」に切れ字「や」を用いています。切れ字には、強調や余韻を表す効果があり、ここでは、自分が生きているこの世(おらが世)に満足を感じ、「あぁ、なんと有難いことだろう」といった感動の気持ちを表現しています。
【NO.2】
『 めでたさも 中くらいなり おらが春 』
季語:おらが春(春)
現代語訳:新年を迎えめでたいというけれど、いい加減なものだ。それもまた自分にとってはふさわしいものではないか。
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「中くらい」には2通りの解釈があり、1つ目は度合いを示す「中位」、2つ目は「上位ではない」とか「あまり良くない」といった意味で使われます。こちらの句は、「私の春は、特段めでたいわけでもなく、中くらいだなぁ・・・」といった解釈の方がしっくりきます。そして「中くらいなり」と切れ字「なり」を用いて表現することで、今年もまた人並みの春であることを強調しています。
【NO.3】
『 雪とけて 村いっぱいの 子どもかな 』
季語:雪とけて(=雪どけ)(春)
現代語訳:雪解けの季節を迎えて、待ちかねていたかのように子供たちが外へ飛び出し、村中で遊んでいることだ。
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雪とけて(=雪どけ)は、春の日差しで冬の間に降り積もった雪がとけていくことです。「子ども」に「かな」という切れ字を付けて詠むことで、「村中、元気に遊ぶ子どもたちで溢れかえっているよ」と詠嘆の気持ちを込めています。長い長い冬が終わり、待ちに待った春の到来を喜ぶ元気な子どもたちの姿が上手く表現されています。
【NO.4】
『 春風や 牛に引かれて 善光寺 』
季語:春風(春)
現代語訳:春の暖かな風が吹き渡っているなあ。なんとなく歩いていると思いかけず善光寺まいりをした。
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こちらの句は、出だしの「春風や」の「や」が切れ字に該当し、最初の句で意味が完結しています(初句切れ)。「春風はなんと清々しく、心地よいのだ!」と、吹いてくる春風に感動のポイントを置いています。そして句の最後を「善光寺」で止める(体言止め)ことで、読み手に『善光寺まいり』の昔話を連想させる余韻を残しています。
【NO.5】
『 雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る 』
季語:雀の子(春)
現代語訳:雀の子よ。早くその場所をどかないと馬に踏みつぶされてしまうよ。
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雀は3月から4月にかけて卵を産み、ヒナがかえります。そのため、「雀の子」は春の季語となります。こちらの句ではそんな小雀を小さな人にたとえ(擬人法)、「そこのけそこのけ」と呼びかけています。「そこのけそこのけ」と「お馬が通る」はそれぞれ字余りとなっていますが、違和感はなく、むしろ口ずさみやすいテンポに仕上がっています。
【NO.6】
『 我と来て 遊べや親の ない雀 』
季語:親のない雀(=雀の子)(春)
現代語訳:親とはぐれ一羽で遊ぶ寂しそうな子すずめよ、母を亡くした私はお前と同じだ。こちらへ来て一緒に遊ぼうじゃないか。
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「遊べや」の「や」は切れ字に該当し、詠嘆や呼びかけを表します。一茶が子雀に向かって呼びかけているのが分かります。また、北信濃では古くから「遊べや」は、子どもたちが「遊びましょうよ」と声をかけるときに使われる方言でもあり、一茶は子雀に対し、同じ子ども目線で「遊べや」と呼びかけたと解釈することもできます。
【NO.7】
『 折々は 腰たたきつつ つむ茶かな 』
季語:つむ茶/茶摘(春)
現代語訳:折を見て腰を叩きつつ茶摘みをしているようだ。
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茶摘みはチャノキが腰くらいの高さに揃えられているため、腰をかがめて葉を摘みます。茶を摘む人達がそれぞれのタイミングで腰を伸ばして叩いている様子を眺めている一句です。
【NO.8】
『 なの花も 猫の通ひ路 吹とぢよ 』
季語:なの花(春)
現代語訳:菜の花たちよ、猫の通り道を吹く風と共に閉じておくれ。
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この句は「天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ」という和歌を下敷きにしています。可愛らしい猫を眺めるために、菜の花たちに通せんぼを頼んでいる様子です。
【NO.9】
『 行春の 町やかさ売 すだれ売 』
季語:行春(春)
現代語訳:春が終わっていく町だなぁ。通りには夏用のかさ売りやすだれ売りが増えてきた。
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夏の気配が近くなるにつれ、町には夏に備えて傘やすだれを売りに来る人達が増えてきたなぁと実感しています。当時は店に買いに行く他に、往来を担いで物を売りに来る人も多くいました。
夏の俳句【9選】
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【NO.1】
『 涼風の 曲がりくねって きたりけり 』
季語:涼風(夏)
現代語訳:涼風が曲がりに曲がりくねって届くのだろうよ。
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この句を詠んだ頃、一茶は表通りから裏に入った裏長屋のずっと奥の方のつきあたりに住んでいたといわれています。そのため、長い道のりを経て(曲がりくねって)自分のところへ辿り着いた涼風はもうちっとも涼しくもないのです。語尾に切れ字「けり」を用いることで、涼風が吹いてくる様子を強調しています。
【NO.2】
『 やれ打つな 蝿が手をすり 足をする 』
季語:蝿(夏)
現代語訳:おい叩くな。蝿が手をすり合わせ、足をすり合わせ命乞いをしているではないか。
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一茶の作風である「一茶調」が顕著にみられる一句です。「一茶風」とは、弱く小さい者へ視線を注ぐことを特徴とし、この句では汚いものとして認識されている蠅が命乞いをしていると表現し、蝿を叩こうとしている人間を制しています。蝿の足を人間の手にたとえることで、蠅が人間さながら命乞いをしているかのように見えてきます。
【NO.3】
『 やせ蛙 負けるな一茶 これにあり 』
季語:やせ蛙(夏)
現代語訳:小さくて弱そうなやせ蛙よ。負けないでくれ。私がここで応援しているぞ。
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「蛙」単体は春を表す季語ですが、「やせ蛙」はヒキガエルであったと考えられています。ヒキガエルは夏の季語です。こちらの句は、蛙に語りかけるように詠まれているのが特徴です。「小さくて弱そうなやせ蛙よ。負けるな!私がここで応援しているよ。」と、蛙に語りかけているようです。人ではないものに呼びかけるような口調で詠む「呼びかけ」は、一茶の句ではよく使われる技法です。
【NO.4】
『 蟻の道 雲の峰より つづきけん 』
季語:雲の峰(夏)
現代語訳:このアリ達の行列と歩いてきた道は、彼方にある入道雲の方から続いてきたのかもしれない。
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「蟻」という近くの小さいものと、「雲の峰」という遠くの大きなものを対比している一句です。雲の向こう側からアリの行列が続いていきそうだというユニークな発想の句になっています。
【NO.5】
『 人来たら 蛙となれよ 冷し瓜 』
季語:冷やし瓜(夏)
現代語訳:誰か人が来たらカエルに変わっておいてくれよ、冷やしてある瓜よ。
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当時食べられていた瓜は「マクワウリ」という少し甘みのある瓜です。井戸などで冷やしておいて食べるのが主流で、お客さんの目を誤魔化すためにカエルになってくれというどこか食い意地の張った表現になっています。
【NO.6】
『 僧になる 子のうつくしや けしの花 』
季語:けしの花(夏)
現代語訳:これから僧侶になる子供の美しいことだ。ケシの花のような大輪の花の風情がある。
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少年期に出家しようとする子供の、青年との境目の美しさをケシの花に例えています。ケシの花は現在では多くの品種が栽培を禁止されていますが、江戸時代には観賞用として多く栽培されていました。
【NO.7】
『 いざいなん 江戸は涼みも むつかしき 』
季語:涼み(夏)
現代語訳:さあお暇しよう。江戸は人が多くて涼むのも難しいのだ。
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この俳句は作者が江戸から故郷へと帰る時に詠まれました。江戸の町は混雑が激しく、夏に涼む場所もないのだという愚痴を故郷を恋しがる想いとして詠んでいます。
【NO.8】
『 夏山や 一足づつに 海見ゆる 』
季語:夏山(夏)
現代語訳:夏山を歩いている。1歩ずつ進む度に海が見えてくるなぁ。
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海が見渡せる山に登っていて、1歩近づく度に海が迫ってくる様子を詠んだ句です。山と海を対比させつつ、「一足」と表現することで作者の視界が海で占められていく様子を詠んでいます。
【NO.9】
『 大の字に 寝て涼しさよ 淋しさよ 』
季語:涼しさ(夏)
現代語訳:家で大の字に寝転ぶと涼しいのだ。しかし淋しくもあるのだ。
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自分の家ならば気兼ねなく大の字に寝転んで涼むことができるのだ、と二句までは楽しそうな様子が伺えます。そこに結句の「淋しさよ」と続けることで、独り身の気楽さと淋しさの両方を感じている様子を表した句です。
秋の俳句【9選】
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【NO.1】
『 名月を 取ってくれろと 泣く子かな 』
季語:名月(秋)
現代語訳:背中に背負われた幼子が、十五夜の月を指し「とってちょうだい」とねだり、泣いていることだ。
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背中に背負われた小さな子が、十五夜の月を指し「とってちょうだい」とねだっている様子を描いた一句です。「泣く子かな」には詠嘆を表す切れ字「かな」が使われており、幼子が泣く様子に強い愛おしさ(詠嘆の気持ち)が込められています。幼くして亡くした我が子のことを思い、命の儚さや子を失った親の哀れさが滲み出ています。
【NO.2】
『 秋風や むしりたがりし 赤い花 』
季語:秋風(秋)
現代語訳: 死んだわが子の墓参りの途中、赤い花が秋風に揺られ道ばたに咲いている。子供がよくむしりたがったあの花だ。
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出だしの「秋風や」の「や」が切れ字に該当し、最初の句で意味が完結しています(初句切れ)。「あぁ、秋風が吹く時期になったのだなぁ」と、吹いてくる秋風に感動のポイントを置いています。そして句の最後を「赤い花」で止める(体言止め)ことで、死んだ「さと」が大好きだった秋に咲く赤い花に余韻を残しています。
【NO.3】
『 木曽山へ 流れ込みけり 天の川 』
季語:天の川(秋)
現代語訳:天空を流れる天の川は、まるで木曽山に流れ込んでいるかのように見える。
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夜空を流れる天の川がまるで木曽山に流れ込んでいるかのように表現しています。中五「流れ込み」の後ろに切れ字「けり」を置くことで、天の川が流れ込む様子に感動していることが伝わってきます。また、こちらの句は「天の川」という名詞で終わっています(体言止め)。詳細な説明を省くことによって、雄大な天の川を読み手にイメージさせる効果があります。
【NO.4】
『 うつくしや 障子の穴の 天の川 』
季語:天の川(秋)
現代語訳:美しいなぁ。障子の穴から見える天の川は。
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寝転んでいる体勢から、障子の穴という小さい穴を通して大きな夜空の天の川を見ています。わずかしか見えないからこそ天の川の全体を想像して感嘆している句です。
【NO.5】
『 ほろほろと むかご落ちけり 秋の雨 』
季語:秋の雨(秋)
現代語訳:ほろほろとむかごが落ちていく秋の雨の日だ。
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「むかご」とは自然薯などにできる小さな瘤のような部分で、食用になります。秋の雨に当たってむかごが落ちていく様子をじっと見つめている一句です。
【NO.6】
『 露の世は 露の世ながら さりながら 』
季語:露(秋)
現代語訳:露のようなこの世は、露のようにはかなく消え去ってしまうとわかっているが、それでもやり切れないものだ。
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この句は作者の長女が病死した時に詠まれた一句です。昔から露のように儚い世であるとは言われてきたが、それでも生きているのにというこの世の無常と別離の悲しさを詠んでいます。
【NO.7】
『 散る芒(すすき) 寒くなるのが 目に見ゆる 』
季語:芒(秋)
現代語訳:ススキが散っていくのを見ると、これから寒くなるのが目に見えるようだ。
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ススキが枯れていく様子から秋の終わりを悟り、これから寒くなるぞと身構えています。まさにススキの様子から「目に見える」寒さという、視覚からくる体感温度を詠んだ句です。
【NO.8】
『 今日からは 日本の雁ぞ 楽に寝よ 』
季語:雁(秋)
現代語訳:到着したからには今日からは日本の雁だぞ。楽にして寝るといい。
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雁(がん)は秋に北方より日本へ越冬に渡ってきます。北方よりは過ごしやすい日本に入ったことで安心するといい、と渡ってくる雁たちを見て呼びかけています。
【NO.9】
『 夕暮れや 膝を抱けば 又一葉 』
季語:一葉(秋)
現代語訳:夕暮れだなぁ。膝を抱えて座っているとまた一枚葉が落ちていく。
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「夕暮れ」という暗くなっていく時間帯に膝を抱えて座っているという物悲しさや孤独が伺える一句です。一枚一枚葉が落ちていく様子をじっと見つめる物憂げな様子が伺えます。
冬&無季の俳句【8選】
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【NO.1】
『 元日や 上々吉の 浅黄空 』
季語:元日(新年)
現代語訳:元日から真っ青な青空で、この上なく縁起が良い。
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「元日や」で始まるこちらの句は、上五の「元日や」に切れ字「や」を用いることで、今日が元日であることを強調しています。そして語尾を名詞「浅黄空」で止める(「体言止め」という技法)ことで、詳細な説明を省き、読み手に清々しく幸先のよい年明けの朝をイメージさせる効果があります。
【NO.2】
『 ともかくも あなたまかせの 年の暮れ 』
季語:年の暮れ(暮)
現代語訳:この一年、さまざまのことがあったが、あれこれ考えたところでどうにもならない。今となってはすべてを阿弥陀如来様にお任せして、年の暮れを迎えることにしよう。
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自分の力ではどうにもならない運命を「あなた」に任せることを「ともかくも」といった言葉で表現しています。「あなた」は阿弥陀如来様を指し、他人任せとういう意味ではありません。浄土真宗の門徒であった一茶は、自分の運命を阿弥陀如来様にすべてお任せし、人生何があっても後悔はないということを表明しています。
【NO.3】
『 うまさうな 雪がふうはり ふわりかな 』
季語:雪(冬)
現代語訳:空を見上げると、美味しそうな牡丹雪が、ふうわりふわりと降ってくることだ。
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空から雪が降ってくる様子を「ふうはりふわり」と表現するところが一茶らしい一句です。「ふうはりふわり」と空から雪が舞い落ちてくる様子が感動的であることを表現するために、切れ字「かな」を用い、降ってきた雪を「うまさうな雪」と言い切ることで、雪を甘い砂糖菓子にたとえています。何とも柔らかく、温かい句ですね。
【NO.4】
『 これがまあ 終の栖か 雪五尺 』
季語:雪(冬)
現代語訳:五尺も積もる雪の中の地が自分の最後のすみかとなるのかと思うと、深いため息がわいてくるなぁ。
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感心や感嘆の意味を表す「これがまあ(なんとまあ!)」で始まるこちらの句は、自分が死を迎えることとなる最後の家「つひの栖か」について詠んだ句です。そして「雪五尺」は、1尺=約30cmで計算すると約150cm。すなわち、小柄な女性の身長ほどの高さもの積雪だということになります。深い雪に埋もれた我が家を見て、先の見えない今を嘆くと同時に、明るく揶揄しているようにも思えます。
【NO.5】
『 大根(だいこ)引き 大根で道を 教えけり 』
季語:大根(冬)
現代語訳:畑で大根を引き抜いて、その大根で道を指して教えている。
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大根を収穫する畑作業中の人に道を聞いた時の一コマを詠んだ句です。引き抜いた大根でそのまま道を指して教えている素朴な風景が浮かんできます。
【NO.6】
『 むさし野や 水溜りの 富士の山 』
季語:無季
現代語訳:武蔵野の大地だ。水溜まりには富士山が映り込んでいる。
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「むさし野」とは諸説ありますが、江戸時代後期ほどの本には現在の埼玉県川越市から東京都府中市の付近が指定されています。雑木林や畑が広がっていた地域で、空気の澄む冬には富士山も見えていました。
【NO.7】
『 ざぶりざぶり ざぶり雨降る 枯野かな 』
季語:枯野(冬)
現代語訳:ざぶりざぶり、ざぶりと雨が降っている枯れ野であることだ。
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延々と雨が降り続く様子を「ざぶり」という擬音を3回繰り返すことで表現している面白い俳句です。「しとしと」と表現されることの多い時雨とは違った冬の雨であることが伺えます。
【NO.8】
『 朝晴れに ぱちぱち炭の 機嫌かな 』
季語:炭(冬)
現代語訳:冬の晴れた朝に、ぱちぱちと音を立てる炭の機嫌を伺っていることだ。
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江戸時代の暖房器具は炭を利用した火鉢や炬燵しかなかったため、朝一番に炭に火を入れていました。炭がどんな音を立てているかで良く火がついてくれるかどうか見ているのを、炭の機嫌と表現しています。
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生涯に2万句を残したといわれている「小林一茶」。
今回は、一茶の俳句の中でも特に誰もが知っているような「代表作」を厳選して紹介してきました。
一茶の作品はとてもわかりやすく、温かく、そして親しみやすいものが多いことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
同じ江戸時代に活躍した松尾芭蕉や与謝蕪村の句とは、また違った魅力に溢れていますね。
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