五七五のわずか17音で綴られた物語「俳句」。
小林一茶は「子ども」や「すずめ」「かえる」などの小動物をテーマにした俳句が多いことで有名な俳人です。一茶の作品はどれも温かく、親しみ感じます。
皆さま、おはようございます。
1763年の今日(旧暦5月5日)は江戸時代の俳人・小林一茶さんのお誕生日とされているの。「やせ蛙まけるな一茶これにあり」など親しみやすい句が多いわ。 pic.twitter.com/B62vbpQ1oI— チョウカンヌ (@choukanne) June 14, 2017
今回は、小林一茶が詠んだ数多くの俳句の中から春・夏・秋・冬の代表的な作品を35句紹介していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
小林一茶の特徴や人物像
(小林一茶 出典:Wikipedia)
小林一茶(こばやし いっさ)は、1763年(宝暦13年)に長野県の北部、北国街道柏原宿(現信濃町)の農家に生まれました。
本名を小林弥太郎といい、松尾芭蕉、与謝蕪村と並び「江戸の三大俳人」として称されています。
一茶は、わずか3歳で生母を亡くします。その後再婚した父が迎えた継母とは折り合いが悪く、新しい家族にあまり馴染むことができませんでした。唯一の味方であった祖母を亡くすと、一茶は長男であったにもかかわらず、江戸へ奉公に出されます。
そして25歳のころ、「俳諧(はいかい)」を学び始めたといわれています。
その後39歳のときに、病に倒れた父の看病で故郷に戻りますが、看病の甲斐なく父はまもなく亡くなってしまいます。父の死後、遺産相続問題で継母や異母兄弟との間で争いがおこり、和解まで、実に12年もの月日を要したといわれています。
(52歳結婚する直前に一茶に相続された土蔵 出典:Wikipedia)
一茶は52歳で初めて結婚します。生涯三度結婚して子どもを5人授かるも、最後に生まれた娘を除き、全て幼いうちに亡くなっています。家庭運には恵まれていなかったようです…。
人生における数々の苦労からか、一茶の句は日常の些細な出来事や身近な風景が描かれることが多く、温かく、親しみを覚える作風が特徴です。
また、一茶の作品は、子どもや小動物に対する優しさが滲み出ている「情のあるもの」が多いです。
一茶は生涯に2万句もの俳句を詠んだといわれ、『おらが春』や『一茶発句集』という俳句文集を残しています。
小林一茶の有名俳句・代表作【35選】
(雪景色の一茶家の土蔵 出典:Wikipedia)
春の俳句【9選】
【NO.1】
『 おらが世や そこらの草も 餅になる 』
季語:草(も)餅(春)
現代語訳:春ともなれば、そこら辺に生えている蓬(ヨモギ)の若草を摘んで、草餅にして食べよう。有難い世になったものだなぁ。
【NO.2】
『 めでたさも 中くらいなり おらが春 』
季語:おらが春(春)
現代語訳:新年を迎えめでたいというけれど、いい加減なものだ。それもまた自分にとってはふさわしいものではないか。
【NO.3】
『 雪とけて 村いっぱいの 子どもかな 』
季語:雪とけて(=雪どけ)(春)
現代語訳:雪解けの季節を迎えて、待ちかねていたかのように子供たちが外へ飛び出し、村中で遊んでいることだ。
【NO.4】
『 春風や 牛に引かれて 善光寺 』
季語:春風(春)
現代語訳:春の暖かな風が吹き渡っているなあ。なんとなく歩いていると思いかけず善光寺まいりをした。
【NO.5】
『 雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る 』
季語:雀の子(春)
現代語訳:雀の子よ。早くその場所をどかないと馬に踏みつぶされてしまうよ。
【NO.6】
『 我と来て 遊べや親の ない雀 』
季語:親のない雀(=雀の子)(春)
現代語訳:親とはぐれ一羽で遊ぶ寂しそうな子すずめよ、母を亡くした私はお前と同じだ。こちらへ来て一緒に遊ぼうじゃないか。
【NO.7】
『 折々は 腰たたきつつ つむ茶かな 』
季語:つむ茶/茶摘(春)
現代語訳:折を見て腰を叩きつつ茶摘みをしているようだ。
【NO.8】
『 なの花も 猫の通ひ路 吹とぢよ 』
季語:なの花(春)
現代語訳:菜の花たちよ、猫の通り道を吹く風と共に閉じておくれ。
【NO.9】
『 行春の 町やかさ売 すだれ売 』
季語:行春(春)
現代語訳:春が終わっていく町だなぁ。通りには夏用のかさ売りやすだれ売りが増えてきた。
夏の俳句【9選】
【NO.1】
『 涼風の 曲がりくねって きたりけり 』
季語:涼風(夏)
現代語訳:涼風が曲がりに曲がりくねって届くのだろうよ。
【NO.2】
『 やれ打つな 蝿が手をすり 足をする 』
季語:蝿(夏)
現代語訳:おい叩くな。蝿が手をすり合わせ、足をすり合わせ命乞いをしているではないか。
【NO.3】
『 やせ蛙 負けるな一茶 これにあり 』
季語:やせ蛙(夏)
現代語訳:小さくて弱そうなやせ蛙よ。負けないでくれ。私がここで応援しているぞ。
【NO.4】
『 蟻の道 雲の峰より つづきけん 』
季語:雲の峰(夏)
現代語訳:このアリ達の行列と歩いてきた道は、彼方にある入道雲の方から続いてきたのかもしれない。
【NO.5】
『 人来たら 蛙となれよ 冷し瓜 』
季語:冷やし瓜(夏)
現代語訳:誰か人が来たらカエルに変わっておいてくれよ、冷やしてある瓜よ。
【NO.6】
『 僧になる 子のうつくしや けしの花 』
季語:けしの花(夏)
現代語訳:これから僧侶になる子供の美しいことだ。ケシの花のような大輪の花の風情がある。
【NO.7】
『 いざいなん 江戸は涼みも むつかしき 』
季語:涼み(夏)
現代語訳:さあお暇しよう。江戸は人が多くて涼むのも難しいのだ。
【NO.8】
『 夏山や 一足づつに 海見ゆる 』
季語:夏山(夏)
現代語訳:夏山を歩いている。1歩ずつ進む度に海が見えてくるなぁ。
【NO.9】
『 大の字に 寝て涼しさよ 淋しさよ 』
季語:涼しさ(夏)
現代語訳:家で大の字に寝転ぶと涼しいのだ。しかし淋しくもあるのだ。
秋の俳句【9選】
【NO.1】
『 名月を 取ってくれろと 泣く子かな 』
季語:名月(秋)
現代語訳:背中に背負われた幼子が、十五夜の月を指し「とってちょうだい」とねだり、泣いていることだ。
【NO.2】
『 秋風や むしりたがりし 赤い花 』
季語:秋風(秋)
現代語訳: 死んだわが子の墓参りの途中、赤い花が秋風に揺られ道ばたに咲いている。子供がよくむしりたがったあの花だ。
【NO.3】
『 木曽山へ 流れ込みけり 天の川 』
季語:天の川(秋)
現代語訳:天空を流れる天の川は、まるで木曽山に流れ込んでいるかのように見える。
【NO.4】
『 うつくしや 障子の穴の 天の川 』
季語:天の川(秋)
現代語訳:美しいなぁ。障子の穴から見える天の川は。
【NO.5】
『 ほろほろと むかご落ちけり 秋の雨 』
季語:秋の雨(秋)
現代語訳:ほろほろとむかごが落ちていく秋の雨の日だ。
【NO.6】
『 露の世は 露の世ながら さりながら 』
季語:露(秋)
現代語訳:露のようなこの世は、露のようにはかなく消え去ってしまうとわかっているが、それでもやり切れないものだ。
【NO.7】
『 散る芒(すすき) 寒くなるのが 目に見ゆる 』
季語:芒(秋)
現代語訳:ススキが散っていくのを見ると、これから寒くなるのが目に見えるようだ。
【NO.8】
『 今日からは 日本の雁ぞ 楽に寝よ 』
季語:雁(秋)
現代語訳:到着したからには今日からは日本の雁だぞ。楽にして寝るといい。
【NO.9】
『 夕暮れや 膝を抱けば 又一葉 』
季語:一葉(秋)
現代語訳:夕暮れだなぁ。膝を抱えて座っているとまた一枚葉が落ちていく。
冬&無季の俳句【8選】
【NO.1】
『 元日や 上々吉の 浅黄空 』
季語:元日(新年)
現代語訳:元日から真っ青な青空で、この上なく縁起が良い。
【NO.2】
『 ともかくも あなたまかせの 年の暮れ 』
季語:年の暮れ(暮)
現代語訳:この一年、さまざまのことがあったが、あれこれ考えたところでどうにもならない。今となってはすべてを阿弥陀如来様にお任せして、年の暮れを迎えることにしよう。
【NO.3】
『 うまさうな 雪がふうはり ふわりかな 』
季語:雪(冬)
現代語訳:空を見上げると、美味しそうな牡丹雪が、ふうわりふわりと降ってくることだ。
【NO.4】
『 これがまあ 終の栖か 雪五尺 』
季語:雪(冬)
現代語訳:五尺も積もる雪の中の地が自分の最後のすみかとなるのかと思うと、深いため息がわいてくるなぁ。
【NO.5】
『 大根(だいこ)引き 大根で道を 教えけり 』
季語:大根(冬)
現代語訳:畑で大根を引き抜いて、その大根で道を指して教えている。
【NO.6】
『 むさし野や 水溜りの 富士の山 』
季語:無季
現代語訳:武蔵野の大地だ。水溜まりには富士山が映り込んでいる。
【NO.7】
『 ざぶりざぶり ざぶり雨降る 枯野かな 』
季語:枯野(冬)
現代語訳:ざぶりざぶり、ざぶりと雨が降っている枯れ野であることだ。
【NO.8】
『 朝晴れに ぱちぱち炭の 機嫌かな 』
季語:炭(冬)
現代語訳:冬の晴れた朝に、ぱちぱちと音を立てる炭の機嫌を伺っていることだ。
さいごに
生涯に2万句を残したといわれている「小林一茶」。
今回は、一茶の俳句の中でも特に誰もが知っているような「代表作」を厳選して紹介してきました。
一茶の作品はとてもわかりやすく、温かく、そして親しみやすいものが多いことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
同じ江戸時代に活躍した松尾芭蕉や与謝蕪村の句とは、また違った魅力に溢れていますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!