
「新緑」は若々しい緑のことを言い、季語としての季節は「初夏」になります。
おはようございます。現状曇り。今日も元気で良い一日を。
新緑もだいぶ緑が濃くなり初夏の趣。新緑を思いつつ。 pic.twitter.com/fU4AaQyFJX— Ura Nobu (@UraNob) May 16, 2014
今回は、「新緑」をテーマにしたオススメ俳句20句をご紹介します。
新緑の季語を使った有名俳句【10選】
【NO.1】山口誓子
『 新緑の 中黄(ちゅうき)に近き 緑あり 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の木々の葉の中に、中ほどがまだ黄色に近い色の葉がある。
新緑の頃の葉はきれいな黄緑色をしていますが、中にはまだ色付く途中で黄色が強い葉もあります。この句はそんな緑になる途中の黄色い若葉を詠んだ句です。
【NO.2】山口誓子
『 新緑に 犬が真夏の 呼吸づかひ 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。犬は真夏のような元気のいい息づかいをしている。
犬の息づかいで季節を表現しています。気温が暖かくなって外で遊び回って呼吸が活発になっているとも捉えられますし、真夏のような暑さになってしまってバテ気味の呼吸になっているとも捉えられる面白い句になっています。
【NO.3】日野草城
『 新緑や うつくしかりし ひとの老 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。新しい若葉が出るのと比べても、人が老いていくのは美しい。
新緑という新たな生命の息吹を感じさせる季節と、老いていく人の生命を対比しています。若葉と違い老いていくだけの人間もまた美しいのだという人間賛歌です。
【NO.4】山口青邨
『 新緑の 山たたなはる 国古く 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の山が連なっている。古くからある旧国の風景だ。
「たたなはる」とは「連なっている」という意味で、ここでは山々が連なる連山の風景を詠んでいます。山は古くから旧国、今で言う都道府県の境界であり、この句が詠まれた山は古くから変わらない旧国の境界だったのでしょう。
【NO.5】高野素十
『 新緑の 柳の木ある やさしさよ 』
季語:新緑(夏)
意味:柔らかな新緑の柳の木がある。優しげに揺れていることだ。
川沿いやお寺などで、風に揺れている柔らかな緑の葉の柳を見た一句です。幹や枝が固い印象を持たせる気よりも、全体的にやわらかい柳を「やさしい」と詠んでいるのがこの句の面白さでしょう。
【NO.6】内藤吐天
『 列車快走す 新緑の防雪林 』
季語:新緑(夏)
意味:列車は順調に快走している。新緑の防雪林の間を。
倒置法、句またがりなど多くの技法が使われています。「列車快走」という音節で区切らないことで疾走感を、「新緑」と「防雪林」で初夏の緑と冬の白を対比した技巧を凝らした句です。
【NO.7】稲畑汀子
『 塔仰ぐ とき新緑に 染まりつつ 』
季語:新緑(夏)
意味:高い塔を仰ぎ見ると、季節は新緑に染まりつつあるのだなぁ。
下を向いているとあまり分からない新緑ですが、塔などの高い建物を見上げると、周りにある木々の新緑に目が止まります。気がつけばもう新緑の季節だった、という感慨な「染まりつつ」という言葉に表れている句です。
【NO.8】水原秋桜子
『 新緑の 香をまとひ来し 渓釣師 』
季語:新緑(夏)
意味:新しい木の葉特有の香りをまといながら来る、渓流釣りの釣り師よ。
渓釣師は読むとすれば「けいちょうし」でしょうか。渓流釣りが解禁されるのは初夏が多く、よいポジションを取るために沢を登ってきます。その際に新緑のよい香りが衣服に付着しているという句です。
【NO.9】阿部みどり女
『 新緑や 夜まで遊ぶ 鹿を見し 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。夜まで遊んでいる鹿を見たよ。
初夏の季節は夜も暖かいため、寒さで縮こまっていた鹿が遊び出す姿を見たのでしょう。人も動物も暖かくなると遊びたくなるという共通点を詠んだ一句です。
【NO.10】鷹羽狩行
『 雨あとの 新緑に噎(む)せ 道路鏡 』
季語:新緑(夏)
意味:雨の後の新緑はむせ返るような香りだ。道路は水で鏡のようになっている。
雨の後の街路樹は、独特の芳香を放っています。そんな香りに酔いしれながら歩く道は、水溜まりで鏡のように反射している、初夏を代表する景色の句です。
新緑の季語を使った素人オリジナル俳句【10選】
【NO.1】
『 新緑の 森に聳(そび)える 天守閣 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の若葉が映える森にそびえ立つ天守閣が見える。
公園や庭園などの森の中に、天守閣がそびえ立っている光景です。冬であれば城の全景が見えるのでしょうが、若葉が茂る夏から先は天守閣だけが見えているのでしょう。
【NO.2】
『 新緑や 吾子の泣き声 予防接種 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。私の子供の泣き声が響く予防接種である。
産まれたばかりの子供の予防接種でしょうか。若葉という新しい生命の季節と、予防接種を受ける産まれたばかりの子供がよい対比になっています。
【NO.3】
『 新緑や 白球追いかけ 奮い立つ 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。白いボールを追いかけて奮い立たとう。
白球としかありませんが、野球がテーマの句です。「奮い立つ」という表現が、練習試合や大会が近い部活に打ち込む野球児たちの声が聞こえてくる一句になっています。
【NO.4】
『 図書館車 新緑の中 やって来る 』
季語:新緑(夏)
意味:移動図書館の車が新緑の若葉をかき分けてやってくる。
図書館が近くにない地域には、移動図書館の車がくることがあります。単に季節を表しただけというよりは、若葉の茂る道をかき分けて移動図書館車が姿を表す光景が目に浮かぶ季語の使い方です。
【NO.5】
『 新緑の 映えてガラスの 丸の内 』
季語:新緑(夏)
意味:街路樹の若葉の緑がガラスに映える丸の内のビル街である。
東京の都心部は街路樹が多く、緑にあふれています。そんな緑が日光とともにガラスに反射して映っている、ビル街ならではの風景を詠んだ句です。
【NO.6】
『 新緑や 日の斑(まだら)散らせる 貴船川 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。日光が若葉の影でまだらに散っている貴船川の風景である。
葉の無い冬から、木漏れ日が川を照らす新緑の季節へとうつり変わった風景を写実的に表現しています。斑という表現から葉の生い茂っている河岸が容易に想像できる句です。
【NO.7】
『 新緑や 町の清掃 子も我も 』
季語:新緑(夏)
意味:若葉の映える新緑の季節だ。町の清掃に子供も私もくり出そう。
町内会や学校の催しで、気候のいい季節になると道や公園の清掃活動を行う地域があります。「子も我も」という連続は、率先して清掃活動にいそしんでいる様子が目に浮かぶよい表現です。
【NO.8】
『 新緑の 中の躍動 ウォーキング 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の中を躍動するようにウォーキングをしよう。
初夏は暑すぎず寒すぎない、運動をするにはちょうどいい季節です。躍動という単語を入れると、まるでスキップをするように生き生きとウォーキングに出かける印象になります。
【NO.9】
『 新緑の 真只中の 野点かな 』
季語:新緑(夏)
意味:若葉の茂る真っ只中でお茶会をしよう。
野点とは屋外で行われる茶道の茶会で、季節を楽しむものです。抹茶に限らず煎茶などを楽しむ場合もあり、茶室での茶会よりも気楽な催しです。この句では、まさに新緑の季節を楽しむための茶会が催されています。
【NO.10】
『 新緑や 山に入りたる 高速路 』
季語:新緑(夏)
意味:新緑の季節だ。若葉が生い茂る山に入っていく高速道路である。
高速道路はトンネルに入る場所が多くあります。新緑の季節には、まるで緑の山の中に道路と車が吸い込まれていくように見える面白い句です。
以上、新緑をテーマにしたオススメ俳句集でした!
今回は、「新緑」をテーマにした俳句を、有名なもの10選とオリジナルの俳句10選にわけて紹介してきました。
新しい若葉が出る季節柄か、心地よい気候を喜ぶ句が多い印象です。
初夏の美しい緑の葉を見かけたら、ぜひ一句詠んで見てください。