
俳句は多くの人に愛好される文芸です。
今回は、近代俳句の礎を築いたとされる正岡子規の高弟にして、明治から昭和まで長く活躍した高浜虚子の代表作をご紹介します。
今日もありがとうございます🍀
せっかく紅葉が見られたのに
葉を落とし始めました🍂「桐一葉 日当りながら 落ちにけり」
大好きな 高浜虚子(松山出身)の句❗️仕事中にて休憩時に🙇🏻
— マカロン (@teishi_chugu) December 5, 2016
高浜虚子の特徴や人物像
(高浜虚子 出典:Wikipedia)
高浜虚子(たかはしきょし)は、本名は「清(きよし)」、明治中期から、大正、昭和30年代まで活躍した俳人です。
江戸期までの俳諧を改革した正岡子規の高弟で、正岡子規とともに、俳句雑誌『ホトトギス』の創刊に関わりました。師亡き後、高浜虚子は句作をやめ、しばらくは小説を書くことに没頭しました。
しかし、同じく正岡子規の弟子であった河東碧梧桐が定型や季題にとらわれない新傾向俳句を提唱し始めたことに反発、大正2年(1913年)、俳壇に復帰します。
新傾向を唱える碧梧桐に対して、虚子はあくまでも守旧派を貫き、正岡子規の俳句の精神を引き継いで『ホトトギス』の編集にも携わり、長く日本の俳壇に君臨した人物です。
花や鳥といった自然の美しさを詩歌に詠みこむ「花鳥諷詠」、客観的に情景を写生するように表現しつつ、その奥に言葉で表しきれない光景や感情を潜ませる「客観写生」といった考え方に基づいて俳句を詠みました。
高浜虚子の有名俳句・代表作【16選】
(虚子の句碑 出典:Wikipedia)
春の俳句【4選】
【NO.1】
『 手毬唄 かなしきことを うつくしく 』
季語:手毬唄 新年
現代語訳:子どもたちが遊びながら無邪気に歌う手毬唄は、よく聞くと悲しい内容のことを美しく歌っていることだなあ。
【NO.2】
『 何もなき 床に置きけり 福寿草 』
季語:福寿草 新年
現代語訳:正月らしいしつらえは何もない床の間に、福寿草の花を置いたことだ。
【NO.3】
『 春風や 闘志いだきて 丘に立つ 』
季語:春風 春
現代語訳:春風が吹いていることだ。私は、心に闘志をもち、丘の上で春風に吹かれながらじっと立っている。
【NO.4】
『 闘志尚 存して春の 風を見る 』
季語:春の風
現代語訳:若き日春風に吹かれながらに抱いた闘志はいまだ私の心の中にあり、今もこうして春の風をみていることだ。
夏の俳句【4選】
【NO.1】
『 白牡丹と いふといへども 紅ほのか 』
季語:牡丹 初夏
現代語訳:白牡丹という名の花ではあるが、よく見ると、紅色もほんのりと帯びていることだ。
【NO.2】
『 金亀虫 擲つ闇の 深さかな 』
季語:金亀虫 夏
現代語訳:夏の夜、部屋に入り込んでくるコガネムシを捕まえて庭に投げつけたが、それが飲み込まれていった闇の深いことよ。
【NO.3】
『 虹立ちて 雨逃げて行く 広野かな 』
季語:虹 夏
現代語訳:広い野原に降りこめていた雨も、虹が立つと逃げるようにやんでいくことだ。
【NO.4】
『 蛍火の 今宵の闇の 美しき 』
季語:蛍火 夏
現代語訳:蛍が光りながら飛び違う、今日の宵の闇がなんと美しいことか。
秋の俳句【4選】
【NO.1】
『 立秋の 雲の動きの なつかしき 』
季語:立秋 秋
現代語訳:立秋を迎え、秋の訪れを実感させる雲の動きが慕わしく思われることだ。
【NO.2】
『 桐一葉 日当たりながら 落ちにけり 』
季語:桐一葉 秋
現代語訳:桐の木の葉が一枚、太陽に照らされつつゆっくりと舞い落ちていったことだ。
【NO.3】
『 秋空を二つに断てり椎大樹 』
季語:秋空 秋
現代語訳:秋の空を、二つに分断して割っているようだ、椎の大きな木が。
【NO.4】
『 秋風や 眼中のもの 皆俳句 』
季語:秋風 秋
現代語訳:心地よい秋風が吹き抜けていくことよ。私の目に映るものすべてが、俳句とよべるような美しいものに思われる季節であることだ。
冬の俳句【4選】
【NO.1】
『 寒菊や 年々同じ 庭の隅 』
季語:かんぎく
現代語訳:寒菊が今年も咲いたことだよ。毎年、庭の隅の同じ場所に忘れることなく咲くことだ。
【NO.2】
『 流れ行く 大根の葉の 早さかな 』
季語:大根
現代語訳:冬、小川に浮かぶ大根の葉が流されていったが、その早いこと。
【NO.3】
『 遠山に 日の当たりたる 枯野かな 』
季語:枯野 冬
現代語訳:冬、日が陰ってきて、遠くの山にだけ陽ざしが当たって明るくなっているが、眼前には寒々しい枯れた野原が広がっていることだ。
【NO.4】
『 去年今年 貫く棒の 如きもの 』
季語:去年今年(こぞことし)
現代語訳:年の瀬を境に、去年と今年は入れ替わっていくのだが、その中をつらぬくぼうのようなものがある。
さいごに
今回は、俳句界の巨頭・高浜虚子の有名句をご紹介しました。
明治、大正、昭和と三世代にまたがって活躍した高浜虚子には、優れた句が多くあります。
客観的に、自然の美しい風物を詠みこむことを旨として、俳句の芸術性を追求しつづけた俳人でした。