五・七・五の17音に四季を織り込み、表現する「俳句」。
俳句の季語として多いのが、四季折々、色とりどりに咲く「花」です。
桜咲き 春の風吹き 花が舞う
By 我が家の息子
今日は学校で俳句を作ったようです🌸 pic.twitter.com/dC4S9xqkHL
— ♡Ayako♡ 아야코♥ (@0405ayako) April 7, 2017
今回は、そんな「花」にまつわる有名俳句を季節(春夏秋冬)別に40句紹介していきます。
目次
花の季語を含む有名俳句おすすめ集【春編 11句】
【NO.1】村上鬼城
『 ゆさゆさと 大枝ゆるる 桜かな 』
季語:桜(春)
現代語訳:ゆさゆさと大きな枝をゆらしている桜の見事なことよ。
【NO.2】阿波野青敏
『 山又山 山桜又 山桜 』
季語:山桜(春)
現代語訳:春の山を歩くと、山、そして見事な山桜が延々と続いている。
【NO.3】河東碧梧桐
『 赤い椿 白い椿と 落ちにけり 』
季語:椿(春)
現代語訳:赤い椿、白い椿が落ちている。その対比のなんと鮮やかなことよ。
【NO.4】与謝蕪村
『 菜の花や 月は東に 日は西に 』
季語:菜の花(春)
現代語訳:菜の花畑が広がっている。東から月がのぼり始め、日が西へ沈んでいく。
とても有名な春の俳句です。蕪村は、絵画のような俳句を得意としていました。
1枚の絵のような風景が目に浮かびます。
【NO.5】細見綾子
『 菜の花が しあはせそうに 黄色して 』
季語:菜の花(春)
現代語訳:黄色い菜の花が、また春が来たと幸せそうに咲いているよ。
【NO.6】高浜虚子
『 いぬふぐり 星のまたたく 如くなり 』
季語:いぬふぐり(春)
現代語訳:いぬふぐりの花が咲いている。まるで小さな星がきらきらと瞬いているようだ。
【NO.7】細見綾子
『 チューリップ 喜びだけを 持っている 』
季語:チューリップ(春)
現代語訳:チューリップはその包み込むような形のなかに、喜びだけを持っていそうだ。
【NO.8】椎名千恵子
『 セロファンの 中の幸せ かすみ草 』
季語:かすみ草(春)
現代語訳:きれいな花束のセロハンに包まれている、幸せそうなかすみ草だなあ。
【NO.9】松尾芭蕉
『 ほろほろと 山吹散るか 滝の音 』
季語:山吹(春)
現代語訳:滝が激しく流れ落ちる音がするなかで、山吹の花はほろほろと散っていく。
【NO.10】高野素十
『 野に出れば 人みなやさし 桃の花 』
季語:桃の花(春)
現代語訳:桃の花が咲いている。野に出ると人々がみんな優しく感じることだ。
【NO.11】三橋鷹女
『 みんな夢 雪割草が 咲いたのね 』
季語:雪割草(春)
現代語訳:目覚めたらみんな夢だったようだ。雪割草が咲いたのね。
花の季語を含む有名俳句おすすめ集【夏編 10句】
【NO.1】高浜虚子
『 白牡丹 といふといへども 紅ほのか 』
季語:牡丹(夏)
現代語訳:白牡丹という名前の花だけれど、よくよくみると紅色がほのかにさしている。
【NO.2】正岡子規
『 紫陽花や 昨日の誠 今日の噓 』
季語:紫陽花(夏)
現代語訳:昨日本当だったことが今日嘘かのように紫陽花の色が変わっている。
【NO.3】水原秋櫻子
『 石楠花(シャクナゲ)や 谷をゆるがす 朝の鐘 』
季語:石楠花(夏)
現代語訳:シャクナゲが谷をゆるがせる朝の鐘のように咲き誇って揺れているよ。
【NO.4】星野立子
『 今朝咲きし 山梔子(くちなし)の 又白きこと 』
季語:山梔子(夏)
現代語訳:今朝咲いたクチナシの花のまた、白いことよ。
【NO.5】高浜虚子
『 炎天の 地上花あり 百日紅(さるすべり) 』
季語:百日紅(夏)
現代語訳:真夏の暑い空の下、地上を見上げると百日紅の花が咲いている。
【NO.6】芝不器男
『 向日葵の 蘂(しべ)を見るとき 海消えし 』
季語:向日葵(夏)
現代語訳:向日葵の真ん中の蘂(しべ)を観察していると、一瞬海が消えるようだ。
【NO.7】鈴木真砂女
『 向日葵や もののあはれを 寄せつけず 』
季語:向日葵(夏)
現代語訳:向日葵は、しみじみとした趣などではなく堂々と咲いている。
【NO.8】松尾芭蕉
『 象潟や 雨に西施が ねぶの花 』
季語:ねぶの花(夏)
現代語訳:景勝地である象潟の美しい風景だ。雨に降られて俯くように咲くねぶの花が、まるで美女として名高い西施のように見える。
【NO.9】中村草田男
『 はまなすや 今も沖には 未来あり 』
季語:はまなす(夏)
現代語訳:幼い頃と同じようにハマナスの花が咲いているなぁ。今も昔も沖には未来があるのだ。
【NO.10】杉田久女
『 夕顔の ひらきかかりて 襞(ひだ)ふかく 』
季語:夕顔(夏)
意味:開きかけている夕顔のひだのなんと深いことよ。
花の季語を含む有名俳句おすすめ集【秋編 12句】
【NO.1】加賀千代女
『 朝顔に つるべ取られて もらひ水 』
季語:朝顔(秋)
意味:井戸の水を汲もうとしたら、朝顔の蔓がつるべに巻き付いていた。とってしまうのはかわいそうなので、お隣に水をもらいに行くことにした。
【NO.2】与謝蕪村
『 朝がほや 一輪深き 淵の色 』
季語:朝がほ(秋)
意味:朝顔が咲いている。その一輪の色を見ていると、まるで深い淵をのぞきこんでいるようだ。
【NO.3】久保田万太郎
『 草の花 ひたすら咲いて みせにけり 』
季語:草の花(秋)
意味:名もなき野草の花々もひたすらに、咲いて見せようとしている。
【NO.4】松尾芭蕉
『 白露も こぼさぬ萩の うねりかな 』
季語:白露・萩(ともに秋)
意味:白露をためた萩の花、風で大きくうねってもその白露を落とさない。
【NO.5】星野立子
『 コスモスの 花ゆれて来て 唇に 』
季語:コスモス(秋)
意味:コスモスの花をかいでみようとしたら、花が風にゆれて唇にきた。
【NO.6】種田山頭火
『 歩きつづける彼岸花(ひがんばな)咲きつづける 』
季語:彼岸花(秋)
意味:歩きつづけている道に沿って、彼岸花がずっと咲いている。
【NO.7】飯田蛇笏
『 おりとりて はらりとおもき すすきかな 』
季語:すすき(秋)
意味:手に取って折ってみると、はらりとすすきの重いことよ。
【NO.8】夏目漱石
『 ある程の 菊投げ入れよ 棺の中 』
季語:菊(秋)
意味:亡くなった大切な人を弔うため、ありったけの菊を棺の中へ入れてくれ。
【NO.9】今村青魚
『 土地人も まよふ袋路 金木犀(きんもくせい) 』
季語:金木犀(秋)
意味:古くからその土地に住んでいる人も迷ってしまう袋路に金木犀が咲き誇っている。
【NO.10】与謝蕪村
『 子狐の かくれ貌なる 野菊哉 』
季語:野菊(秋)
現代語訳:可愛らしい野菊が咲いているなぁ。子狐たちがかくれんぼをしているようだ。
【NO.11】河合曽良
『 行き行きて 倒れ伏すとも 萩の原 』
季語:萩(秋)
現代語訳:行ける所まで行って、そこで倒れ伏すことになっても、その場所が萩の花が咲く草原であれば本望だ。
【NO.12】山口誓子
『 突き抜けて 天上の紺 曼珠沙華 』
季語:曼珠沙華(秋)
現代語訳:突き抜けるような紺色の青空に、突き抜けるように咲く赤い曼珠沙華だ。
花の季語を含む有名俳句おすすめ集【冬編 7句】
【NO.1】細見綾子
『 山茶花(さざんか)は 咲く花よりも 散ってゐる 』
季語:山茶花(冬)
意味:山茶花は咲いている花より散っている花のほうが美しい。
【NO.2】亀田虎童子
『 客を待つ 床屋のポインセチアかな 』
季語:ポインセチア(冬)
意味:お客さんを待っている床屋にポインセチアが並べてある。
【NO.3】与謝蕪村
『 水仙や 寒き都の ここかしこ 』
季語:水仙(冬)
意味:冬の京都を歩いていると、あちらこちらに水仙の花が咲いているよ。
白い水仙の花、黄色い水仙の花、今でも道端のあちらこちらに咲いています。
まるで道を灯す明かりのようにあちらこちらに咲く水仙の様子が目に浮かびます。
【NO.4】太祇
『 赤き実と 見てよる鳥や 寒椿 』
季語:寒椿(冬)
意味:冬の赤い椿に鳥が、赤い実だと思って寄っていっている。
【NO.5】室生犀星
『 石垣の あひまに冬の すみれかな 』
季語:冬の菫(冬)
意味:石垣の合間の日の当たるところに、冬のすみれが咲いている。
【NO.6】服部嵐雪
『 梅一輪 一輪ほどの 暖かさ 』
季語:梅/寒梅(冬)
現代語訳:寒い中で梅が一輪だけ咲いている。その一輪の花の分だけ暖かさを感じるようだ。
【NO.7】鷹羽狩行
『 日と月の ごとく二輪の 寒牡丹 』
季語:寒牡丹(冬)
現代語訳:太陽と月のように咲く二輪の寒牡丹である。
以上、花にまつわる有名俳句40選でした!
花の季語はたくさんあり、同じ花でも季節によって呼び方が違うものもあります。
ぜひ身近な花の俳句を詠んでみてください。