【向日葵の蕋を見るとき海消えし】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!

 

日本が誇る伝統芸能「俳句」。

 

江戸時代から現在に至るまで、数多くの名句が生まれ、その背景とともに語り継がれてきました。

 

今回は、俳壇に流星のごとく現われ、流星のごとく去っていった芝不器男の作、「向日葵の蕋を見るとき海消えし」という句をご紹介します。

 

 

本記事では、「向日葵の蕋を見るとき海消えし」の季語や意味・表現技法・鑑賞などについて徹底解説していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

「向日葵の蕋を見るとき海消えし」の作者や季語・意味

 

向日葵の 蕋を見るとき 海消えし

(読み方:ひまわりの しべをみるとき うみきえし)

 

この句の作者は「芝 不器男(しば ふきお)です。『芝不器男句集』(1934年)に収録されている句になります。

 

「向日葵の蕋を見るとき海消えし」は、芝不器男が残した名句といわれています。

 

 

季語

こちらの句の季語は「向日葵(ひまわり)」で、季節は「夏」を表します。

 

夏の代表のような大輪の向日葵は、誰もが親しみを感じる花です。視覚の遠近を利用して、向日葵の強烈なイメージから夏を表現した一句です。

 

意味

この句を現代語訳すると・・・

 

「向日葵の蕋に焦点を当てて観察するとき、一瞬海が消える。」

 

といった意味になります。

 

蕋(シベ)とは、花を構成する要素の一つオシベ・メシベの「シベ」のことを言います。

 

目の前に咲く向日葵の花の細部に気を取られてしまうと、背景にある海へ意識が行かなくなることを詠んだ一句です。

 

この句の特徴

作者である不器男が26歳という若さでこの世を去るまで、実際に句作できた期間はわずか5年といわれています。

 

「向日葵の蕋を見るとき海消えし」は不器男の代表作であり、視覚の遠近を強調して言葉で表現した名句です。

 

向日葵が咲く向こう側に広がる海。作者は、はじめはなんとなく海を眺めていたのでしょう。

 

そして、ふと一輪の向日葵に目を留め、視線はその向日葵の組織へと向かいます。密集した蕋に意識を集中させていると、それまで背景にあったはずの海が、突如として視界から消え去った感覚に陥ったときの一句です。

 

対象にピントを合わせることで背景をぼかし、その対象がもつ現実味を強調しています。

 

「向日葵の蕋を見るとき海消えし」の表現技法

「海消えし」という表現

「し」は「確述」を表す助動詞「き」の連体形であり、「海が確かに消えた」というその瞬間の印象を強調した表現といえます。

 

「とき」という言葉を使っていることも、不器男が物事の瞬間の印象を表現することに拘っていることがわかります。

 

「向日葵の蕋を見るとき海消えし」の鑑賞文

 

ズーム、そしてフォーカス。

 

遠くをぼんやりと映していたところから1点に絞ることで、周囲がかすんでしまう、そんな映画的な手法を見事に言葉で表現しています。

 

ピントを一輪の向日葵に当てることで背景にあった海がかすみ、そして「海消えし」という一連の動きを感じることができます。

 

詩や歌の世界において、否定形は面白い働きをします。

 

打ち消されることによって、その存在が際立ち、読者にイメージを与える効果があります。

 

この句の場合、「海消えし」で、海の存在を消すことによって、眼前の向日葵の印象だけでなく、海の青さも強く印象つけられます。光彩の豊かな一句です。

 

作者「芝不器男」の生涯を簡単にご紹介!

芝不器男(1903年~1930年)は愛媛県出身の俳人で、俳句雑誌『天の川』の代表作家として活躍したことで知られています。

 

 

不器男は、比較的裕福な家庭で生まれ、読書はもちろんのこと、旅行や山歩きなどに興じ、明朗で屈託のない青春時代を送ったといわれています。

 

1923年に東京帝国大学農学部林学科に入学し、姉の誘いで長谷川零余子が主宰する『枯野』句会に出席したことをきっかけに句作を始めました。

 

1926年、『ホトトギス』にも投句を始め、入選句「あなたなる夜雨の葛のあなたかな」が高浜虚子の名鑑賞を受け、一躍注目を浴びることとなります。

 

1928年に結婚し、結婚相手の太宰家の養嗣子となりますが、翌年発症した睾丸炎が悪化し、1930年に夭折。享年26歳であったといわれています。

 

芝不器男のそのほかの俳句

 

  • 永き日のにはとり柵を越えにけり
  • 麦車馬におくれて動き出づ
  • あなたなる夜雨の葛のあなたかな
  • 卒業の兄と来てゐる堤かな
  • 白藤や揺りやみしかばうすみどり
  • 一片のパセリ掃かるゝ暖炉かな
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