
世界でもっとも短い詩といわれている俳句。
日常のちょっとした出来事や風景、自然や季節の移り変わりを詠んだものが多く残されています。
俳句で詠まれる数々の情景の一つに、天高く清々しいイメージのある「秋の空」があります。
「秋の空」は、秋の代表的な季語ですが、この他にも「秋空」「秋天」「秋の天」なども同意の季語として使われています。
今回は、そんな「秋の空」をテーマにした季語を含むおすすめの有名俳句をご紹介いたします。
目次
秋の空の有名俳句【有名俳句30選】
ここからは、「秋の空」をテーマに詠まれた有名俳句をご紹介します。俳人ごとに並べてみましたので、参考にしてみてくださいね。
(1)正岡子規の俳句
(正岡子規 出典:Wikipedia)
【NO.1】『 すさまじき 雲の走りや 秋の空 』
現代語訳:あぁ、もう夏も終わりだなぁ。空に浮かぶ雲は、もう秋の空だ。
【NO.2】『 湖の 上に置きけり 秋の空 』
現代語訳:湖と空の境界を見ていると、まるで湖の上に空が置かれているような、そんな幻想的な雰囲気がする。あぁ、秋だなぁ。
【NO.3】『 絶頂や 頭の上に 秋の空 』
現代語訳:頭上には、天高く秋晴れの空が広がっているよ。
【NO.4】『 秋の空 凌雲閣に 人見ゆる 』
現代語訳:秋の空に向かってそびえ立つ「凌雲閣」を人々は見上げているよ。
【NO.5】『 秋の空 清水流るゝ 思ひあり 』
現代語訳:ある秋晴れの日、水の清らかな川が、まるで思いを乗せて流れているようだ。
(2)高浜虚子の俳句
(高浜虚子 出典:Wikipedia)
【NO.1】『 秋天に 赤き筋ある 如くなり 』
現代語訳: 秋の空に赤い筋があるようだなぁ。
【NO.2】『 秋天に われがぐんぐん ぐんぐんと 』
現代語訳:天高く広がる秋の空を見ていると、自分もぐんぐんと昇っていくようだ。
【NO.3】『 秋雲は 老の心に さも似たり 』
現代語訳: 秋の空にうっすらと浮かぶ白い雲は、「老の心」に似ているなぁ。
【NO.4】『 雲あれど 無きが如くに 秋日和 』
現代語訳:雲はあるけれど、ほとんど無いに等しい秋晴れの空だなぁ。
【NO.5】『 立秋の 雲の動きの なつかしき 』
現代語訳:立秋を迎えて秋の季節が始まった。雲の動きを見ていると、かつて見たような気がして、なんだか懐かしく感じたよ。
(3)高野素十の俳句
【NO.1】『 秋天の 下の四五歩を 楽しみし 』
現代語訳:秋空の下を歩いていると、なんだかわくわく楽しくなってきたよ。
【NO.2】『 新しき 町新しき 秋の天 』
現代語訳:夏が終わり、新しい季節の到来だ。町も新しくなり、見上げると天高く秋の空が広がっている。
【NO.3】『 僧達に 大本山の 秋の天 』
現代語訳:清々しい秋晴れの日、僧侶たちが次々と大本山へと向かっている。
【NO.4】『 秋天に 大揚羽蝶 現はれし 』
現代語訳:ある秋の日、大揚羽蝶が突如として目の前に現れた。
【NO.5】『 秋天の 雲の浮べる 四方かな 』
現代語訳:天高く広がる秋の空。四方には雲が浮かんでいるよ。
(4)夏目漱石の俳句
(夏目漱石 出典:Wikipedia)
【NO.1】『 草山に 馬放ちけり 秋の空 』
現代語訳:秋の空の下、草山に馬を放つ。
【NO.2】『 我一人 行く野の末や 秋の空 』
現代語訳:秋の空のもと、野の果てを目指し、私は一人で旅をしている。
【NO.3】『 静なる 病に秋の 空晴れたり 』
現代語訳:自分は今こうして病に倒れ、静養しているが、秋晴れの清々しい空が広がっている。
【NO.4】『 雲少し 榛名を出でぬ 秋の空 』
現代語訳:雲が少し出ている秋の空のもと、榛名を出発したよ。
【NO.5】『 秋の空 浅黄に澄めり 杉に斧 』
現代語訳:空は青緑色に澄み渡っている。遠くから杉の木を切る斧の音が聞こえてきたよ。
(5)山口誓子の俳句
(山口誓子 出典:Wikipedia)
【NO.1】『 秋天の 下雀斑の こまやかに 』
現代語訳:清々しい秋晴れの日。こまかいそばかすが印象的な子がいるなぁ。
【NO.2】『 秋の雲 天のたむろに 寄りあへる 』
現代語訳:秋の雲が一つまた一つと寄ってきて、いつの間にか大きな塊となった。
【NO.3】『 秋の雲 うすれて天の 瑠璃となる 』
現代語訳:秋の空に浮かぶ白い雲は次第に薄れ、あたり一面真っ青な青空となった。
【NO.4】『 秋の雲 はてなき瑠璃の 天をゆく 』
現代語訳:秋の雲がどこまでも続く青空に流されていくよ。
【NO.5】『 墓地に聞く おるがん天に 秋の雲 』
現代語訳:墓地にオルガンの音が聞こえてきた。その音は空高く昇っていくようで、空には秋の雲が浮かんでいる。
(6)そのほかの人物の俳句
【NO.1】与謝蕪村
『 秋の空 昨日や鶴を 放ちたる 』
現代語訳:昨日、鶴が秋の空に向かって一斉に旅立っていったよ。
【NO.1】小林一茶
『 秋の天 小鳥ひとつの ひろがりぬ 』
現代語訳:天高く、秋の空に向かって小鳥が飛び立っていった。
【NO.1】杉田久女
『 秋空に つぶてのごとき 一羽かな 』
現代語訳:秋の青空に、投げた小石のように颯爽と飛んでいく一羽の鳥
【NO.1】内藤鳴雪
『 秋の雲 ちぎりちぎれて なくなりぬ 』
現代語訳:白くて薄い秋の雲は、次々にちぎれ、次第になくなってしまったよ。
【NO.1】山口青邨
『 旗雲と 飛行機雲と 秋の空 』
現代語訳:秋の空、あちらには旗雲、こちらには飛行機雲が浮かんでいるよ。
以上、秋の空をテーマにした有名俳句でした!
さいごに
「天高く馬肥ゆる秋」という言葉があるように、清々しく澄み渡った秋の空はとても高く感じられます。
初夏の青々とした青空も魅力的ですが、秋の空は趣深い美しさを持っています。そして、その美しさは今も昔も多くの俳句に詠み込まれてきました。
今回は、「秋の空」のほかにも「秋空」や「秋天」などの季語が詠み込まれた俳句をご紹介してきました。
美しく広がる秋の空の光景が、目に浮かぶような名句ぞろいですので、じっくりと鑑賞してみてくださいね。