俳句には四季折々の美しい風景を詠んだ句がたくさんあります。
「夏河を 越すうれしさよ 手に草履」
与謝蕪村が丹後の加悦周辺で詠んだ名句です。 pic.twitter.com/7YD6uEeMPX— WATARU (@wataru09666) August 4, 2016
今回は、美しい四季(春夏秋冬)を詠んだ俳句を40句紹介していきます。
目次
美しいおすすめ有名俳句集【春編 10選】
【NO.1】松尾芭蕉
『 梅が香に のっと日が出る 山路かな 』
季語:梅(春)
現代語訳:梅の香りに誘われて、太陽がのっと出てくる山路だなぁ。
「のっと」という表現が特徴的な俳句です。春を呼ぶ梅の香りに誘われて出てくる太陽という、牧歌的な風景を表しています。
【NO.2】小林一茶
『 雪とけて 村いっぱいの 子どもかな 』
季語:雪とけて(春)
現代語訳:路面に積もった雪がとけると、村中から子供たちが遊びに集まってくることだ。
雪深い村でずっと家の中にいた子供たちが、雪解けと同時にわっと集まってくる光景が目に浮かびます。
【NO.3】与謝蕪村
『 曙の むらさきの幕や 春の風 』
季語:春の風(春)
現代語訳:明け方の空の色はまるで紫色の幕を張ったようだ。春の風が吹いている。
「春はあけぼの」を彷彿とさせる、紫がかったグラデーションの春の朝の色です。春の少し湿った風を感じます。
【NO.4】与謝蕪村
『 菜の花や 月は東に 日は西に 』
季語:菜の花(春)
現代語訳:一面の菜の花畑その東の地平線からは月がのぼり、西の地平線には日が沈んでいく。
【NO.5】松尾芭蕉
『 しばらくは 花の上なる 月夜かな 』
季語:花(春)
現代語訳:桜も咲いたことだし、しばらくは花の上に月がのぼる夜になることだ。
【NO.6】松尾芭蕉
『 古池や 蛙飛び込む 水の音 』
季語:蛙(春)
現代語訳:古い池があるなぁ。カエルが飛び込む水の音が響き渡っている。
【NO.7】水原秋桜子
『 高嶺星 蚕飼(こがい)の村は 寝しづまり 』
季語:蚕飼(春)
現代語訳:山の上に星が出ている。養蚕を営む人達の村はすっかり寝静まっている。
【NO.8】高野素十
『 空をゆく ひとかたまりの 花吹雪 』
季語:花吹雪(春)
現代語訳:空を見上げると、ひとかたまりになった花吹雪が風に吹かれていく。
【NO.9】中村汀女
『 外にも出よ 触るるばかりに 春の月 』
季語:春の月(春)
現代語訳:外に出てごらんなさい。触れるような大きくはっきりとした春の月が出ています。
【NO.10】坪内稔典
『 たんぽぽの ぽぽのあたりが 火事ですよ 』
季語:たんぽぽ(春)
現代語訳:たんぽぽの「ぽぽ」のあたりが火事になっているように見えますよ。
美しいおすすめ有名俳句集【夏編 10選】
【NO.1】山口素堂
『 目には青葉 山ホトトギス 初鰹 』
季語:青葉(夏)/ホトトギス(夏)/初鰹(夏)
現代語訳:目には青葉が映り、ホトトギスの声が聞こえ、初鰹がおいしい季節だ。
【NO.2】井原西鶴
『 長持ちに 春ぞくれ行く 更衣 』
季語:更衣(夏)
現代語訳:長持ちに春の着物をしまって衣替えをすると、春までも長持ちの中にしまわれて暮れていくようだ。
【NO.3】松尾芭蕉
『 五月雨を あつめてはやし 最上川 』
季語:五月雨(夏)
現代語訳:梅雨の雨が降り続くので、その雨水が集まる最上川は矢のように早いことだ。
【NO.4】与謝蕪村
『 夏河を 越すうれしさよ 手に草履 』
季語:夏河(夏)
現代語訳:夏の川を草履を抜いで手に持って渡る、その冷たさがうれしいことだ。
【NO.5】松尾芭蕉
『 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 』
季語:蝉(夏)
現代語訳:静かなことだ。蝉の声が岩にしみ入っていく。
【NO.6】小林一茶
『 涼風の 曲がりくねって きたりけり 』
季語:涼風(夏)
現代語訳:涼しい風が曲がりくねった道を通ってやってきた。
【NO.7】高浜虚子
『 白牡丹と いふといへども 紅ほのか 』
季語:牡丹(夏)
現代語訳:「白牡丹」という名前ではあるけれど、中心部分はほんのり紅色になっている。
【NO.8】山口誓子
『 匙なめて 童たのしも 夏氷 』
季語:夏氷(夏)
現代語訳:かき氷を食べている子供が匙をなめて楽しそうにしている。
【NO.9】石田波郷
『 プラタナス 夜も緑なる 夏は来ぬ 』
季語:夏は来ぬ/立夏(夏)
現代語訳:プラタナスの葉が夜も緑色を濃くしている夏が来た。
【NO.10】日野草城
『 ところてん 煙のごとく 沈みをり 』
季語:ところてん(夏)
現代語訳:半透明なところてんがまるで煙のように皿に沈んでいく。
美しいおすすめ有名俳句集【秋編 10選】
【NO.1】松尾芭蕉
『 荒海や 佐渡に横たふ 天の川 』
季語:天の川(秋)
意味:荒れた海よ。佐渡ヶ島に横たわる天の川よ。
波の高い海、黒々とした島、空に輝く天の川と雄大な光景を歌い上げた有名な俳句です。
【NO.2】正岡子規
『 砂の如き 雲流れ行く 秋の朝 』
季語:秋の朝(秋)
意味:砂のように薄く細かい雲が流れていく秋の朝であることだ。
【NO.3】小林一茶
『 名月を とってくれろと 泣く子かな 』
季語:名月(秋)
意味:あの空の月を取ってくれよと子供が泣いていることだ。
【NO.4】正岡子規
『 柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺 』
季語:柿(秋)
意味:柿を食べていると鐘が鳴ったなあ。法隆寺の鐘だ。
【NO.5】高浜虚子
『 一枚の 紅葉かつ散る 静けさよ 』
季語:紅葉かつ散る(秋)
意味:一枚の葉が紅葉しつつひらひらと散っていく、その静けさよ。
【NO.6】小林一茶
『 ほろほろと むかご落ちけり 秋の雨 』
季語:秋の雨(秋)
現代語訳:ほろほろとむかごが落ちていく秋の雨だ。
【NO.7】宝井其角
『 名月や 畳の上に 松の影 』
季語:名月(秋)
現代語訳:名月が昇っているなぁ。畳の上には月光に照らされた松の影が落ちている。
【NO.8】山口誓子
『 突き抜けて 天上の紺 曼珠沙華 』
季語:曼珠沙華(秋)
現代語訳:突き抜けるように高い天の青空に、曼珠沙華の赤い花が映えている。
【NO.9】飯田蛇笏
『 おりとりて はらりとおもき すすきかな 』
季語:すすき(秋)
現代語訳: 折って取ってみると、はらりと重いススキであることだ。
【NO.10】橋本多佳子
『 星空へ 店より林檎 あふれをり 』
季語:林檎(秋)
現代語訳:星空へ向かって店から積み上げられているようなリンゴがあふれそうになっている。
美しいおすすめ有名俳句集【冬編 10選】
【NO.1】松尾芭蕉
『 木枯らしや 竹に隠れて しづまりぬ 』
季語:木枯らし(冬)
意味:強く葉をゆらして吹いていた木枯らしが、竹林の中に吸い込まれると静まってしまった。
【NO.2】高浜虚子
『 遠山に 日の当たりたる 枯野かな 』
季語:枯野(冬)
意味:遠くの山に日が当たっている。裾野はすっかり枯野になってしまったことだ。
【NO.3】北原白秋
『 ガス灯に 吹雪輝く 街を見たり 』
季語:吹雪(冬)
意味:ガス灯に照らされた吹雪がキラキラと輝いている街を見た。
街灯が普及したことで表れた光景です。吹雪が街灯の光を反射して輝いている様子を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
【NO.4】杉山杉風
『 晴天も 猶つめたしや 寒の入 』
季語:寒の入(冬)
意味:空は晴れているが、なお空気は冷たいことだ。まだ寒の入りである。
「寒」とは1月の最も寒い時期のことを言います。空は青く晴れ渡っているものの、吹く風が冷たい冬の情景です。
【NO.5】服部嵐雪
『 梅一輪 一輪ほどの あたたかさ 』
季語:寒梅(冬)/梅(春)
意味:梅が一輪一輪咲いていく度に、近づく春の暖かさを感じている。
前書きに寒梅とある句のため、俳句自体の季語は梅ですが冬の俳句とされます。
【NO.6】与謝蕪村
『 寒月や 門なき寺の 天高し 』
季語:寒月(冬)
現代語訳:寒い夜に月が出ている。門がないお寺は天が高く見えるなぁ。
お寺というと立派な門を持っているお寺を想像しがちですが、この句では門のない小さなお寺が舞台です。冬の冴え渡る月と雲のない空がさえぎられることなく良く見えている風景を詠んでいます。
【NO.7】池西言水
『 木枯らしの 果てはありけり 海の音 』
季語:木枯らし(冬)
現代語訳:地を吹く木枯らしにも行き着く果てはあったのだなぁ。海の波の音がする。
作者はこの俳句で有名になり、「木枯らしの言水」とも呼ばれました。地上を吹く風を追っているとやがて海に出て波になるというダイナミックな一句です。
【NO.8】中村草田男
『 冬の水 一枝の影も 欺かず 』
季語:冬の水(冬)
現代語訳:冬の冷たい水は、木のひと枝の影も欺かずにあるがままに映し出す。
この句は「客観写生」という近代俳句の姿勢をよく表していると言われる一句です。風などで水面が揺らいでも、収まってしまえばそこに映る枝の影は全く変わらず水面に映り続けます。
【NO.9】杉田久女
『 鶴舞ふや 日は金色の 雲を得て 』
季語:鶴(冬)
現代語訳:鶴が舞っているなぁ。日が照って雲が金色に輝いている。
この句はツルの渡来地で詠まれたもので、金色と表現していることから朝方の時間帯の風景を詠んでいます。鶴や金色の光というおめでたい組み合わせに喜んでいる様子が伺える句です。
【NO.10】鷹羽狩行
『 日と月の ごとく二輪の 寒牡丹 』
季語:寒牡丹(冬)
現代語訳:太陽と月のように寄り添う二輪の寒牡丹の花だ。
牡丹は夏に咲く花ですが、品種改良などをされずに冬に花を咲かせる牡丹もあります。この寒牡丹は栄養分を花に集中させるために葉がなく、二輪の牡丹の花がより一層際立って見えたことでしょう。
以上、美しいおすすめ有名俳句集でした!
今回は、春夏秋冬の美しい風景を詠んだ名句から10句ずつ選んで紹介しました。
四季の風景を表す季語は他にもたくさんありますので、ふと目にした光景を詠んでみてはいかがでしょうか。