【細見綾子の有名俳句 20選】日本を代表する女流俳人!!俳句の特徴や人物像･代表作など徹底解説！

春は前線の影響で雷が鳴り始める季節です。天気も悪く、黒い雲が胸の上に掛かっている布団のような厚みをもって夜を覆っています。

一面の菜の花畑の黄色を思い起こさせる一句です。冬のあまり色のない世界から黄色という鮮やかな色の花が咲く季節になることで、「しあはせさうに」という感覚を抱いています。

春に咲くチューリップに喜びを見出している一句です。チューリップの花言葉は愛や思いやりをといったポジティブなイメージが多く、まさに喜びを持っている花と言えます。

満開の桃の花の下で、風が吹かないためにまるで蒸されてしまうかと思ったと後に自解で語られている句です。「八重」と最後に表現されることで桜や梅とは違い多くの花びらを持つ桃の花の特徴を印象付けています。

透明なガラスの器を洗いながら窓から桜の花が見えている風景が浮かんでくる句です。お花見など特別な時に使用するガラスの器の手入れをしていたのでしょうか。

花見という一大イベントが終わり、日常に帰ってきたことを象徴するような表現です。桜は葉桜に代わり、料理もいつもの物に戻ったという感覚が「魚に塩」というフレーズから感じ取れます。

収穫したてのそら豆は濃い味がすると言います。みずみずしく素材の味をそのまま感じ取っている様子が「青き味」という表現に表れている句です。

暑さでやる気が無くなり、ついつい散らかしがちになる人もいることでしょう。作者は暑いからこそ身を律するために整理整頓を行っています。

「合歓の花」から連想されるものは女性の美しさが多いですが、作者は自分にとっては虹のような美しさであると語っています。男性と女性とで例える美しさが違うのが面白いところです。

作者はこの句について、「かすかに聞こえたということは確かに雷が鳴っていたのだ」と自解で語っています。「たしかなものはかすかなもの」という作者の哲学的な概念に気がついた時の様子を詠んだものです。

「一つ」という言葉を重ねることによって、周囲に音がない静かな空間であることを表しています。ドングリが落ちる音が聞こえるほど風もなく音もしない静謐な空間です。

イチジクは赤ではなく黄色く色づきます。美しいイチジクの葉が、土管という人工物の上にも落ちているおかげで美しく見えるという日常の風景を詠んだ句です。

「古九谷」とは現在知られている九谷焼とは違い、西暦1655年から1700年という短い期間に作られたものです。青や紫を使ったものが多く、作者が見たのも「青手」と呼ばれる古九谷だったのでしょう。

紅葉という美しい風物詩も燃やしてしまえば煙と灰になります。そんな煙が水の上を這うように広がっていく光景に、無常を感じている一句です。

この句は後に作者の夫となる沢木欣一が復員し、再会した時の喜びを詠んだ句です。何はなくとも再び生きて会えたことの喜びが「美し」「秋日の中」という光り輝く様子を詠んでいることからわかります。

作者は自解でこの峠を丹波と但馬の国境の峠としています。葉が落ちて青空の広がる荒涼とした山と、峠という徒歩で旅をしていた時代では別れを象徴していた場所に虚しさを感じている一句です。

除雪が必要な地域は朝からの活動を支援するために深夜も作業が行われます。朝起きて除雪されている道を見て、ついに顔も見られなかったという日常を詠んだ句です。

電車の終着駅といわれるとどこか寂しい雰囲気を感じる人もいるでしょう。「枯野」と表現されていることで、住宅街のない寂しい駅前の風景が見えてきます。

規則正しく響く秒針の音を聞いていたら眠ってしまった様子を詠んでいます。時計の下で何か作業をしているうちについうたた寝してしまったのでしょうか。

年の瀬は寒さが厳しく、地方によっては大雪に悩まされる季節です。そんな中で「うららか」と呼ばれるほど穏やかであたたかったためにかえって何もしないでお正月をむかえてしまうなぁという平和な日常を詠んでいます。

今回は、細見綾子の作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。

高等教育を受け、昭和という激動の時代を体験した細見綾子の句は、若い頃と円熟期、晩年で作風が変化していきます。
現代俳句は今なお多くの俳人と作風を生み出し続けているので、いろいろと読み比べてみてはいかがでしょうか。