みなさんは「風が吹いている」と聞くと、どのような「風」を思い浮かべますか?
春の南風、暑い夏の熱風、秋風、冬の北風など…、「風」にはたくさんの種類があります。
俳句では春一番や木枯らしなど、季節によって吹く風の種類が季語となります。
今回は、そんな「風」にまつわるオススメ俳句(有名俳人の名句+一般俳句作品)を40句紹介していきます。
春風や闘志いだきて丘に立つ (高浜虚子) pic.twitter.com/4yH6hclgJC
— iTo (@itoudoor) March 29, 2013
目次
風の季語を使った有名俳句【20選】
春の俳句【7句】
【NO.1】高浜虚子
『 春風や 闘志いだきて 丘に立つ 』
季語:春風(春)
現代語訳:春風が吹きわたっている、強い闘志をいだいて風を感じて丘の上にたたずんでいる。
【NO.2】松尾芭蕉
『 春風に 吹きだしわらう 花もがな 』
季語:春風(春)
現代語訳:春風が吹いている、こういう日は華やかにぱっと咲く花でもあったらいいのになあ。
【NO.3】小枝恵美子
『 東風吹かば ポテトチップス 歩み来る 』
季語:東風(春)
現代語訳:春の東からの風が、(梅の花の香ではなく)ポテトチップスの匂いと食感を運んでくるよ。
【NO.4】岸田稚魚
『 胸ぐらに 母受けとむる 春一番 』
季語:春一番(春)
現代語訳:春一番が吹いて、よろけた母を胸で受けとめた。
春を感じる強い南風が、母をよろけさせます。母を受け止めながらも、年老いて軽くなった母に歳月が経ったことを感じます。
【NO.5】正岡子規
『 海原や 夜に入りてから 風光る 』
季語:風光る(春)
現代語訳:広々とした海に夜がきてから風が吹いている。水面に反射してきらきらと輝く風に春を感じる。
【NO.6】小林一茶
『 春風や 牛に引かれて 善光寺 』
季語:春風(春)
現代語訳:春風が吹いているなぁ。故事にならって牛に引かれて善光寺参りをしよう。
「牛に引かれて善光寺」とは善光寺の逸話にあるもので、この頃からよく知られていたフレーズです。春風につられて善光寺へ行こうとキャッチフレーズのような作品になっています。
【NO.7】水原秋桜子
『 夕東風(ゆうごち)や 海の船ゐる 隅田川 』
季語:夕東風(春)
現代語訳:夕方に東から吹いてくる風がある。隅田川に浮かんでいるあの船は海から来たものだろうか。
夏の俳句【7句】
【NO.1】菊田一夫
『 南風や 子猿の赤い ちゃんちゃんこ 』
季語:南風(夏)
現代語訳:夏の到来を告げる風が吹いているのに、子猿はまだ赤いちゃんちゃんこを着ているよ。
【NO.2】西東三鬼
『 黒南風の 岬に立ちて 呼ぶ名なし 』
季語:黒南風(夏)
現代語訳:ぬるくじめっとした風が吹いている岬に立ってみる、名前を呼ぶことはない。
【NO.3】郡山やゑ子
『 白南風の 相合傘は 寂しいよ 』
季語:白南風(夏)
現代語訳:梅雨明けの南風が吹いている、もう相合傘をすることもなくさびしい。
【NO.4】稲畑汀子
『 旅先で 揃ふ仲間に 風薫る 』
季語:風薫る(夏)
現代語訳:旅先で久しぶりにそろった仲間たちに初夏の風が吹いている。
【NO.5】小林一茶
『 涼風の 曲がりくねって 来たりけり 』
季語:涼風(夏)
現代語訳:涼風が江戸の中を曲がりくねって吹いてくるのだろう。
【NO.6】矢島渚男
『 涼風を いひ秋風を いふ頃ぞ 』
季語:涼風(夏)
現代語訳:季節的には、秋風と詠むべきか、でも感じているのは夏の気候だから涼風と詠むべきか。
【NO.7】正岡子規
『 夏嵐 机上の白紙 飛び尽す 』
季語:夏嵐(夏)
現代語訳:夏の大嵐が机の上の白紙を飛ばし尽くしてしまった。
秋の俳句【2句】
【NO.1】松尾芭蕉
『 物言えば 唇寒し 秋の風 』
季語:秋の風(秋)
現代語訳:口を開くと、秋の冷たい風が唇に触れて、寒々しい気持ちになる。
【NO.2】小林一茶
『 秋風や むしりたがりし 赤い花 』
季語:秋風(秋)
現代語訳:秋風に赤い花が揺れている。亡くなった子がよくむしりたがっていたな。
冬の俳句【4句】
【NO.1】山口誓子
『 海に出て 木枯らし帰る ところなし 』
季語:木枯らし(冬)
現代語訳:この地を吹く木枯らしは海に出ていくと、陸へ戻ってくることはない。
【NO.2】芝不器男
『 北風や あをぞらながら 暮れはてて 』
季語:北風(冬)
現代語訳:北風が吹いているなぁ。風が強く空は雲一つないが、日が暮れようとしている。
【NO.3】池西言水
『 木枯らしの 果てはありけり 海の音 』
季語:木枯らし(冬)
現代語訳:木枯らしにも果てがあるのだなぁ。海の音が木枯らしの音をかき消している。
【NO.4】山口誓子
『 風雪に たわむアンテナの 声を聴く 』
季語:風雪(冬)
現代語訳:激しい風雪にたわむアンテナの音がまるで声のように聞こえてくる。
風の季語を使った一般俳句作品集【20選】
春の俳句【6句】
【NO.1】
『 春の風 冬の終わりを 今つげる 』
季語:春の風(春)
意味:春風が吹いてきた。今、冬の終わりをつげているよ。
【NO.2】
『 春の風 運ばないでね アレルゲン 』
季語:春の風(春)
意味:春風よ、飛び始めるアレルゲン(花粉)をどうか運んでこないで。
【NO.3】
『 登校中 パンの香りや 春の風 』
季語:春の風(春)
意味:登校中、春風にのってパンの香りがしてきたなあ。
入学のシーズン、通学途中にパンの香りがしてきたのでしょうか。
とても癒されます。
【NO.4】
『 春一番 風が帽子を さらってく 』
季語:春一番(春)
意味:春一番の強い風が帽子をさらっていく。
【NO.5】
『 春風に そよぐわが子の 産着かな 』
季語:春風(春)
意味:春風に吹かれて、干した子供の産着が風にそよいでいるよ。
【NO.6】
『 春風を 切って自転車 国道をゆく 』
季語:春風(春)
意味:春風を切るように自転車で国道を走っていく。
夏の俳句【6句】
【NO.1】
『 生まれたと 友より知らせ 薫る風 』
季語:薫る風(夏)
意味:友達より「生まれた」と連絡がきた、初夏の風とともに。
【NO.2】
『 風薫る バドミントンの 羽根は屋根 』
季語:風薫る(夏)
意味:初夏の風が吹いている、風にのってバドミントンの羽根が屋根にのってしまった。
【NO.3】
『 夏風が 花のにおいを 連れてきた 』
季語:夏風(夏)
意味:夏の風に乗って花のにおいがする。
【NO.4】
『 前髪と 戯れていく 夏の風 』
季語:夏の風(夏)
意味:夏の風が吹いて、前髪を揺らしていった。
【NO.5】
『 夏かぜや 立たんとする子の 背を支え 』
季語:夏風(夏)
意味:夏の風が一人で立って歩こうとする子供の後押しをしてくれているようだ。
【NO.6】
『 結い上げた うなじの白に 風薫る 』
季語:風薫る(夏)
意味:髪を結い上げて見えるうなじの白い色に風がほんのりと薫ってくるようだ。
秋の俳句【5句】
【NO.1】
『 台風が ぼくのやる気を 連れてった 』
季語:台風(秋)
意味:台風がきて、ぼくのやる気まで連れて行ってしまった。
【NO.2】
『 秋の風 ぼくの打球を スタンドへ 』
季語:秋の風(秋)
意味:秋風よ、どうかぼくの打球をスタンドに運んでくれ。
【NO.3】
『 秋風に 散るとき探る 一葉ずつ 』
季語:秋風(秋)
意味:秋風に散る一枚、一枚の葉の色を探してしまう。
秋風に吹かれて一枚、一枚、散っていく葉にさみしさを感じます。
季節の移り変わりや、秋のもの悲しさも葉っぱに重ねてしまいます。
【NO.4】
『 台風の くの字進路に 旅程変え 』
季語:台風(秋)
意味:台風のくの字の進路に旅程を変えた。
【NO.5】
『 槍ヶ岳 願い刺さって 秋風吹く 』
季語:秋風(秋)
意味:槍ヶ岳にまるで願いが刺さっているかのように秋風が吹いている。
槍ヶ岳は標高3,180mの鋭い槍のような形をした山です。槍の穂先に登山者や麓から見ている人たちの願いが刺さっているようだという感想を抱いています。
冬の俳句【3句】
【NO.1】
『 寒風が 海打ち鳴らす 凄まじく 』
季語:寒風(冬)
意味:寒風が海の水面をドーン、ドーンと打ち鳴らしているよ。
【NO.2】
『 散髪の 僕待ち伏せて 北の風 』
季語:北の風(冬)
意味:久しぶりに散髪をしたら、床屋を出た途端、北風が吹きつけてきた。
【NO.3】
『 木枯しが みんな散らして ゆきました 』
季語:木枯し(冬)
意味:木枯らしがみんな散らしてゆきました。
以上、風に関するおすすめ俳句集でした!
「風」にも季節によって、たくさんの呼び方があります。
興味を持った方は、ぜひ「風」を感じて俳句を詠んでみてはいかがでしょうか?