【台風の有名俳句 20選】秋の季語!!意味や野分(のわき)•俳人おすすめ名句を紹介!

 

日本の秋には、「台風」という嵐が訪れます。

 

「台風」の非日常的な怖さと、台風が去った後の澄み切った空のすがすがしさは、人びとの心を打ちます。

 

 

今回は、そんな「台風」に関する有名俳句20句ご紹介します。

 

リス先生
ぜひ参考にしてみてね!

秋の季語「台風」について

 

台風は「颱風」とも書き、秋たけなわの9月(旧暦8月)、「仲秋の季語」として扱われています。

 

台風の語源は、中国語、アラビア語、ギリシャ語などとするものがありますが、一般的には、英語の「typhoon」の音に漢字をあてたものとされています。

 

この台風の語が日本の季題として使われるようになったのは、大正時代からと言われており、昔から俳句の題材として用いられてきました。

 

俳句仙人

また、「台風」と同じものとされている季語が、「野分(のわき)」です。野分は、台風によってもたらされる秋の暴風のことを意味し、雨よりも「風」が主体となっています。

 

「台風」に関するおすすめ有名俳句【前半10句】

 

【NO.1】高浜虚子

『 颱風の 名残の驟雨(しゅうう) あまたふたたび 』

季語:颱風(仲秋)

意味:台風が過ぎ去った後、その名残の驟雨が再び多く降っている。

俳句仙人

驟雨とは「にわか雨」のことで積雲や積乱雲から急に降り始め、しばらくすると止む雨をいいます。

台風が過ぎた後、襲ってくるにわか雨は、思ったよりも強いものです。

【NO.2】森田峠

『 放課後の 暗さ台風 来つつあり 』

季語:台風(仲秋)

意味:放課後の教室の暗さに、台風が来つつあることを感じる。

俳句仙人

台風が近づくと、空はどんよりと曇り、周りの景色も暗くなります。その様子は、どこか不気味なものです。

主体が先生か生徒なのかわかりませんが、いつもならまだ明るさが残るはずの放課後の教室が、どんよりと暗くなっていることに「台風の襲来」という非日常を感じ取っているのでしょう。

【NO.3】富安風生

『 颱風に 吹きもまれつつ 橡(とち)は橡(とち) 』

季語:颱風(仲秋)

意味:颱風に吹きもまれながらも、橡の木は橡の木として立っている。

俳句仙人

橡とは「橡の木」(栃の木)のことです。「橡の木」は古来より日本にある木で、日本各地の深山の谷間で広くみられます。高さ35メートル程にも成長する高木です。

台風の嵐に山の木々は大きくもまれていますが、高木の「橡の木」はその中で他の木と紛れることなくしっかりとした姿をしているのでしょう。「橡は橡」と言い切る形で終わらせることで、読み手に嵐の中での「橡の木」の姿を、想像させます。

【NO.4】高田風人子

『 戻り来し 台風に傘 取られしと 』

季語:台風(仲秋)

意味:台風に傘を取られたと戻ってきたことだ。

俳句仙人

この句は、語の順番を逆にする倒置法を用い、句の印象を強めています。

子どもが「台風の風に傘を壊されてしまった」と家に戻ってきたのでしょうか。

台風の強風で、折れてしまった傘の姿がありありと浮かんできます。

【NO.5】与謝蕪村

『 鳥羽殿へ 五六騎いそぐ 野分かな 』

季語:野分(仲秋)

意味:鳥羽殿へ五六の武者が駆けていく野分であることだ。

俳句仙人

「鳥羽殿」とは、現在の京都市伏見区鳥羽に、11世紀末白河天皇が退位後の御所として作った離宮のことです。

台風が吹きすさぶ中、五六騎の武者が鳥羽殿へ急ぐというただならない情景ですが、これは与謝蕪村が平安時代中期の時代を空想して詠んだものです。

【NO.6】篠原凰作

『 颱風や 守宮(やもり)は 常の壁を守り 』

季語:颱風(仲秋)

意味:颱風よ、ヤモリはいつもと同じく壁を守っていることだよ。

俳句仙人

守宮とは、ヤモリのことです。「家守」とも書きます。

台風の嵐の中でも、ヤモリは壁に這りついて動かないのです。

家守とも書くヤモリがまさしく「家の守り神だ」と作者が感じているのが、「常の壁を守り」という語から読み手に伝わってきます。

【NO.7】夏目成美

『 三日月の ひかりを散らす 野分かな 』

季語:野分(仲秋)

意味:三日月の光を散らしてしまう野分であることだ。

俳句仙人
美しく夜空に輝く三日月に、台風の暗雲とした雲と強風が襲来し、三日月の光を散らしてしまったのです。「ひかりを散らす」の語が、台風の風のもの悲しさを伝えます。

【NO.8】松尾芭蕉

『 吹き飛ばす 石は浅間の 野分かな 』

季語:野分(仲秋)

意味:激しい野分の風が、浅間山の小石までも吹き飛ばしてしまうことだ。

俳句仙人

この句は、『更科紀行』に収められた、芭蕉が45歳の時の作品です。

浅間とは、群馬県と長野県にまたがる標高2568mの円錐火山を指します。

噴火によってできた小石を吹き飛ばす程の、台風の風の強さが感じられる句です

【NO.9】石田波郷

『 颱風に 吹きつ吹かれつ 投函す 』

季語:颱風(仲秋)

意味:颱風の強風から吹かれたり吹き戻されたりされながら、手紙を投函する。

俳句仙人

「吹きつ吹かれつ」と、完了の意味を表す助動詞「つ」を続けて用いています。

それによって、台風の強風から吹かれたり吹き戻されたりしながら、ようやく手紙をポストに入れた作者の様子が、読み手にひしひしと伝わってくる効果を生んでいます。

【NO.10】野見山朱鳥

『 海女(あま)潜る 上を走れる 野分波(のわきなみ) 』

季語:野分波(仲秋)

意味:海女が海に潜るその上を走る野分波。

俳句仙人

野分波とは、野分によって起こった海の波のことをいいます。

海女とは、海に潜り貝や海藻を採集する漁を生業とする、女性のことです。

作者は、海中の「海女」と水上の「野分波」を、「上を走れる」という語を用いることで見事に対比しています。

海女にとって大変恐ろしい、台風によって荒れた海の情景が伝わってきます

 

「台風」に関するおすすめ有名俳句【後半10句】

 

【NO.11】座間游

『 包丁を研ぎ 台風を待ちゐたり 』

季語:台風(仲秋)

意味:包丁を研いで台風が来るのを待っている。

俳句仙人

「台風」と「包丁を研ぐ」の取り合わせが面白い句です。

「台風」の前に、人はいろいろと備えますが、作者は「包丁を研ぐ」ことをしているのです。嵐が来る緊張感の中で、日常的な「包丁を研ぐ」行為が印象的です

【NO.12】大野林火

『 野分きし 翳(かげ)をうしろに 夜の客 』

季語:野分(仲秋)

意味:野分が来たその影を後ろに、夜の客が訪れてくれた。

俳句仙人

この句は、体言止めを用い、「夜の客」で終わることで句にリズムをつけています。

台風の中、作者の家へと訪れてくれた「夜の客」。その後ろには、台風の雨風が激しさを増しているのが見えたのです。

【NO.13】中村吉右衛門

『 台風の去って 玄界灘の月 』

季語:台風(仲秋)

意味:台風が去ってその後には、玄界灘の月が美しく輝いている。

俳句仙人

この句は、句またがりの手法を用い、「台風の去って 玄界灘の月」と流れるようなリズムを持たせています。

「玄界灘」とは、大きな大陸棚が特徴の、九州北西部の海域のことです。

台風が過ぎ去った後の夜空に浮かぶ、玄界灘の月。暗雲立ち込めた空と打って変わり、美しい月の光が辺りを照らします。

【NO.14】相生垣瓜人

『 台風が 木犀(もくせい)の香を 払拭す 』

季語:台風(仲秋)

意味:台風が木犀の香りを払拭してしまった。

俳句仙人

木犀とは、白い小さな花が咲き淡い香りを漂わせる、ギンモクセイのことです。

この句は、擬人法を用い「台風がモクセイの香りを払拭してしまった」としました。

払拭とは、「すっかりぬぐいさる」ことです。払拭を用いることで辺りに漂っていたギンモクセイの香りが、台風によってすっかり消されてしまったことを強調する効果を生んでいます

【NO.15】蜂須賀花

『 野分なか 窓にはりつく 三姉妹 』

季語:野分(仲秋)

意味:台風の中、窓にはりついて外を見る三姉妹であることだ。

俳句仙人

「台風」の風が吹きすさぶ外は、子供達にとって怖いながらも興味の湧くものです。

三姉妹がそろって窓にはりつき、外の台風の様子を見ようとするその後ろ姿を、作者は少しほのぼのとした気持ちで眺めているように感じられます

【NO.16】森川暁水

『 颱風の いちじつ飯の 火も焚かず 』

季語:颱風(仲秋)

意味:台風が来るその一日、飯の火も焚かない。

俳句仙人

普段は毎日焚く飯を、炊かない台風の一日。台風が非日常的なものであることが伝わってきます

【NO.17】大場思草花

『 台風の報(ほう) 刻々と 産気づく 』

季語:台風(仲秋)

意味:台風の知らせが来る中、刻々と産気づく。

俳句仙人

台風が近づいてくるという中、刻々と産気づく作者。

「刻々と」の語が、迫る出産の時を、読み手に時計の秒針が聞こえてくるように伝えてきます。「台風」と「出産」どちらも非日常的なものの取り合わせによって、句に緊張感を持たせています

【NO.18】清水万里子

『 颱風あと かかるところに 子の風車 』

季語:颱風(仲秋)

意味:颱風の後、あちらこちらで子どもの風車が回っている。

俳句仙人

台風が過ぎた後は、今までとは逆から「吹き返し」の強い風が吹きます。

「台風」で外に出られなかった子供達が、台風が過ぎ去り外で風車を回して風を楽しんでいるのでしょう。風車のまわる音が、こちらにも響いてくるような句です。

【NO.19】中村草田男

『 白墨の 手を洗ひをる 野分かな 』

季語:野分(仲秋)

意味:野分の中で、白墨がついた手を洗っている。

俳句仙人

作者が、職員室から窓の外の台風を見て詠んだ句です。

校庭は、台風の風で吹き荒れているのでしょう。

「内」と「外」の世界の違いが、くっきりと表現されています。

【NO.20】高浜虚子

『 大いなる ものが過ぎ行く 野分かな 』

季語:野分(仲秋)

意味:大いなるものが過ぎてゆく野分であることだ。

俳句仙人

この句は、季語「野分」(台風)のみについて詠っています。

季語のことだけを句に詠うことを、「一物(いちぶつ)仕立て」といい、この句はまさにこの手法を用いたものです。「野分」を「大いなるもの」とする、虚子の観察眼の深さを感じる句となっています

以上、台風に関する有名俳句でした!

 

 

俳句仙人

今回は、台風に関する有名な俳句を20句ご紹介しました。
「台風」「野分」は、古来より日本人にとって脅威であるとともに、農作物の収穫にはかかせないものでした。

「台風」の句には、台風の風の音が、今にも読み手に聞こえてきそうな程描写が素晴らしいものが多くあります。様々な俳人が詠んだ、「台風」の句をぜひ鑑賞してみてください。