【五月雨の有名俳句 20選】知っておきたい!!季語を含んだおすすめ俳句を紹介!

 

今回は、「五月雨」の有名俳句20をご紹介します。

 

リス先生
「これぞ五月雨の美しさを詠った俳句!」と呼べるものを集めたので、ぜひ読んでみてね!

【補足】季語「五月雨」とは?

「五月雨(さみだれ・さつきあめ)」とは、旧暦5月(現代の6月から7月頃)に降る長雨のこと、つまり梅雨を指します。

 

「五月雨」の語源には、田の神(さがみ)が下垂(したた)るという意味で、旧暦の5月にあたるため「五月雨」とされたなどの所説があります。

 

「梅雨」は時期を含めますが、「五月雨」は梅雨に降る雨そのもののことです。

 

リス先生
それじゃあ早速、五月雨の俳句を紹介していくね!

五月雨を季語に使った有名俳句集【前半10選】

 

俳句仙人

「五月雨」の句といえば、この句を思い浮かべる方も多いでしょう。

最上川は、山形県内に流れる大河川で、日本三大急流のひとつ。他は、富士川と播磨川です。芭蕉は、実際に最上川の下りの船に乗り、急流を体験したことからこの句を詠いました。「最上川」という名詞を使い、体言止めになっています。

俳句仙人

この句を読むと、まるで絵を見ているように情景を思い浮かべることができます。

降り続いた雨により、大河となった川の流れの恐ろしさ。脇に建っている二軒の家に視線を当てることで、一層濁流の恐怖が際立つように感じられます。

【NO.3】向井去来

『 湖の 水まさりけり 五月雨 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:五月雨によって、湖の水が増し迫力を増していることだ。

俳句仙人
この句で、「湖」とは「琵琶湖」を指します。梅雨の時期に、多くの川の水が注ぎ込まれた琵琶湖は、水かさが増し迫力を増しているように感じられます。

【NO.4】大島蓼太

『 五月雨や ある夜ひそかに 松の月 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:五月雨が降り続いているが、ある夜ふと夜空を見上げてみると、松の木に月がひっそりとかかっているのが見えた。

俳句仙人
梅雨の合間、夜空に月が「ひそかに」松にかかっていると詠っています。擬人法のように用いることで、月の印象を強めています。

【NO.5】夏目成美

『 五月雨や 三日みつめし 黒茶碗 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:五月雨の中、三日の間黒茶碗を見つめたことだ。

俳句仙人
降りしきる梅雨の雨の中、作者は何を思い三日間黒茶碗を見つめたのか、読み手に想像させる句です。

【NO.6】園女

『 五月雨に 胡桃かたまる 山路かな 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:五月雨の中、胡桃の実が集まって実っている山の路でのことだ。

俳句仙人
胡桃とは、「オニグルミ」のことです。「オニグルミ」は実が集まっています。まだ青いオニグルミの実が、五月雨の中肩を寄せ合うように集まって実っています。山の小道でその美しさに、作者がはっとしている情景です。

【NO.7】小林一茶

『 五月雨や 胸につかへる 秩父山 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:五月雨が、秩父山を胸に迫るように感じさせられる。

俳句仙人
江戸を離れて帰省することになった一茶。旅の途中、秩父連山を遠くに見て、故郷の信州まで近づいてきたことを感慨深く思い、詠んだ句です。

【NO.8】村上鬼城

『 五月雨や 起き上がりたる 根無草 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:根がちぎれ枯れかけていた草が、梅雨の雨を浴びて再び根を出して起き上がってきたことだ。

俳句仙人
引き抜かれ根がちぎれた雑草が、五月雨を浴びる中で徐々に新しく根を伸ばし、蘇ります。自然の生命力に感銘を受けている、作者の様子が思い浮かぶ句です。

【NO.9】正岡子規

『 五月雨や 上野の山も 見飽きたり 』

季語:五月雨(初夏)

現代語訳:何日も続く五月雨の中で、上野の山も見飽きてしまった。

俳句仙人
正岡子規は、この句の1年後35歳で亡くなっています。病床の子規の、「上野の山」がもう見られなくなってしまうことへの諦めと、悲しみが感じられます。

【NO.10】中村汀女

『 さみだれや 船がおくるる 電話など 』

季語:さみだれ(初夏)

現代語訳:五月雨が降る中、入港が送れる知らせの電話がかかって来るなどしたことだ。

俳句仙人
当時、汀女の夫は横浜税関長でした。船が見える横浜の、近代的な風景を汀女は抒情的に詠っています。

 

五月雨を季語に使った有名俳句集【後半10選】

 

【NO.1】夏目漱石

『 五月雨も 中休みかよ 今日は 』

季語:五月雨(初夏)

意味:五月雨も一休みしているのか、今日は。

俳句仙人
五月雨が一時止み、晴れ間が覗いた日のことを詠っています。助詞「かよ」を使うことで、疑問、反語の意味を強く表しています。

【NO.2】鍵和田ゆう子

『 さみだれは つぶやきつづけ 焼き豆腐 』

季語:さみだれ(初夏)

意味:五月雨は、焼き豆腐のようにつぶやき続けよ。

俳句仙人
ぽつぽつと降り続ける梅雨の雨。その音と焼き豆腐を重ねる様が面白い句です。

【NO.3】細谷不句

『 五月雨に 帆船を慕ふ 燕かな 』

季語:五月雨(初夏)

意味:五月雨の中、帆船を慕ってついていく燕が飛んでいることだ。

俳句仙人
「帆船」は「ほぶね」、帆をひろげ風の力で走る船のことです。五月雨の中、燕が雨宿りのために帆船のあとを追って飛んでいる情景です。

【NO.4】卓池

『 五月雨や 猫かりに来る 船の者 』

季語:五月雨(初夏)

意味:五月雨の中、船からの使いが猫を借りに来た。

俳句仙人
この句の前に、「新潟夜泊」とあることから、ここでいう「猫」とは「遊女」のことを指すといわれています。

【NO.5】望一

『 五月雨の 晴れて犬なく 日和かな 』

季語:五月雨(初夏)

意味:降り続いていた五月雨がやっと晴れた。その晴れ間に向かって犬が鳴いていることだ。

俳句仙人
五月雨が上がって、爽やかな晴れ間を犬が吠えて騒いでいる様子です。

【NO.6】与謝蕪村

『 五月雨や 滄海を衝く 濁水 』

季語:五月雨(初夏)

意味:五月雨が長く降り続き、どろどろの濁り水となった川が、この青い海に注ぎ込んでいくことだ。

俳句仙人
「滄海」は、「あおうみ」と読みます。海の青さと、泥に濁った川の水の対比が色鮮やかです。また、「衝く(つく)」という動作の鋭さの表現は、与謝蕪村ならではのものです。

【NO.7】蘭更

『 さみだれや 鼠の廻る 古屑籠 』

季語:さみだれ(初夏)

意味:五月雨が長く続いている中、鼠が古いつづらの中を走り回っている。なんとも憂鬱だ。

俳句仙人
「古屑籠」は、「ふるつづら」と読みます。つづらは、葛藤で編んだ、蓋をする物入れのことです。そこに穴が開いていたのか、鼠が出入りしていたのでしょう。五月雨と、鼠が走り回っているのにうんざりしている作者の様子が思い描かれます。

【NO.8】松尾芭蕉

『 五月雨や 桶の輪切るる 夜の声 』

季語:五月雨(初夏)

意味:五月雨が降り続く中、桶の竹の輪が耐え切れずはじけ切れてしまった。そしてその後は夜の雨の音のみである。

俳句仙人
「桶(おけ)」には、木の胴体部分に竹製の「たが」を巻き付けてあります。雨の水分により、木の胴体部分が膨らみ、その力で「たが」がはじけ切れてしまったのです。「ぴん」と弾けた音がした後、再び静かな夜の雨音が残り静寂さが強まっています。

【NO.9】阿波野青畝

『 さみだれの あまだればかり 浮御堂 』

季語:さみだれ(初夏)

意味:五月雨の雨垂れの音ばかりがする、浮御堂でのことだ。

俳句仙人

「浮御堂(うきみどう)」とは、滋賀県大津市、琵琶湖の上に建てられた仏堂のことです。湖の面に浮かんでいるように見えることから、浮御堂とよばれます。

浮御堂から雨垂れが湖に落ちていきます。その雨垂れの音に、浮御堂にいる作者が浸っている情景です。

【NO.10】晋子

『 五月雨や 傘に付たる 小人形 』

季語:五月雨(初夏)

意味:五月雨が降り続くので、五月人形の兜を雨傘に替えてあることだ。

俳句仙人
「小人形」とは、端午の節句で飾るものです。昔、男子がいる家の外には、端午の節句で武者人形や、のぼりを飾っていました。五月雨で濡れないように、小人形の兜を外して雨傘に替えている風情を詠っています。

以上、五月雨に関する有名俳句集でした!

俳句仙人

「五月雨」は日本の梅雨を表現できる・風情ある言葉です。

作者によって、「五月雨」の様々なとらえ方、表現方法があります。「五月雨」の言葉で、読み手は梅雨の世界を思い描くことができるのです。

数々の俳人が詠った、「五月雨」の美しさ。日本独特の感性の素晴らしさを、ぜひ味わってみてください。