
星は春夏秋冬、どの季節であっても俳句に詠まれる季語です。
俳句:
真夏の晴れた夜空には 狼がいっぱい走っていたなと思い出しました。 若い時にはへんな妄想をもつものです。
夏闇も狼走る星も好き
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— Gatten da Vinci (@gattendavinci) June 10, 2013
今回は、星にまつわる有名俳句を20句ご紹介します。
星にまつわる有名俳句集【春編 5選】
【NO.1】柴田白葉女
『 春の星 ひとつ潤めば みなうるむ 』
季語:春の星(春)
現代語訳:春の星が一つ潤みだせば、周りのどの星も潤みはじめる。
冬の星の鋭い輝きから一転、大気が緩むように春の星々もまたゆるゆると潤むように瞬いていく様子を表しています。
【NO.2】夏目漱石
『 春の星を 落して夜半の かざりかな 』
季語:春の星(春)
現代語訳:春の星が落ちてきて飾ったかのような髪飾りだ。
この句は『草枕』の一節、月と女の題材で次々と連想していくシーンに登場します。この前後で女性について詠んでいるため、女性の髪飾りを連想しています。
【NO.3】稲畑汀子
『 駅を出て 街の灯抜けて 星朧 』
季語:星朧(春)
現代語訳:駅を出て、街頭のある道を抜けると朧のような星が見える。
賑やかな駅前から街頭の灯る市街地を抜け、暗くなるにつれて朧のような星空が出迎える光景が見えるようです。
【NO.4】前田普羅
『 乗鞍の かなた春星 かぎりなし 』
季語:春星(春)
現代語訳:乗鞍岳の彼方に春の星が限りなく続いている。
【NO.5】楠本憲吉
『 うるむ春星 亡母に手紙 書きたくて 』
季語:春星(春)
現代語訳:春の星が潤んでいる。亡き母に手紙を書きたいのだ。
星にまつわる有名俳句集【夏編 5選】
【NO.1】若木一朗
『 梅雨の星 闇へピンセットで 飾る 』
季語:梅雨の星(夏)
現代語訳:梅雨の晴れ間に見える星を、夜の闇へピンセットで摘んで飾ろう。
【NO.2】岸風三楼
『 星涼し 遊歩甲板の 籐椅子に 』
季語:星涼し(夏)
現代語訳:星が出ている夜は涼しい。船のデッキの藤椅子に座っている。
【NO.3】正岡子規
『 草枕の 我にこぼれよ 夏の星 』
季語:夏の星(夏)
現代語訳:草の上に寝転んで夜空を見上げると、私の方にこぼれてきそうな夏の星だ。
【NO.4】星野立子
『 アラビヤの 空を我ゆく 夏の星 』
季語:夏の星(夏)
現代語訳:アラビアの空を私は行く、夏の星の間を。
【NO.5】有働亨
『 ふるさとや 豊年星の 旱星 』
季語:旱星(夏)
現代語訳:故郷は豊作だろうか、豊年星である旱星が見える。
星にまつわる有名俳句集【秋編 5選】
【NO.1】正岡子規
『 暁の しづかに星の 別れかな 』
季語:星(七夕の意/秋)
意味:明け方に、織姫と彦星が静かに別れを告げている。
ここで言う星とは七夕のことで、明け方に白む空に静かに沈んでいく2つの星を表しています。
【NO.2】室生幸太郎
『 梟時計 鳴くこと忘れ 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:フクロウ時計すら鳴くことを忘れるほどの満天の星夜よ。
【NO.3】高浜虚子
『 われの星 燃えてをるなり 星月夜 』
季語:星月夜(秋)
意味:私の星はあの満天の星空の中に燃えているのだ。
【NO.4】水原秋櫻子
『 流星の きらめき落つる 地獄谷 』
季語:流星(秋)
意味:流れ星がきらめきながら地獄谷に落ちていく。
【NO.5】飯田蛇笏
『 秋の星 遠くしづみぬ 桑畑 』
季語:秋の星(秋)
意味:秋の星は桑畑の遠く彼方に沈んでいった。
星にまつわる有名俳句集【冬編 5選】
【NO.1】塩野谷仁
『 やくそくの 数だけ落ちる 冬の星 』
季語:冬の星(冬)
意味:約束や願い事の数だけ、冬の流れ星が落ちている。
【NO.2】中村草田男
『 寒星や 神の算盤 ただひそか 』
季語:寒星(冬)
意味:神様の算盤の玉のような冬の星が、密やかにただそこにある。
【NO.3】山口誓子
『 手を洗ひ 寒星の座に 向かいけり 』
季語:寒星(冬)
意味:手を洗いに外に出ると、冬の星座に正面から向かうことだなぁ。
当時のトイレは外にあり、ふと見上げた満天の星空と相対した感動を詠んでいます。
【NO.4】水原秋櫻子
『 枯木星 またたきいでし 又ひとつ 』
季語:枯木星(冬)
意味:枯れ木越しに星がまた一つ瞬いて出てきたことだ。
枯木星とは葉が落ちた木の枝から見る星のことです。近くの枯れ木と遠い星空の見事な対比の一句になっています。
【NO.5】正木浩一
『 傾きて オリオンは夜の 凧(いかのぼり) 』
季語:オリオン(冬)
意味:傾いたオリオン座は、夜にあがる凧のようだ。
直接星という単語はありませんが、オリオンも冬の季語です。傾いたオリオン座が凧揚げのように夜空に張り付いている光景が目に浮かびます。
以上、春夏秋冬・星にまつわる有名俳句でした!
今回は星の俳句を20句、珍しい季語を使用したものを含めて紹介してきました。
季節ごとに表している情景が変わっていくのが星の俳句の魅力です。
夜に見上げた星をどのように表現するのか考えながら、1句詠んでみてはいかがでしょうか。