【星の有名俳句 30選】春夏秋冬の季語!!夜空に輝く綺麗な星のオススメ俳句!

 

「星」は春夏秋冬どの季節であっても俳句の題材としてよく詠まれます。

 

 

今回は、過去に有名な俳人が詠んだ「星」にまつわる有名俳句(名句)を30句紹介していきます。

 

俳句仙人

是非ご一緒に「星の美しさ」を詠った句を味わってみましょう。

星にまつわる有名俳句集【春編 7選】

 

【NO.1】柴田白葉女

『 春の星 ひとつ潤めば みなうるむ 』

季語:春の星(春)

現代語訳:春の星が一つ潤みだせば、周りのどの星も潤みはじめる。

俳句仙人

冬の星の鋭い輝きから一転、大気が緩むように春の星々もまたゆるゆると潤むように瞬いていく様子を表しています。

【NO.2】夏目漱石

『 春の星を 落して夜半の かざりかな 』

季語:春の星(春)

現代語訳:春の星が落ちてきて飾ったかのような髪飾りだ。

俳句仙人

この句は『草枕』の一節、月と女の題材で次々と連想していくシーンに登場します。この前後で女性について詠んでいるため、女性の髪飾りを連想しています。

【NO.3】稲畑汀子

『 駅を出て 街の灯抜けて 星朧 』

季語:星朧(春)

現代語訳:駅を出て、街頭のある道を抜けると朧のような星が見える。

俳句仙人

賑やかな駅前から街頭の灯る市街地を抜け、暗くなるにつれて朧のような星空が出迎える光景が見えるようです。

【NO.4】前田普羅

『 乗鞍の かなた春星 かぎりなし 』

季語:春星(春)

現代語訳:乗鞍岳の彼方に春の星が限りなく続いている。

俳句仙人
乗鞍岳は北アルプスにある3000m級の名山です。ただ星空が広がるだけでなく、山を詠むことで途方もないスケールが感じられます。

【NO.5】楠本憲吉

『 うるむ春星 亡母に手紙 書きたくて 』

季語:春星(春)

現代語訳:春の星が潤んでいる。亡き母に手紙を書きたいのだ。

俳句仙人
春の星は潤むように見えることと、自らの目が潤んでいることを掛けています。

【NO.6】中村汀女

『 旅さびし 汐満つ音と 春の星 』

季語:春の星(春)

現代語訳:どこか寂しく感じる旅だ。潮が満ちていく音を聞き、春の星を眺めていると。

俳句仙人
潮騒の音を聞きながら春の星を眺めている、自然豊かな情景が浮かんでくる句です。大自然の中に取り残されてしまったような感覚が作者に寂しさを感じさせているのでしょう。

【NO.7】富安風生

『 綺羅星の 中にわが星 春の星 』

季語:春の星(春)

現代語訳:あの夜空に輝く星の中に私の星があるに違いない、春の星だ。

俳句仙人
満天の星空になる夏から秋にかけての星ではなく、強い輝きを放つ冬の星でもなく、うるむように瞬く春の星が自分の星だと語っています。優しげな星の輝きこそ自分自身だと考えていたのでしょうか。

星にまつわる有名俳句集【夏編 7選】

【NO.1】若木一朗

『 梅雨の星 闇へピンセットで 飾る 』

季語:梅雨の星(夏)

現代語訳:梅雨の晴れ間に見える星を、夜の闇へピンセットで摘んで飾ろう。

俳句仙人
梅雨の星とは、梅雨の雲の隙間から見える星です。わずかな光の点と曇り空の闇の対比をピンセットで表しています。

【NO.2】岸風三楼

『 星涼し 遊歩甲板の 籐椅子に 』

季語:星涼し(夏)

現代語訳:星が出ている夜は涼しい。船のデッキの藤椅子に座っている。

俳句仙人
海原を行くフェリーの甲板の椅子に寝転んで星空を眺めている様子が伝わってきます。

【NO.3】正岡子規

『 草枕の 我にこぼれよ 夏の星 』

季語:夏の星(夏)

現代語訳:草の上に寝転んで夜空を見上げると、私の方にこぼれてきそうな夏の星だ。

俳句仙人
草枕とは草で作った枕が転じ、旅の意味もあります。屋外で寝転んで満天の空を見上げた情景です。

【NO.4】星野立子

『 アラビヤの 空を我ゆく 夏の星 』

季語:夏の星(夏)

現代語訳:アラビアの空を私は行く、夏の星の間を。

俳句仙人
星野立子氏は高浜虚子の次女で、戦後は政府使節として北米やブラジル、ヨーロッパを回りました。アラビア半島の空を旅した時の句でしょうか。

【NO.5】有働亨

『 ふるさとや 豊年星の 旱星(ひでりぼし)

季語:旱星(夏)

現代語訳:故郷は豊作だろうか、豊年星である旱星が見える。

俳句仙人
豊作の年は荷の重さで顔が赤くなります。そのため、火星やアンタレスのような赤い星を豊年星と呼ぶことから詠まれた一句です。

 

【NO.6】日野草城

『 夏の星 小さきが一つ 流れけり 』

季語:夏の星(夏)

現代語訳:夏の星が出ている。小さい星が1つ流れていった。

俳句仙人
夏はペルセウス座流星群など流れ星が見えやすい季節です。一際強く輝く星ではなく、流れていく小さな星を偶然見つけたときのことを詠んでいます。

 

【NO.7】三橋鷹女

『 夏の星 我が齢までは 数へられる 』

季語:夏の星(夏)

現代語訳:満天の夏の星空だ。私の年齢の数までなら数えられる。

俳句仙人
天の川などが見える夏の星空は、どれだけ数えてもキリがないほどの星が広がっています。それでも自分の年齢までならなんとか数えられるというユーモラスな作者の一面を詠んだ句です。

 

星にまつわる有名俳句集【秋編 8選】

 

【NO.1】正岡子規

『 暁の しづかに星の 別れかな 』

季語:星(七夕の意/秋)

意味:明け方に、織姫と彦星が静かに別れを告げている。

俳句仙人

ここで言う星とは七夕のことで、明け方に白む空に静かに沈んでいく2つの星を表しています。

【NO.2】室生幸太郎

『 梟時計 鳴くこと忘れ 星月夜 』

季語:星月夜(秋)

意味:フクロウ時計すら鳴くことを忘れるほどの満天の星夜よ。

俳句仙人

星月夜とは月が出ていると錯覚させるほど明るい、月のない星空のことを指します。時計すら止まる錯覚を覚えるほど見惚れている一句です。

【NO.3】高浜虚子

『 われの星 燃えてをるなり 星月夜 』

季語:星月夜(秋)

意味:私の星はあの満天の星空の中に燃えているのだ。

俳句仙人
夜空に一際明るく輝く星を自分であると断定したとも、自分こそ満天の星空の中で1番輝いているという自信に満ち溢れた句とも言われています。

【NO.4】水原秋櫻子

『 流星の きらめき落つる 地獄谷 』

季語:流星(秋)

意味:流れ星がきらめきながら地獄谷に落ちていく。

俳句仙人
地獄谷とつく地名は各地にありますが、共通するのは火山地形です。流れ星がそんな地形に輝きながら落ちていく様を詠んでいます。

【NO.5】飯田蛇笏

『 秋の星 遠くしづみぬ 桑畑 』

季語:秋の星(秋)

意味:秋の星は桑畑の遠く彼方に沈んでいった。

俳句仙人
桑は旧暦の秋が刈り入れの時期です。夜に黒々と茂る桑畑に星がゆっくりと沈んでいく光景が見てとれます。

【NO.6】稲畑汀子

『 さそり座を 憶えし吾子に 星流れ 』

季語:星流れ(秋)

現代語訳:さそり座を覚えたわが子の前で星が流れていった。

俳句仙人
「あれがさそり座」と指をさしている子供の前で星が流れていった様子を詠んだ句です。覚えたての星座を見ていた子供にとって、流れ星は嬉しいサプライズだったことでしょう。

【NO.7】西島麦南

『 夕ごころ はなやぎ迎ふ 二星かな 』

季語:二星(秋)

現代語訳:夕方だなぁ。早くも天の川は凪いで織姫と彦星を迎えていることだ。

俳句仙人
「はやなぎ」とは「早く凪いでいる」という意味で、日が沈みかけている時には既に織姫と彦星の逢瀬の準備が整っているという表現です。晴れた日で2つの星がよく見える日だったのでしょう。

【NO.8】芥川龍之介

『 風落ちて 曇り立ちけり 星月夜 』

季語:星月夜(秋)

現代語訳:風が落ちるように吹き、雲が湧き上がるように立ってきた。せっかくの星月夜だったのに。

俳句仙人
「落ちて」「立ちけり」と風と雲の描写を対比させることで、天候が悪化していく様子を表現しています。月明かりのない星月夜から、にわかに星が見えなくなり暗くなっていく夜空が想像できるようです。

星にまつわる有名俳句集【冬編 8選】

【NO.1】塩野谷仁

『 やくそくの 数だけ落ちる 冬の星 』

季語:冬の星(冬)

意味:約束や願い事の数だけ、冬の流れ星が落ちている。

俳句仙人
冬の流星群を表した句です。流れ星に願い事をする人の数だけ星が降ってくるという、皆が流星群を眺めている光景が浮かびます。

【NO.2】中村草田男

『 寒星や 神の算盤 ただひそか 』

季語:寒星(冬)

意味:神様の算盤の玉のような冬の星が、密やかにただそこにある。

俳句仙人
満天の星を算盤玉に例え、人間が算盤を使うように、目に見えない神々が星の調和を保つ様を連想したと作者本人の解説にあります。

【NO.3】山口誓子

『 手を洗ひ 寒星の座に 向かいけり 』

季語:寒星(冬)

意味:手を洗いに外に出ると、冬の星座に正面から向かうことだなぁ。

俳句仙人

当時のトイレは外にあり、ふと見上げた満天の星空と相対した感動を詠んでいます。

【NO.4】水原秋櫻子

『 枯木星 またたきいでし 又ひとつ 』

季語:枯木星(冬)

意味:枯れ木越しに星がまた一つ瞬いて出てきたことだ。

俳句仙人

枯木星とは葉が落ちた木の枝から見る星のことです。近くの枯れ木と遠い星空の見事な対比の一句になっています。

【NO.5】正木浩一

『 傾きて オリオンは夜の 凧(いかのぼり) 』

季語:オリオン(冬)

意味:傾いたオリオン座は、夜にあがる凧のようだ。

俳句仙人

直接星という単語はありませんが、オリオンも冬の季語です。傾いたオリオン座が凧揚げのように夜空に張り付いている光景が目に浮かびます。

【NO.6】加藤楸邨

『 生きてあれ 冬の北斗の 柄の下に 』

季語:冬の北斗(冬)

現代語訳:どうか生きていてくれ。あの冬の北斗七星の柄が指し示す下で。

俳句仙人

この句は作者が出征していった教え子たちを思って詠んだ句です。あの北斗七星の柄の辺りにいるだろう教え子たちが、どうか生きていて欲しいと願う心が込められています。

【NO.7】石原八束

『 狼が 空に来てゐる 冬銀河 』

季語:冬銀河(冬)

現代語訳:空に輝く狼が来ているような冬の銀河だ。

俳句仙人

冬の夜空で狼と言えば、天狼星とも呼ばれるシリウスが思い浮かびます。強い輝きを放つシリウスが昇って来たことを、狼が空に来たと表現したのかもしれません。

【NO.8】篠原梵

『 吹き晴れて くらき大地と 寒の星 』

季語:寒の星(冬)

現代語訳:風が吹いて空が晴れて、暗い大地と冬の星空が見える。

俳句仙人

雪が降っている曇り空などは夜でもかなり明るく見えますが、よく晴れた冬の夜は真っ暗になります。そんな大地と対照的に、空気が澄んでいることでよく見える星空が輝いているという絵画のような一句です。

以上、季節別(春夏秋冬)の星にまつわる有名俳句30選でした!

 

俳句仙人

今回は星の俳句を30句、珍しい季語を使用したものを含めて紹介してきました。
季節ごとに表している情景が変わっていくのが星の俳句の魅力です。
夜に見上げた星をどのように表現するのか考えながら、一句詠んでみてはいかがでしょうか。

 

 

こちらの記事もおすすめ!