春は草木が芽吹き、桜が咲き、暖かく穏やかで美しい季節です。
五・七・五の十七音で情景や心情を詠む俳句には、春の情景を詠んだ俳句が数多く存在します。
山路来て何やらゆかしすみれ草(松尾芭蕉) #俳句 pic.twitter.com/wVbCEQmKhl
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赤い椿 白い椿と 落ちにけり(河東碧梧桐) #俳句 #春 pic.twitter.com/ci0I2tqdeQ
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今回は、「春の季語」を含むおすすめ有名俳句を40句紹介していきます。
知ったおきたい!春の季語【例一覧】
俳句には、季節を表す「季語」を入れて詠むという決まりがあります。
春の季語は、旧暦の1月から3月、現在の暦で2月から4月頃のものを指します。
例えば、春の季語には次のようなものが挙げられます。
【春の季語】
- 時候に関する春の季語・・・暖か、うららか、のどか、啓蟄、睦月、初春、寒明、二月、旧正月、立春、早春、春浅し、寒戻り、春寒、春遅し、春めく、如月、雨水、三月、弥生、春分、彼岸、晩春、四月、春暁、春は曙、日永、春の宵、朧月夜、木の芽時、春紅葉、花冷、行く春、夏近し、夏隣
- 天文に関する春の季語・・・春の日、春の雲、春の空、春風、風光る、春の月、朧月、春の星、東風、貝寄風、春一番、春疾風、春嵐、黄砂、春の雪、春雨、春時雨、淡雪、牡丹雪、名残りの雪、春の霙、春の霰、春の霜、初雷、春雷、虫出しの雷、霞、陽炎、春陰、花曇、鳥曇、春夕焼、蜃気楼
- 地理に関する春の季語・・・春の山、山笑う、春の野、焼野、春の水、水温む、春の川、春の海、春の波、春潮、干潟、春田、苗代、春泥、春の土、雪解、雪解け川、残雪、氷解く、雪代、雪崩、薄氷、流氷
- 行事に関する春の季語・・・建国記念の日、憲法記念日、初午、針供養、お水取、バレンタインデー、桃の節句、雛祭、男雛、女雛、官女、五人囃子、雛納め、雛流し、菱餅、白酒、雛あられ、曲水、納税期、どんたく、春場所、開帳、春祭、謝肉祭、復活祭、みどりの日、ゴールデンウィーク
- 人事に関する春の季語・・・梅見、野焼、野火、山焼、畑焼、牧開く、杜氏帰る、雪囲解く、垣手入、北窓開く、屋根替、春の炉、春火鉢、炬燵とる、春障子、磯開、海女、壺焼、磯遊、潮干狩、目刺、干鰈、田打、田起し、種蒔、土筆摘む、茶摘、春の風邪、花粉症、遠足、受験、花見、春眠
- 動物に関する春の季語・・・春の鹿、猫の恋、猫の子、春の鳥、鶯、雲雀、燕、燕の巣、鳥帰る、帰雁、さえずり、巣箱、雀の子、頬白、桜鯛、魚島、目張、白魚、鱒、飛魚、蛍烏賊、飯蛸、公魚、若鮎、蛤、栄螺、浅蜊、蜆、烏貝、蜷、赤貝、馬刀、桜貝、田螺、寄居虫、蛙、蝶、蜂、蜂の巣、蚕
- 植物に関する春の季語・・・梅、紅梅、椿、初桜、桜、彼岸桜、枝垂桜、山桜、八重桜、夜桜、花吹雪、残花、花筏、沈丁花、ミモザ、チューリップ、菫、蓬、土筆、藤、藤棚、木蓮、雪柳、躑躅、山吹、桃の花、梨の花、林檎の花、杏の花、オレンジ、木の芽、芽吹く、緑立つ、若草、花粉
春のおすすめ有名俳句【前編 20句】
【NO.1】松尾芭蕉
『 古池や 蛙飛び込む 水の音 』
季語:蛙(春)
意味:蛙が飛び込む水の音が聞こえる。とても静かだ。古池の静かな様子が心に浮かぶよ。
【NO.2】松尾芭蕉
『 山路来て 何やらゆかし すみれ草 』
季語:すみれ草(春)
意味:寂しい山道に来て、何となく心惹かれるすみれ草が咲いているのを見つけたよ。
【NO.3】松尾芭蕉
『 鶯の 笠落としたる 椿かな 』
季語:鶯(春)
意味:庭先の鶯がまるで花笠を落としたかのように、椿の花がぽとりと落ちたことよ。
【NO.4】松尾芭蕉
『 鶯や 柳のうしろ 藪の前 』
季語:鶯(春)
意味:鶯がいるなあ。今は柳の木のうしろ、今度は藪の前に飛び移り、鳴き交わしている。
鶯は春を告げる鳥と言われており、低地や藪を好む習性がある鳥です。色々な所に飛び移る鶯の可愛らしい様子や、春の穏やかな情景が詠まれた句です。
【NO.5】松尾芭蕉
『 梅が香に のつと日の出る 山路哉 』
季語:梅(春)
意味:明け方に歩いていると、梅の香りに誘われて、朝日がのそりと昇る山道であったよ。
【NO.6】松尾芭蕉
『 行く春や 鳥啼き魚の 目は泪 』
季語:行く春(春)
意味:過ぎ行く春を惜しむように、旅立ちの別れを惜しんでいると、悲しげに鳥が鳴き、魚の目には涙が浮かんでいることだ。
【NO.7】与謝蕪村
『 菜の花や 月は東に 日は西に 』
季語:菜の花(春)
意味:菜の花が一面に咲いている中、月が東から昇り、太陽は西に沈みかけている。
【NO.8】与謝蕪村
『 春の海 終日のたり のたりかな 』
季語:春の海(春)
意味:春の海が一日中のたりのたりと波を立てていることよ。
【NO.9】与謝蕪村
『 行く春や 重たき琵琶の 抱き心 』
季語:行く春(春)
意味:過ぎ行く春を惜しみ、琵琶でも弾こうと抱えたが、気だるい重さを感じるばかりだ。
【NO.10】小林一茶
『 雪とけて 村いっぱいの 子どもかな 』
季語:雪とけ(春)
意味:雪が解けて、子供たちが村いっぱいに外に出て遊んでいることだ。
【NO.11】小林一茶
『 雀の子 そこのけそこのけ 御馬が通る 』
季語:雀の子(春)
意味:雀の子よ、そこをどいたどいた、御馬が通るぞ。
【NO.12】小林一茶
『 やせ蛙 負けるな一茶 これにあり 』
季語:やせがへる(かえる)(春)
意味:痩せた蛙よ、負けるな、一茶がここについているぞ。
【NO.13】小林一茶
『 我と来て 遊べや親の ない雀 』
季語:親のない雀(=雀の子)(春)
意味:親のいない寂しい雀の子よ。母を亡くした私と来て、一緒に遊ばないか。
【NO.14】宝井其角
『 鶯の 身を逆に はつね哉 』
季語:鶯(春)
意味:鶯が身を逆さまにして、初音を聞かせているよ。
【NO.15】宝井其角
『 すごすごと 摘やつまずや 土筆 』
季語:土筆(春)
意味:誰かが土筆を、ただただ夢中になって黙々と摘んでいるよ。
【NO.16】松尾芭蕉
『 しばらくは 花の上なる 月夜かな 』
季語:花(春)
意味:しばらくは桜の花の上に月がある夜になるのだなぁ。
【NO.17】松尾芭蕉
『 草の戸も 住み替はる代ぞ 雛の家 』
季語:雛(春)
意味:この草でできた庵も住人が変わる時が来たのだ。雛人形が似合う女の子のいる家に。
【NO.18】小林一茶
『 春風や 牛に引かれて 善光寺 』
季語:春風(春)
意味:春風が吹いているなぁ。牛に引かれるようにして善光寺にお参りに行こう。
【NO.19】小林一茶
『 折々は 腰たたきつつ つむ茶かな 』
季語:つむ茶(春)
意味:折を見て腰を叩きながらつむお茶であることだ。
【NO.20】小林一茶
『 おらが世や そこらの草も 餅になる 』
季語:草餅(春)
意味:私にとって素晴らしい世の中だ。そこらに生えている草も草餅になる。
春のおすすめ有名俳句【後編 20句】
【NO.1】宝井其角
『 花に酒 僧とも詫ん 塩ざかな 』
季語:花(春)
意味:花見には酒だ。僧と飲むのだから、つまみは塩でいこうじゃないか。
【NO.2】向井去来
『 手をはなつ 中に落ちけり 朧月 』
季語:朧月(春)
意味:別れ際に握り合った手を離せずにいると、手の中に落ちるように月が消えたことだ。
【NO.3】向井去来
『 何事ぞ 花みる人の 長刀 』
季語:花みる(春)
意味:何事だろうか。花見に長刀をさしてやってくるとは、何と無粋なことだ。
【NO.4】向井去来
『 動くとも 見えで畑うつ 男かな 』
季語:畑うつ(春)
意味:動くように見えないのだが、畑を耕している男がいるようだよ。
【NO.5】正岡子規
『 島々に 灯をともしけり 春の海 』
季語: 春の海(春)
意味:島々で灯火がともされ、それが波にゆれる様が見える。美しい春の海であるよ。
【NO.6】正岡子規
『 春や昔 十五万石の 城下哉 』
季語:春(春)
意味:江戸幕府の頃は十五万石の栄えた城下だった、あの春も今は昔のことよ。
【NO.7】正岡子規
『 雪残る 頂ひとつ 国境 』
季語:雪残る(春)
意味:すっかり春になったと思っていたが、国境の山の一つの頂に雪が残っているよ。
【NO.8】河東碧梧桐
『 赤い椿 白い椿と 落ちにけり 』
季語:椿(春)
意味:赤い椿と白い椿が樹の下に落ちて、とても色鮮やかな様子であるよ。
【NO.9】河東碧梧桐
『 ひたひたと 春の潮打つ 鳥居かな 』
季語:春の潮(春)
意味:ひたひたと、春の潮が打ち寄せる鳥居であるなあ。
【NO.10】高浜虚子
『 鎌倉を 驚かしたる 余寒あり 』
季語:余寒(春)
意味:鎌倉や、鎌倉に住む人々を驚かせる、突然の寒波があった。
鎌倉は比較的温暖な気候の土地でした。そこに突然の寒波が訪れた時の鎌倉の様子
と、作者自身の驚きが表現されています。突然の寒波は、武士を驚かせる敵襲のようでした。
【NO.11】高浜虚子
『 春風や 闘志いだきて 丘に立つ 』
季語:春風(春)
意味:春風が吹いているよ。私は、闘志を抱いてこの丘に立っている。
【NO.12】飯田蛇笏
『 春めきて ものの果てなる 空の色 』
季語:春めく(春)
意味:草木が枯れ果てた冬景色の様子であったが、春らしくなってきた空の色だよ。
【NO.13】水原秋桜子
『 来しかたや 馬酔木咲く野の 日のひかり 』
季語:馬酔木咲く(春)
意味:歩いて来た方を振り返ると、馬酔木の花が春の日射しを浴びて美しい野山であるよ。
馬酔木が咲く春の美しい情景が詠まれています。「来し方」は、「自分の過去」という解釈もできます。過去の自分を肯定する、前向きな心情が感じられます。
【NO.14】山口誓子
『 流氷や 宗谷の門波 荒れやまず 』
季語:流氷(春)
意味:流氷が押し流されているよ。流氷を押し流す宋谷海峡に立つ荒波は、止む気配がない。
「宗谷」とは樺太と北海道との間の海峡です。誓子は少年時代を樺太で過ごし、16歳で故郷の京都へ戻りました。この句は、帰京の際に船で見た情景を回想して詠んだ句です。
【NO.15】阿波野青畝
『 山又山 山桜又 山桜 』
季語:山桜(春)
意味:山脈がどこまでも続いており、山桜もあちこちに咲いていることだ。
【NO.16】正岡子規
『 毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは 』
季語:彼岸(春)
意味:毎年のことだよ、彼岸の入りに寒いのは。
【NO.17】夏目漱石
『 菫ほどな 小さき人に 生まれたし 』
季語:菫(春)
意味:スミレの花のような小さい人に生まれたいものだ。
【NO.18】中村汀女
『 外にも出よ 触るるばかりに 春の月 』
季語:春の月(春)
意味:外に出てご覧なさい。触れるように大きな春の月が出ていますよ。
【NO.19】石田波郷
『 バスを待ち 大路の春を うたがはず 』
季語:春(春)
意味:バスを待っていると、この東京神田の大路に春が来たのだと疑わないほどだ。
【NO.20】坪内稔典
『 たんぽぽの ぽぽのあたりが 火事ですよ 』
季語:たんぽぽ(春)
意味:たんぽぽのぽぽのあたりが火事になっているように感じられますよ。
以上、「春の季語」を含む有名俳句40選でした!
さいごに
今回は、「春の季語」を含むおすすめ有名俳句を40句紹介してきました。
同じ春の俳句でも情景の表し方が違っていたり、作者の心情が詠まれていたり、表現の方法も表す内容も様々でした。
みなさんはどの俳句に魅力を感じましたか?今回ご紹介した俳句を参考に、ぜひ春の俳句作りを楽しんでみてくださいね。