【梅に関する有名俳句 20選】日本の春の風物詩!!季語を含んだ俳人名句を紹介

 

日本では、花といえば「桜」をイメージされる方が多いと思います。

 

しかし、平安時代初め頃までは、花は「梅」を主に指していました。

 

梅はまだ寒さが残る中、他の花に先がけて咲く花「春告草(はるつげくさ)」です。梅の花の色は、主に白、紅、淡紅があり、梅の種類は300以上あるとされています。

 

梅は、その香りと美しい花の姿が尊重され、日本の雅を好む多くの俳人に読まれてきました。

 

 

今回は、「梅」に関する有名俳句20選をご紹介します。

 

リス先生
ぜひ、ご一緒に梅の美しさを詠った句を味わってみてね!

梅を季語に使った有名俳句【前半10句】

 

【NO.1】松尾芭蕉

『 梅が香に 昔の一字 あはれなり 』

季語:梅(春)

現代語訳:梅の香りをかぐと、「昔」の一字がことさらあわれに感じられる。

俳句仙人

「昔」とは、ここでは故人を意味します。昨年なくなった故人を、梅の香りによって思い出し悼んでいる句です。

【NO.2】井原西鶴

『 梅の花 になひおこせよ 植木売り 』

季語:梅の花(春)

現代語訳:植木屋よ、梅の花をかついで届けてくれ。

俳句仙人

「になひおこせよ」は、「荷ひおこせよ」の意味です。菅原道真の和歌「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」を踏んで作られています。井原西鶴らしい、洒落に富んだ句です。

【NO.3】惟然

『 梅の花 あかいはあかいは あかいはな 』

季語:梅の花(春)

現代語訳:梅の花、赤いは赤いは赤いなあ。

俳句仙人

句の終わりの「は」「な」は、詠嘆を表す助詞です。平仮名で「あかいはあかいはあかいはな」と繰り返し、軽く楽しい句になっています。

【NO.4】小林一茶

『 せなみせへ 作兵衛店の 梅だんべへ 』

季語:梅(春)

現代語訳:兄さん見なさい、作兵衛のお店の梅だ。

俳句仙人

小林一茶独特の、方言を使った俳句です。江戸郊外の葛飾の地の方言を使っています。

「せな」は「兄」。「みせへ」は「見なさい」の意味です。「店」は「だな」と読みます。梅を見ながらのんびりと散策を楽しんでいる一茶の場面が、方言を使うことでよく表現されています。

【NO.5】正岡子規

『 蠣殻の うしろに白し 梅の花 』

季語:梅(春)

現代語訳:牡蠣(かき)を食べたあとの殻の後ろに、白い梅の花が咲いている。

俳句仙人

「蠣殻」は「かきがら」と読みます。食べた後の牡蠣の殻が地面に転がっていて、その後ろに梅の花が白くぼんやりと咲いています。

【NO.6】捨女

『 梅が香は おもふきさまの 袂(たもと)かな 』

季語:梅(春)

現代語訳:梅の香りを自分の袖にとめて、あなたさまを想うつてにすることだ。

俳句仙人
「きさま」は「貴様」のことで、「あなたさま」の意味です。梅の香りとともに恋しい人を想う女心が表現されています。

【NO.7】中村草田男

『 勇気こそ 地の塩なれや 梅真白(うめましろ) 』

季語:梅(春)

現代語訳:勇気こそ地面の塩となれ、梅が真っ白に咲く。

俳句仙人

「地の塩」は聖書マタイ伝の言葉で、世のために尽くし、献身する人のことです。

「梅真白」(うめましろ)の言葉で、勇敢な様子を表しています。

【NO.8】荒木田守武

『 とび梅や かろがろしくも 神の春 』

季語:梅(春)

現代語訳:空を軽々と飛んだ梅。神の春のことである。

俳句仙人
菅原道真の都から太宰府まで梅が飛んだという、梅の木伝説になぞらえて作られた句です。

【NO.9】内藤鳴雪

『 夕月や 納屋も厩(うまや)も 梅の影 』

季語:梅(春)

現代語訳:空には夕月がのぼり、納屋にも厩にも美しい梅の影がかかっている。

俳句仙人
「厩」は「うまや」と読みます。伝統的な日本の美の「夕月」そして、「梅」を「梅の影」とすることで農村の風情を醸し出しています。

【NO.10】飯田蛇笏

『 山川の とどろく梅を 手折るかな 』

季語:梅(春)

現代語訳:山を流れる川音がとどろく中、梅を手で折ろうとすることだ。

俳句仙人
山の中に咲く野生の梅。川音がごうごうと響いてくるような中、作者が梅を取ろうとする姿が浮かびます。

 

梅を季語に使った有名俳句【後半10句】

 

【NO.1】夏目漱石

『 佶倔(きつくし)な 梅を画(えが)くや 謝春星(しゃしゅんせい) 』

季語:梅(春)

意味:曲がりくねった梅の枝を画いたであろう 謝春星は。

俳句仙人

「きつくつな うめをえがくや しゃしゅんせい」と読みます。

「きつくつ」とは、曲がりくねっている、または窮屈であるという意味です。

「謝春星」とは、与謝蕪村の俳号です。

与謝蕪村の画く梅が「きつくつ」としている、と夏目漱石が評している句です。

【NO.2】梶井基次郎

『 梅咲きぬ 温泉(いでゆ)は爪の 伸び易(やす)き 』

季語:梅(春)

意味:梅が咲いた。温泉に入ると爪が伸びやすくなる。

俳句仙人
「温泉」は「いでゆ」、「易き」は「やすき」と読みます。梶井基次郎は、三十一歳の若さで亡くなり、俳句も多くありません。この句には繊細な作者の感覚がよく表れています。

【NO.3】水原秋櫻子

『 水滴の 凍るゆふべぞ 梅にほふ 』

季語:梅(春)

意味:滴り落ちる水も凍ってしまう夕暮れ時に、梅の香りが漂ってくることだ。

俳句仙人
水滴が凍ってしまうようなまだ寒さの中、梅が咲いている香りがする。梅の姿は見えませんが、梅のよい香りが感じられる句です。

【NO.4】山口青邨

『 草を焼く 煙流れて 梅白し 』

季語:梅(春)

意味:草を焼く煙が白く流れゆく先に、梅も白く咲いている。

俳句仙人
煙の白さと梅の花の白さが合わさり、読み手に思い描かされる句です。

【NO.5】石田波郷

『 梅の香や 吸ふ前に息は 深く吐け 』

季語:梅(春)

意味:梅の香りを吸う前には、息を深く吐け。

俳句仙人
梅のよい香りを吸う前に、まずは大きく息を吐け。と命令形を使うことで、読み手に梅の香りをより印象づけています。

【NO.6】尾崎放哉

『 児をつれて 小さい橋ある 梅林 』

季語:梅(春)

意味:子どもを連れて梅林を歩いていると、小さな橋があったことだ。

俳句仙人
小さな子供と梅林を散歩した時に、小さな橋がかかっているのを見つけた。ほのぼのとした風景が浮かんできます。

【NO.7】内藤鳴雪

『 野の梅や 折らんとすれば 牛の声 』

季語:梅(春)

意味:野梅を折ろうとすると、牛の声が聞こえてきた。

俳句仙人
野に咲いている梅と牛の声、田舎ののんびりとした春の風景を詠っています。

俳句仙人
松尾芭蕉晩年の句です。朝日が昇る様子を「のつと」という語を用い、とても印象的に表現しています。梅の香りに誘われるように、朝日が昇ってきたことだと作者は思いにふけっています。

【NO.9】与謝蕪村

『 しら梅に 明る夜ばかりと なりにけり 』

季語:しら梅(春)

意味:白梅が美しく光る夜明けとなったことだ。

俳句仙人

この句は、与謝蕪村の辞世の句で、病に臥せる与謝蕪村の枕元で門人が書き留めたものです。蕪村は、享年68歳。自分の夜は「しら梅に明る夜ばかり」となったと、自身の死を悟っています。

俳句仙人

この句は松尾芭蕉の弟子、服部嵐雪の詠んだ句で、梅の句として現在でも有名です。
冬を終え、春の始まりを告げるように咲いた梅の花一輪。
「いちりんほどのあたたかさ」と平仮名で繰り返すことにより、梅を見つけた作者の心が、ほんのりと温まった様子が伝わってきます。

以上、梅に関する有名俳句集でした!

 

 

俳句仙人

今回は「梅」の有名俳句20選をご紹介しました。

梅はその芳しい香りと美しさから、まさに花木の王者といえます。そのため、数々の梅を詠んだ俳句には気品があふれるものが多くあるのです。

梅が咲いた時には、その美しい様子と香りを味わいながら、梅の俳句を楽しんでみてください。

 

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