
五七五といった短い文の中で、季節や心情をこと伝えるができる俳句。
俳句は詠む人によってそれぞれ感性の違いがあり、読み手を楽しませてくれます。
今回は、収穫に感謝し翌年の豊作を祈るものとして日本各地で行われる「秋祭り」を季語に使った俳句20選をご紹介します。
寒村のひと際寂し秋祭り #イラスト #jhaiku #俳句 #pictEssay pic.twitter.com/d2RjW5HcCf
— hawk (@hawk_yama) September 18, 2016
俳句における季語「秋祭り」について
「秋祭り」は秋の季語です。
秋祭りとは、秋の収穫に感謝して行われる祭りのことをいいます。
秋祭りの多くは、稲刈り等の農作業が終わった田園の神社で行われます。古来の人にとって、「秋祭り」は準備に数十日〜数か月もかけるほど、重要な行事でした。昔は村中総出で、秋祭りを楽しんでいたのです。
現在でも「秋祭り」は屋台や神輿が出るなど、非日常が味わえる日本の行事として親しまれています。
鹿沼秋祭り。
町ごとの彫刻屋台すごい!
楽しい。 pic.twitter.com/ZMWOdKh9if— あかのん (@akanon1985) October 9, 2016
秋祭りを季語に使った有名俳句【10選】
【NO.1】 高浜虚子
『 老人と 子供と多し 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:秋祭りには、老人と子供が多いことだなあ。
秋祭りでは、老人と子供が普段よりも多くいるように感じられるといった情景を詠っています。
【NO.2】宝井其角
『 小鳴門(こなると)を ながるる渦や 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:秋祭りで、小鳴門を渦が流れていることだなあ。
「小鳴門(こなると)」とは、徳島県鳴門市の本土と3つの島の間にある海峡のことです。鳴門市瀬戸町堂浦にある「阿波井神社」で行われる秋祭りでは、町内を練り歩いた神輿が最後に小鳴門海峡に入ります。
海面に浮き上がる神輿を、掛け声を出して海中に沈め、海から上がった神輿は豊漁をもたらすものとなるのです。作者も、この秋祭りを見物したことを詠っているのでしょう。
【NO.3】西東三鬼
『 漁夫の手に 綿菓子の棒 秋祭 』
季語:秋祭(秋)
意味:秋祭りで、漁師の手に綿菓子の棒が握られていることだ。
漁師にとって秋は、冬を控えて忙しい時期です。しかし、漁師も秋祭りのときだけは、漁の仕事を休み、お酒を飲むなどして宴を楽しみます。
普段漁の網を持つ漁師の手に、今日は秋祭りで買った綿菓子の棒が握られていることに気づいた、作者の観察力の高さがわかる句です。
【NO.4】皆吉爽雨
『 面買うて 大き眼の穴 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:面を買って、面の大きい眼の穴からのぞいてみる、秋祭りのことだ。
秋祭りの屋台で売られているお面を買った作者。お面をかぶって、その眼の穴から秋祭りを見ています。
面の穴から見える、非日常の楽しい秋祭りの世界が想像される句です。
【NO.5】阿部みどり女
『 豆腐屋が 寄付を集めに 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:豆腐屋が寄付を集めに来る、秋祭りのことだ。
都会では、ふところが豊かな人々は夏祭りを楽しみますが、日々生活が苦しい人々にとっては、毎年集金される秋祭りの寄付は辛いものなのでしょう。
楽しいだけではない、秋祭りの一面に注目した句です。
【NO.6】五十嵐播水
『 相撲取 かたまりありく 秋祭 』
季語:秋祭(秋)
意味:相撲取り達が固まって歩く秋祭りのことだ。
古来より村の鎮守の秋祭りには、若者が相撲を取り神に奉納していました。
秋祭りで相撲取りたちが、固まって歩く様子は人の目を引くものでした。
【NO.7】前田普羅
『 年よりが 四五人酔へり 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:年よりが、秋祭りで四、五人と酔っていることだ。
秋祭りの酒盛りで、年よりが四、五人酔ってしまっています。仲間とお酒を楽しんでいる年寄り達の様子が、浮かんでくる句です。
【NO.8】阿部みどり女
『 子を負へる 男が笛吹く 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:子どもを背負った男が笛を吹く、秋祭りのことだ。
子どもを背負った父親でしょうか、秋祭りで笛を吹いて子どもを楽しませています。
父子で楽しむ、ほのぼのとした秋祭りの風景です。
【NO.9】久保田万太朗
『 すずめ来て 萩(はぎ)をゆするや 秋祭 』
季語:秋祭(秋)
意味:すずめが飛んできて、萩をゆする秋祭りの日のことだ。
「萩(はぎ)」とは、秋になるとピンクや白の蝶型の花をつけるマメ科萩族の植物のことです。
秋祭りの行われる中、すずめが飛んできて萩を揺らしています。
【NO.10】山下知津子
『 ちちははの そのちちははの 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:父母のその父母の代からある秋祭りのことだ。
「ちちははの」「そのちちははの」と対句表現を使うことで、リズムが整った面白い句になっています。
「ちちははのそのちちはは」は、祖父母を指すだけでなく、祖先を意味するのでしょう。
ずっと昔から続く、秋祭りの光景を詠っています。
秋祭りを季語に使った素人オリジナル俳句【10選】
【NO.1】
『 早々と 校長も来る 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:早々と校長も来る秋祭りのことだ。
都会と違い、地域の中心である地方の学校では、校長が学校だけでなく地域の役も多く果たしています。
秋祭りに早々と校長もやってきたことで、子供達や地域の人々も賑わいを一層増した様子が浮かび上がってきます。
【NO.2】
『 秋祭り おみこしかつぎ よっこらしょ 』
季語:秋祭り(秋)
意味:秋祭り おみこしを『よっこらしょ』とかつぐ。
小学生が詠んだ句です。秋祭りで、子供神輿を担ぐ子供達が「よっこらしょ」と掛け声を出している姿が伝わってきます。
【NO.3】
『 秋まつり 辺りにひびく かねの音 』
季語:秋まつり(秋)
意味:秋祭りで、辺りには鐘の音が響いている。
秋祭りで、村には行事の鐘の音が鳴り響いている、非日常的な風景を詠っています。
【NO.4】
『 ふるさとの 山河変はらず 秋祭 』
季語:秋祭(秋)
意味:秋祭りで帰って見るふるさとの山河は、昔と変わらないことだ。
久しぶりに帰った故郷で、作者は秋祭りのにぎわいに浸りながら、山河は昔からずっと変わっていないと感じています。人々は時とともに変わりゆきますが、それを包む山河は変わらずにそこにある、といった風景です。
【NO.5】
『 たしざんし だがしをかった あきまつり 』
季語:あきまつり(秋)
意味:足し算をして駄菓子を買った秋祭りのことだ。
小学生が詠んだ句です。
秋祭りの日、お小遣いを握りしめ頭の中で「足りるかな」と足し算をしながら駄菓子を買う子どもの姿が伝わってきます。子どもにとって、わくわくする秋祭りの一コマです。
【NO.6】
『 秋祭りの 群衆を分け 郵便夫 』
季語:秋祭り(秋)
意味:秋祭りの群衆をかき分け、郵便夫がやってくる。
郵便配達人が手紙を持って、秋祭りの群衆をかき分けながら歩いてきます。
祭りで大賑わい中、制服の郵便配達人の姿に着目した句です。
【NO.7】
『 町中に ねりが響くよ 秋まつり 』
季語:秋まつり(秋)
意味:秋祭り、町中にねりの音が響くことだ。
「ねり」とは、祭りの行列などが町や村を練り歩くことをいいます。
町中に響き渡る秋祭りの行列の音が、読み手にも聞こえてきます。
【NO.8】
『 秋祭り 主役をうばう 屋台かな 』
季語:秋祭り(秋)
意味:秋祭りで主役をうばってしまう屋台のことだ。
小学生が詠んだ句です。
主役とは、舞台で行われているお祭りの催し物のことでしょうか。
その主役をうばってしまうくらい、屋台に人々が集まっています。
【NO.9】
『 村の名を 地酒に残し 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
意味:村の名前を地酒に残した、秋祭りのことだ。
市町村合併し、名前が消えてしまう村のことでしょうか。
地酒に村の名前を残し、秋祭りで飲んで楽しむという、情感漂う句です。
【NO.10】
『 秋祭り 待ち合う場所まで はずむ足 』
季語:秋祭り(秋)
意味:秋祭り、待ち合わせの場所まで足が弾むことだ。
小学生が詠んだ句です。秋祭りに行くために、友達と待ち合わせをした場所へ急ぐ作者。「はずむ足」から、秋祭りに向かう、うきうきとした作者の楽しい様子が伝わってきます。
以上、秋祭りをテーマにした俳句集でした!
今回は、「秋祭り」を題材にした俳句を、有名なもの10選とオリジナルの俳句10選にわけて紹介してきました。
「秋祭り」は、収穫を神に感謝する祭りで、昔の人々にとって村総出で祝うものでした。
現在でも、「秋祭り」は日本人の心を弾ませてくれる行事です。
夏の祭りとは違った風情のある、「秋祭り」を詠った句を読み、楽しんでください。