【飛び込みのもう真っ白な泡の中】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!!

 

日本が誇る伝統芸能「俳句」。

 

わずか17音の短い詩で、今や世界中の人々から愛され、親しまれています。

 

今回は、数ある名句の中から「飛び込みのもう真っ白な泡の中」という神野紗季の句をご紹介します。

 

 

本記事では「飛び込みのもう真っ白な泡の中」の季語や意味・表現技法・作者について徹底解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

「飛び込みのもう真っ白な泡の中」の作者や季語・意味・解釈

 

飛び込みの もう真っ白な 泡の中

(読み方 : とびこみの もうまっしろな あわのなか)

 

こちらの作品は、日本を代表する若手俳人の「神野紗季(こうのさき)」が詠んだ作品です。

 

こちらの俳句は、『句集光まみれの蜂』に収められており、飛び込み台に立ち、いざ飛び込もうとするワンシーンを詠んだ作品です。

 

高い飛び込み台から見下ろす水面はとても怖く、「飛び込むのが怖い」「できるなら飛び込みたくない」といった俳人の気持を詠んだ作品です。

 

それでは、早速こちらの俳句について詳しくご紹介していきます。

 

季語

こちらの季語は「飛び込み」で、季節は「夏」を表します。

 

参考までに「飛び込み」は、スポーツのダイビングをテーマに詠む際によく使用されます。

 

意味

こちらの俳句を現代語訳すると・・・

 

「飛び込んでみるとあっという間に真っ白な泡の中だったよ。」

 

という意味になります。

 

解釈&工夫点

まず、注目すべきポイントは「飛び込みの」の「の」の助詞と次の「もう」の部分です。

 

このように詠む事で、水中に飛び込む前に心の中で感じている「恐怖感」を表現しています。

 

そして、勇気を出して飛び込んでみると、あっという間に水の中にいたという事を伝えているのです。

 

「もう」という言い回しには、このような時間の経過の早さが組み込まれています。

 

水の中は、真っ白な泡がブクブクと浮き立ち、別世界であるとも私達に教えている作品です。

 

飛び込み台に立つ心情と、飛び込んだ後の水の中のシーンがきれいに表現されています。

 

さらに踏み込んで読んでいくと・・・。

 

「真っ白な」の部分から、飛び込み台に立った時の怖さが、飛び込んでしまった後はまっさらになくなって、爽快感すら感じていると読み取れます。

 

「飛び込みのもう真っ白な泡の中」の表現技法

 

こちらの俳句で使われている表現技法は・・・

 

  • 「泡の中」の部分の「体言止め」

 

です。

 

体言止めとは、句の末尾が名詞で終わる技法のことを言います。

 

文末を体言止めにする事で、文章全体のイメージが強調され読者に伝わりやすくなります。

 

こちらの俳句では、体言止めを使用する事によって水の中の情景をイメージしやすい作品に仕上がっています。

 

「飛び込みのもう真っ白な泡の中」の鑑賞文

 

飛び込み台に立ち、いざ飛び込もうとするものの「高くて怖い。飛び込みたくないよ」という作者の気持ちが伝わって来ます。

 

水面からの高さに足がすくんでいる様子、でも飛び込まなくてはいけないというジレンマがヒシヒシと感じられる作品です。

 

しかし、思い切って飛び込んでしまえば、今までの迷いはなんだったのだろうと思うほどあっけない、そんな思いも汲み取れます。

 

さらに、こちらは時間の経過が見事に表現されており、飛び込もうとするタイミングから飛び込んだ後のタイムラグをイメージしやすくなっています。

 

今から飛び込もうとしているんだなあと思ったら、次にはすでに飛び込を終えた様子が描かれており、流れるように情景を捉えやすい俳句と言えます。

 

水中から水面にぶくぶくと白い泡が浮き上がっていく情景が、うまく描写されており写実的な作品です。

 

作者「神野紗季」の生涯を簡単にご紹介!

神野紗季は、1983年愛媛県松山市生まれの女性俳人です。

 

 

神野さんは俳句甲子園の取材がきっかけとなって俳句をはじめます。

 

2002年第一回芝不器用俳句新人賞にて坪内稔典激励賞を受賞し、同年に句集『星の地図』を刊行。2004年4月からNHK『俳句王国』で司会に抜擢されています。

 

明治大学・玉川大学専任講師を兼任しつつ、現代俳句協会の青年部長を務めます。

 

2014年俳人の高橋克弘と結婚し、同年からNHK俳句の「俳句さく咲く」の選者を担当。御茶ノ水大学後期博士課程に在籍しながら近・現代俳句の研究の当たっています。

 

 

神野紗季のそのほかの俳句

 

  • どこへ隠そうクリスマスプレゼント
  • 右左左右右秋の鳩
  • 銀河系語る泉にたとえつつ
  • 薄く薄く梨の皮剥くあきらめよ
  • 石棺に窓なかりけり蟇
  • ひきだしに海を映さぬサングラス