【与謝蕪村の有名俳句 15選】春夏秋冬!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

四季折々の美しさや読み手の心情を表現する「俳句」の世界。

 

五・七・五の十七音という限られた文字数で、情緒や風景を伝えるという広がりを持った表現が魅力です。

 

名句を残した俳人といえば、「江戸の三大俳人」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

 

今回はその内の一人・与謝蕪村の有名俳句(代表作)をご紹介します。

 

与謝蕪村の人物像と作風

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(与謝蕪村 出典:Wikipedia)

 

与謝蕪村(16441694年)は江戸時代中期に活躍した俳人で、松尾芭蕉・小林一茶とともに「江戸の三大俳人」に数えられた人物です。

 

摂津国(現在の大阪府都島区)の生まれた蕪村は、芭蕉に大きな影響を受け、江戸にでて俳諧を学び始めます。後に、芭蕉の旅をなぞるため、北関東から東北までを中心に長い放浪生活を送っていることからも、憧れの強さがうかがいしれます。

 

蕪村は、芭蕉没後、独創性を失い衰退していく俳諧を憂い、格調高いものに復興させようと「蕉風回帰」を唱えました。こうした取り組みと、写実的で抒情豊かな句風で当時の俳諧を牽引したことから、「中興の祖」とも称されています。

 

また独学でありながら画の才能を発揮した蕪村は、俳人としてではなく画家で生計を立てていました。俳諧と画を融合させた「俳画」の創始者となり、後に文人画(文人・知識人の描く絵画)を究めていきます。

 

画家としての一面は句作にも大きく影響しており、優れた色彩感覚と写実的な手法によって「絵のように俳句を詠む」ことを得意としました。蕪村の句を詠むと、その情景が読み手にも一枚の絵のように浮かんでくることでしょう。

 

与謝蕪村の有名俳句・代表作【15選】

春の俳句【3選】

俳句仙人
「のたり」を繰り返すことで、ゆるやかにのんびりとした印象を与えています。優しく波打つ海には、うららかな日差しが差し込み、きらきらと照り輝いています。そんな穏やかな海の様子と春の陽気が作者をゆったりと過ごさせているのでしょう。「終日」と詠むことで、春の情景をいつまでも眺めている幸福感が伝わってきます。

 

俳句仙人
菜の花の黄色、月が昇る空の紺、日が沈む夕焼けの赤と鮮やかな色彩に溢れ、雄大な光景を絵画的に描いた一句。「月は東に」と「日は西に」という言葉には対句法が用いられており、両者の対比によってスケールの壮大さや空間の広がりを生み出しています。また「昇る」「沈む」といった動詞を省略することで、ゆったりとした余情を生み、春の一日の終わりにふさわしい、穏やかな雰囲気を醸し出しています。

 

【NO.3】

『 春雨や ものがたりゆく 蓑と傘 』

現代語訳:春雨がしとしっと降りそそぐ中を、蓑を着た人と傘をさした人が何事か話しながら、ゆっくりと歩いていく。

季語:春雨

俳句仙人
人物を「蓑」と「傘」に置換え象徴的に表現し、対比させたところに春雨の風情をよりいっそう際立たせています。情景だけはくっきりと浮かび上がりますが、歩いていく二人は詳しく描かれていません。性別や年齢、職業などどんな人物なのかは分からず、二人の話す呟きも、春雨のしとしとと降る音に混ざり合っていきます。読む人の想像をかきたて一句です。

 

夏の俳句【6選】

俳句仙人
「うれしさよ」という語から、心地よい川の水の冷たさや、童心にかえったような高揚感が伝わる句です。この歌は蕪村の母親の生地であった丹後地方で詠まれたもので、かつて蕪村も少年時代を一時期過ごした地でもありました。このことから、亡き母を偲びつつ自身の幼い頃への情景を詠みこんでいると解釈されています。

 

俳句仙人
夏の夕立の激しさと、慌てて雨を避けようと草陰に隠れる健気な雀の群れを詠んだ句です。雀たちは、夕立のあまりの激しさに飛び立つこともできず、草葉をしっかりと掴んでやり過ごすことしかないのでしょう。「むら雀」と体言止めで句を結ぶことで余韻が生まれ、急な天候の変化の立ち向かう小さな生き物へのたくましさや作者の愛おしい視線が感じられます。

 

【NO.3】

『 愁ひつつ 岡に登れば 花いばら 』

現代語訳:心に憂いを抱きながら岡に登ると、そこには花いばらがひっそりと咲いていた。

季語:花いばら

俳句仙人
「花いばら」とは、白く可憐な花を咲かせる野ばらのことです。漠然としたもの悲しさと対比するように、花いばらの清らかな美への詠嘆を詠んでいます。蕪村は【花いばら 故郷の路に 似たるかな】という句も残していることから、花いばらは郷愁を感じさせる花だったようです。爽やかな初夏の景色の中に漂う哀愁を、みずみずしく表現しています。

 

【NO.4】

『 五月雨や 大河を前に 家二軒 』

現代語訳:五月雨が降り続き水かさを増した川が、激しい勢いで流れている。そのほとりには家が二件、ぽつんと建っている。

季語:五月雨

俳句仙人
梅雨のため川は増水し、濁流となって流れるほとりには、心細げな小さな家が寄り添うように建っています。「家二軒」を配することで、自然の猛威になすすべなく息を潜める人々の姿が想像されます。動的な「大河」と静的な「家」との対比が強調されており、一幅の絵画のようにも感じられる句です。

 

【NO.5】

『 不二ひとつ うづみ残して 若葉かな 』

現代語訳:富士山だけを残して、見渡す限り若葉が地上を埋め尽くしていることだなあ。

季語:若葉

俳句仙人
薄黄緑の若葉があたり一面に広がる中、残雪を白く頂いた富士山だけが抜きん出ている様子を詠んでいます。初夏のきらきらとした雄大な光景を色彩豊かに表現し、蕪村の絵心を余すことなく発揮した一句。「もうすっかり夏が来たのだなあ」としみじみ眺め入る作者の姿が目に浮かびます。

 

【NO.6】

『 牡丹散りて うち重なりぬ ニ三片 』

現代語訳:美しく咲き誇っていた牡丹の花がはらりと散り始め、大きな花びらが二、三片、静かに重なり合っている。

季語:牡丹

俳句仙人
原産国の中国では、百花の王として尊ばれる牡丹の花。その堂々たる姿や、大ぶりな花びらを絵画的な趣きで表現しています。「うち重なりぬ」と詠嘆を込めて詠むことで、静かに散っていく様子や牡丹の重厚感が伝わってきます。

 

秋の俳句3選】

俳句仙人
「野分」とは、草を吹き分けて通る強い秋風のことで、主に台風がもたらす風を指します。この句は実際の風景を詠んだものではなく、鳥羽上皇崩御を機に起きた「保元の乱」に想を得たとされています。野分が吹き荒れる中、疾走する武士達の緊張感が伝わってくるようです。このように史実や物語を題材とした句も蕪村の得意とするところでした。

 

【NO.2】

『 朝顔や 一輪深き 淵の色 』

現代語訳:朝顔が鮮やかに咲きそろう中、ただ一輪、深い淵のように濃い藍色をした花がある。

季語:朝顔

俳句仙人
初句で「朝顔や」とあちこちに咲く朝顔の花の美しさを強調し、「一輪深き 淵の色」と続け、その一輪が美の代表格であるかのように詠んだ句。朝顔の深い藍色を「淵の色」にと形容とすることで、幽遠な色に仕上げています。自然のもつ底知れぬ色彩美への驚きが伝わってきますね。

 

【NO.3】

『 山は暮れて 野は黄昏の すすきかな 』

現代語訳:山はとっぷりと日が暮れてしまったが、野原にはぼんやりと黄昏の光が残り、すすきの穂が白く浮き上がって見えることだなあ。

季語:すすき

俳句仙人
遠景の「山は暮れて」と、近景の「野は黄昏の」を対句的に描写し、どこか懐かしい秋の夕暮れを印象深く描いています。暮れ色が迫る中、かすかに残る黄昏の光を浴びて白く輝くすすきはなんとも幻想的で、かつ物寂しい風情を感じさせます。初句の字余りの響きが、かえってこの句にゆったりとした時間の流れを醸し出しているようです。

 

冬の俳句【3選】

俳句仙人
冬木立の秘められた生命力に触れた時の驚きを、鋭い感覚で捉えた一句です。葉もすっかり落ちてしまい、枯れ木のようになった「冬木立」でも生のエネルギーを潜ませており、やがて来る春には芽を吹き若葉で覆われることでしょう。すがすがしい木の生きた香りまでもが伝わってくるようです。

 

俳句仙人
冬の凍えるような寒空に輝く月を、絵画的な趣きで詠んだ句です。天高くにある寒月から地上の門さえない慎ましやかな小さな寺への視線の動きが、句の世界に奥行きを与えています。月のかかる澄み切った空は高く広がるように見え、寺はいよいよひっそりと静まって感じられますね。

 

【NO.3】

『 宿かせと 刀投げ出す 吹雪かな 』

現代語訳:激しい吹雪の中、旅の侍が家に飛び込んできて「一夜の宿を貸してくれ」というより早く、腰の刀を投げ出した。

季語:吹雪

俳句仙人
屈強な武士といえど、歩けないほどの激しい吹雪はさぞかし心細かったのでしょう。その粗雑な所作が、雪にまみれた武士の安心感を強く印象づけています。さらには突然ころがり込んできた武士に、困惑した表情を浮かべる家人の姿もありありと想像されるなど、様々な想像力がかきたてられる味わいある一句です。

 

さいごに

 

今回は与謝蕪村が残した名句の中から、春夏秋冬にあわせ代表作をご紹介してきました。叙情性豊かで絵画的な俳句の世界をお楽しみいただけたのではないでしょうか。

 

蕪村の句風は写実的でありながら、目の前の風景をそのまま表現するというよりは、懐古的憧憬や理想化された空想世界を多く詠んでいます。

 

これこそが蕪村の最大の魅力であり、現代を生きる私たちの心に響くゆえんなのでしょう。

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