【種田山頭火の俳句35選】代表作(有名句)はこれ!!俳句の特徴や人物像など徹底解説!

 

五七五のわずか17音という非常に短い言葉の中にさまざまな感情や思いが込められた「俳句」。

 

今回は、「自由すぎる俳人」として有名な「種田山頭火」の代表俳句(有名俳句)を紹介していきます。

 

 

生涯にわたって約8万もの俳句を詠んだといわれている山頭火の代表作品はどのようなものなのでしょうか?

 

俳句仙人
たくさん俳句を紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
まずは、種田山頭火の人物像と作風を簡単に紹介していきます。

 

種田山頭火の人物像と作風

(種田山頭火 出典:Wikipedia)

 

種田山頭火(たねださんとうか)は、明治15年(1882年)に山口県防府市で生まれた自由律俳句の代表的俳人です。本名は種田正一といいます。

 

山頭火は15歳の頃から俳句を始め、高校を主席で卒業し早稲田大学へ進学するなど、学業の方は優秀だったと言われています。

 

34歳の頃に俳諧雑誌『層雲』にて頭角を現し、俳句選者の一人となっています。しかし、生家の倒産や関東大震災に被災するなど、苦労も多く、大正15年に放浪の旅に出ます。

 

旅と句と酒に生きた山頭火が、全国のあちこちで作った作品の多くは五七五にこだわらない自由なリズムの俳句で、今も人々を魅了し続けています。

 

 

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次に、種田山頭火の代表的な俳句を紹介していきます。

 

種田山頭火の有名俳句・代表作【35選】

(種田山頭火像 出典:Wikipedia

有季定型俳句【10句】

まずは、五七五を基本とする季語を含む通常のルールで作られた有季定型俳句を紹介ていきます。

 

【NO.1】

『 気まぐれの 旅暮れて桜 月夜なる 』

季語:桜(春)

意味:目的もなく気の赴くままに旅をする。今日も日が暮れ、夜桜が美しい。

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九州、四国、中国地方のほか、甲信越、東北と全国を旅して回った山頭火。これといった目的を持たず、ただひたすらと歩けていたといわれています。この句は、そんな旅の道中、ふと美しい夜桜に心を奪われ、詠んだのではないでしょうか。

 

【NO.2】

『 霧島は 霧にかくれて 赤とんぼ 』

季語:赤とんぼ(秋)

意味:霧島は霧にかくれて見えない。赤とんぼが目の前を舞っているよ。

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遠くに見えるはずの霧島は、今日は霧に隠れてしまっていて見えません。いかにも高原らしい風が吹き、その風に舞うかのように赤とんぼが飛んでいます。今にも天気が崩れそうな高原の風景が思い浮かびます。

 

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冷たい雨が降ったり止んだりする中、雨で濡れている山の中をただひたすらと歩みを進めていく様子が伝わってきます。修行僧として旅を続けている山頭火自身が、己の生き様を詠んだ一句といわれています。

 

【NO.4】

『 ふるさとは あの山なみの 雪のかがやく 』

季語:雪(冬)

意味:現代語訳:ふるさとは、向こうに見える山並みの頂のように、雪が輝いているのだろうよ。

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ふるさとの懐かしさが広がります。しかし、こちらの句は、山頭火の理想郷、不器用に生き、厳しすぎる旅を行く山頭火が生み出した、幻想だったのかもしれないといわれています。

 

【NO.5】

『 身にちかく あまりにちかく つくつくぼうし 』

季語:つくつくぼうし(秋)

意味:私の近くに、あまりにも近くにツクツクボウシが鳴いている。

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作者の俳句の特徴として、繰り返しを多用することが挙げられます。この句でも「ちかく」を繰り返すことによって、自分のすぐ側でツクツクボウシが鳴いている様子がイメージしやすくなっています。

 

【NO.6】

『 一つ家に 一人寝て観る 草に月 』

季語:月(秋)

意味:1つの家に、一人で寝て観る草と月だ。

俳句仙人
この句では「一」を繰り返すことでポツンと建った家に1人きりで、揺れる草と輝く月を見ているという孤独を強調しています。草の揺れる音まで聞こえてきそうな孤独さを詠んだ句です。

 

【NO.7】

『 冬ぐもり ひさびさ湯にいり 金を借る 』

季語:冬ぐもり(冬)

意味:冬曇りの日だ。久しぶりにお風呂に入って、お金を借りに行く。

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誰かに金策の算段に行くために、寒い冬の曇りの日にお風呂に入って身なりを整えている句です。作者は若い頃は金使いが荒いことでも知られていたため、行脚の旅に出る前に詠まれた句かもしれません。

 

【NO.8】

『 尾花ゆれて 月は東に 日は西 』

季語:尾花(秋)

意味:尾花が風で揺れ、月が東から昇り、日が西に沈んでいく。

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与謝蕪村の「菜の花や 月は東に 日は西に」を踏まえた一句です。「尾花」とはススキの穂のことで、菜の花の句とは違ってススキの野原に佇んで月と太陽を見る寂しさが伝わってきます。

 

【NO.9】

『 サイダーの 泡立ちて消ゆ 夏の月 』

季語:夏の月(夏)

意味:サイダーの泡が立って消えていく夏の月だ。

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サイダーを飲んで泡をぼんやりと眺めながら夕涼みをしている一句です。涼を求めて冷たいものを飲みながら夜空を見上げる夏の夜の様子は、現在も変わらないのではないでしようか。

 

【NO.10】

『 毒ありて 活く生命にや 河豚汁(ふぐとじる) 』

季語:河豚汁(冬)

意味:毒を持っていてこそ活きる命なのだろうか、この河豚汁は。

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「にや」は「だろうか」という意味を持ちます。江戸時代に作られた俳句にも毒に当たらないことを祈りながら河豚汁を食べるものが残されていますが、死ぬかもしれないからこそ生きていることを実感するのだろうかと不思議に思っている一句です。

 

無季自由律俳句【25句】

 

種田山頭火といえば、定型の枠を超えた自由律俳句で有名です。ここでは、数ある山頭火の作品の中から代表的なものを厳選して紹介していきます。

 

【NO.1】

『 今日の道の たんぽぽ咲いた 』

意味:今日も私は歩き続ける。道には、たんぽぽの花が咲いている。あぁ、春だなぁ。

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道端にふと目をやるとたんぽぽの花が咲いていました まだまだ緑の少ない地面に、鮮やかな黄色い花が思い浮かびます。そぐそこまで来ている春の訪れを教えてくれているようですね。

 

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お地蔵さんに対する「敬愛の念」が感じられます。自分を見守ってくださる存在としてのお地蔵さんが、突然の雨で自分と同じようにずぶぬれになっている光景を目にし、親しみを感じている様子が読み取れます。

 

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奥深い山道を歩きながら目にした深緑の青々とした光景に、いつまでも続く出口のないような自分の人生を重ねていたのかもしれません。「分け入っても分け入っても」と、「分け入っても」という言葉を2回繰り返すことで、どこまでも続いて終わりのない山の様子を表現したかったのではないでしょうか。

 

【NO.4】

『 ほろほろ ほろびゆく わたくしの秋 』

意味:「ほろほろ」と、まるで衣がほころんでいくように、私の人生もほころんでいくよ。あぁ、秋だなぁ。

俳句仙人
酒に飲まれ、堕落的な人生を生きてきた山頭火は、自らの人生をまるで衣がほころんでいくように滅びていくと自嘲していることが読み取れます。「ほろほろ」という擬態語を用いることで、誰にも気に留められず、ひっそりと終わっていく人生を巧みに表現しています。

 

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目を覚ましたら、コオロギと一緒に道端で寝ていた…お酒による失敗を、面白おかしく詠んだ一句です。ついつい深酒してしまう孤独な旅の情景と心情が浮かんでくるようですね。

 

俳句仙人
過去を清算しようとでも思ったのでしょうか。いくらたくさんの言葉や想いを綴った日記も、一冊の日記を燃やして残るのは、所詮日記一冊分の灰にすぎません。少々強がっているような口調が印象的ですね。

 

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こちらの句は、行乞をしながら旅をしている最中に詠まれたものといわれています。僧侶となり、托鉢で得たお金で酒を飲む自分を「どうしようもないわたしが歩いている」と表現し、煩悩と後悔を繰り返していたのではないでしょうか。

 

俳句仙人
年齢的にも修行には耐えられず、すべてを捨てて托鉢の旅に出るしかなかった山頭火。「さみしい」と率直に表現をすることで、山頭火の孤独感が伝わってきます。「まっすぐな道」とは、脇道も曲がった道もひたすらに歩く、つまり一方通行の道を指しています。

 

俳句仙人
この句に出てくる「うしろ姿」とは、旅を続ける自分自身のことを指しています。降ったり止んだりする小雨の中を、寂しげに歩く自分の姿を想像し、自嘲の念を込めて読んでいます。ポツポツと時雨のようにパッとしない自分の堕落的な人生を反省していたのかもしれませんね。

 

【NO.10】

『 ついてくる 犬よおまへも 宿なしか 』

意味:犬が一匹自分の後をついてくる。お前も私と同じで泊まるところもないのか。

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やせこけた貧相な野良犬が、少し距離をおき、山頭火の後をついてくる様子が目に浮かぶようです。山頭火と一匹の犬は、ともに今日泊まる宿もない。ほのぼのとしている中に、少し切ない様子が伝わってきます。

 

 

【NO.11】

『 生死の中 雪ふりしきる 』

意味:死を意識する程の厳しい雪の中を、ただひたすらと歩みを進める。

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死を意識する程の吹雪の中を山頭火は歩いています。死を意識するからこそ、生きている実感を得られたのかもしれません。雑念は消え、ただただ歩を進めている山頭火の様子が思い浮かびます。

 

俳句仙人
「かつこう」を2回繰り返すことでカッコウの声がどこまでも響き渡る様子を詠んでいます。歩調を変えて様子を見てみる作者の楽しげな様子が伝わってくる句です。

 

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「鉄鉢(てっぱつ)」とは僧侶が托鉢という食べ物を受け取る際に使用する鉢です。霰が降りしきる中で、食べ物ではなく霰の塊が鉄鉢の中に入っていく無情さを詠んでいます。

 

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同じ風景は二度と見られないとよく言われますが、この句でもこの山をもう一度見ることはないのだろうと悟って詠んでいます。「山」を親しい人に例えて、永遠の別れを詠んだものであるという解釈もある句です。

 

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作者は家庭環境の悪化やお酒とお金のトラブルから得度し、諸国を行脚していました。まさに「この道しかない」と定めていたようで、春の雪に代表される予期せぬトラブルも覚悟の上で旅をしていたことが伺えます

 

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心の疲労からか、山や海など自然がとても美しく見える驚きを詠んでいます。現在でも疲れた時にリフレッシュなどで森林浴などに行く人も多いため、共感しやすい句ではないでしょうか。

 

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伝統的な俳句では鳥の鳴き声を詠むのが定石です。しかしこの句では鳴かずにひっそりとたたずむ鳥を詠んでおり、その孤独ながらも気高い様子に感銘を受けているようにも考えられます。

 

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一人旅であった作者に、つかの間の同行者が出来たことを詠んでいる句です。笠にとまったトンボは、歩いているにも関わらず微動だにせず旅路を共にしています。

 

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この句は作者が「一草庵」という庵に住んでいた頃の句で、前年の冬に詠まれた「おちついて しねそうな 草枯るる」と対になっています。庵に留まり冬をすごしたことで、草が再び育っていく様子を喜びをもって見つめていることがわかる対比です。

 

 

【NO.20】

『 ほつと月がある 東京に来てゐる 』

意味:ほっとするような月が出ている。今は東京に来ている。

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この句は13年振りに東京に向かう途中の鎌倉で詠まれたと言われています。久しぶりの都会少し気が緩んでいる様子が「ほつと」という言葉から感じられる一句です。

 

【NO.21】

『 ゆうぜんとして ほろ酔へば 雑草そよぐ 』

意味:悠然としながらお酒を飲んでほろ酔いの気分でいると、風が吹いて雑草がそよいでいる。

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作者はお酒好きで知られています。お酒を飲んでほろ酔いになって心地良さを感じている時にそよぐ雑草を見て、悠然とした気持ちになっている楽しそうな一句です。

 

【NO.22】

『 生まれた家は あとかたもない ほうたる 』

意味:生まれた家は跡形もない。蛍だけが飛んでいる。

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作者が生まれ育った家は家業の悪化に伴い売却されています。久しぶりに立ち寄った場所には何も無く、ただ蛍だけが飛んでいるという悲しさと虚しさを詠んだ句です。

 

【NO.23】

『 歩きつづける 彼岸花咲きつづける 』

意味:歩き続けていると、彼岸花がずっと咲き続けているのが見える。

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「つづける」と2回繰り返すことで、長く続く道に彼岸花が咲いている風景が浮かんできます。歩いても歩いても咲いている彼岸花はさぞ絶景だったことでしょう。

 

【NO.24】

『 鈴をふりふり お四国の土になるべく 』

意味:杖に付けられた鈴を振りながら、四国八十八箇所巡りをしつつその場所の土になるべく歩く。

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作者は四国八十八箇所を巡るお遍路の旅もしています。「鈴」とはお遍路の持つ杖につけられているものです。「土になるべく」と詠んでいることから、この旅の最中に死んでも構わないという作者の覚悟が表れています。

 

【NO.25】

『 また一枚 脱ぎ捨てる 旅から旅 』

意味:また1枚服を脱ぎ捨てていく、旅から旅の我が人生だ。

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旅を続けていた作者にとって、古くなった服は荷物になります。1枚ずつ脱ぎ捨てていくことで自分自身の未練を断ち切っていくように見える、孤高の人生を表した一句です。

 

以上、種田山頭火の有名俳句35選でした!

 

さいごに

 

今回は、種田山頭火が残した俳句の中でも特に有名な作品を現代語に訳し、そこに込められた意味など簡単な感想を紹介してきました。

 

自由律俳句を得意とする種田山頭火の作品は、「名言」といわれるものも多く、時に読み解くのが難しいものもありますが、何とも人間味あふれ、興味深いものばかりです。

 

種田山頭火に興味を持った方はぜひご自身で書籍なだを探して読んでみてください。

 

 

俳句仙人

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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