「風鈴」は夏に涼しさを感じるための風物詩であり、俳句においても夏の季語に分類されています。
みちのくの風鈴の音手土産に
季語 【風鈴(ふうりん)】#俳句 #夏 pic.twitter.com/eTvG2nQfSz
— 平和 (@heiwa12345) July 2, 2019
今回は、風鈴が揺れる視覚と、鳴っている聴覚の両方に訴えかける「風鈴」のおすすめ俳句を30句紹介していきます。
風鈴を季語に使った有名俳句【15選】
【NO.1】 与謝蕪村
『 風鈴や 花にはつらき 風ながら 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が鳴っていることだ。咲いている花は散ってしまうほどの風であるが。
風鈴のよい音色と引き換えに、花が散ってしまうほどの強風が吹いている。音色と花、両立できない侘しさを表した句です。
【NO.2】池西言水
『 ふかぬ日の 風鈴は蜂の やどりかな 』
季語:風鈴(夏)
意味:風が吹いていない日の風鈴は、蜂がその身を休める宿屋になっているんだなぁ。
「やどり」という言葉から、蜂の巣ではなく1匹か二匹の蜂が体を休めている光景が浮かんできます。風が吹かない日の風鈴は動かないため、絶好の隠れ場なのでしょう。
【NO.3】正岡子規
『 風鈴の 風にちりけり 雲の峯 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴の風に散っていく入道雲であることだ。
【NO.4】正岡子規
『 風鈴の ほのかにすずし 竹の奥 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が鳴ると、ほのかに涼しい気がする。竹林の奥のこの場所よ。
うっそうと茂る竹と竹の葉が日光をさえぎり、どこか薄暗い竹林の奥ですが、「ほのかにすずし」とあることからよい避暑地でもあると伝えています。風鈴の音が一層感じる涼しさを増していくようです。
【NO.5】高浜虚子
『 風鈴の 一つ鳴りたる 涼しさよ 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が一つ鳴っている。その音の涼しさよ。
風鈴の個数が一つなのか、ちりんと一回音を立てたのか、その両方なのか、言葉少なに涼しさを語る技法が見事な一句です。
【NO.6】原石鼎
『 風鈴の しきりにさびし 留守の軒 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴がしきりに鳴っているのが寂しい。あの留守のお宅の軒先の風鈴よ。
風鈴を聞く家の者がいないのにしきりに鳴っている様子を歌っています。留守宅なのに鳴っているのが寂しいのか、風鈴の音自体が寂しいのか、情緒があふれる句です。
【NO.7】阿波野青畝
『 風鈴の 紙片は杜甫(とほ)の 詩なるべし 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴に吊るしてある短冊は、杜甫の詩に違いない。
杜甫とは、唐の時代の詩人で、「詩聖」と称される偉大な詩人です。よい音で鳴っている風鈴に吊るされている短冊に書いてあるのはその有名な杜甫の詩であろう、と納得している句になります。
【NO.8】日野草城
『 夕風や 風鈴吊れば すぐに鳴る 』
季語:風鈴(夏)
意味:夕方になって風が吹き始めた。風鈴を吊るせばすぐに鳴るくらい強い風だ。
「夕風」とは夕方になって吹く風です。昼の間の風よりも涼しい印象があり、そこに風鈴の音が響くことでより涼しさを感じさせてくれます。
【NO.9】荻原井泉水
『 月光ほろほろ 風鈴に戯(たわむ)れ 』
季語:風鈴(夏)
意味:夏の夜空を優しく照らす月の光が、揺れる風鈴と戯れているようだ。
自由律の俳句です。月の光「ほろほろ」と表現することにより、柔らかい月光の印象になります。風ではなく柔らかい光が風鈴と遊んでいるという、かわいらしくも幽玄な世界観の一句です。
【NO.10】角川春樹
『 風鈴の 風を待ちたる 机かな 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴を鳴らす風を待っている机の前の私だよ。
エアコンではなく窓を開けて風が入ってくるのを待っているのでしょうか。風のない暑い部屋の中で、風鈴を鳴らす涼しい風を待ちわびる光景が浮かんできます。
【NO.11】飯田蛇笏
『 くろがねの 秋の風鈴 鳴りにけり 』
季語:秋(秋)
意味:黒鉄の風鈴が秋になっても鳴っている。
夏が終わってもしまい忘れられた秋の風鈴を詠んでいます。「風鈴」は夏の季語ですが、ここでは秋になってもまだ鳴っていることが主題のため「秋」が季語になります。
【NO.12】野村喜舟
『 風鈴や わが家へおろす 天津風 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が鳴っているなぁ。我が家へ空高く吹く風が吹き下ろして来るようだ。
「天津風」とは空高く吹き抜ける風を意味する言葉です。風鈴を鳴らす風が上空から吹き下ろしてきているのだろうと想像しています。
【NO.13】芝不器男
『 風鈴の 空は荒星 ばかりかな 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が鳴っている。空は鋭い輝きの星ばかりが出ているなぁ。
「荒星」は冬の季語ですが、ここでは強い光を放つ星という意味で使われています。作者は26歳で夭折したため、涼しげな夏の星の輝きも荒々しく見えたとする解釈が一般的です。
【NO.14】中村汀女
『 風鈴の 音に月明かき 夜を重ね 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴の音が鳴り、月が明るい夜を重ねていく。
風鈴を鳴らす風を感じ、月明かりを見ながら夜を過ごしている様子を詠んでいます。現在では夜でも暑い日が続きますが、この句の表現からはどこか涼しげな雰囲気が漂っています。
【NO.15】阿部みどり女
『 風鈴や 一座句作に 静まれば 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が鳴っているなぁ。一座は句作のために静まり返っているのでよく聞こえる。
人が話していると聞こえないくらいの風鈴の音が、皆が俳句を作るために静まり返ったらよく聞こえたという一句です。すぐ近くの軒先に吊るされていたのか、どこか遠くで鳴っていたのか、想像がふくらみます。
風鈴を季語に使った一般オリジナル俳句【15選】
【NO.1】
『 風鈴も やんで聞き入る 夏の虫 』
季語:風鈴(夏)/夏の虫(夏)
意味:風鈴も音を鳴らすのを止めて聞き入っている夏の虫の声よ。
【NO.2】
『 風鈴が 風は友だと 鳴りひびく 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が風は友人だと言わんばかりに鳴り響いているよ。
この句も風鈴を擬人化しています。風鈴が風と戯れているからこそ揺れて鳴り響いているという微笑ましい句です。
【NO.3】
『 さぼりたる 風鈴百に ひとつくらい 』
季語:風鈴(夏)
意味:鳴るのをさぼっている風鈴が、百個もあれば一つくらいありそうだ。
店先やイベントなどで多くの風鈴が吊るされている状況でしょうか、こんなに多ければ一つくらいは鳴るのをさぼっている風鈴があるかもしれないというユーモアあふれる一句になっています。
【NO.4】
『 風鈴が 揺れて荷物が 届きけり 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が揺れて、荷物が届いたということがわかる。
人が通ったのか車が止まったときの風か、ドアを開けた家人の動きか、風鈴の鳴る音で荷物の到着を知るというとても風雅な一幕です。
【NO.5】
『 炎より 生れし風鈴 さげにけり 』
季語:風鈴(夏)
意味:炎から生まれた風鈴を吊るしている。
ガラス製の風鈴も、南部鉄器のような鉄製の風鈴も、どちらも炎によって成形され生み出されています。炎から生まれた風鈴が風によってよい音を鳴らしている、そんな仕組みの不思議さを歌っているのでしょう。
【NO.6】
『 日も月も 海より出づる 貝風鈴 』
季語:貝風鈴(夏)
意味:太陽も月も、海から登ってくるのだ。そしてこの貝風鈴の貝もまた海から生まれた。
東の方向の海から太陽と月が登り、ささやかな音色を奏でる貝風鈴の材料になる貝もまた海から生み出される、全てのものは海から生まれるという壮大な一句です。
【NO.7】
『 風鈴の 音に誘われて 廻り道 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴の音がするので、その方向に誘われて廻り道をしよう。
夏の暑い道すがら、涼しげな風鈴の音に誘われて回り道をしたのか、旅行中に寄り道をしたのか、いろいろな意味に取れるシンプルな言葉遣いです。
【NO.8】
『 風鈴や 猫にまず 触らせてから 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が届いた。興味を持つだろう猫にまず触らせてから飾ろう。
五五六の字足らずの破調の句です。風鈴にぶら下がっている短冊や飾りに興味を示すだろう飼い猫に、こういうものだよと触らせている、猫好きの飼い主の姿が見えます。
【NO.9】
『 風鈴や 風の話を 通訳す 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴だ。風がどんな話をしているのかその音色で通訳してくれる。
風鈴の擬人化です。人間には聞こえない風を、風鈴が音を鳴らすことで伝えてくれることを、「風の話」「通訳」とわかりやすく表現しています。
【NO.10】
『 風鈴を 外し忘れた 嵐の夜 』
季語:風鈴(夏)
意味:外から風鈴の音がする。風鈴を外し忘れたようだ、嵐が来ている夜なのに。
強風に煽られた風鈴が、荒れ狂ったように鳴っているのでしょう。夏の嵐で風鈴自体が壊れてしまうかもしれない恐れが「嵐の夜」という体言止めに表れています。
【NO.11】
『 風鈴に そっと手を添え 風なき日 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴にそっと手を添えてみる風のない日だ。
風鈴は風がない日は鳴りません。少し揺らして鳴らしてみたのか、風鈴自体の意匠を改めてよく見ようと手を添えたのか、想像がふくらみます。
【NO.12】
『 風鈴が 鳴つて寂しい 夜が来た 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴が鳴って寂しい夜が来た。
夜中にチリンと鳴る風鈴を1人で聞いていると、静かな夜で寂しくなってくるという人もいるでしょう。寝静まった街に自分1人だけが起きているような感覚を詠んでいる一句です。
【NO.13】
『 風鈴の 下で四方山(よもやま) 話かな 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴の下で四方山話をしているなぁ。
「四方山話」とは色々なテーマの話のことで、雑談を意味します。風鈴が吊るされている軒先で話をしているのか、相槌を打つように風鈴が鳴っている風景が思い起こされます。
【NO.14】
『 風呂上がり 風鈴の音に 頬ゆるみ 』
季語:風鈴(夏)
意味:お風呂上がりに聞く風鈴の音に思わず頬がゆるんだ。
お風呂上がりのさっぱりとした感覚に涼しげな風鈴の音が合わさって、心地よい時間を過ごしている一句です。暑い浴室から出てきたため外気もどこか涼しげに感じたことでしょう。
【NO.15】
『 風鈴が 呼んでいるのは 君だらう 』
季語:風鈴(夏)
意味:風鈴の音が呼んでいるのは君だろう。
誰かを呼ぶように風鈴の音が鳴っている様子を詠んだ句です。作者と「君」はどんな関係なのか色々と想像できます。
以上、風鈴を季語に使ったおすすめ俳句集でした!
さいごに
今回は、風鈴の音が聞こえてくるような俳句を30句紹介しました。
風鈴の音で風を表現したり、鳴っている音に感傷を託したりと、さまざまな俳句を詠めるのが季語「風鈴」の魅力でしょう。
どこからともなく聞こえてくる風鈴の音に一句詠んでみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。