【俳句の取り合わせとは】簡単にわかりやすく解説!!意味や効果・例文・コツなど

 

突然ですが、次の俳句のうちどちらの方が好きですか?

 

【1】殻の内 ごうごうとして かたつむり (作:星野一郎)

【2】まるまるが 多い文章 かたつむり (作:三宅やよい)

 

2句とも夏の季語である「かたつむり」が使われていますが、句の構成が異なります。

 

俳句の構成には大きく分けて2つあり、1句目は「一物仕立て」、2句目は「取り合わせ」という構成でできています。

 

一物仕立てはひとつの季語についてのみ詠みます。取り合わせの句では、季語に加えて別の要素についても詠みます。

 

今回は「取り合わせ」の意味や効果について簡単にわかりやすく解説していきます。

 

リス先生
ぜひ参考にしてみてね!

 

俳句の取り合わせとは?意味や効果


 

取り合わせとは、「適度に意味の離れた二つの言葉を俳句の中に詠み込むこと」を言います。

 

これではわかるにくいので、次の句を例に見てみましょう。

 

【作者】水原秋櫻子

『 花冷えや 剥落しるき 襖の絵 』

季語:花冷え(春)

意味:桜の咲く時期なのに冷え込むなあ。襖の絵はかなりの部分が剝げ落ちている

 

季語の「花冷え」と襖の絵が剥げてしまっていることには本来何のつながりもありません。

 

しかしこのように一句の中に詠まれると、花冷え」の空気の冷たさや寒さと襖の絵が剥げてしまっている光景の寂しさや寒々しさが重なり合うように感じませんか。

 

このように意味の離れた言葉(本来関係のない言葉)を組み合わせることで言葉どうしが響き合い、相乗効果で句のイメージが豊かになることが取り合わせの効果です。

 

俳句の取り合わせの作り方&コツ

 

テレビ番組「プレバト!!」で活躍なさっている夏井いつき先生は、取り合わせの作り方について次のように仰っています。

 

① 十二音で日記を書く。この時季語は入れない。心情を表す言葉も入れない。

② 十二音で書いた部分の心情を分析し、心情に合う季語をつける。

 

②の心情に合う季語というのが、やや難しいかもしれません。

 

例えば、先ほどの「花冷え」なら寂しさなどのやや暗めの心情、同じ春の季語でも「春めく」ならうきうきするような明るめの心情を表せます。

 

心情ごとに季語を分類しておくといざ俳句を作るときにアイディアの引き出しが増えて良いかもしれません。

 

また、二つの言葉を組み合わせる時には意味や関係性が近すぎても遠すぎても面白い句にはなりません。

 

意外性のない組み合わせや、共感しづらい突拍子の無い組み合わせにならないよう心がける必要があります。

 

取り合わせを使った有名俳句【5選】

 

俳句仙人
夜の荒れた日本海の暗さと輝く天の川の明るさが対比になっている一句。このように反対のイメージのものを組み合わせるというのも取り合わせのやり方の一つです。

 

【NO.2】高浜虚子

『 亀鳴くや 皆愚かなる 村の者 』

季語:亀鳴く(春)

意味:亀が鳴いているなあ。村の者たちは皆愚かだ

俳句仙人
亀は実際には鳴きませんが、「亀鳴く」というのは春ののどかさを表す季語です。季語がほのぼのしているので、きっと村人の愚かさというのも深刻なものではないのでしょう。もしかすると穏やかな春の夜に皆で集まって宴会をし、全員へべれけになってしまったのかもしれません。このように取り合わせには想像を膨らませる効果があります。

 

【NO.3】村上鬼城

『 露涼し 形あるもの 皆生ける 』

季語:露涼し(夏)

意味:草木にとどまっている露が何とも涼しげだ。形あるものは皆生きている

俳句仙人
露に涼しさを感じることと、形あるものが皆生きていることには何の因果関係もありません。しかし、露が涼しいという清々しいイメージに引っ張られ、草木や花、虫など、生きているものたちが心地よさそうにいきいきとしている様子が目に浮かびます。「形あるもの」なので、石ころや人工物も作者にはいきいきと見えているのかもしれません。

 

俳句仙人
雪が降り積もるとあたり一面が真っ白になり、まるで世界がまっさらに一新されたような感じがしませんか。作者はそんな新しさに自分の生きた時代が遠くなっていくのを感じたのかもしれません。

 

【NO.5】長谷川櫂

『 白団扇 夜の奥より 怒涛かな 』

季語:白団扇(夏)

意味:何も描かれていない真っ白な団扇がある。夜の闇の向こうから荒れ狂う波が押し寄せているなあ

俳句仙人
暗闇の中、団扇の白色が際立ちます。また、団扇の白色が波頭の白色と重なり合い、波の荒々しさを想像させます。

 

以上、俳句の取り合わせについてでした!

 

リス先生
言葉どうしの距離感に気を付けて、皆さんもぜひ取り合わせの句を作ってみてね!