【森澄雄の有名俳句 20選】生を詠った俳人!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の十七音に季節を表す季語を詠み込んで表現される詩です。

 

さまざまな季語や技法により風景や心情が鮮やかに描き出されています。

 

今回は、昭和から平成にかけて活躍した俳人「森澄雄(もり すみお)」の有名俳句を20句紹介します。

 

 

俳句仙人
ぜひ参考にしてください。

 

森澄雄の人物像や作風

 

森澄雄(もり すみお)は、1919年(大正8年)に兵庫県に生まれ、長崎県長崎市で育ちました。

 

父は俳号を持つ俳人で、父の勧めもあり高校のときに俳句を作り始めています。学内にあった句会に参加したほか、「馬酔木」「寒雷」に参加し、加藤楸邨に師事しました。

 

1942年に大学を卒業と同時に軍に召集され、ボルネオで終戦を迎えます。1946年に復員後は現在の都立豊島高校で教員として働きながら句作を再開しました。

 

「寒雷」の編集や自身の句集を多く発表するなど戦後の俳壇を牽引し、2005年には文化功労者に選ばれています。そして2010年(平成22年)に肺炎で亡くなるまで句集を出し続け、独特の世界観を展開しました。

 

 

森澄雄の作風は、師である加藤楸邨の「人間探求派」の精神を受け継ぎ、「人生と俳句とはなにか」を追求し続けたものとなっています。

 

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日常生活に密着した俳句が多く、地名を詠んだ句や仏教思想が強く出ている俳句も多く残っています。

 

森澄雄の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 白梅に 昔むかしの 月夜かな 』

季語:白梅(春)

意味:白梅が咲く夜に、むかしむかしと言われる光景を思い出す月夜であることだ。

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今ほど夜に明かりがついていなかった大昔の夜は、夜になれば外は真っ暗になります。月に照らされた白梅がほのかに咲いている様子に、「むかしむかし」と呼ばれたはるかな昔の時代を思い起こしている様子を詠んだ句です。

【NO.2】

『 朧にて 寝ることさへや なつかしき 』

季語:朧(春)

意味:朧のように微睡んで眠ることさえ懐かしい気持ちになることだ。

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「春眠暁を覚えず」と言われるように、春の陽気に微睡む様子を「朧」と表現した句です。作者は晩年にうとうとと心地よい眠気を感じたことを回想し、「なつかしき」と表現しています。

【NO.3】

『 さくら咲き あふれて海へ 雄物川 』

季語:さくら(春)

意味:桜が咲いて、散った花があふれるように海へ流れていく雄物川の風景だ。

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桜の花びらが散って川に流れていく様子を花筏と表現しますが、多くの花ひらがあふれて海へ流れ出るという表現が面白い一句です。大量の桜の花びらが川の水のような勢いで広大な海に流れていく様子が浮かんできます。

【NO.4】

『 三月や 生毛生えたる 甲斐の山 』

季語:三月(春)

意味:三月だなぁ。産毛のように木々の緑が生えてきた甲斐の山々よ。

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3月になり、木々の新芽が芽吹き始めた様子を産毛に例えています。遠目から見ると少しだけ木の枝が緑色に染まったように見える絵画のような一句です。

【NO.5】

『 見渡して 我が晩年の 山桜 』

季語:山桜(春)

意味:辺りを見渡せば、私の晩年のような山桜だ。

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山桜が一面に咲く様子に、それまでの人生をしみじみと思い返しています。山桜はソメイヨシノよりも少し遅めに咲くため、咲いている時期が遅いことを自身の人生に例えていたのかもしれません。

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鳴門の渦潮を風に揺れる麦畑に例えた句です。鳴門海峡でも、讃岐の麦畑でも、渦を巻いているように見える強風が吹いていた様子が目に浮かびます。

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白い牡丹の花を湯気に例えています。激しく揺れているのではなく、ゆらゆらとゆっくり揺れている様子が浮かんでくる比喩の句です。

【NO.8】

『 さるすべり 美しかりし 与謝郡(よさごおり) 』

季語:さるすべり(夏)

意味:百日紅の花がなんとも美しい与謝郡の地だ。

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「与謝郡」とは京都府の与謝野町一帯のことです。その名のとおり与謝蕪村の生地と考えられている場所で、そのことを踏まえて「美しかりし」と挨拶のように表現しています。

【NO.9】

『 水平ら 安曇は空に 田を植うる 』

季語:田を植うる(夏)

意味:田んぼの水が平らに見える。安曇の地で空の色をうつした田んぼに稲を植えている。

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「安曇」とは長野県の中部で、ワサビの生産地として有名な場所です。水が綺麗であることが田んぼの水が空をそのまま映しているという表現から伝わってきます。

【NO.10】

『 向日葵や 起きて妻すぐ 母の声 』

季語:向日葵(夏)

意味:ひまわりが咲いている朝に起きた妻は、すぐに母親の声になって子供に呼びかけている。

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夏の早朝から妻が子に対して母親として接している、という日常の光景を詠んでいます。朝から元気な子供の声と、母親としての妻の宥める声が聞こえてくるようです。

 

【NO.11】

『 をみならに いまの時過ぐ 盆踊 』

季語:踊(秋)

意味:娘たちが盆踊りを踊っている。この娘たちも今の時間から年老いていくのだ。

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「いまの時過ぐ」とは、踊っている娘たちがやがて成長し年老いていく様子を表しています。盆踊りという毎年やってくる行事が、毎年のように歳をとるという過ぎ行く年月を象徴している一句です。

【NO.12】

『 送り火の 法も消えたり 妙も消ゆ 』

季語:送り火(秋)

意味:五山送り火である「法」の文字が消えてしまった。「妙」も消えている。

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送り火といえば大文字が有名ですが、松ヶ崎という山には「妙」と「法」という文字が点火されます。送り火の中で唯一仏教と密接した文字のため、晩年は仏教思想を詠んだ作者は寂しさを感じている様子です。

【NO.13】

『 秋の淡海(おうみ) かすみて誰にも たよりせず 』

季語:秋(秋)

意味:秋の琵琶湖畔だ。湖が霞んでいる様子を堪能して誰にも手紙を出さないでいる。

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「淡海」は「近江」のことで、作者は琵琶湖畔に滞在しています。旅情を伝えるための手紙を誰にも出さず、幽玄とも言える風景の中に身を置いている様子を詠んだ句です。

【NO.14】

『 眼鏡はづして 病む十月の 風の中 』

季語:十月(秋)

意味:メガネを外して、10月の爽やかな風の中で自分の病気について思い耽る。

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「病む」の一言で爽やかな秋の様子が一変する一句です。病気についてはメガネを外していることから目の病とする説と、他の部位の病を告げられて気持ちを切り替えるために外しているという説があります。

【NO.15】

『 西国の 畦曼珠沙華(あぜまんじゅしゃげ) 曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 』

季語:曼珠沙華(秋)

意味:関西地方の田の畔には見渡す限り曼珠沙華が咲いている。

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「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」を2回繰り返すことによって一面に咲いている様子が想像できます。曼珠沙華は根に毒があるため、田畑の守りとしてよく植えられていました。

【NO.16】

『 冬空は 一物もなし 八ヶ岳 』

季語:冬空(冬)

意味:冬の空は遮るものがひとつも無い八ヶ岳の姿が見られる。

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冬の雲ひとつない晴天の八ヶ岳を詠んだ句です。夏のように雲にさえぎられることもなく八ヶ岳の雪の白に染まった様子が写実的に描かれています。

【NO.17】

『 寒鯉(かんごい)を 雲のごとくに 食はず飼ふ 』

季語:寒鯉(冬)

意味:冬の美味しいと言われる鯉が雲のようにじっと何も食べずに居るのを飼っている。

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「食はず飼ふ」には二つの意味があり、自分が鯉を食べないことと鯉が餌を食べないことを表しています。作者は自解で「無数の鯉を飼って仙人のような心地を想像した」とも言っているため、文字通りに読むことも可能な句です。

【NO.18】

『 雪国に 子を生んでこの 深まなざし 』

季語:雪国(冬)

意味:寒い雪国に子供を産んだ母のこの深いまなざしよ。

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寒さの厳しい雪国と、我が子にそそぐ深い母の愛情のまなざしを対比させています。厳しい冬がある雪国に、これからの子供の人生を想像している母親のまなざしとも取れる表現です。

【NO.19】

『 除夜の妻 白鳥のごと 湯浴みをり 』

季語:除夜(暮)

意味:除夜の鐘が鳴る大晦日の妻は、白鳥のように湯浴みをしている。

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新年を迎える前にお風呂に入っている妻の様子を詠んでいます。白鳥に例えていることから、白い肌や白いタオルなどが連想される一句です。

【NO.20】

『 夢はじめ 現はじめの 鷹一つ 』

季語:夢はじめ(新年)

意味:初夢に鷹が1羽飛んでいるのを見たが、あの鷹は昔見た鷹かもしれないなぁ。

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初夢で縁起がいいものに「一富士二鷹三茄子」がありますが、作者は1羽の鷹を初夢に見ています。ただ、その鷹はいつか見た風景を夢に見ているのかもしれないという夢と現実の境界線があいまいなことを「はじめ」と繰り返すことで表現しています。

以上、森澄雄の有名俳句20選でした!

 

 

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今回は、森澄雄の作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。
昭和から平成という激動の時代を駆け抜け、俳句と人生について探究し続けた作者の姿勢が作風に表れています。
戦後の俳壇は伝統回帰派と心情を重んじる森澄雄らの作風に分かれているため、ぜひ読み比べてみてください。