【林檎(りんご)の俳句 40選】秋に旬を迎える果物!!リンゴが食べたくなる有名句/一般作品を紹介

 

秋の味覚である林檎は、私たちの生活に密着した果物です。

 

赤くて丸いかわいい見た目や甘酸っぱいさわやかな味と香りを好む人は多いでしょう。

 

私たちにとって馴染み深い林檎は俳句の中ではどのように描かれているのでしょうか?

 

今回は、「林檎(りんご)」にまつわるオススメ俳句(有名俳句+一般俳句作品)を40句紹介していきます。

 

 

リス先生
有名俳句だけではなく、一般の方が作った作品まで紹介していくよ!ぜひ最後まで読んでね!

林檎(りんご)の季語を使った有名俳句集【20選】

 

リス先生
まずは、有名俳句を20句紹介していくよ!

 

【NO.1】高浜虚子

『 食みかけの 林檎に歯当て 人を見る 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:齧りかけた林檎に歯を当てたまま、通りすがった人に目を向けた。

俳句仙人
食べ物を口に運びかけたとき、他の物事に気を取られてモーションがストップしてしまうことってありますよね。そんなワンシーンを切り取った句でしょうか。歯に当たる林檎の感触や香りが伝わってきます。筆者は皮付きの林檎を丸かじりしている映像が浮かびましたが、皆さんはいかがですか?

俳句仙人
星の綺麗な夜。果物屋さんの店頭に林檎が並んでいます。林檎はうず高く積みあがっているのか、数が多くて箱からいくつもはみ出しているのか。あふれた林檎は星の輝く空まで届きそうです。

【NO.3】中村草田男

『 空は太初(たいしょ)の 青さ妻より 林檎うく 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:空は天地の始まりと同じ青さをしている。そんな日に妻から林檎を受け取る。

俳句仙人
「うく」は「浮く」ではなく「受ける」の古語です。「太初」という言葉と「林檎」という言葉は共存することで響きあい、アダムとイブの禁断の果実の話を思い起こさせます。自分と妻をアダムとイブに重ねたのでしょうか。

【NO.4】野澤節子

『 刃を入るる 隙なく林檎 紅潮(こうちょう)す 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:包丁の歯を入れる隙間がないほど林檎は全体が紅色に染まっている。

俳句仙人
林檎は個体によって黄色や黄緑色の部分がありますが、作者の手に取った林檎はそういった部分が一切なく、全体が見事に赤かったのでしょう。全部が赤いという状態を刃を入れる隙間がないほどと言い表したところに工夫が見られます。

【NO.5】飯田龍太

『 母が割る かすかながらも 林檎の音 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:母が割る林檎の音がかすかに聞こえる。

俳句仙人
林檎は切るものであって割るというのはあまり見たことがありませんね。林檎農家の方は素手で割ることがあるようです。母親が自分のために林檎を割ってくれているのを、作者は静かな部屋で耳をそばだてて待っているのでしょうか。

【NO.6】炭太祇

『 岩木嶺(みね)や どこに立ちても 林檎の香 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:東岳の岩木嶺よ。この地はどこに立っていても林檎の香りがする。

俳句仙人
「岩木嶺」とは青森市東部にある東岳という山の嶺の1つです。青森は林檎の一大産地なので、どこに立っていても林檎の香りがするというのには納得します。

【NO.7】稲畑汀子

『 もぐときの 林檎の重さ 指先に 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:木からもいだ時の林檎の重さは指先に伝わる。

俳句仙人
林檎をもいだ時の重さの感覚を、掌ではなく指先に感じているという句。林檎の丸みや感触までより繊細に伝わるような描写です。

【NO.8】林桂

『 制服に 林檎を磨き 飽かぬかな 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:制服で林檎をごしごし磨いているが、飽きないなあ。

俳句仙人
詰襟の少しざらりとした生地で林檎を磨くとどうなるのでしょうか。飽きないということは、何か面白い変化があるのかもしれません。すり減って皮が無くなったりしないのでしょうか……。どのくらいの時間磨き続けているのかも気になります。

【NO.9】寺山修司

『 父と呼びたき 番人が棲む 林檎園 』

季語:林檎園(秋)

現代語訳:父と呼びたい人がいて、その人は林檎園に番人として住んでいる。

俳句仙人
作者は子どものころに戦争で父親を亡くしています。林檎園の番人をしている人に父の面影を見たのでしょうか。

【NO.10】大野林火

『 不断燈 仏の林檎 真赤にす 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:不断燈の明かりが仏に供えた林檎を真っ赤に照らしている。

俳句仙人
「不断燈」は仏前に灯す火で、昼夜問わず灯し続けます。御堂のほの暗さやお線香の匂い、火の揺らめきや林檎の色が眼前に現れるような句です。

【NO.11】中川富女

『 我恋は 林檎の如く 美しき 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:私の恋は林檎のように美しい。

俳句仙人
林檎の鮮やかな赤は美しく、心惹かれますよね。作者の恋も林檎の赤のように燃え上っているのでしょうか。それとも聖書や神話に登場する林檎と重ね合わせるような、神聖な恋なのかもしれません。

【NO.12】西島麦南

『 水温む 四方のひかりに 林檎園 』

季語:水温む(春)・林檎園(秋)

現代語訳:春になって水が温かみを増している。あちこちから差す光の中に林檎園がある。

俳句仙人
季重なりですが、中心となる季語は「水温む」でしょう。春になって川などの水が温かくなる頃、春ののどかな光に包まれて林檎園があります。春らしい穏やかな景色です。

【NO.13】杉田久女

『 父の忌や 林檎二籠(ふたかご) 鯉十尾 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:今日は父の命日だなあ。林檎は籠二杯分、鯉は十尾ある。

俳句仙人
林檎と鯉はお供え物でしょうか。これほどたくさん用意してあるということは、お父さんの好物だったのかもしれません。

【NO.14】岸田稚魚

『 林檎園 やはらかき草 踏みて入る 』

季語:林檎園(秋)

現代語訳:林檎園にやわらかい草を踏みながら入っていく。

俳句仙人
入る際に踏むのが「やわらかき草」というところから、林檎園という場所にも穏やかそうな良いイメージがつきます。甘酸っぱい林檎の香りが漂う素敵な場所だからでしょうか。

【NO.15】日野草城

『 舌端に 触れて余寒の 林檎かな 』

季語:余寒(春)・林檎(秋)

現代語訳:食べた林檎が舌の端に触れると、余寒を感じるなあ。

俳句仙人
「余寒」は春になってもまだ残る寒さのこと。林檎が舌の端に触れた時の冷たさや酸っぱさが春の寒さと重なり合い、しみじみと余寒を感じたのでしょうか。

【NO.16】山口草堂

『 この雨で 林檎の花の 終りけり 』

季語:林檎の花(春)

現代語訳:この雨で林檎の花は終わってしまうだろう。

俳句仙人
雨が降ったことで、林檎の花が散ってしまうことを残念がっている一句です。2週間ほど開花していた花も雨の前では散ってしまっています。

【NO.17】阿波野青畝

『 一刀のもと 香を放つ 初りんご 』

季語:りんご(秋)

現代語訳:一刀のもとに切ると、良い香りを放つ今年初のりんごだ。

俳句仙人
半分に切ることを「一刀のもと」と表現しているのが面白い一句です。切った途端にふわりと漂ってくるリンゴの香りに喜んでいます。

【NO.18】桂信子

『 りんご掌に この情念を 如何せむ 』

季語:りんご(秋)

現代語訳: リンゴを手のひらに乗せる。この情念をどうしたものか。

俳句仙人
リンゴが情念の例えとなっている少し難しい句です。リンゴを手に何かしらの事情を抱えてどうしようか悩んでいる作者の複雑な心境が伺えます。

【NO.19】森澄雄

『 徹夜の稿に いつ置かれたる 林檎凍む(しむ) 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:徹夜で原稿を仕上げていると、いつの間にか置かれていたリンゴが凍ったように冷たくなっている。

俳句仙人
徹夜で仕事をしている作者への差し入れとしてリンゴが置かれていた様子を詠んだ一句です。時間の経過も忘れていたのか、置かれていたリンゴは凍るように冷たくなっています。

【NO.20】鷹羽狩行

『 木にたわわ 地にるいるいと 落林檎 』

季語:林檎(秋)

現代語訳:木にたわわとなっているリンゴと、地に累々と落ちているリンゴがある。

俳句仙人
台風や竜巻などに合うと、収穫直前のリンゴが地面に落ちてしまいます。この句では「たわわ」「るいるい」と表現されているので、無事だったものと落ちてしまったものが半々だったのでしょう。

 

林檎(りんご)の季語を使った一般俳句作品集【20選】

 

リス先生
ここからは、一般の方が詠んだおすすめ俳句作品を20句紹介していくよ!

 

【NO.1】

『 紅指して 林檎は恋を してるよう 』

季語:林檎(秋)

意味:頬紅や口紅をして、林檎は恋をしているようだ。

俳句仙人

林檎の色を人間のお化粧に例えた句ですね。人も恋をして好きな人に会うときは念入りにお化粧をしますが、林檎の綺麗な紅色も誰かを思って染まったと考えると愛着が湧きます。

【NO.2】

『 りんご剥く 赤いリボンを 解くごと 』

季語:りんご(秋)

意味:赤いリボンを解くかのように林檎を剥いていく。

俳句仙人
くるくると林檎を剥いていくと皮が細長く連なります。その様子をリボンを解くと表現しています。かわいらしい例えです。

【NO.3】

『 わけありの わけは問はずに りんご喰ふ 』

季語:りんご(秋)

意味:相手は何か訳ありのようだが、私は詳しいことは聞かずに林檎を食べている。

俳句仙人
友達どうしでしょうか、親子でしょうか。話し相手は黙り込んでしまって、何か事情があるようです。自分は「どうしたの?」と聞くこともせず、ただただ林檎を食べます。思いやりのある沈黙と林檎を噛む音が二人の間に漂っているのが浮かびます。

【NO.4】

『 ロケ隊を 入れて膨らむ 林檎園 』

季語:林檎園(秋)

意味:林檎園に取材が来た。大人数のロケ隊で、林檎園は膨らんだみたいになった。

俳句仙人
普段は静かでこぢんまりとした林檎園なのでしょうか。そこへ賑やかしい取材班が訪れます。小さな園に人や機材がいっぱい入ってくる様子を「膨らむ」と表現したところが面白いです。

【NO.5】

『 冬林檎 長寿の母に 会いに行く 』

季語:冬林檎(冬)

意味:冬林檎を手土産に長寿の母に会いに行く。

俳句仙人
林檎の収穫は遅くとも十一月中旬に終わりますが、特に味がよく見た目も綺麗な林檎は冬に多く出荷されるそうです。つやつやの冬林檎と元気で長生きな母の様子が重なります。

【NO.6】

『 冬りんご 賢さうなる 名前の子 』

季語:冬りんご(冬)

意味:スーパーで冬林檎を手に取る。近くで母親が子どもの名を呼ぶが、賢そうな名前だった。

俳句仙人
状況が描かれていないので、シチュエーションは無限に想像できます。冬林檎の艶やかな様と、賢そうな名前の凛としたイメージがどことなく重なり合うような気もします。

【NO.7】

『 輪に切れば 蜜も輪になる 冬林檎 』

季語:冬林檎(冬)

意味:冬林檎を輪切りにすると、中の蜜も輪っかの形になった。

俳句仙人
当たり前のことを当たり前に詠んでいるのですが、味がありますね。きっと蜜の詰まった美味しそうな林檎なのでしょう。

【NO.8】

『 ニュートンに 林檎わたしに 塩むすび 』

季語:林檎(秋)

意味:ニュートンといえば林檎だが、わたしには塩むすびがある。

俳句仙人
ニュートンにとって林檎がひらめきのヒントとなったように、「わたし」にとっては塩むすびが何かのきっかけになる。おむすびころりんのように転がるところを見てひらめきがあったのかもしれませんし、食べることによって何かいい影響があったのかもしれません。

【NO.9】

『 青林檎 吾妻安達太良(あずまあだたら) 肩を組み 』

季語:青林檎(夏)

意味:青林檎よ。吾妻山と安達太良山は肩を組んでいるようだ。

俳句仙人
「吾妻」も「安達太良」も福島県にある山の名前です。高くそびえる山々は肩を組んでいるように連なっています。青林檎のさわやかな香りや色が、山の青さと重なってみずみずしさを感じさせます。「肩を組み」以外の語頭がすべて「あ」になっていて、小気味良いリズムを生んでいます。

【NO.10】

『 青りんご 素手にて割るや 家郷(かきょう)なる 』

季語:青りんご(夏)

意味:青林檎を素手で割るのだなあ。これこそが故郷だ。

俳句仙人
飯田龍太の句でも触れましたが、林檎を素手で割ることはあまりありません。しかし、作者の実家では当たり前にやっているのでしょう。作者は林檎を素手で割るという行為に故郷を感じています。

【NO.11】

『 青りんご いつもとちがう 服を着て 』

季語:青りんご(夏)

意味:青りんごはいつもと違う服を着ている。

俳句仙人
林檎といえば赤色を思い浮かべることが多いです。たまに見かける青林檎に服の色が違うと思うところにかわいさがあります。

【NO.12】

『 青りんご 村の人口 減るばかり 』

季語:青りんご(夏)

意味:青りんごよ。この村の人口は減るばかりだ。

俳句仙人
厳しい暑さが残りながらも夏の盛りを過ぎた頃。帰省していた人々も都会へ帰っていき、村は日常に戻ります。すっかり人がいなくなり、閑散とした村の寂しげな様子が目に浮かびます。青りんごも農園ではなくぽつんと庭に成っているのかもしれません。

【NO.13】

『 夜は星の 色となりたる 花林檎 』

季語:花林檎(春)

意味:林檎の花は夜には星の色になっているのだなあ。

俳句仙人
林檎の花は白色です。その白には星の色まで映ってしまうという感性はロマンティックです。空には満天の星、地上には畑一面に満開の林檎の花。圧巻の光景でしょう。

【NO.14】

『 カーブミラーに 林檎の花が あふるるよ 』

季語:林檎の花(春)

意味:カーブミラーに林檎の花があふれるほどたくさん映っているよ。

俳句仙人
「あふるる」のひらがな表記と最後の呼びかけの「よ」が優しい雰囲気を醸しています。林檎の花はカーブミラー全面に映っているかもしれませんし、ミラーの立つ横の敷地に林檎の木が植えてあり、敷地からはみ出してミラーにかかるほど満開に咲いているのかもしれません。皆さんはどんな映像が浮かびましたか。

【NO.15】

『 住む里に 林檎の花の 薫り満つ 』

季語:林檎の花(春)

意味:私の住んでいる里には林檎の花の香りが満ちている。

俳句仙人
林檎の花自体あまり見かけることがないので、香りはなおさら馴染みがないかもしれません。実と同じように甘酸っぱいような香りがするそうです。そんないい香りが満ちている里に、足を運んでみたいです。

【NO.16】

『 ストーブの 上の林檎は 幸せの 』

季語:ストーブ(冬)・林檎(秋)

意味:ストーブの上で作られる焼きリンゴは幸せの味がする。

俳句仙人
この句はストーブの上で焼きリンゴを作っている様子を詠んだ句です。ふんわりと漂ってくる甘い匂いはまさに幸せを感じる象徴でしょう。

【NO.17】

『 林檎手に とる重力に 耐えかねて 』

季語:林檎(秋)

意味:リンゴを手に取ると、予想よりも重くて重力に耐えかねて落としそうになってしまった。

俳句仙人
見た目よりもリンゴが重く、思わず落としそうになった様子を「重力」と表現している面白い句です。病後で体力が衰えている様子とも読み取れます。

【NO.18】

『 風強し 林檎の花の 果敢かな 』

季語:林檎の花(春)

意味:風が強い中で咲いている林檎の花のなんと果敢なことだろうか。

俳句仙人
花が散ってしまいそうな強風の中でも咲いているリンゴの花の強さに感嘆している一句です。どれだけ揺られても落ちない花に生命力の強さを感じています。

【NO.19】

『 けふの日を 祈りて剥くや 冬林檎 』

季語:冬林檎(冬)

意味:今日という日が無事に済むように祈りながら剥く冬のリンゴだ。

俳句仙人
その日の朝に一日の平穏を願っているのか、特別な日なのか色々な想像ができる句です。リンゴを剥きながら祈りを捧げている様子が、どこか神聖な儀式のように見えてきます。

【NO.20】

『 林檎剥く 窓のお月さん 今晩は 』

季語:林檎(秋)

意味:リンゴを剥いている。窓から見えるお月さん、こんばんは。

俳句仙人
窓のある場所でリンゴを剥いていると、ふと見上げた先に月が出ていたという風景を詠んだ句です。「お月さん」と気軽に呼びかけているのがユーモラスな一句になっています。

 

以上、林檎(りんご)をテーマにした俳句作品でした!

 

 

リス先生

僕たちに馴染みの深い果物だけど、改めて手に取ったり切ってみたり並べてみたりすると、新しい発見があるかもしれないね!

実体験の中の気づきは、すばらしい俳句の種になるよ。種をたくさん集めて、素敵な俳句の花を咲かせよう!!

 

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