【富士山の有名俳句 30選】春夏秋冬の季語!!松尾芭蕉や小林一茶などの俳人の名句を紹介

 

日本一の高さを誇る山「富士山」。

 

富士山のその美しい姿は、過去に多くの俳人に詠まれてきました。

 

 

今回は、四季折々の「富士山」の有名おすすめ俳句を季節ごとに30句紹介していきます。

 

俳句仙人

ぜひご一緒に富士山の美しさを詠った句を味わっていきましょう。

 

富士山を詠った有名俳句【春編 7選】

 

【NO.1】内藤鳴雪

『 元日や 一系の天子 富士の山 』

季語:元日(新年)

現代語訳:天皇と同じく、誇り高き元日の富士山であることだなあ。

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「一系の天子」とは、天皇制のことでここでは明治天皇を意味します。

鳴雪は、正岡子規よりも20歳年上でしたが、子規を師とし子規から俳句を学びました。

明治時代の人々にとって天皇は誇り高き「一系の天子」であり、富士山に昇る初日の出の気高さともに強調されています。

【NO.2】高浜虚子

『 初空に うかみし富士の 美まし国 』

季語:初空(新年)

現代語訳:初空に浮かぶ富士山が美しい国であることだ。

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「初空」とは、元日の朝の空のことです。この句では新しい年の始まりにふさわしい、晴れ渡った空の中に浮かぶ富士山。「美まし国(うましくに)」は美しい日本のことを指します。

この句は、真珠湾攻撃の翌年に詠まれた句です。作者は、初空に浮かぶ富士山を見て、戦時中の日本を憂いているともとれます。

【NO.3】山崎宗鑑

『 元朝(がんちょう)の 見る物にせん 富士の山 』

季語::元朝(新年)

現代語訳:元日の朝、富士の山を見るものにしよう。

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「元朝」とは、「元日の朝」を意味します。

めでたい元日の朝と、神々しくそびえ立つ富士山の取り合わせが、印象的な句です。

【NO.4】伊藤信徳

『 富士にそうて 三月七日 八日かな 』

季語:三月(春)

現代語訳:富士山にそって旅をする、三月七日八日のことだ。

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この句の前書に、「旅行」とあります。

作者は、美しい富士山を見ながらゆっくりと旅を続けたのです。

「七日八日かな」の語により、急がずにのびやかに富士を楽しみながら旅行する作者の様子が思い描かされます。

【NO.5】小林一茶

『 菜の花の とつぱずれなり ふじの山 』

季語:菜の花(春)

現代語訳:菜の花が一面に咲くその端の方に、富士山が小さく見えることだ。

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「とつぱずれ」とは、「突外れ」と書き、「最も端(はし)」という意味です。

一面の菜の花畑の端に、小さく見える富士山。遠近法をうまく用いた句です。

【NO.6】山口誓子

『 富士山を 覆ひし雪の 残に触る 』

季語:雪の残/残雪(春)

現代語訳:富士山を覆っている残雪に触れる。

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残雪期の富士山に登った時の様子を詠んだ句です。遠くから残っている雪を眺めるのと、実際に手で触れられる距離まで来るのとでは感慨深さも違うと詠んでいます。

【NO.7】富安風生

『 二歩ふめば 二歩近づきぬ 春の富士 』

季語:春の富士(春)

現代語訳:二歩踏めば二歩近づいてくる春の富士山だ。

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歩いていけばいくほど富士山が近づいてくるという映像のような俳句です。春の富士山はまだ雪に覆われていますが、それでも真っ白ではなく山肌を見せているため近づいている実感が湧くのでしょう。

富士山を詠った有名俳句【夏編 8選】

【NO.1】秋山秋紅蓼

『 夜の富士の 涼しく見えてゐて たばこぼん 』

季語:涼し(夏)

現代語訳:夜の富士山がとても涼しげに見えていて、それを眺めながらたばこぼんを置く。

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日が暮れると、涼しい夏の夜。まだうっすらと見える富士山が涼しく見えます。

その中でたばこぼん(煙草盆)を置き、たばこを吸う作者。「たばこぼん」と平仮名で表しているため、ゆったりとした雰囲気が伝わります。

【NO.2】与謝蕪村

『 不二ひとつ うづみのこして 若葉かな 』

季語:若葉(夏)

現代語訳:周りの山々は若葉につつまれているが、富士山だけはまだ残っている。

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富士山のふもとの山々は、若葉の季節。それに対して、富士山はまだ雪が残り、若葉に包まれず残っているのです。

【NO.3】松尾芭蕉

『 目にかかる 時やことさら 五月富士(さつきふじ) 』

季語:五月富士(夏)

現代語訳:ちょうど見えるところで、富士山の全てが見ることができた。

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「五月富士」とは、旧暦で5月頃の富士山の姿のことをいいます。

残雪が消え、新緑に囲まれた景色の中に悠々とそびえる富士山の雄姿は、人の心を打つのです。

この句の前書きに、「箱根の関越えて」とあります。芭蕉が帰郷する道の途中、箱根を越えたときに見た富士山。新緑に囲まれた富士山の全てを見ることができた、芭蕉の感動が伝わります。

【NO.4】大島民郎

『 雪解富士(ゆきげふじ) 林道山の 端を行けば 』

季語:雪解富士(夏)

現代語訳:雪解けを迎えた富士山が林道を歩いて山の端に出た時に見えた。

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「雪解富士(ゆきげふじ)」とは、新緑の季節となり山頂の雪が解けた富士山のことです。

富士山の雪は、五月に解け始め、夏山らしい強い姿の富士山の姿になります。

林道を歩き、山の端に出た時に富士山の姿を見ることができた、作者の喜びが表されています。

【NO.5】阿波野青畝

『 赤富士の 雲紫に かはりもし 』

季語:赤富士(夏)

現代語訳:日の出の光によって、富士山にかかる雲も紫色に変わっていくことだ。

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「赤富士」とは、日の出の光で、富士山の山肌が赤く染まることをいいます。

「赤富士」が季語となったのは、戦後のことです。

朝昇る太陽の光によって、富士山もそれにかかる雲も色が変ってゆく。

短い時間の中で、変化する富士山と周囲の景色を印象的に詠った句です。

【NO.6】原石鼎

『 秋ちかく いつしか富士へ 入る日かな 』

季語:秋ちかく(夏)

現代語訳:秋が近くなってきた。いつしか富士山へ向かって夕日が沈んでいくなぁ。

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太陽は季節によって沈む位置が変わってきます。作者がいつも見ている地点からは夏の間は富士山にかからなかった夕日が、秋が近づくにつれて富士山に沈むようになったと時間の経過を詠んでいる句です。

【NO.7】正岡子規

『 雲の峰 いくつこえきて 富士詣 』

季語:富士詣(夏)

現代語訳:湧き出る雲の峰をいくつも越えて来て富士山詣をする。

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「雲の峰」とは入道雲を表す季語です。ここでは「雲の峰」と詠むことで険しい道のりを表し、富士山詣でをしている人々を詠んでいます。

【NO.8】山口素堂

『 富士山や かのこ白むく 土用干 』

季語:土用干(夏)

現代語訳:富士山の麓に、鹿の子や白無垢の衣がひるがえる土用干しの日だ。

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「土用干」とは土用の日に物を干す習慣で、衣服の他にも梅干しなど色々なものを干します。「かのこ」「白むく」はそれぞれ干された衣服の模様や色を表したものです。

 

富士山を詠った有名俳句【秋編 7選】

 

【NO.1】森田游水

『 直ぐ消えし 富士の初雪 空の紺 』

季語:富士の初雪(秋)

意味:すぐに消えてしまった富士の初雪と、秋空の紺色のことだ。

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富士山には、九月下旬頃初雪が降ります。初冠雪の富士山は、とても美しいのですが、この初雪は短い期間で溶けてしまいます。本格的に雪が積もるのは、まだ後のことです。

すぐに消えてしまった富士山の初雪を惜しんだ句です。初雪の白さと、紺色の空がうまく対比されています。

【NO.2】上島鬼貫

『 によつぽりと 秋の空なる 富士の山 』

季語:秋の空(秋)

意味:秋の空に富士山がのっぽりと高くそびえている。

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「にょつぽり」は「とびぬけて高い」という意味です。

秋の晴れ渡った空の下、高くそびえる富士山の様子がとてもすがすがしく伝わってきます。

【NO.3】河東碧梧桐

『 この道の 富士になり行く 芒(すすき)かな 』

季語:芒(秋)

意味:この芒(すすき)の道を進んでいくと富士山につながっている。

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「芒(すすき)」は、秋の七草の一つであり、お月見のお供えとしても使われる植物です。あたり一面芒に埋まっている道をたどると、富士山へつながるという秋の情景が印象的です。

【NO.4】松尾芭蕉

『 霧時雨(きりしぐれ) 富士を見ぬ日ぞ 面白き 』

季語:霧時雨(秋)

意味:霧時雨で、富士山を見ることができないが、そんな日こそ面白いことだ。

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「霧時雨」とは、秋の小雨のような霧のことです。

「霧時雨」のため、富士山を見ることができないが、霧時雨のむこうにある富士山を思い描くことができて面白いと芭蕉は詠っています。日頃見ることができる富士山が見えないことによって、かえって面白さを感じるという芭蕉の奥深い美意識が感じられます。

【NO.5】飯田蛇笏

『 秋の富士 日輪(にちりん)の座は しづまりぬ 』

季語:秋の富士(秋)

意味:秋の富士山 太陽が鎮座している。

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「日輪(にちりん)」とは太陽のことです。

秋の富士山と、神のようにその場所に鎮座する太陽の情景を詠っています。

【NO.6】水原秋桜子

『 秋耕(しゅうこう)や 富士をさへぎる 山もなく 』

季語:秋耕(秋)

現代語訳:秋になって田畑を耕している。富士山をさえぎる山もなくよく見えることだ。

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「秋耕」とは収穫直後の田畑を次の種まきのために耕す様子を表す季語です。富士山は独立峰のため周りにさえぎるものもなく、周囲の田畑も刈り入れが終わったため山自体がよく見えると詠んでいます。

【NO.7】富安風生

『 紺天を 張り一方に 秋の富士 』

季語:秋(秋)

現代語訳:紺色の空を張る一方に秋の富士山がそびえている。

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雪のない時期の富士山の山肌は濃い藍色に見えます。この句では空の紺色と富士山の山肌の色を対比して美しさを称えています。

富士山を詠った有名俳句【冬編 8選】

【NO.1】斎藤徳元

『 武蔵野の 雪ころばしか 富士の山 』

季語:雪ころばし(冬)

意味:武蔵野の雪をころがして作ったのだろうか、あの富士山は。

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「雪ころばし」とは、雪のかたまりを転がして大きなかたまりにする、雪遊びのことです。

この句では、富士山を、雪をころがして作った雪だるまのように見立てています。とても面白い句です。

【NO.2】松島十湖

『 ふじは只(ただ)はれて 時雨(しぐれ)の大井川 』

季語:時雨(冬)

意味:富士山はただ晴れていて、大井川は時雨が降っている。

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「時雨(しぐれ)」とは、晴れたと思うと降りしばらくすると止むのを繰り返す、冬の通り雨のことです。

「大井川」は、静岡県を流れる川です。遠近法を使い、富士山と大井川の風景を描いています。

【NO.3】原田浜人

『 雪富士の 現(あ)れて一番 渡船かな 』

季語:雪富士(冬)

意味:一番めの渡り船が出るときに、雪富士がちょうど現れたことだ。

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作者が芦ノ湖で詠んだ句です。芦ノ湖とは、神奈川県にある、箱根山のカルデラ湖です。

湖で渡り船に乗ろうとしたそのときに、霞んでいた雪富士の姿がちょうど見えるようになったのです。その感動を、「かな」という切れ字を使うことで表しています。

【NO.4】久保田万太郎

『 小春富士(こはるふじ) 夕かたまけて 遠きかな 』

季語:小春(冬)

意味:小春日和の富士山、夕方になって遠く感じることだ。

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「小春」とは、まだ本格的に寒くはないが、春を思わせるような陽気の日のことです。

「夕かたまけて」とは、「夕方設けて」夕方になってという意味です。

【NO.5】池西言水

『 大年(おおとし)の 富士見てくらす 隠居かな 』

季語:大年(冬)

意味:大晦日に、富士山を見て過ごす隠居生活のことだ。

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「大年(おおとし)」とは「大晦日」のことです。

大晦日は忙しい日ですが、隠居生活の作者は富士山を見てゆったりすごしているのでしょう。

【NO.6】高井几董

『 晴る日や 雲を貫く 雪の富士 』

季語:雪(冬)

現代語訳:晴れている日だ。雲を貫くように雪の富士山が見えている。

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富士山に雲がかかっていて、山頂だけが見えている様子を詠んだ句です。空は晴れていますが、富士山の付近だけ雲が出ていたのでしょうか。

【NO.7】篠田悌二郎

『 歪みなき 冬田の畦を 冨士の前 』

季語:冬田(冬)

現代語訳:歪みのない冬の田んぼの畔道を歩く。ここは富士山の前だ。

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歪みなくまっすぐに続く田んぼの畦道が、富士山に向かって伸びている様子を詠んだ句です。冬のため作物で畦道が見えないということはなく、辺り一面の畔が富士山に向かっている雄大な光景が浮かんできます。

【NO.8】長谷川かな女

『 大和より 国原つづき 小春富士 』

季語:小春(冬)

現代語訳:大和の地から広々とした大地が続いている小春日和の富士山だ。

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「大和」とは奈良県を示す場合と日本という国を示す場合があります。「国原」という広い大地や平野を表す単語があるため、どちらの意味でも取れる句です。

以上、富士山について詠んだおすすめ有名俳句集でした!

 

 

俳句仙人

今回は、富士山について詠んだおすすめ俳句を30句紹介しました。

富士山は四季によって様々な姿を見せ、人々を魅了します。

富士山の俳句を鑑賞する時には、その時々の富士山の姿を調べて味わうことをおすすめします。
かつて俳人が詠んだ、富士山の美しさをぜひ楽しんでください。

 

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