【能村登四郎の有名俳句 20選】昭和•平成期の俳人!!俳句の特徴や人物像･代表作など徹底解説！

やり投げの練習をしている人を見ての一句です。大会があるのか、新学年である春でも練習を欠かさない勤勉さが「槍」の繰り返しから伝わってきます。

「春愁」とは「春の華やかさを見て感じる物憂げな気分」という意味です。少し気分が落ち込んでいる中で何かを思い出したのか、思い出し笑いをしています。

白木蓮は木蓮よりも高く成長する木で、純白の花を咲かせます。美しい白い花ですが、咲いた時からもう翳りがあるという栄枯盛衰のような作者の価値観を表している一句です。

「流し雛」とは紙で作った人形に厄を移して川に流す行事です。無事に自分と子供の流し雛が流れて行ったのを確認してその場を去ろうとする親子の一瞬をとらえています。

春にしては暑い日だったのか、夢の内容がおそろしくて汗をかいてしまったのか、どちらの意味にも取れる句です。「汗すこし」と結んでいるところにはっと夢からさめて起き上がった様子が表現されています。

仕事に熱中していて時間が経つのも忘れ、あっという間にお昼の休憩時間になった様子を詠んでいます。外に休憩に出かけてもうこんなに暑くなっていたのかという時間経過への驚きも詠嘆の「かな」から読み取れる句です。

「早苗饗」とは田植えが終わり田の神を送り出す神事のことで、現在では田植えを終えたあとの宴会を意味します。そんな宴会の日はみな夜でも着飾って楽しみ、星もお酒を飲んで酔っているように見えたのでしょう。

「箒草」とは「帚木」とも呼ばれている植物のことで、ほうきを作るのに使われていました。こんもりとした生え方をするため、月明かりという薄暗さでは周りがよく見えない様子を表しています。

作者は東京生まれですが、父親は加賀の生まれであると言われています。「汗ばんで」としか表現されていませんが、熱論を交わしあっている最中を詠んだものかもしれません。

この句は作者の後期の作品と言われています。年をとって道具箱の釘をばらまいてしまい、自身も老いたなぁという感慨を「夏痩せ」という季語に託しているとも考えられている句です。

長靴と詠まれていますが、描写からして腰まで覆う胴付長靴と呼ばれるものでしょう。台風の被害を確認するために外回りをしている教師たちの苦労が読み取れます。

スイカを食べる時は「シャクシャク」という音がしそうですが、ここでは季節外れのスイカで音もしない様子を詠んでいます。スイカは少しでも悪くなると弾力が出てきてしまうので、そういった意味での「季すぎし」なのかもしれません。

「硯洗」が季語になります。七夕の前日に硯を洗って字がうまくなるように願う風習で、我が子が字の練習をする年齢になったという嬉しさが感じられる句です。

秋の旅路の途中にもかかわらず次の旅が恋しくなっている様子を詠んでいます。この句は作者の死の前年の句で、それまでの旅を思い返して旅が恋しくなっている心情を詠んだと言われています。

ここで詠まれている「子等」とは自分の子ではなく、学校の生徒たちです。試験の作成や採点、補習など忙しい仕事がないため、先生たちも楽なのでしょう。

枯れ野を海に例え、遠くに誰かが歩いている様子を沖と表現しています。火を焚いていたのは寒さからかキャンプのような娯楽のためか、いろいろな想像がふくらむ句です。

冬の静かな朝の中で箒が倒れるという、静けさを破る音を詠んだ句です。冬の朝の静けさと取るか、朝になって気温が上がりゆるんでいく空気と取るか、さまざまな解釈が可能になっています。

冬になると空気が澄み、遠くまで見渡すことができます。夕焼けも雲ひとつなくまさに焼けるような色をしていて、遠くにあった木がはっきり見えてくるという十二月の風景を詠んだ句です。

この句は2000年の年末に作られました。その年に友人を2人亡くしている作者が、2人との思い出や別れが続いた1年間を思い返している一句です。

「数へ日」とは年末まで残り少ない日数であることです。寒く忙しい時期だからこそ素うどんの素朴なおいしさとあたたかさが身に染みています。

今回は、能村登四郎の作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。

能村登四郎は40年におよんだ教師生活や、3つの句集それぞれで作風が変わる多彩な才能を発揮した俳人です。
明治大正期の近代俳句とはまた違った現代俳句の創始者の1人でもあるので、ぜひ句集を読んでみてください。