【斧入れて香におどろくや冬木立】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!

 

古来からの伝統的な日本の文芸であり、今なお進化を続けている「俳句」。

 

俳句と聞けば与謝蕪村の句を思い浮かべる方も少なくないでしょう。

 

今回は数ある名句の中でも「斧入れて香におどろくや冬木立」という与謝蕪村の句を紹介していきます。

 

 

本記事では、「斧入れて香におどろくや冬木立」の季語や意味・表現技法・作者などについて徹底解説していきます。

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

 

「斧入れて香におどろくや冬木立」の作者や季語・意味

 

斧入れて 香におどろくや 冬木立

(読み方:をのいれて かにおどろくや ふゆこだち)

 

こちらの句の作者は「与謝蕪村(よさぶそん)」です。

 

(与謝蕪村 出典:Wikipedia

 

与謝蕪村は江戸時代の中期に活躍した俳人です。俳句を添えた俳画と呼ばれる絵をかく画家でもありました。

 

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松尾芭蕉や、小林一茶と並んで江戸時代の俳句の巨匠とされています。

 

 

季語

この句の季語は「冬木立(ふゆこだち)」、季節は「冬」です。

 

「冬木立」とは、冬の落葉した木々のことを指します。

 

意味

こちらの句を現代語訳すると・・・

 

「斧で切りつけてみると、冬で枯れているように見える木でも鮮烈な香りが立ち、驚かされることだ。」

 

という意味になります。

 

この句が生まれた背景

こちらの句は、与謝蕪村が明和年間(1764年~1772年)の終わりころに詠んだ句とされています。

 

「秋しぐれ」という俳書に所収されている句になります。

 

与謝蕪村は「樵夫伐木図」といって、きこりが木を切る様子を描いた絵も何点か残しています。

 

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この句にも絵画的なひらめきがあったのかもしれません。

 

「斧入れて香におどろくや冬木立」の表現技法

 

こちらの句で用いられている表現技法は・・・

 

  • 切れ字「や」(二句切れ)
  • 倒置法
  • 「冬木立」の体言止め

     

    になります。

     

    切れ字「や」(二句切れ)

    俳句では、作者の感動・詠嘆を表す「かな」「や」「けり」などの言葉を切れ字と呼びます。

     

    この句では、「香におどろくや」の「や」が切れ字に当たります。

     

    木の香りにはっとしたその感動を句に込めたことが分かります。

     

    また、この句において切れ字は二句目に使われており、ここで一旦句が切れていますので「二句切れ」の句となります。

     

    倒置法

    倒置法とは、本来の言葉の順番をあえて入れ替えて逆にして印象を強めたり、余韻を残したりする表現技法のことです。

     

    この句は、普通の言葉の順番にすると「斧入れて 冬木立(の)香におどろくや」となります。

     

    しかし、今回の句のように「冬木立」を後ろに持ってくることで、余韻を持たせ、作者の感じた驚きをより強く伝えようとしています。

     

    「冬木立」の体言止め

    体言止めとは、句の終わりを体言、名詞で止めることで、余韻を残す表現技法のことです。

     

    この句は「冬木立」で終わる体言止めの句です。

     

    一見では生きている気配がなさそうな「冬木立」が、生あるもののエネルギーを秘めていたことに対する感動を印象的に伝えようとしています。

     

    「斧入れて香におどろくや冬木立」の鑑賞文

     

    【斧入れて香におどろくや冬木立】は、冬の木にひそむエネルギーに対する感動を詠んだ句です。

     

    作者は、生活で使う薪でも取りに冬木立に斧をもって分け入ったものでしょうか。

     

    枯れ木のように見える木に斧を一度ではなく、二度、三度と打ち付けるうちに、すがすがしい木の香りが立ち上ったのに気が付いたのでしょう。

     

    斧で切りつけて香りが立つというのは、木が生きているからです。

     

    現代に生きる私たちは、生活の中で斧を木に打ちつけることはあまりありません。木の香りといって思い浮かぶのは、新築の木造の家の香りや、新品の木製品などでしょうか。

     

    しかし、生きている生の木から立ち上る香りは、新築の家のような香りとは違った生々しさ、命のエネルギーに満ちています。

     

    この句で作者が感じているのは、そんな生きた香りです。冬枯れに見える木立も、やがて来る春には芽を吹き、緑で覆われるのでしょう。

     

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    日々の生活の中で得た気づき、驚きを素直に詠んだ句と言えます。

     

    知っておきたい!冬木立に関する有名俳句【5句】

     

     

    「冬木立」はほかの季節の木立と違い、葉を落としている姿が寂しさや冬の凛とした空気を感じさせる季語す。

     

    俳人たちはどのように冬木立を詠んだのでしょうか。

     

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    ここでは参考のために、「冬木立」について詠んだ有名俳句を5句紹介していきます。

    【NO.1】加賀千代女

    『 吹く風の はなればなれや ふゆ木立 』

    季語:ふゆ木立(冬)

    意味:吹く風が離れ離れになるほど葉がない冬の木立だ。

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    葉が落ちていなければ木の葉に阻まれて音を立てるだろう風が、木の葉が落ちて枝と幹になってしまったために離れ離れのように吹き抜けていく様子を詠んでいます。夏の風とは違い、どこか寒々しい音を立てている風が聞こえてくるようです。

    【NO.2】正岡子規

    『 犬吠て 里遠からず 冬木立 』

    季語:冬木立(冬)

    意味:犬が吠えているので、里がそこまで遠くないだろう場所にあるのだろう、この冬木立の道は。

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    現在では街と街の間は道路で結ばれていますが、作者の生きていた当時はまだそこまで整備が進んでいませんでした。里がどこにあるかわからない冬の木立の間を歩いているうちに、犬の鳴き声が聞こえてきたので人がいるのだろうと心強く感じています。

    【NO.3】川端茅舎

    『 冬木立 ランプ点して 雑貨店 』

    季語:冬木立(冬)

    意味:冬の木立が並んでいる中、雑貨店ではランプを灯している。

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    雑貨店がある冬の木立ということで、落葉樹が街路樹になっている通りのお店を連想させます。戦前だからか電気ではなくランプを灯しているところが風情を感じる一句です。黒々とした街路樹にポツンと灯るランプの明かりは、道を通る人に安らぎを与えたことでしょう。

    【NO.4】高浜年尾

    『 冬木立 静かな暗さ ありにけり 』

    季語:冬木立(冬)

    意味:冬の木立には静かな暗さがある。

    俳句仙人
    木陰とも言うように、木の下の暗さと言えば夏などの葉が茂っている時期を思い浮かべます。しかし、作者は敢えて木の葉が落ちた冬の木立にこそ独特の暗さがあると詠んでいるのです。木の葉が風に揺れることのない様子を「静かな暗さ」と表現しているのでしょう。

    【NO.5】金子兜太

    『 冬木立 この街角も 窓も水色 』

    季語:冬木立(冬)

    意味:冬の木々が並んでいる。この街角も窓もみんな水色だ。

    俳句仙人
    窓が水色であることはカーテンなどから想像しやすいですが、街角が水色と表現しているのが独特な一句です。お店があってペンキが塗られていたのか、掲示物などで水色に見えるのか想像が膨らみます。そんな鮮やかな水色と、葉を落とした暗い色の冬木立が対比となっている表現です。

     

    作者「与謝蕪村」の生涯を簡単に紹介!

    Yosa Buson.jpg

    (与謝蕪村 出典:Wikipedia)

     

    与謝蕪村、本名は谷口信章と言われています。生まれは享保元年(1716年)、没年は天明3年(1784年)です。

     

    摂津国、現在の大阪府の生まれです。どのように成長したのか、詳しい記録はありませんが、江戸で20歳くらいのころから俳諧を学んだようです。

     

    江戸時代前期に芸術性の高い句を多く詠んだ松尾芭蕉にあこがれていたと言われます。写実的で絵画のような俳諧を得意とし、また、句を書き添えた絵、俳画を始めたのも与謝蕪村です。俳諧は師について学んだようですが、絵画については独学であっただろうと言われています。

     

    45歳のころ、遅い結婚をして一人娘を設けたようです。

     

    明治時代、近代詩歌の礎を築いた正岡子規は、松尾芭蕉や与謝蕪村を高く評価したことが、今でも有名な俳人として語られる契機となりました。

     

    与謝蕪村のそのほかの俳句

    与謝蕪村の生誕地・句碑 出典:Wikipedia