俳句といえば「季語」。
しかし、ピンポイントで10月の季語と言われてもすぐには思いつかないものです。
そもそも10月は旧暦でいうと秋でしょうか…?それとも初冬でしょうか…?
その基準も含めて、今回は10月の季語とその季語を使った上手い表現のおすすめ俳句(有名俳句+一般俳句作品)を紹介していきます。
10月26日<柿の日>
俳人・正岡子規が明治28年のこの日からの奈良旅行の際に詠んだ「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」が由来になっています。
柿を食べていると法隆寺の鐘が鳴り秋を感じた、という句です。秋ですね~(*´人`)#秋 #俳句 #季語 #柿 #法隆寺 pic.twitter.com/M6FrzUpCZL
— 【仏教検定】毎日通信 (@bukken_everyday) October 25, 2017
俳句に10月らしさを出す!10月の季語を知ろう
まずは俳句作りのキーとなる「季語」は、漢字の通り春・夏・秋・冬という四つの「季節」を表す「言葉」のことです。
ただし、その季節の基準となるのは旧暦ですので、今の季節感とは少しずれている点に注意が必要です。
旧暦で立春(1月)、立夏(4月)、立秋(7月)、立冬(10月)がそれぞれの季節のスタートとされ、新暦との関係は下記の通りですので覚えておきましょう。
- 春:1月〜3月 (新暦 2〜4月)
- 夏:4月〜6月 (新暦 5〜7月)
- 秋:7月〜9月 (新暦 8〜10月)
- 冬:10月〜2月 (新暦 11〜1月)
今回は、新暦で10月の俳句についてですので「晩秋(ばんしゅう)」になります。
10月(晩秋)の季語【一覧】
【時候・天文・地理】
十月・晩秋・肌寒・朝寒・夜寒・秋深し・暮れの秋・秋惜しむ・秋時雨・野山の色・刈田・高潮
【生活・行事】
新米・稲刈り・柚味噌・きりたんぽ・干柿・紅葉狩り・菊花展・夜なべ・体育の日・ハロウィン
【植物・動物】
柿・りんご・栗・柚子・金柑・紅葉・レモン・椎の実・銀杏(ぎんなん)・銀杏(いちょう)散る・稲の穂・どんぐり・松ぼっくり・カボス・生姜・金木犀・松茸・無花果(いちじく)・柘榴(ざくろ)・秋刀魚・雁・もず・バッタ
10月の季語を使った有名俳句集【20選】
ここからは有名俳人が過去に詠んだ俳句を紹介していきます。
10月の季語を使った有名な俳句と言ってもなかなか思いつきませんが、「柿」を詠んだものと言えばピンとくるのではないでしょうか?
【NO.1】正岡子規
『 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺 』
季語:柿(秋)
意味:柿を食べたと同時に法隆寺の鐘が鳴った。
【NO.2】松尾芭蕉
『 この道や 行く人なしに 秋の暮 』
季語:秋の暮(秋)
意味:秋の夕暮れに歩く人のいないひとすじの道が続いている。
【NO.3】松尾芭蕉
『 秋深き 隣は何を する人ぞ 』
季語:秋深き(秋深し)(秋)
意味:こんなに深まってきた秋の日に隣の人は何をして過ごしているのだろうか。
【NO.4】与謝蕪村
『 秋雨や 水底の草を 踏みわたる 』
季語:秋雨(秋)
意味:秋雨が降っている中を水底の草を踏みながら川を渡った。
【NO.5】夏目漱石
『 秋の山 静かに雲の 通りけり 』
季語:秋の山(秋)
意味:紅葉した秋の山に静かに雲が通っていく。
【NO.6】高浜虚子
『 松茸の 香も人に よりてこそ 』
季語:松茸(秋)
意味:いい香りだと言われている松茸もどう思うかは人によるものだ。
【NO.7】杉田久女
『 西日して 日毎に赤らむ 柿の数 』
季語:柿(秋)
意味:西日にあたっているように日毎に赤くなる柿の数が増えているようだ。
【NO.8】飯田蛇笏(いいだだこつ)
『 いわし雲 大いなる瀬を さかのぼる 』
季語:いわし雲(秋)
意味:川に映ったいわし雲が流れて大きな瀬を遡っているように見えている。
【NO.9】中村汀女
『 銀杏が 落ちたる後の 風の音 』
季語:銀杏(秋)
意味:銀杏が下に落ちた後に風の音が聞こえてきた。
【NO.10】松本たかし
『 山栗の 大木のある なつかしき 』
季語:栗(秋)
意味:山栗がなっている大きな木があるのを見るとなつかしい思いがする。
【NO.11】松尾芭蕉
『 蛤の ふたみにわかれ 行く秋ぞ 』
季語:行く秋(秋)
意味:ハマグリが二つ身に分かれるように、私は二見浦に向かう秋であることだ。
【NO.12】正岡子規
『 三千の 俳句を閲し 柿二つ 』
季語:柿(秋)
意味:たくさんの俳句を閲覧したので、柿を二つ食べよう。
【NO.13】加藤楸邨
『 秋刀魚焼く 匂の底へ 日は落ちぬ 』
季語:秋刀魚(秋)
意味:秋刀魚を焼く匂いの底へ夕日が落ちていくようだ。
【NO.14】三橋鷹女
『 この樹登らば 鬼女となるべし 夕紅葉 』
季語:紅葉(秋)
意味:夕日に照らされた見事な紅葉の樹を登ったならば、私も鬼女となることだろう。
【NO.15】中村汀女
『 あはれ子の 夜寒の床の 引けば寄る 』
季語:夜寒(秋)
意味:可愛らしいわが子の、少し寒くなってきた夜に毛布を引いてかけてやれば、体をこちらに寄せてくる。
【NO.16】橋本多佳子
『 星空へ 店より林檎 あふれをり 』
季語:林檎(秋)
意味:星空へ向かって店先に積み上がっているリンゴがあふれている。
【NO.17】日野草城
『 道暮れて 右も左も 刈田かな 』
季語:刈田(秋)
意味:道を歩いていたら日が暮れた。右も左も刈り入れが終わったあとの田んぼだなぁ。
【NO.18】久保田万太郎
『 秋しぐれ 塀をぬらして やみにけり 』
季語:秋しぐれ(秋)
意味:秋の時雨が塀を濡らしてすぐに止んだ。
【NO.19】飯田蛇笏
『 山びこの ひとりをさそふ 栗拾ひ 』
季語:栗(秋)
意味:1人なので山びこも誘いたい栗拾いだ。
【NO.20】富安風生
『 よろこべば しきりに落つる 木の実かな 』
季語:木の実(秋)
意味:喜んでいると、それに応えるようにしきりに落ちてくる木の実であることだ。
10月おすすめ一般俳句作品集【10選】
ここからは、一般の方が詠んだ俳句作品を紹介していきます。
【No.1】
『 レモン好き 妹(いも)が頬張る 口すぼめ 』
季語:レモン(秋)
意味:酸っぱいレモンが好きだという妹がそのまま頬張って口をすぼめている。
【No.2】
『 ハロウィンの 泣きてお化けに 菓子もらひ 』
季語:ハロウィン(秋)
意味:ハロウィンで怖くて泣きながらもお化けにお菓子をもらっている。
【No.3】
『 不器用は 不器用なりに りんごむく 』
季語:りんご(秋)
意味:不器用な人は不器用なりのやり方でりんごを剥く。
【No.4】
『 美味しそう 隣の柿が 鈴なりに 』
季語:柿(秋)
意味:隣の家の柿が鈴なりに美味しそうに実っている。
【No.5】
『 いわし雲 ペンギンたちが 空を見る 』
季語:いわし(秋)
意味:いわし雲が広がっている空をペンギンたちが見上げている。
【No.6】
『 白き雲 より白米の 一袋 』
季語:白米(秋)
意味:白い雲よりも白い米の一袋の方がいい。
【No.7】
『 銀杏を 踏みて匂ひて 恥ずかしき 』
季語:銀杏(秋)
意味:銀杏を踏んだあとの靴の匂いが取れず恥ずかしい思いをした。
【No.8】
『 金木犀 トイレの香りよ 都会人 』
季語:金木犀(秋)
意味:都会人にとっては金木犀はトイレの芳香剤としてしかわからない。
【No.9】
『 紅葉狩り 何獲るのかと 聞く子ども 』
季語:紅葉狩り(秋)
意味:紅葉狩りとは何を獲りに行くのかと子どもが聞いている。
【No.10】
『 稲刈りを やってと金色 踊ってる 』
季語:稲刈り(秋)
意味:稲刈りをやってと金色に輝いている稲穂が踊るように揺れている。
以上、10月の季語を含んだおすすめ俳句集でした!