小林一茶は江戸時代後期の俳人で、江戸時代の三大俳人の1人です。
自身の心情や細やかな自然を詠んだ句が多く残されていますが、その中でも新年を詠んだものが100首以上ある特徴があります。
今回は、正月/年賀状に使える小林一茶の俳句を20句紹介していきます。
『正月の 子供になりて みたき哉』 小林一茶
どの子も楽しそうなお正月。
子供の頃は早く大人になりたいと思った。
今は子供の頃に戻りたいと思う。
Twitter仲間の皆さんが今年もよい年になりますように。
そしていっぱいの幸せを♡(書:河原翠月 心温まる手書き文字の美しさ) pic.twitter.com/xmLna7QY0M
— 春花月夜 (@haruhanatukiyo) January 1, 2017
正月/年賀状に使える小林一茶の有名俳句【前半10句】
【NO.1】
『 元日や 上々吉の 浅黄空 』
季語:元日(新年)
意味:元日の日だ。この上なく縁起が良いことに天気のいい浅黄色の空が広がっている。
「上々吉」は「この上なく縁起が良い」、「浅黄空」とは藍色に近い深い青色のことです。新年早々に縁起が良い天気であると喜んでいます。
【NO.2】
『 めでたさも ちう位也 おらが春 』
季語:おらが春/初春(新年)
意味:新年ではあるが、門松も立てられない我が家ではめでたさもあいまいなものである私の初春よ。
この句の前書きには生活に苦労している様子が長々と書かれています。年賀状に使う場合は謙遜の意味として使うのがいいでしょう。
【NO.3】
『 世の中を ゆり直すらん 日の始め 』
季語:日の始め(新年)
意味:世の中を揺らすようにしてやり直すのだろう、この新年の日の始めに。
「ゆり直す」は「揺れて直す」という意味で、実際に地震があったと解釈する説もあります。1年の始めの区切りとして気合いを入れ直すという意思表示に使えるでしょう。
【NO.4】
『 正月の 子供になりて 見たき哉 』
季語:正月(新年)
意味:お正月の日は、無邪気に遊ぶ子供になってみたいことだなぁ。
親戚や家族に子供のいる人は、お正月になってお年玉をもらったり遊んだりしている子供がうらやましくなる人もいるでしょう。正月の行事やあいさつに忙しい大人ならではの視点です。
【NO.5】
『 故郷や 馬も元旦 いたす顔 』
季語:元旦(新年)
意味:私の故郷では、馬も元旦であるというような顔をしているよ。
馬も今日は元旦でめでたい日である、というような顔をしているように見えるというユーモアのある一句です。午年など馬が関係している年賀状に使ってみてはいかがでしょうか。
【NO.6】
『 名代に わか水浴びる 烏かな 』
季語:わか水(新年)
意味:私の名代として、若水を浴びているカラスがいるなぁ。
「若水」とは、元日の朝に初めて井戸などから汲む水で、邪気を払うとされていました。ここではカラスが浴びていることから、その若水を浴びているのは自分であると仮託することで1年の息災を祈っています。
【NO.7】
『 北国や 家に雪なき お正月 』
季語:お正月(新年)
意味:北国なのに家の周りに雪がないお正月をむかえたことだ。
【NO.8】
『 つく羽を 犬が咥へて 参りけり 』
季語:つく羽(新年)
意味:羽付きでついていた羽を、犬がくわえてこちらに走ってきた。
羽子板での羽付きでそれた羽を犬がくわえて走ってくるという、犬を飼っている家庭で見られそうな光景を詠んだ句です。動物をよく観察して詠む作者らしい視点の一句になっています。
【NO.9】
『 蓬莱に 南無南無といふ 童哉 』
季語:蓬莱(新年)
意味:新年の飾り物である蓬莱に向かって、子供が南無南無とお祈りしていることだなぁ。
「蓬莱」とは関西でよく見られた新年の飾りで、物を載せる三方の上に米や海産物、ミカンを置いて飾り付けたものです。中国の蓬莱山を模したものですが、とりあえず「南無南無」と手を合わせている可愛らしい子供の様子を描写しています。
【NO.10】
『 正月や 村の小すみの 梅の花 』
季語:正月(新年)
意味:正月が来た。村の片隅には早くも梅の花が咲いている。
早咲きの梅の花がひっそりと咲いている正月の一コマです。まるで水墨画のような一句で、新年とともに春の訪れが来たことを祝福しています。
正月/年賀状に使える小林一茶の有名俳句【後半10句】
【NO.11】
『 犬の子や かくれんぼする 門の松 』
季語:門の松(新年)
意味:犬の子が門松の影に隠れてかくれんぼをしているようだ。
子犬を飼っている家庭の年賀状に使えそうな一句です。門松に隠れきれていない子犬の可愛らしさが写真のように浮かんできます。
【NO.12】
『 元日や さらに旅宿(はたご)と おもほへず 』
季語:元日(新年)
意味:元日だというのに、旅行先の宿とは思えない歓待を受けてとても嬉しい。
元旦に旅行に行っているときに使える一句です。現在では年越しプランなどで豪華な待遇を受けられる旅館やホテルも多くありますが、江戸時代ではめずらしかったのでしょう。
【NO.13】
『 這へ笑へ 二つになるぞ けさからは 』
季語:けさからは/今朝の春(新年)
意味:這って笑ってくれ。私の子は今年で2歳になるのだ。
【NO.14】
『 正月や ごろりと寝たる とつとき着 』
季語:正月(新年)
意味:正月でとっときの晴れ着を着ているけれど、ごろりと寝てしまおう。
初詣や挨拶回りが終わり、晴れ着を着ているのに寝転んでしまっている面白い一句です。正月でもいつもと変わりはありませんという意味で年賀状に使えるのではないでしょうか。
【NO.15】
『 又ことし 娑婆(しゃば)塞ぞよ 草の家 』
季語:ことし(新年)
意味:また今年もこの質素な家で地上を塞いでいる一年になるなぁ。
作者らしい自虐の一句です。今年も去年と変わらない家で変わらない暮らしをしていこうという謙遜と自戒の意味にもなります。
【NO.16】
『 心から 大きく見ゆる 初日哉 』
季語:初日(新年)
意味:心の底から大きく見える初日の出であることだ。
初日の出を見た感動を率直に表しています。「心から」という表現は、どこか皮肉げに詠むことの多い作者にはめずらしくストレートに感情を表現している句です。
【NO.17】
『 目出度(めでたし)と いふも二人の 雑煮哉 』
季語:雑煮(新年)
意味:お正月がめでたいなぁと言っているが、二人きりで雑煮を食べていることだ。
夫婦のお正月の一コマを詠んだ句です。正月だからといって特別なことはせず、ゆっくりと二人でお雑煮を食べて過ごしている様子が浮かんできます。
【NO.18】
『 春立や 愚の上に又 愚にかへる 』
季語:春立(春)
意味:立春の日だ。心を改める節目であるが、今年もまた愚かに生きるのだろうなぁ。
立春はかつては「年内立春」など年が明ける前に訪れる年もあるほど日にちが変動していました。節目の日に自身の行いを振り返っている句で、年賀状で自戒と謙遜を表明するのによく使われます。
【NO.19】
『 おらが世や そこらの草も 餅にな 』
季語:草も餅/草餅(春)
意味:私が生きている世界だ。そこらに生えている草を草餅にして食べてしまおう。
この句は春の句ですが、人間賛歌の意味を持ちます。前書きに「月や花を愛でるのは雲上人である」と書かれていて、人間である自分は精一杯今を生きようという前向きな意味になります。
【NO.20】
『 古郷や 餅につき込む 春の雪 』
季語:春の雪(春)
意味:故郷を思い出すなぁ。白い餅に春の白い雪を一緒につぎ込んでしまっている風景を。
餅つきをしている最中に雪が舞い込んでくる故郷を思って詠まれた句です。まるで映像が浮かんでくるかのような表現で、故郷を離れている人にはピッタリの一句でしょう。
以上、正月/年賀状に使える小林一茶の俳句でした!
今回は、正月/年賀状に使える小林一茶の俳句を20句紹介しました。
一茶の作風として自戒や風刺が効いている俳句がある一方で、そこにあるものを素直に詠んでいる俳句も多くあります。
その時の自分の心情や年賀状を出す相手に合わせて、いろいろな俳句を読んでみてください。