世界で最も短い詩といわれている「俳句」。
最近では外国語で詠まれたりすることもあり、世界中の人々から親しまれている芸能です。
日本には、春・夏・秋・冬といった明確な四季があり、それぞれの季節が生み出す風情は昔から俳句のテーマとされることが多く、その感性は現代の私たちにも通ずるものがあります。
今回は、四季の中でも夏・特に夏の終わりを感じさせてくれるおすすめのオリジナル俳句作品を厳選してご紹介いたします。
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リス先生
お気に入りの俳句を見つけてみてね!
夏の終わりのおすすめ俳句【前半10つ】
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ここからは、「夏の終わり」をテーマに一般の方が詠んだオリジナルの俳句をご紹介していきます。
思わずうなってしまうような上手い作品がそろっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【NO.1】『 蝉の殻 するりと抜ける 秋の初風 』
意味:夏が終わり、蝉の抜け殻だけが名残り惜しそうに残っている。そこへ秋の風が吹いてきたよ。
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俳句仙人
蝉(晩夏の季語)はひと夏で成虫になり死んでしまいます。この句は、本体の蝉は死んでしまったのに、その抜け殻がいまだに残っていることを詠んでいます。晩夏を表す「蝉」の死と「秋の風」で、次の季節への移り変わりを表現しています。
【NO.2】『 プールあと 体が地球に へばりつく 』
意味:たくさん泳いでプールから出ると、急に体が重くなり、プールサイドに寝転がる。
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俳句仙人
「プール」は晩夏を表す季語です。プールから出ると、とたんに自分の体がすごく重たく感じたことってありませんか?プールから上がった作者は、両手両足を伸ばし、うつ伏せの状態で地面にしがみつくようにしています。そのときの感覚を「地球にへばりつく」と表現しているところがとても上手い一句です。
【NO.3】『 夕焼けと 海がつながる 帰り道 』
意味:帰り道、夕焼けが海に映って、海が夕焼け色に染まっている。空と海がつながっているようだよ。
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俳句仙人
「夕焼け」は晩夏を表す季語です。夕焼けが海に映し出され、もはや空と海の境界線が分からなくなってしまったような光景が目に浮かぶようですね。温かい茜色の夕焼けは、夏の終わりを表しています。
【NO.4】『 夕空に 舞うすててこ 今日も生きのびる 』
意味:夕空にふわりと舞う白いすててこ。あぁ、今日も一日生き延びたなぁ。
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俳句仙人
「すててこ」は晩夏を表す季語です。洗濯をしたすててこがどこからともなく舞ってくる様子は、誰もが想像できる光景ではないでしょうか。すててこが舞っている光景と、すててこに「生」を感じてしまう作者の感性に、思わずくすっと笑ってしまう一句です。
【NO.5】『 夏深し 白球追う汗 響く声 』
意味:もう夏も終わりに近づいてきている。グラウンドでは、白球追う球児たちが汗を流し、その声が響いているよ。
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俳句仙人
「夏深し」は晩夏を表す季語です。甲子園を目指している球児たちがグラウンドで声を出し、練習している姿が目に浮かびます。この夏にかけている様子がとてもよく伝わってきます。試合が終われば、夏が終わります。秋の気配を僅かに感じる一句です。
【NO.6】『 弟が 地図見て探す 天の川 』
意味:弟が地図を見ながら「天の川」を懸命に探しているよ。
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俳句仙人
「天の川」は初秋を表す季語です。小さな弟が一生懸命「天の川」を地図で探しているところがほほえましいですね。
【NO.7】『 きんぎょすくい わたしも金魚も ひっしです 』
意味:金魚すくいを行なったら、捕まえる側のわたし・逃げる側の金魚で必死だった
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俳句仙人
お祭りのときの金魚すくいをテーマにした一句です。「金魚」は俳句では晩夏、夏の終わりを表す季語です。夏の終わり、金魚は捕まらないよう逃げ、作者は金魚を捕まえようと必死な様子が目に浮かびます。
【NO.8】『 兜虫 おまえもひどい 日焼けだな 』
意味:カブトムシよ、僕もお前も、随分と日焼けしたものだなぁ。
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俳句仙人
茶色く光るカブトムシが日焼けをしているとたとえているところが面白い一句です。カブトムシは晩夏を表す季語ですので、そろそろ夏も終わりだという淋しさも感じられます。夏休みが終わり、真っ黒に日に焼けた作者の姿が目に浮かぶようです。
【NO.9】『 海月がね バケツの中を およいでる 』
意味:海月(くらげ)が、バケツの中を泳いでいるよ。
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俳句仙人
秋になると海にはクラゲが現れます。気温はまだまだ暑く感じますが、自然界はもう秋の気配です。「海月」は秋の訪れ、晩夏を表す季語として使われます。
【NO.10】『 ツクボウシ 百年変わらぬ 恋の歌 』
意味:つくつくぼうしの鳴き声は今も昔も変わらない。
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俳句仙人
晩夏から初秋にかけて現れる小さな蝉「つくつくぼうし」は秋の季語です。「ツクツクホーシ、ツクホーシ」は、みなさん馴染みのある鳴き声ではないでしょうか。蝉の鳴き声の中でも特にリズミカルで、音楽的です。つくつくぼうしが鳴き始めたら、もう秋です。
夏の終わりのおすすめ俳句【後半10つ】
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【NO.11】『 ひぐらしや 千段昇る 立石寺 』
意味:立石寺まで千段続く階段にひぐらしの声が鳴り響く。
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俳句仙人
立石寺は、芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を詠んだ場所として知られている有名な山寺です。石段が奥の院まで続く様子を「千段昇る」と表現しているところが巧妙です。その階段を昇るほどに、ひぐらしの声に浄化されていくような味わい深い一句です。「蝉」は夏の季語ですが、「ひぐらし」と「つくつくぼうし」は秋の季語とされています。「カナカナカナ」と鳴くひぐらしの声が聞こえるようになったら、もう秋です。
【NO.12】『 ポンポンと 西瓜の頭 撫でてやり 』
意味:ポンポンと西瓜を叩いて食べ頃を確かめる。
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俳句仙人
西瓜(すいか)は、暑い時期に出回り、体の渇きを潤してくれるため、夏の季語と捉えられがちですが、実は西瓜が最も甘くなる時期は立秋を過ぎたお盆の頃です。そのため、「西瓜」は秋の季語とされます。今も昔もみなが大好きな西瓜。この句では、ポンポンと軽く西瓜を叩き、食べ頃を確認している様子が伝わってきます。
【NO.13】『 人生と 秋刀魚のわたの 苦さかな 』
意味:人生も秋刀魚のわたも苦いなぁ。でも、この苦さがなんとも言えず美味いんだなぁ。
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俳句仙人
「秋刀魚」は初秋を表す季語です。「秋刀魚」という名前を聞くだけで、秋の味覚を象徴します。「秋刀魚」はさまざまな人生に密着して詠まれることが多く、こちらの句では、秋刀魚のわたの苦さと人生の苦さを重ね合わせていますよね。しかし、秋刀魚は、この苦みがなければなんとも味気ない魚になってしまうことも確かです。人生も苦いからこそ、意味のあるものなのかもしれませんね。
【NO.14】『 審判の アウトが聞こえ 終わる夏 』
意味:審判の「アウト」という声で、あぁ、これですべて(夏)が終わったんだなぁ。
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俳句仙人
審判の「アウト」という一声で、その試合が終わった(敗退が決まった)ことが想像されます。この夏の試合にかけて練習を積み重ね、「アウト」ですべてが終わった瞬間が描かれています。自分の経験に基づき、終わっていく夏を見事に表現している一句です。
【NO.15】『 遠い夏 祖父と鳴らした ラムネ瓶 』
意味:自分がまだ小さかった頃、祖父と一緒に飲んだラムネをふと思い出したよ。
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俳句仙人
「ラムネ」は晩夏を表す季語です。作者は、昔々、まだ自分が小さかった頃、縁日でおじいちゃんにラムネを買ってもらったのではないでしょうか。そして、瓶に残ったビー玉をカラカラと鳴らして笑い合った日のことを、ふと思い出したのではないでしょうか。そんなおじいちゃんはもういなく、思い出だけがよみがえる、少し切ない一句です。
【NO.16】『 せみとんぼ ばつたにてふと なつの雲 』
意味:せみ、とんぼ、ばった、ふと向こうの方を見ると、青空と白い雲が出ている。
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俳句仙人
蝉(晩夏の季語)、蜻蛉(秋の季語)、ばった(秋の季語)と、目の前には秋の気配が見られるようになったが、空を見上げると、いまだ夏であるのだなぁといった感じでしょうか。夏と秋の丁度中間あたりの季節が上手く表現されています。
【NO.17】『 絵日記の ページ尽きたり 夏の果て 』
意味:絵日記のページが丁度なくなった。そろそろ夏休みが終わるな…。
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俳句仙人
夏(夏休み)が終わることを絵日記のページがなくなったことで表現しています。小学生の頃、夏休みの宿題で絵日記を毎日書いていたことをふと思い出しました。ちなみに、季語は「夏の果て」で、晩夏を表します。
【NO.18】『 昼下がり 羽根休めたり 秋の蝶(蝶:夏、秋の蝶:秋) 』
意味:昼下がりのちょうど眠くなる時間帯、蝶がやってきて羽を休めているよ。
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俳句仙人
「蝶」は夏の季語ですが、「秋の蝶」とすることで秋を表す季語になります。まだ少し暑さが残る昼下がり、ちょうど眠くなる時間帯ですね。蝶もお昼寝をしているのでしょうか。
【NO.19】『 早咲きの コスモスぽつんと 道の端 』
意味:早咲きのコスモスがぽつんと道の端っこに咲いている。あぁ、もう秋がそこまで来ているのだなぁ。
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「コスモス」は秋の季語ですが「早咲きの」とすることで、秋の始まりの段階、すなわち夏の終わりを表現しているといえます。秋の季語を早めに使うことで上手く夏の終わりを表しています。
【NO.20】『 夏の恋 花火と共に 飛び散った 』
意味:君に恋した私の恋心は、花火のように舞い上がり…そして、花火のように一瞬にして散った。あぁ、夏が終わった。
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俳句仙人
失恋を詠んだ句ですね。歳時記では「花火」は夏と秋のどちらの季語としても詠まれていますが、この句の場合、「失恋」という一つの季節の終わりと重ね合わせ、夏の終わりを示す季語と考えるのがよいかもしれません。
さいごに
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夏という一つの季節が終わることに郷愁を感じしみじみと詠む人、季節が次第に変わっていく様子を趣深く詠んだ作品など、「夏の終わり」といっても、その捉え方は今も昔も人それぞれです。
今回は、そんな「夏の終わり」に焦点をあてて、一般の方が詠んだ作品をご紹介してきました。
様々な角度から切り込んだ「夏の終わり」。自然と夏の終わりが目に浮かぶような句がたくさんありましたね。
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リス先生
楽しんでいただけたかな?ぜひご自身で俳句作りに挑戦してみてね!