俳句と聞くと、昔ながらの行事を詠むものと思われがちです。
しかし、明治に生まれた季語に「クリスマス」があるのをご存知でしょうか?
クリスマスはキリスト教のイベントで、大勢の方が比較的同じイメージを持ちやすいイベントです。そのため、季語として扱いやすく様々な句が生まれています。
今回は、そんな「クリスマス」の有名俳句(俳人名句)&一般俳句作品を紹介していきます。
リス先生
お気に入りの俳句を探してみてね!
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クリスマスに関連する季語
クリスマス/クリスマスイブ/クリスマスカード/クリスマスキャロル/降誕祭/聖誕祭/御降誕節/聖夜/聖夜劇/クリスマスイヴ/聖歌/聖樹(せいじゅ:クリスマスツリーのこと)/聖菓(せいか:クリスマスケーキのこと)
クリスマスの有名俳句集【15選】
【NO.1】杉田久女
『 雪道や 降誕祭の 窓明り 』
季語:降誕祭(冬)
意味:美しい雪道だ。家でクリスマスを祝っているのだろうか、窓明かりが見える。
俳句仙人
雪道に暖色の窓明かりがほんのりと映ります。句中に言葉はないですが、想像すると家族団らんの温かい姿が浮かびます。
【NO.2】石田波郷
『 息安く 仰臥してをり クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
意味:静かにあおむけで寝ているクリスマスだ。
俳句仙人
仰臥するとはあおむけで寝ることです。病人が布団であおむけで落ち着いて寝ている様子です。クリスマスは祝うものですが、そういう日でも病気で床に伏している人もいるという相対する姿が印象的です。
【NO.3】中村草田男
『 降誕祭 睫毛は母の 胸こする 』
季語:降誕祭(冬)
意味:クリスマスの日、母に抱かれた子どもは胸に顔をうずめている。
俳句仙人
睫毛で胸をこするという表現が趣深さと繊細さを感じさせます。子どもが眠そうあるいは退屈そうに瞬きをしている様子を読み手に想像させます。母と子どもの距離の近さは家族のぬくもりを読み手に感じさせます。
【NO.4】正岡子規
『 八人の 子供むつまし クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
意味:8人の子どもたちが仲睦ましくクリスマスを過ごしている。
俳句仙人
病床にあった作者が、家でワイワイとクリスマスを祝う子どもを見てほほえましく思っています。家族の幸せな姿を描いています。
【NO.5】山口誓子
『 ずり落ちず 聖樹に積みし 綿雪は 』
季語:聖樹(冬)
意味:クリスマスツリーに積もっている綿雪はずり落ちることなくじっとしている。
俳句仙人
もみの木は葉が細いですが、その上に器用に乗っている綿のような雪に作者が驚いている様子を詠んでいます。ずり落ちないという小さい視点から、木全体の大きな視点、さらに雪の様子の小さい視点と照準の合わせ方が面白いですね。
【NO.6】飯田蛇笏
『 降誕祭 シャンツェ蒼き 夜を刷けり 』
季語:降誕祭(冬)
意味:クリスマスの夜のジャンプ台は濃紺の夜を映している。
俳句仙人
シャンツェとはスキージャンプ台のこと。固められた白い雪が夜の濃紺を映して青くなっている様子です。まるで夜空に飛んでいけるようなジャンプ台の姿が想像できます。
【NO.7】日野草城
『 クリスマス ケーキのビルが 灯つてる 』
季語:クリスマス(冬)
意味:クリスマスケーキのようなビルが明かりを灯している。
俳句仙人
ビルの様子をクリスマスケーキに見立てた面白い句です。整然と並ぶ窓がクリスマスケーキの飾りに見えたのでしょうか。クリスマスだからこそ感じられる想像です。
【NO.8】原裕
『 沖船も 机上も聖夜 灯を交す 』
季語:聖夜(冬)
意味:沖にある船も机の上も聖夜を迎え、ろうそくの火を灯す。
俳句仙人
どんな状況の人でも同じように聖夜はやってきます。沖にある船の明かりもこちら側の明かりがろうそくの火のように見えていることでしょう。落ちついた夜の様子が感じられる句です。
【NO.9】伊丹三樹彦
『 手燭澄む 聖歌乙女の 眼鏡の中 』
季語:聖歌(冬)
意味:聖歌隊の乙女の眼鏡に映るろうそくが澄んでいる。
俳句仙人
聖歌隊の清らかさが押し出された句です。清純さが感じられる言葉を選んで使われており、クリスマスの厳かさが伝わります。
【NO.10】堀口星眠
『 聖夜まつ 戸口氷塵 流れをり 』
季語:聖夜(冬)
意味:聖夜を待っている戸口では雪の結晶が光り流れている。
俳句仙人
美しい情景が浮かびます。氷塵は非常に寒い地域で見られる現象のため、凍えながら戸口にいたことが想像できます。寒い中でみた景色はより輝いて見えたことでしょう。
【NO.11】稲畑汀子
『 この出逢ひ こそクリスマス プレゼント 』
季語:クリスマス(冬)
意味:この出会いことクリスマスプレゼントだ。
俳句仙人
印象深い誰かと出会ったのか、大切なものと出会ったのか想像が膨らむ句です。出会いこそがプレゼントと言い切るほど大切な出来事だったのでしょう。
【NO.12】秋元不死男
『 へろへろと ワンタンすする クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
意味:へろへろとワンタンをすするクリスマスだ。
俳句仙人
クリスマスといえばケーキやご馳走が浮かびますが、この句では仕事帰りなのかワンタンをすすっています。クリスマスといえど仕事がある人は多いので、共感する人も多いのではないでしょうか。
【NO.13】西東三鬼
『 クリスマス 馬小屋ありて 馬が住む 』
季語:クリスマス(冬)
意味:クリスマスの日だ。馬小屋があって、馬が住んでいる。
俳句仙人
クリスマスと馬小屋というとキリストの生誕のエピソードを思い出します。しかし、この句は終戦から数年後に詠まれているので、馬小屋に馬がいるという当たり前の光景を尊んだのかもしれません。
【NO.14】後藤夜半
『 クリスマスカード 消印までも讀む 』
季語:クリスマス(冬)
意味:クリスマスカードの消印までも読んでしまった。
俳句仙人
海外からのクリスマスカードだったのでしょうか。珍しい消印に思わずよく読んでいる興味津々な様子が詠まれています。
【NO.15】右城暮石
『 大阪に 出て得心す クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
意味:大阪に出て、ああ今日はクリスマスだなと得心がいった。
俳句仙人
現在では様々なところでクリスマスイベントが行われていますが、作者の頃は大都市でしかあまり実感がわかなかったのでしょう。ちょうど大阪に出て今日はクリスマスなんだなと感じています。
クリスマスの一般俳句作品集【25選】
【NO.1】
『 白雪よ 降ってくれるな 聖夜まで 』
季語:聖夜(冬)
俳句仙人
ホワイトクリスマスを待ち望む気持ちが見えます。また聖夜と時間を決めていることから、クリスマスを誰かと過ごしたい思いがある様に感じられます。
【NO.2】
『 にぎわいの 中で一人の クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
大勢の中でポツンと一人でいることは、作者にとっては孤独が際立ちます。賑わいに取り残されたような気持ちになりますね。
【NO.3】
『 クリスマス 今年一番 町光る 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマスはイルミネーションやショーウィンドウなどでキラキラ輝いて見える時期です。年末で最もきらびやかに感じられることを「町光る」と表現している部分が面白いです。
【NO.4】
『 クリスマス 街の光を 増やしてく 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマスは家族で過ごす人が多いと思います。少しずつ家に明かりが灯る様子を光の街が増えると表現しています。幻想的なイメージの句です。
【NO.5】
『 曇天の 工事現場の 聖夜かな 』
季語:聖夜(冬)
俳句仙人
聖夜のきらびやかさに対して、仕事でどんよりした気持ちを描いています。曇天や工事現場という聖夜とはかけ離れた言葉を使うことで、寂しい気持ちが強調されています。
【NO.6】
『 住職の 部屋に小さき 聖樹かな 』
季語:聖樹(冬)
俳句仙人
宗教が違えども、年間行事としてお祝いしている面白い姿が見られます。目立たない小さいクリスマスツリーを飾っていることから、住職は盛大ではないものの楽しんでいる様子が感じられます。
【NO.7】
『 ああ無念 今年も親と クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
家族で過ごすクリスマスは素敵ですが、ドラマや漫画で見られるように恋人と過ごすクリスマスも過ごしてみたい気持ちが感じられます。感嘆の声が聞こえるほどの無念さが面白さを誘います。
【NO.8】
『 オーブンに 入りきらない 聖夜かな 』
季語:聖夜(冬)
俳句仙人
クリスマスで奮発して買った鳥の丸焼きはオーブンに入らないほど大きかったのでしょう。このようなハプニングは特別な時だから起こるものです。面白くもほほえましくもある内容です。
【NO.9】
『 ケーキ屋の 陰謀めいた クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマスケーキは特別感があり、デコレーションも非常に食欲を誘います。しかしたくさん食べてしまえばカロリーも気になりますし、価格も時間が経てば下がって行きます。ケーキに対する葛藤を陰謀という言葉で表現している所にユーモラスが感じられます。
【NO.10】
『 真実を 知ってしまった クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
何を知ってしまったか気になる内容です。サンタクロースの正体か家族の秘密かどんな真実でしょうか。読み手を引き付ける句です。
【NO.11】
『 クリスマス きれいな音を 奏でよう 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマスは演奏会や発表会が行われることが多いです。作者は演奏する側でやる気に満ち溢れています。イベントの時だからこそ頑張りたいという意気込みが感じられます。
【NO.12】
『 会いたいと 夜空に願う クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
恋人もあり得ますが、離れて暮らす家族に作者は会いたいかもしれません。クリスマスはサンタクロースがプレゼントを配る日ですから、叶えてくれるかもと夜空に願う様子がかわいらしくもあり切なくもあります。
【NO.13】
『 クリスマス 男どうしの 映画館 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
周りは家族や恋人でにぎわう映画館で、男同士で華やかさはないけれど楽しく過ごす様子が感じられます。映画館という言葉は男同士で横並びに座る様子が浮かび、楽しく映画を見ていることが想像できます。
【NO.14】
『 置き手紙 一人で待ってる クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
家族が書いた置き手紙に帰ってくる時間が書いてあるのでしょうか。早く帰ってこないかなとソワソワしながら待っている気持ちが伝わります。SNSやスマートフォンではなく、置き手紙というところに待ち遠しさが表現されています。
【NO.15】
『 クリスマス サンタを信じて 十三年 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
よく聞かれる言葉で「サンタクロースは信じていないとやってこない」という内容があります。作者は疑うことなく13年目を迎えました。13年目でもサンタクロースがやってくるのか気になる作者の様子が思い浮かびます。
【NO.16】
『 クリスマス 身長ください サンタさん 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
サンタクロースは欲しいものを届けてくれると言われています。それならば、お金では買えない身長を届けてくれるのではないかと願う作者の切実さと面白さがあります。
【NO.17】
『 クリスマス 問題集に かじりつく 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマスでもウキウキしていられない人たちがいます。それは受験生です。作者も受験生でしょうか。ほかの人がケーキや鶏もも肉にかじりついている頃、作者は問題集にかじりつくところに面白さがあります。
【NO.18】
『 クリスマス カップル横目に 微積分 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
カップルが幸せそうに過ごす横で、作者は数学の問題を解いています。カップルと数学の問題というでこぼこな取り合わせに、作者の必死さとカップルへのうらやましさが感じられます。
【NO.19】
『 窓ぎわに 皆集まる クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
窓際に集まっているのは、何かを見ていると考えられます。突然降ってきた雪や近くのイルミネーションなど想像を掻き立てられます。窓際でワイワイとお話をしながら楽しく過ごしている様子が目に浮かびます。
【NO.20】
『 クリスマス つい見てしまう 枕もと 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
サンタクロースは寝ている間に来ると言われています。サンタクロースが来なくなった人でも、今年はもしかしたら来ているかもとついつい見てしまいます。作者のユーモラスが感じられるとともに、読み手は「こんなことはありませんか?」と投げかけられている気持ちになります。
【NO.21】
『 オーブンを 何度も覗く 聖夜前 』
季語:聖夜(冬)
俳句仙人
オーブンでクリスマス料理を作っているのでしょう、楽しみで何度も覗いている様子を詠んでいます。クリスマスのご馳走をワクワクしている様子が伝わってくる句です。
【NO.22】
『 さばかれる 鶏の総量 クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマスといえばフライドチキンを思い浮かべる人も多いかもしれません。一体どれだけのニワトリが消費されるのか思いを馳せている面白い一句です。
【NO.23】
『 誰を待つ ことなく過ぎし クリスマス 』
季語:クリスマス(冬)
俳句仙人
クリスマス前にデートをする、ということもなく普通に過ぎていく様子を詠んだ句です。平日がクリスマスの年では特にイベントもなく過ぎていくという実感がある人も多いのではないでしょうか。
【NO.24】
『 灯の 如き聖菓の 果実かな 』
季語:聖菓(冬)
俳句仙人
灯火のようにきらびやかなクリスマスケーキの果実であると褒めています。クリスマスケーキと言われて何を思い浮かべるか、想像が膨らむ句です。
【NO.25】
『 雪吊りも 眺めて楽し 聖誕祭 』
季語:聖誕祭(冬)
俳句仙人
雪吊りとは樹木を保護するために円錐型に組んでいる枠組みのことですが、まるでクリスマスツリーのようだと例えています。たくさんのツリーが並んでいるようで楽しいと感じている一句です。
以上、クリスマスに関する有名俳句&オリジナル俳句集でした!
クリスマスは、楽しさやそれをうらやむ気持ち、厳かになる気持ちを感じさせてくれる特別な日です。
クリスマス自体の表現方法もたくさんあります。クリスマスの句を見かけた時は作者はどのようなクリスマスを過ごしたのか想像すると面白いかもしれませんね。
リス先生
最後まで読んでくれてありがとう!ぜひこの機会に一句詠んでみてね!
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