奈良の俳句といえば、古都奈良の歴史ある姿が思い浮びます。
今回は、「奈良」に関連する有名おすすめ俳句を40句紹介していきます。
柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺(正岡子規) #俳句 pic.twitter.com/QFCMgk47S2
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古家や 奈良の都の 青簾(正岡子規) #俳句 pic.twitter.com/2phLRiBLm8
— iTo (@itoudoor) June 14, 2013
目次
奈良に関する有名俳句集【前編① 10句】
【NO.1】正岡子規
『 柿食へば 鐘が鳴るなり 法隆寺 』
季語:柿(秋)
現代語訳:澄んだ秋空に色鮮やかな柿が実っている。その柿を食べてみると、法隆寺の鐘の音が鳴り響いてきたことだ。
正岡子規は生涯で20万以上の句を作りましたが、この句が最も有名な句といわれています。
柿は、子規の好物でした。柿を旅先の奈良で食べていた中で、法隆寺から聞こえてきた澄んだ秋空に鳴り響く鐘の音。秋の旅の風情を感じられる句です。
【NO.2】与謝蕪村
『 秋の燈や ゆかしき奈良の 道具市 』
季語:秋の燈(秋)
現代語訳:秋の日暮れどき、燈に灯された古都奈良の路で、油灯を売る古道具市が出ている。その中には、古都にふさわしい仏具も混ざっており、ひとしお趣を感じられることだ。
奈良の夕暮れ時、古道具屋の並んだ路に灯された明かり。与謝蕪村特色のノスタルジアを感じられる句です。
【NO.3】松尾芭蕉
『 初雪や いつ大仏の 柱立 』
季語:初雪(冬)
現代語訳:初雪が大仏の頭に降りつもっている。大仏の再建はいつ頃になるのだろうか。
奈良の大仏の頭に降る初雪を見て、再建はいつになるのだろうと思いをはせる芭蕉の様子が描かれています。
【NO.4】小林一茶
『 恋すてふ 角切られけり 奈良の鹿 』
季語:鹿(秋)
現代語訳:若草山に響く物悲しい鹿の声。雌鹿に恋をしている牡鹿が、雌を奪い合って戦うための角を切られてしまったのだなあ。
【NO.5】松尾芭蕉
『 菊の香や 奈良には古き 仏たち 』
季語:菊(秋)
現代語訳:菊の香りがあたり一面に漂う奈良の町。そこを歩いていると、菊の香りの中でひっそりと古い仏像達が立っていることだ。
大阪への旅の途中で泊まった奈良、そこで無病息災を祈る重陽の節句が行われていました。
菊の香りの中で行われている、仏たちの風情ある行事に見入る芭蕉の様子が浮かびます。
【NO.6】加藤暁台
『 春日野の 片端麦を 薪そめぬ 』
季語:麦を蒔(冬)
現代語訳:春日野の片端で、麦まきが終わった。これから本格的な冬が来るのだなあ。
春日野での麦薪が終わった様子を見た作者は、これから訪れる冬の到来を感じています。
【NO.7】宝井其角
『 今幾日 秋の夜話を 春日山 』
季語:秋の夜(秋)
現代語訳:まだ何日も秋の夜話を一緒にしようではないか。春日山で。
「春日山」は、奈良県東部にある山のことです。
春日山で、秋の虫の音が聞こえる秋の夜の物静かな様子の中、共に話をしようと誘っています。
【NO.8】阿波野青畝
『 すずなりに 生らして奈良の 柿しぶし 』
季語:柿(秋)
現代語訳:神楽鈴のようにたくさん実を結ばせた奈良の柿。食べてみると渋柿であったことよ。
【NO.9】山口誓子
『 奈良の月 山出て寺の 上に来る 』
季語:月(秋)
現代語訳:奈良の月が山の下から出てきて、寺の上まで来た。秋の月が美しく光っている。
【NO.10】志太野坡
『 まだ鹿の 爪もかくれず ならの麦 』
季語:麦(夏)
現代語訳:奈良で植えられた麦は、まだ鹿の爪も隠れないくらいの丈であることだ。
奈良に関する有名俳句集【前編② 10句】
【NO.11】原石鼎
『 水温む 奈良はあせぼの 花盛り 』
季語:あせぼの花(春)
現代語訳:寒い時期が終わり、水も温かさを感じられる春になった。奈良はあせぼのが花盛りで美しい。
【NO.12】飯田龍太
『 古都奈良を 秋が生絹の ごとく去る 』
季語:秋(秋)
現代語訳:いにしえの都奈良を、秋が生絹のように去っていく。
【NO.13】山口素堂
『 茶の花や 利休が目には よしの山 』
季語:茶の花(冬)
現代語訳:吉野山には、白色の茶の花が一面に咲いている。かつて利休の目には、この景色が映ったことだろう。
吉野山に咲き広がる白色の茶の花を見て、茶の道をひらいた千利休の様子を作者は思い浮かべています。
【NO.14】前田普羅
『 薬師寺と 唐招提寺 鴨渡る 』
季語:鴨(冬)
現代語訳:薬師寺と唐招提寺の間を鴨が飛んで渡っている。
奈良の歴史ある寺、薬師寺と唐招提寺。その間の冬空を鴨が美しく飛んでいる様子です。
【NO.15】尾崎迷堂
『 稲雀 法華寺御殿 覆ひ飛べり 』
季語:稲雀(秋)
現代語訳:群れをなして稲をついばみにやってきた雀が、法華寺の上を覆いかぶさるように飛んでいる。
【NO.16】河合曽良
『 春の夜は たれか初瀬の 堂籠 』
季語:春の夜(春)
意味:こんな春の夜には、誰かが初瀬のお堂に籠って祈っていそうだ。
【NO.17】松尾芭蕉
『 水とりや 氷の僧の 沓の音 』
季語:水とり(春)
意味:東大寺でお水取りが行われている。氷のように冷えきった僧侶の沓の音がする。
【NO.18】夏目漱石
『 梅咲て 奈良の朝こそ 恋しけれ 』
季語:梅(春)
意味:梅が咲いていて、奈良で過ごした朝こそ恋しいものだ。
【NO.19】飯田蛇笏
『 旅人に 秋日のつよし 東大寺 』
季語:秋日(秋)
意味:旅人に秋日が強く照っている東大寺だ。
【NO.20】西東三鬼
『 梅雨ちかき 奈良を仏の 中に寐る(ねる) 』
季語:梅雨(夏)
意味:梅雨が近い奈良で、仏様たちがいる中に眠る。
奈良に関する有名俳句集【後編① 10句】
【NO.21】日野草城
『 奈良の雨 降りしきりけり 子の傘に 』
季語:無季
意味:奈良の雨が、子どもの傘にしとしとと絶え間なく降り続いていることだ。
【NO.22】中村汀女
『 去りがての 祭りの客に 飛鳥川 』
季語:祭り(夏)
意味:夏の祭りが終わっても、なかなか去りがたい様子の客が飛鳥川のほとりにいることだ。
【NO.23】与謝蕪村
『 葉櫻や 碁氣になりゆく 奈良の京 』
季語:葉櫻(夏)
意味:桜の花が散り、緑美しい葉桜の時期になった。そろそろ碁盤に向かう気分になっていく、梅雨前の奈良の都だ。
【NO.24】高浜虚子
『 長谷寺に 法鼓轟く 彼岸かな 』
季語:彼岸(春)
意味:長谷寺に、時を知らせる法鼓の音が響きわたっている、彼岸のことだ。
【NO.25】井尾望東
『 寒牡丹 見て底冷えの 奈良にはつ 』
季語:寒牡丹(冬)
意味:しんしんと底冷えのする奈良に泊まっていると、寒牡丹が咲いていた。寒さが身にしみることだ。
寒牡丹を見て、ますます泊まった奈良の寒さが身にしみる様子が描かれています。
【NO.26】皆吉爽雨
『 はじめての道も 青水無月の奈良 』
季語:青水無月(夏)
意味:雨上がり、初めて歩く道も青くみずみずしい。六月の奈良のことよ。
【NO.27】上村占魚
『 いかるがの 仏に人に 秋ふかむ 』
季語:秋ふかむ(秋)
意味:いかるがで、仏にも参拝客にも、ものがなしく秋が進んでいることだ。
【NO.28】山口青邨
『 天近く 畑打つ人や 奥吉野 』
季語:畑打つ(春)
意味:春、暖かく近くに感じる空の下、固い畑の土を掘り起こしている、奥吉野の人がいることだ。
「奥吉野」とは、奈良県南部吉野川山地地域。奥吉野の山あいにある小さな畑で、農民が春の近く感じる空の下、畑仕事に精を出している情景です。
【NO.29】中井苔花
『 奈良うれし 杉洩る月を 蚊帳に見て 』
季語:蚊帳(夏)
意味:蚊帳の中から、杉の木々の間からもれる月の光を見ている。奈良の夜が嬉しく感じられることだ。
【NO.30】石川風女
『 大和路の 辻の道標 梅雨けしや 』
季語:梅雨(夏)
意味:大和の道の十字路にある、道しるべ。梅雨の雨でじめじめとしている様子だ。
奈良に関する有名俳句集【後編② 10句】
【NO.31】高浜虚子
『 村の名も 法隆寺なり 麦を蒔く 』
季語:麦を蒔く(冬)
意味:有名な法隆寺と同じ名前であるという、法隆寺村。見渡せば、村のあちらこちらで麦薪きが行われている。
法隆寺村は、奈良県生駒郡にあった村名です。
【NO.32】長谷川かな女
『 奈良澄の 店に秋果つ 暖簾かな 』
季語:秋果(秋)
意味:奈良にある店で、秋に熟す果物が売られている。秋の終わりを感じ、店ののれんを眺めることだ。
【NO.33】丸山哲郎
『 茜さす 丹生川鮎の 錆にけり 』
季語:鮎の錆/錆鮎(秋)
意味:夕方茜色の日が射す中、丹生川で泳ぐ産卵期の鮎の背中が、鉄さびのように赤みを帯びていることだ。
【NO.34】高浜きみ子
『 香久山も 耳なし山も 天高し 』
季語:天高し(秋)
意味:香久山にも、耳成山にも、秋の空が澄み渡り高くなったように感じる。
【NO.35】夏目漱石
『 角落ちて 首傾けて 奈良の鹿 』
季語:角落ち(春)
意味:春になり、角が抜け落ちた奈良の鹿。小首を傾ける様子がかわいらしいことだ。
角が抜け落ちた、大人の鹿が、小鹿のようにかわいらしく見える様が思い浮かびます。
【NO.36】松本たかし
『 香具山は 畝傍(うねび)を愛しと 添い霞 』
季語:霞(春)
意味:香具山は畝傍山を愛しいと添い寝をするようにふたつの山に霞がかかっている。
【NO.37】篠田悌二郎
『 薬師寺へ 道を冬田の 畦づたひ 』
季語:冬田(冬)
意味:薬師寺へ行く道は冬の田んぼの畔をつたっていく。
【NO.38】篠原鳳作
『 しぐるるや 畝傍は虹を かかげつつ 』
季語:しぐるる/時雨(冬)
意味:時雨が降っているなぁ。畝傍山には虹がかかっている。
【NO.39】飯田蛇笏
『 吉野山 奥の行燈や 一の午 』
季語:一の午(春)
意味:吉野山の奥に行燈が輝いている。今日は一の午のお祭りだ。
【NO.40】山口青邨
『 秋風や 旅人のせて 石舞台 』
季語:秋風(秋)
意味:秋風が吹いているなぁ。旅人を上に乗せている石舞台古墳だ。
以上、奈良に関する有名俳句集でした!
古来より、数々の俳人達が奈良の情景を表現豊かに詠ってきました。
奈良の俳句を鑑賞することで、奈良の自然の優美さを感じとることができます。
ご自分の感性を、奈良の俳句で磨いていきましょう。