【俳句の季語「朝顔」はなぜ秋の季語になる?】簡単にわかりやすく解説します!

 

朝顔と聞くと、暑い夏の盛り8月の早朝に咲く可憐な花を思い出しますね。

 

子供の頃に、夏休みの宿題で観察日記を付けた方も多いのではないでしょうか?

 

真夏の早朝に咲き昼過ぎには萎んでしまう花が、俳句では秋の季語とされているとは、ちょっと想像がつきにくいかもしれませんね。

 

 

そこで今回は、「朝顔」がなぜ秋の季語になるのかその理由をわかりやすく解説していきます。

 

リス先生
それでは、さっそく見ていこう!

 

俳句の季語「朝顔」はなぜ秋の季語になる?

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たくさんある俳句の季語の中で、「朝顔」はなぜ秋の季語になるのでしょうか?

 

朝顔は、俳句歳時記によると「秋」の季語とされていますが、それは暦との関係も深いのです。

 

歳時記とは、四季の事物や年中行事などをまとめた書物のこと。特に俳句歳時記は季語をまとめたもので、作句には欠かせないものですね。

 

実は、朝顔が秋の季語とされているのは、この歳時記の他に暦との関係があります。

 

明治初期には旧暦、現在は新暦が使われています。

 

この旧暦と新暦では、実に1か月ものズレが存在し、俳句歳時記にもこの影響は残りました。

 

歳時記では旧暦を基本とし、春は1・2・3月で、これは新暦の2・3・4月に当たります。

 

新暦と旧暦の違い

 

【春の期間】

  • 旧暦:1・2・3月
  • 新暦:2・3・4月

 

【夏の期間】

  • 旧暦:4・5・6月
  • 新暦:5・6・7月

 

【秋の期間】

  • 旧暦:7・8・9月
  • 新暦:8・9・10月

 

【冬の期間】

  • 旧暦:10・11・12月
  • 新暦:11・12・1月

 

リス先生
朝顔の咲く8月は、旧暦では秋の7月に当たるね!だから「朝顔」は秋の季語なんだよ!

 

朝顔という季語はいつからいつまで使える?

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それでは、「朝顔」という季語はいつからいつまで使えるのでしょうか?

 

朝顔の花の盛りは8月初旬から中旬ですが、実際に花の咲く時期は長く、7月下旬から10月までです。

 

新暦の8・9・10月は、旧暦の秋7・8・9月に当たりますので、この期間ならば「朝顔」の季語を使っても差支えないでしょう。

 

新暦の7月は、旧暦では夏の6月に当たります。

 

この場合は、季節の先取りとして、7月下旬に咲く朝顔の花も俳句に詠んでみるの良いですね。

 

季語「朝顔」を使った有名俳句【5選】

 

ここからは、朝顔の有名な俳句を5句選んで、ご紹介します。

 

リス先生
お気に入りの一句を見つけてみてね!

 

【No.1】松尾芭蕉

「蕣(あさがほ)は 下手の書くさへ 哀也」 

意味:朝顔の花の絵は下手でも上手でも誰が描いても趣があっていいものだ。

俳句仙人
決してけなしているのではなく、褒めているのじゃ。哀(あわれ)とは、しみじみとした深い思いを込めた言葉で、絵を描いている人への素直な感動を伝えているのでじゃ。

 

【No.2】与謝蕪村

「朝がほや 一輪深き 淵の色」

意味:朝顔が一輪咲いている、その色を見ているとまるで深い淵を覗き込んでいるようだ。

俳句仙人
深い淵とは何か、蕪村はその奥に何を見出そうとしたのか、読み返す度に朝顔の花の奥を覗き込んで見たくなるのう。

 

【No.3】正岡子規

「この頃の 蕣(あさがほ)藍に 定まりぬ」 

意味:今年も朝顔の花が咲いたが、花色は皆藍色一色になってしまった。

俳句仙人
他の色の花が咲くことも期待していたのじゃろうか。藍色の花ばかりの朝の風景は涼し気でもあり、また一色だけの寂しさも感じるぞぉ。

 

【No.4】杉田久女

「朝がほや 濁り初めたる 市の空」 

意味:夜が明け始めた空の下、下町の朝顔が次から次へと咲き始めた。

俳句仙人
まだ静かな町中で、花壇の朝顔が咲いているのを見たのでしょう。空が明けゆくにつれて、人々の起き出す気配が感じられるぞぉ。

 

【No.5】石田波郷

「朝顔の 紺のかなたの 月日かな」 

意味:朝顔の紺色の花を見ていると、過ぎ去りし月日やこれからの日々の事が思いやられる。

俳句仙人
戦争の多い時代に生きた作者だからこそ、日の出と共に咲き昼には萎んでしまう朝顔に、己が歩む月日の思いを込めたのでしょう。

 

誤解されがちな季語を紹介!

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本来は秋の季語であるのに、夏または春の季語と誤解されやすいものを集めてみました。

 

リス先生
俳句作りの際にはしっかり覚えておきたいね!

 

  • 七夕

新暦では7月7日が七夕として親しまれていますが、旧暦で考えると新暦8月初旬が七夕の時季に当たります。「七夕」は秋の季語なのですね。

 

  • 天の川

一年中夜の空に流れる天の川ですが、実は新暦8月が一番明るく輝きます。この輝く夜空の川は、七夕伝説の織姫彦星と重なりますね。「天の川」も秋の季語です。

 

  • お盆

年中行事の中でも、このお盆とお正月は私たち日本人にとって欠かすことのできない大切な行事です。「お盆」は新暦では真夏の行事ですが、旧暦では秋の季語となります。

 

  • 草の花

春は木の花が咲き誇りますが、秋は、菊・女郎花・露草など可憐な草の花が目に留まります。ですから「草の花」は秋の季語です。ちなみに「花」「草の若葉」ならば春の季語となります。

 

  • 竹の春

間違いなく秋の季語です。反対に「竹の秋」が春の季語。タケノコが生える春は、竹の葉が枯れ落ちてしまいます。夏8月ともなると、タケノコも生長して立派な竹となり、葉が落ちてしまった竹もその勢いを取り戻し青々とした葉を茂らせるのです。

 

さいごに

旧暦から新暦に変わった折に、俳句の世界では暦と実際の季節とのズレを感じるようになってしまいました。

 

俳句を詠む時「朝顔の季語の季節は何?」と迷ってしまうのも、生活の中で感じる季節感のズレが迷いとなって表れるからでしょう。

 

それでも、自然はおおらかにその営みを続けています。

 

俳句仙人
私たちも自然に寄り添い、心感じるままに俳句を楽しんでみないかのう?