【俳句の倒置法とは】簡単にわかりやすく解説!意味や効果・俳句例など

 

俳句の表現方法の一つである「倒置法」。

 

倒置法は国語の文法で使われる用語ですが、小説や短歌などにも使われているので親しみやすい方法といえます。

 

 

今回は、俳句の倒置法の意味や効果・実際に俳句にどのように使われるのかなどについて、簡単にわかりやすく解説していきます。

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

 

俳句の倒置法とは?簡単にわかりやすく解説!

 

倒置法とは、言葉や文の使い方を本来の順番とは逆にする方法です。

 

文章を読むとき、私たちは最後の単語に意識を向けています。

 

倒置法によって、語句の配置を逆にすることで、最後に来る言葉に読み手の印象を与えることができるのです。

 

例えば、「今晩の月は、きれいだな。」を倒置法にすると、「きれいだな、今晩の月は。」となります。

 

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倒置法にすることで、最後の言葉「今晩の月は」を読み手に印象強く与えることができます。

 

 

【CHECK!!】体言止めとの違い

 

倒置法と似た表現として、体言止めがあります。体言止めとは、文の終わりを名詞や代名詞で止める方法です。

 

倒置法と体言止めがどう違うのか、よくわからないという方も多いですね。

 

実際に例文をあげてみましょう。

 

「私は遊園地に行きました。」

→体言止め「私が行ったのは、遊園地。」

→倒置法「私は行ったのです、遊園地に。」

 

体言止めでは、名詞や代名詞で終わるのに対して、倒置法では、名詞や代名詞では終わりません。

 

よく似ている表現方法ですが、区別するようにしてください。

 

 

俳句における倒置法の効果

 

倒置法の効果としては・・・

 

1.語句の強調

2.感情をうまく伝えられる

3.言葉のリズムを整えることができる

 

の3つがあげられます。

 

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ここからは、それぞれの効果を詳しく解説していきます。

 

1.語句の強調

倒置法の効果として、最も親しみやすいのが「強調」です。

 

倒置された言葉を強めることにより、読み手にそれをより印象深くすることができます。

 

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実際に例文をあげてみましょう。

 

「夕日が燃えているよ。」この文を倒置法にすると、「燃えているよ、夕日が。」となります。

 

この文にすると、読み手は「何が燃えているのか。」が気になり、最後に「夕日が」とくることで、「なるほど、夕日が燃えているのか。」と夕日により強い印象を持つことができます。

 

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「夕日が燃えているよ。」と普通に伝えるよりも、夕日の印象をより強調できるのです。

 

2.感情をうまく伝えられる

倒置法の効果として、感情をより読み手に伝えられることがあげられます。

 

「私は、嫌だ!と大声をあげた。」の文を倒置法にすると、「私は大声をあげた。嫌だ!と。」となります。

 

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あえて最後に、「嫌だ!」と感情を伝える言葉を持ってくることで、より読み手の感情に迫ることができるのです。

 

3.言葉のリズムを整えることができる

「子どもがかわいいのは当然よ。」を倒置法にすると、「当然よ。子どもがかわいいのは。」となり、会話のリズムをよくすることができます。

 

もちろん、一つの効果だけではなく、色々な効果が合わさってできたものもあります。

 

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倒置法によって、色々な味わいが出てくるのです。

 

倒置法の使い方やコツ・注意点

 

倒置法は、語順を入れ替えるだけで、印象を強くすることができます。

 

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では、その使い方のコツや注意点について考えてみましょう。

 

1.語順を入れ替えてみる

日本語は、「主語、目的語、述語」の構成が一般的です。

 

倒置法では、「主語、述語、目的語」の順番となります。

 

例えば、以下の文章。

 

「わたしは(主語)、海へ(目的語)泳ぎに行った(述語)」

 

これに倒置法を用いると・・・

 

「私は(主語)泳ぎに行った(述語)海へと(目的語)」

 

となります。

 

倒置法は、語順を入れ替えるだけなので簡単に使えます。

 

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ただ、不自然すぎる文になることもあるので、実際に声に出して読んでみることが大切です。

 

2.倒置法には、向かないものがある

倒置法は、俳句はもちろん、感情を伝えることができる小説や和歌、歌詞などに向いている技法です。

 

読み手の感情を揺さぶることができるので、倒置法により表現の幅をぐっと広げることができます。

 

ただ、事実を述べる必要があるもの、論文、新聞、ビジネスの場などでは向きません。

 

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このような文章では、感情ではなく事実を書く必要があるため、倒置法を使うとわかりにくいものとなってしまいます。

 

3.何度も使わない

倒置法は、言葉やリズムに変化をつけるのに最適な方法ですが、使いすぎると印象度が落ちてしまいます。

 

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特に感情に訴えたいというときにのみ、使うことが大切です。

 

倒置法を使った有名俳句集【10選】

 

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一茶の、小さな虫の命にも捧げられる優しさが伝わる句です。倒置法にしたことで、蝿が手をすり足をすりしている情景が、読み手の目にリアルに浮かんできます。

 

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子規が、傍らにいた母親に向かって「今年の彼岸の入りは冷えるなあ。」と言うと、母がこのまま返事をしたものが俳句になっています。言葉のリズムがうまく伝わり、母親の息子への愛情が伝わる優しい句となっています。

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この句では、本来は最後に来る「葡萄食ふ」を始めに持ってくることで、葡萄の一粒一粒と、言葉の一語一語がうまく重なりあっています。言葉の意味をかみ締めるように、葡萄をゆっくり味わっている姿が思い描かれます。

 

【NO.4】阿波野青畝

『 赤い羽根 つけらるる待つ 息とめて 』

季語:赤い羽根(秋)

意味:募金をした証である赤い羽根を付けられるのを待っている、息を止めて。

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「赤い羽根」は「赤い羽根募金」のことで、秋の季語になっています。最後に「息とめて」と倒置することにより、募金したことへの少しの緊張感や照れくささを味わう作者の様子が浮かんでくる句です。

【NO.5】松尾芭蕉

『 いざ行かむ 雪見にころぶ 所まで 』

季語:雪見(冬)

意味:さあ、雪見の宴に行きましょう。雪に足をとられて転んでも楽しいではありませんか。さあ、一緒に雪で転ぶところまで行きましょう。

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雪を見て童心に帰り心を弾ませながら、雪見の宴を楽しみにしている、芭蕉の楽し気な様子が伝わる句です。倒置法により、仲間へ呼びかける様子が強く効果的に表現されています。

 

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倒置法なしの配置だと、「法隆寺で柿を食べたら鐘が鳴った」となります。法隆寺を後に持ってくることで場所を強調するとともに、最初に「柿」と「鐘」を出してめずらしい組み合わせの単語のインパクトを演出している一句です。

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倒置法なしでは「こきこきこきと缶詰を切っていると、上空には鳥が渡っていくのが見えた」となる一句です。最初に「鳥わたる」と情景を出すことで、作者が缶詰を規則的なリズムで切っている最中に鳥が列を成して渡っていく様子を強く印象付けます。

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この句は「小春日や」と「赤蜻蛉」の2つに倒置法が使われています。倒置法なしでは「赤蜻蛉が石を噛むように居る小春日だ」という順番になり、小春日であるという感動が薄れてしまうのが特徴です。また、「赤蜻蛉」を最後に持ってくることで冬の寒さに耐えるトンボの姿に焦点を当てています。

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「開襟」は、「開襟シャツ」「夏シャツ」と同じ意味を持つ夏の季語で、夏に着るシャツのことです。倒置法なしでは「開襟シャツの背に風を溜めて逢いに行く」という順番になります。最初に「逢いに行く」と詠むことで、作者の弾むような心を演出しています。「シャツの背に風を溜める」という状況から、自転車などの速度が出る乗り物に乗っているのかもしれません。

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「草の花」とは、野原や草原に咲く花の総称で、秋の季語です。倒置法を使わない場合は「草の花よ、がんばるわなんて言うなよ」とまるで散文のようになってしまいます。擬人法と組み合わせることで、健気に咲く名も無き草の花々に心を傾ける作者の心情が伝わってくる一句です。

 

以上、俳句における倒置法についてでした!

 

倒置法は、古来より伝わる表現技法です。

 

語句を並び替えることにより、より効果的に読み手に情景を浮かび上がらせることができます。

 

リス先生
俳句に印象づけたいときには、ぜひ使ってみてね!それまでとは、ぐっと違った句になること間違いなし!

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