「短歌」や「俳句」は、昔から日本人には親しみのある領域で、根強い人気があります。
学校の授業での勉強や、最近ではテレビなどでも俳句の番組があります。
では、この「短歌と俳句の違い」は分かりますか?短歌と俳句の二つにはそれぞれルールや特徴・歴史があります。
俳句と短歌の違い聞かれたので pic.twitter.com/ZageQcHeMo
— ヨシカズ (@xPJ0z2DdbqWbegQ) January 22, 2021
今回は、短歌と俳句の違いについて簡単にわかりやすく解説していきます。
短歌と和歌の違い
短歌と俳句はどちらも、もともとは和歌から派生した文学です。
和歌とは五音と七音を基調とした歌のことで、和歌は五七、五七と繰り返して歌が続き、終わりは七七で終了します。
短歌と俳句の大きな違いは、その「文字数」と「季語の有無」です。
※季語とは、春夏秋冬の季節を表す特定の言葉のこと。なお、季節の分類は二十四節気に基づいて節切りになります。
- 短歌・・・「五七五七七」の31音が基本の定型詩・季語は必要なし
→【花のいろは(5) うつりにけりな(7) いたづらに(5) わが身世にふる(7) ながめせしまに(7)】
→季語:なし
- 俳句・・・「五七五」の17音が基本の定型詩・季語は必要
→【夏草や(5) 兵(つわども)どもが(7) 夢の中(5)】
→季語:夏草
その他の違いは、短歌は恋の歌が多いのに対して、俳句は恋の歌はほとんどありません。
意外と知らない!短歌と俳句の誕生の歴史
上でも触れましたように短歌の原点は「和歌」になります。
和歌が五七を基調とした長めの歌から、より身近な表現しやすい短歌が好まれていったことが伺えます。
短歌は平安時代でも貴族たちの上流社会では、気になる相手に「恋文」として31音に想いをしたためている様は、何とも風流で雅なことでしょう。
一方、連歌(れんが)・俳諧(はいかい)から生まれたのが俳句です。
連歌は、五七五の発句と七七の脇句を、交互に複数人で連ねて歌う遊びです。奈良時代にはすでに連歌の原型が出来ていたと言われています。
平安時代には短連歌が流行し、さらには長連歌になり、鎌倉時代には最大120句と連ねたと言われています。100前後の句が主流になり南北朝時代から室町時代にかけて大成されましたが、戦国時代末に衰えました。
江戸時代になり連歌から俳諧と呼ばれるものが誕生しました。俳諧は連歌の形式はそのままに、滑稽な言葉や俗語を盛り込んだ文学です。
さらに、明治になると正岡子規らによって俳句が誕生しました。俳諧の五七五の最初の部分のみを定型詩としたもので、季語を取り入れ喜怒哀楽を表現したものです。
俳句は現代においても日本人の感情を表す文学として受け継がれています。
知っておきたい有名短歌【おすすめ3選】
【NO.1】小野小町
『 花のいろは うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに 』
意味:何事もせずに、ゆっくり眺めているうちに花が長雨にあってすっかり色あせてしまうように、自分の姿も年を取って衰えてしまった。
有名な女流歌人の小野小町も、現代人である私たちも、今も昔も自分の容姿については敏感で、年を取ってしまうと衰えが気になってしまうものです。とても共感できる歌で、小野小町に親しみを感じます。
【NO.1】平兼盛
『 忍ぶれど 色に出でにけり わが戀(こい)は 物やおもふと 人のふとまで 』
意味:私の恋は、誰にも知られないようにと秘めているのですが、思う心は自然と顔や様子に現れていて、もの想いですかと人に聞かれてしまうくらいです。
想いを伝えてしまうと今の関係が崩れてしまうことを怖れています。なぜか想い人には伝わらず、周囲の人がこちらの想いに気づいて聞かれてしまう始末なので、よほど顔や行動に現れているのでしょう。想いを伝えたらどうかと思ってしまう歌です。
【NO.1】紫式部
『 めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半(よは)の月かな 』
意味:久しぶりに会えたのに、あなたかどうかも見分けがつかないうちに急いで帰ってしまって、本当にあなたは雲に隠れてしまった夜の月のようですね。
手紙もなく急にあなたは急に現れて、急いで帰ってしまうからいつも本当にあなたがどうかと確認する暇もないと少し呆れ気味です。一連の動きが夜であることもあなたと月に見立てていてきれいな印象です。
知っておきたい有名俳句の3選【おすすめ3選】
【NO.1】松尾芭蕉
『 古池や 蛙飛びこむ 水の音 』
季語 蛙(春)
意味 古池に蛙が飛び込む水の音が聞こえてきた。
春になりまだ静かな古寺の庭はシーンとしている情景が思い浮かべられます。そこで「バシャーン」と空間を切るような静から動の動きが見事に表現されています。明るい陽射しと新緑が目に浮かぶようです。
【NO.2】小林一茶
『 やせ蛙 負けるな一茶 これにあり 』
季語 蛙(春)
意味 やせた蛙が負けそうに見えるが頑張れ! 私(一茶)もここで応援しているよ。
この詩が詠まれたときは、オスの蛙二匹がメスの蛙をめぐって争っていたそうです。それを目撃した一茶も思わず応援したくなってしまうほどやせた蛙だったのでしょう。
【NO.3】正岡子規
『 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺 』
季語 柿(秋)
意味 柿を食べていたら、ちょうど法隆寺の鐘の音も聞こえてきたよ。
柿を食べている場所は、法隆寺の鐘が聞こえてくる範囲内です。きっと良く晴れた秋の一日なのでしょう。柿の橙色と空の青さのコントラストが目に浮かぶようです。
さいごに
今回は、短歌と俳句の違いを説明させて頂きました。
有名な短歌や俳句などは、一回はどこかで耳にしたことがあるかと思います。
短歌も俳句も五七調は基本であり、日本人にとって受け入れやすく心にも残りやすいテンポです。
この機会に短歌や俳句に目を向けられて見ると、何かの発見につながるかもしれません。ぜひ短歌や俳句作りにも挑戦してみてください。