2016年より国民の祝日に「山の日」が加わりました。
山の日は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」と定められています。
俳句では、「山」だけでは季語となりません。
「春の山」「夏の山」など、季節との組み合わせの表現や、「山笑う」などの山の状態を表す表現が季語となります。
俳句の季語に、山笑う(春)、山したたる(夏)、山粧う(秋)、山眠る(冬)がある。
今、山だけでなく、街々にも花々が一杯だ。 pic.twitter.com/diApps96pn— 井ノ川欽浩 (@yoshiinokawa) April 11, 2013
今回は、そんな「山」を題材にしたおすすめ俳句を30句紹介していきます。
山を題材にした有名オススメ俳句集【15選】
【NO.1】鈴木真砂女
『 山笑う 歳月人を 隔てけり 』
季語:山笑う(春)
現代語訳:春になり山の木々が伸びて色づきはじめた、歳月が経つのは早く、人を隔てるようになってしまった。
【NO.2】星野立子
『 来し道の うねうね白し 春の山 』
季語:春の山(春)
現代語訳:春の芽吹き始めた山を登っていくと、来た道がうねうねと白く見える。
【NO.3】日野草城
『 大岩の 蔭のさむさよ 春の山 』
季語:春の山(春)
現代語訳:あたたかい春の山でも大きい岩の蔭にいると、まだ寒い。
【NO.4】正岡子規
『 雪残る 頂ひとつ 国境雪残る 頂ひとつ 国境 』
季語:雪残る(春)
現代語訳:春なのにまだ雪が残っている山の頂きがひとつある。あれが国の境目だ。
【NO.5】辻桃子
『 山滴り 写真の父は 逝きしまま 』
季語:山滴り(夏)
現代語訳:亡くなった父の写真を飾っている、山は新緑で生命感が溢れている。
山滴るは、山の木や葉っぱの緑がみずみずしく青々としている様子を表現します。生命感が溢れている山と、写真の中でひっそりとほほ笑む亡くなった父親との対比が切なさを感じさせます。
【NO.6】正岡子規
『 夏山の ここもかしこも 名所哉 』
季語:夏山(夏)
現代語訳:夏の山を見渡すと、あちらもこちらも有名な場所に思えることだな。
【NO.7】田中冬二
『 夏山の かぶさつてゐる 小駅かな 』
季語:夏山(夏)
現代語訳:夏のうっそうとした山の緑が、ふもとの小さな駅を飲み込まんとするばかりにかぶさっている。
【NO.8】河合曽良
『 湯殿山 銭ふむ道の 泪かな 』
季語:湯殿山/湯殿詣で(夏)
現代語訳:湯殿山に詣でていると、参道に落ちているお賽銭を踏む道でも涙が出ることだ。
【NO.9】長谷川かな女
『 秋の山 暮るゝに近く 晴るゝなり 』
季語:秋の山(秋)
現代語訳:秋の山は、暮れそうになる頃にようやく晴れているように見える。
【NO.10】飯田蛇笏
『 冷えびえと 袖に入る日や 秋の山 』
季語:秋の山(秋)
現代語訳:秋の山を歩いていると、夕日とともに冷えた空気が袖の中へ入ってきた。
【NO.11】正岡子規
『 赤蜻蛉 筑波に雲も なかりけり 』
季語:赤蜻蛉(秋)
現代語訳:赤とんぼが飛んでいる。遠くに見える筑波山には雲もないようでよく見えることだ。
【NO.12】日原正彦
『 縁側に おはじき一つ 山眠る 』
季語:山眠る(冬)
現代語訳:山はしんと静まり返っている、おはじきがひとつ縁側に落ちている。
【NO.13】飯田蛇笏
『 冬山に 枯木を折りて 音を聞く 』
季語:冬山(冬)
現代語訳:冬の山で枯れた木を折ると、その音がしんとした山の中に響いていく。
静かな冬の山で、枯れ木のぱきっという音や匂いが山に響きます。
冬山の静けさが強調されています。
【NO.14】種田山頭火
『 分け入っても 分け入っても 青い山 』
季語:無季
現代語訳:分け入っても分け入ってもどこまでも青い山だ。
「青い山」という表現から初夏を連想させますが、季語がないため無季の俳句となります。実際に山をかき分けて登っている様子とも、どこまでいっても同じ風景であるという心象風景を詠んでいるとも言われています。
【NO.15】種田山頭火
『 また見ることもない 山が遠ざかる 』
季語:無季
現代語訳:また見ることもないだろう山が遠ざかっていく。
作者の旅は放浪と呼ぶのに相応しいもので、同じ場所にもう一度赴くことがほとんどありませんでした。そのため、「また見ることもない」という表現に繋がっています。
山を題材にした一般オススメ俳句作品集【15選】
【NO.1】
『 山笑ふ ノート丸めし 筒の中 』
季語:山笑う(春)
意味:ノートを丸めて筒の形にしてみる、のぞいてみると春の山が見える。
【NO.2】
『 山見ると 草木が芽生え 山笑う 』
季語:山笑う(春)
意味:草木が芽生えて山が笑っているような春の山が見える。
【NO.3】
『 たたされて まどから見えた 春の山 』
季語:春の山(春)
意味:先生に注意されてたたされている、教室の窓からは春の山が見える。
新しいクラスになって、はしゃいでしまったのでしょうか。立たされている子供の目は、先生や黒板ではなく春の山を見ています。くすっと笑ってしまう句です。
【NO.4】
『 山笑う 野の花笑う 木々笑う 』
季語:山笑う(春)
意味:山が笑っている。野の花も笑い、木々も笑っている。
「山笑う」とは春の山の生き生きとした様子を表す季語ですが、まさに生き生きとした野の花や木々も笑うように生き生きとしているという一句です。
【NO.5】
『 春の山 水車カタコト 回る里 』
季語:春の山(春)
意味:春の山だ。水車がカタコトと回る里にいる。
今では水車を実際に使う場所は激減しましたが、雪解け水を使って水車を回しているのでしょう。観光用の水車なのか、実際に使っている水車なのかで作者が見ている風景が変わるため、解釈も変わってきます。
【NO.6】
『 膝に地を 湿らせて撮る 夏の山 』
季語:夏の山(夏)
意味:夏の山で一生懸命に写真を撮っている、その膝は地面について湿っている。
【NO.7】
『 夏の山 昔を生きた 祖父のよう 』
季語:夏の山(夏)
意味:夏の山が青々と茂っている、まるで昔生きていた祖父のように。
【NO.8】
『 夏の山 ギラギラ緑の 鬼がいる 』
季語:夏の山(夏)
意味:夏の山が太陽でぎらぎらとしている、緑にあふれていてまるで緑の鬼がいるようだ。
【NO.9】
『 あの山へ いくつもの夢 晴風と 』
季語:晴風(夏)
意味:あの山へ行こうといういくつもの夢を夏の強風に乗せている。
【NO.10】
『 秋の山 夕日の絵の具で そまってる 』
季語:秋の山(秋)
意味:秋の山が、夕日の絵の具で染めたかのように赤やオレンジに染まっているよ。
【NO.11】
『 ふわふわと 優しダンスの 秋の山 』
季語:秋の山(秋)
意味:ふわふわと優しくダンスを踊るように葉っぱが降り積もっていく秋の山よ。
【NO.12】
『 あの山を つたうなみだか 秋の夕 』
季語:秋の夕(秋)
意味:あの山をつたう涙のように見える秋の夕焼けだ。
【NO.13】
『 冬の山 ため息をつく 夕暮れて 』
季語:冬の山(冬)
意味:冬の山が夕暮れに近づいてきた、山がため息をついているようだ。
【NO.14】
『 重なりて 静かに眠る 冬の山 』
季語:冬の山(冬)
意味:冬の山がまるで静かに重なり合って眠っているようだ。
【NO.15】
『 雪山の 家の灯りの たのもしさ 』
季語:雪山(冬)
意味:雪山の中で見えた家の灯りの頼もしさよ。
以上、「山」を題材にしたおすすめ俳句集でした!
「山」にも季節によって、たくさんの呼び方があります。
ぜひ「山」を感じて俳句を詠んでみてはいかがでしょうか?