【シャボン玉が春の季語である理由】なぜ春の季語?簡単にわかりやすく解説!

 

俳句は五七五の十七音の韻律の中に、季節を表す季語を入れるのがルールです。

 

季語は「歳時記」と呼ばれる事典のような本に収録されていますが、旧暦と新暦のズレや季語と定めた当時の感覚から、なぜその季節の季語なのか疑問に思うものもあります。

 

今回は、「シャボン玉」が春の季語である理由やシャボン玉を使った俳句、間違いやすい春の季語について解説していきます。

 

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

 

シャボン玉が春の季語である理由

 

シャボン玉は「春に外で風を受けて吹いてあそぶ遊び」…、そのイメージから春の季語になったと考えられています。

 

そもそもシャボン玉は16世紀末の安土桃山時代にポルトガルから伝えられたと考えられています。当時のヨーロッパの絵画ではすでに現代と同じ遊ばれ方がされていました。

 

(シャボン玉吹き【制作年 1733-1734年】 出典:MUSEY

 

そして日本で定着したのは17世紀。「サボン玉売り」や「玉売り」と呼ばれる行商人が、実際にシャボン玉を吹きながら売りに来ていたことがわかっています。行商人は春から夏にかけてやってくることが多く、「玉や玉や」と売っている商人の周りを子供たちが取り囲んでいる絵画も残されているほど人気でした。

 

(シャボン玉売り 出典:俺の日本舞踊

 

しかし江戸時代には「シャボン玉」は季語としては考えられておらず、初めて収録されたのは1925年刊行の『大正新修歳時記』だと言われています。

 

この歳時記ではすでにシャボン玉は春の季語とされています。江戸時代のシャボン玉売りの姿ではなく、飛ばして遊ぶ子供たちの姿が春の季語に相応しいと考えられたのでしょう。

 

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他にも春の季語とされている子供の遊びには、凧揚げや風船、風車、ブランコなどがあります。どれも春に外で風を受けて遊ぶものなので、シャボン玉も同じようなイメージから春の季語になったと考えられています。

 

シャボン玉の有名俳句【5選】

 

【NO.1】日野草城

『 ふりあふぐ 黒きひとみや しやぼん玉 』

季語:しやぼん玉(春)

意味:振り仰ぐ黒い瞳が可愛らしい。シャボン玉が飛んでいる。

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飛んでいるシャボン玉を見て空を仰ぐ子供の瞳を観察しています。あちらこちらに飛ぶシャボン玉を追ってキョロキョロとしている様子が可愛らしい春の光景です。

 

【NO.2】稲畑汀子

『 忙しき くらし映さず 石鹸玉 』

季語:石鹸玉(春)

意味:忙しい暮らしは映さないシャボン玉だ。

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日々の忙しい暮らしを気にせずシャボン玉が飛んでいます。子供たちが夢中で遊んでいるのか、忙しい中でも気晴らしとして大人たちが遊んでいるのか、どちらの意味にも取れる一句です。

 

【NO.3】原石鼎

『 うすうすと 幾つもあげぬ 石鹸玉 』

季語:石鹸玉(春)

意味:うっすらと見えるシャボン玉を幾つも上げている。

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シャボン玉は薄い虹色のため、遠くから見るとうっすらとしか見えません。そんなシャボン玉を子供たちがいくつも空に上げている様子を見ている一句です。

 

【NO.4】芝不器男

『 まぼろしの 国映ろへり 石鹸玉 』

季語:石鹸玉(春)

意味:幻のような国が映っていそうな虹色のシャボン玉だ。

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薄い虹色のシャボン玉は、辺りのさまざまな風景を反射して映します。そんな虹色に染まった辺りの風景を「まぼろしの国」と表現しているのがユーモアのある着眼点です。

 

【NO.5】松本たかし

『 流れつつ 色を変へけり 石鹸玉 』

季語:石鹸玉(春)

意味:流れながら色を変えていくシャボン玉だ。

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シャボン玉は光を反射して虹色に輝きます。また周囲の風景の色も加わるため、色を変えてふわふわと流れていく変化をじっと観察している一句です。

 

知っておきたい!意外と間違いやすい春の季語【5選】

ブランコ

ブランコは古代中国では「鞦韆(しゅうせん)」と呼ばれていました。農耕儀礼の一環として、春節や44日の「寒食」と呼ばれる時期に女性たちが乗っています。中国の影響を受けて、日本でもブランコは春の季語とされました。子供たちが雪解けとともに外で遊び始める風景にもよく合う季節感の季語です。

 

雪崩

「雪崩」は雪山やスキー場の近くでよく起きる印象があり、冬の季語と思われがちです。冬にも何らかの衝撃で起きることがありますが、季語としての雪崩は気温が上がることによって積雪が緩んで起きる現象のことを指します。冬の季節の雪崩であることを詠みたい場合は、冬の季語も入れて詠むといいでしょう。

 

堅雪

「堅雪」は昼の暖かさで一度溶けて、夜の寒さによってまた堅く凍った雪の状態のことを指します。字からは冬の間に踏み固められた雪のような印象を受けますが、昼と夜の寒暖差が大きくなる残雪の季節ならではの現象のため、間違いやすいことに注意が必要です。

 

余寒

「余寒」は「寒があけた」といわれる立春以降に感じる寒さのことを言います。現在の感覚では立春である23日はまだ寒い時期ですが、日が長くなっていくのに気温がなかなか上がらないという気候のことです。「春寒し」という季語も同じような意味を持つので、立春に近い時期を指すのか、春なのにまだ寒いという意味なのかで使い分けるといいでしょう。

 

雪虫

俳句の世界で「雪虫」というと、雪解けの始まる2月頃に現れるカワゲラ、ユスリカ、トビムシなどの黒い虫のことを表します。雪の上に小さな黒い虫が現れることから「雪虫」と称されていて、初冬に現れる一般的な「雪虫」とは別物であることに注意してください。一般的に考えられている雪虫は季語では「綿虫」と呼ばれています。

 

さいごに

 

今回は、シャボン玉の由来や春の季語である理由、シャボン玉を季語に含む有名な俳句や間違いやすい春の季語を解説しました。

 

「発祥は江戸時代でも季語として定められたのは後世」というパターンでは季節感が食い違うこともあります。そのため、季語を詠む場合は【歳時記(さいじき)】を確認してか使うことをおすすめします。

 

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最後まで読んでいただきありがとうございました。