ありのままの情景を伝えることができる俳句。
俳句には様々な季節の美しさと、それを見た人々の気持ちが詠まれています。
「閑さや岩にしみ入る蝉の声」#松尾芭蕉 が呼んだ有名な一句。
蝉の鳴く季節はもう少し先になりますが、耳を澄ますと聞こえてきそうな閑さです。#山形県山形市 #山寺 #奥の細道 pic.twitter.com/nKfYxUnw83
— のほほん (@teardorops) May 26, 2018
季節のある日本だからこそ根付いたものであるといえるでしょう。
今回は、そんな沢山ある季節の中でも、春から夏に移り変わる「5月」の季語を使ったおすすめ俳句集を紹介していきます。
目次
俳句に5月らしさを出す!5月の季語を知ろう
俳句には【季語(きご)】という「その時の情景や状況、作者の気持ちをより具体的に読み手へ伝えるため、用いられる言葉」があります。
例えば…
- 春・・・「立春」「たんぽぽ」「桜」
- 夏・・・「アイスクリーム」「半袖」「海」
- 秋・・・「紅葉」「秋の暮れ」「秋分の日」
- 冬・・・「バレンタインデー」「ゆきだるま」「こたつ」
どれもその言葉を聞くと「あの季節だ!」とすぐにわかる言葉たちばかりだと思います。こういった言葉のことを【季語】と言います。
そして、季節をさらに細かくすると今度は月によって変わってきます。
例えば、1月ならば正月や冬の始まりといった感じですが、2月の終わりになるともう春が近づいてきます。このような感じで季節という大まかな区切りだけでなく、月によっても季語は変化するのです。
ここでは、5月の季語をいくつか紹介します。
【立夏】
読み方:りっか
意味:夏の始まり
【子供の日】
読み方:こどものひ
意味:子供の権利を尊重し、成長を祝うなどの目的にした記念日。5月5日。
【母の日】
読み方:ははのひ
意味:母へ感謝する日。5月の第2日曜日。
【牡丹】
読み方:ぼたん
説明:牡丹は4 - 5月に開花する。
【初鰹】
読み方:はつがつお
意味:3月から5月に水揚げされた鰹のこと。
5月の季語【一覧】
立夏/夏浅し/麦の秋/五月尽/筍流し/麦の秋風/豆飯/筍飯/麦飯/新茶/麦刈/麦藁/豆植う/茄子植う/孟夏の旬/端午/蝉生る/金雀枝/栗の花/木苺/若葉/新緑/卯の花/桐の花/アイリス/カーネーション/百合/苺/山椒の花/筍/麦/鈴蘭 などなど。
5月の季語を使った有名俳句集【10選】
それでは早速、5月の季語を使った有名な俳句を紹介していきます。
【NO.1】原石鼎
『 袷(あわせ)着て ほのかに恋し 古人の句 』
季語:袷(夏)
意味:袷を着るとなんだか古人の句が恋しくなる。
【NO.2】山口誓子
『 うつすらと からかみ青き 五月かな 』
季語:五月(夏)
意味:からかみをみると、うっすらと青が透けていた。五月なんだなぁ。
【NO.3】小林一茶
『 大江戸や 犬もありつく 初鰹 』
季語:初鰹(夏)
意味:大江戸には初鰹が売られていてその美味しさは犬も食べてしまうほどだ。
【NO.4】山口誓子
『 折りし皮 ひとりで開く 柏餅(かしわもち) 』
季語:柏餅(夏)
意味:かしわもちを食べ終わった後にかしわもちについていた葉を折って置いたのだが、硬い葉はひとりでに開いていく。
【NO.5】星野立子
『 五月来ぬ 心ひらけし 五月来ぬ 』
季語:五月(夏)
意味:五月が来ない。五月は爽やかで、どこから開放的な気持ちになれるのにその五月が来ない。
【NO.6】炭太祇
『 葉ざくらの ひと木淋しや 堂の前 』
季語:葉ざくら(夏)
意味:葉桜の木が一つ、堂の前で寂しそうにたっている。
【NO.7】星野立子
『 薄暑来ぬ 人美しく 装へば 』
季語:薄暑(夏)
意味:薄暑の陽が照りつける中、着物を装ったあの人はより美しく見える。
【NO.8】正岡子規
『 夕顔の 苗売る声や 五月晴 』
季語:五月晴(夏)
意味:夕顔の苗を売る声が響く五月晴れの日。
【NO.9】上島鬼貫(うえじま おにつら)
『 恋しらぬ 女の粽(ちまき) 不形なり 』
季語:粽(夏)
意味:恋を知らないくらい幼い女の子が作った粽は形が悪い。
【NO.10】山口誓子
『 吹流し 五月の風を 蹴りに蹴る 』
季語:吹流し(夏)
意味:吹流しを五月の風が蹴るように吹いている。
5月の季語を使った一般俳句作品集【10選】
先ほどあげた有名な俳句以外にも、一般の方が書いたオリジナルの俳句もたくさんあります。
ここでは、参考のために一般の方が作った俳句作品も10句紹介していきます。
【No.1】
『 こいのぼり 一匹ふえて およいでる 』
季語:こいのぼり(夏)
意味:前までは1匹少なかったのに、今見たら1匹こいのぼりが増えていた。
【No.2】
『 母の日に ちょっとごちゃごちゃ パパカレー 』
季語:母の日(夏)
意味:母の日にお母さんへ感謝を込めて作るお父さんの不格好なカレーだ。
【No.3】
『 虫と子が サツキによりて 蜜を吸う 』
季語:サツキ(夏)
意味:虫と子供がサツキの花に寄って蜜を吸っている。
【No.4】
『 ごめんねと感謝を込めたカーネーション 』
季語:カーネーション(夏)
意味:母の日に、普段から迷惑かけてのごめんねとありがとうの感謝を込めたカーネーションをあげる。
【No.5】
『 田植えする 足下に広がる 五月空 』
季語:田植え/五月空(夏)
意味:田植えをしている最中、田んぼに反射して足元に広がる五月の空だ。
【No.6】
『 肌着など やさしきものの 五月かな 』
季語:五月(夏)
意味:五月には肌着などの肌に優しいものが多くなる。
【No.7】
『 田植えして みんなドロドロ わらいごえ 』
季語:田植え(夏)
意味:みんなで田植えをしているときに泥でドロドロになったのが面白くて笑い声が響いた。
【No.8】
『 母さんに 手紙おくった 星月夜 』
季語:母(の日)(夏)
意味:星や月が綺麗に輝く夜に母へ手紙を送った。
【No.9】
『 草木に 輝き戻る 五月かな 』
季語:五月(夏)
意味:冬に元気がなくなる草木も五月になれば輝きが戻る。
【No.10】
『 庭の葉が 母の自慢や 柏餅 』
季語:柏餅(夏)
意味:母の自慢である庭の葉を見ながら柏餅を食べた。
5月の季語を使った有名俳句集【おまけ10句】
さいごに、5月の季語を使った有名俳句を10句紹介していきます。
【NO.1】山口素堂
『 目には青葉 山ほととぎす 初鰹 』
季語:青葉(夏)/ほととぎす(夏)/初鰹(夏)
意味:目には美しい青葉が見え、山ではホトトギスが鳴き、初鰹が出回る季節だ。
【NO.2】高浜虚子
『 白牡丹と いふといへども 紅ほのか 』
季語:白牡丹(夏)
意味:白牡丹というといっても中心部は紅色がほのかにさしている。
【NO.3】石田波郷
『 プラタナス 夜も緑なる 夏は来ぬ 』
季語:夏は来ぬ(夏)
意味:プラタナスの葉が夜も緑色でよく見える。夏が来たのだ。
【NO.4】細見綾子
『 葉桜の 下帰り来て 魚に塩 』
季語:葉桜(夏)
意味:葉桜の下を帰ってきて、魚に塩を振って下ごしらえをする。
【NO.5】石田波郷
『 雀らも 海かけて飛べ 吹流し 』
季語:吹き流し(夏)
意味:雀たちも海を翔けるように飛べ、あの吹き流しのように。
【NO.6】松尾芭蕉
『 若葉して 御目の雫 ぬぐはばや 』
季語:若葉(夏)
意味:この若葉でもって、あなたの目の雫をぬぐおう。
【NO.7】松尾芭蕉
『 あらたふと 青葉若葉の 日の光 』
季語:青葉若葉(夏)
意味:ああ尊いことだ。青葉や若葉が茂る日の光とこの日光は。
【NO.8】杉田久女
『 谺(こだま)して 山ほととぎす ほしいまま 』
季語:山ほととぎす(夏)
意味:山の中でこだまが聞こえる。ホトトギスは自分の欲しいままに鳴いている。
【NO.9】水原秋桜子
『 麦秋の 中なるが悲し 聖廃墟 』
季語:麦秋(夏)
意味:麦を刈り入れる季節になったのに、この聖なる天主堂は物悲しい。
【NO.10】石田波郷
『 雨がちに 端午近づく 父子かな 』
季語:端午(夏)
意味:ずっと雨が続いているが、端午の節句が近づくのを待ち焦がれている父と子であるなぁ。
以上、5月に関するおすすめ俳句集でした!