俳句は日本に昔から伝えられている文化の一つです。
そんな俳句には独特な表現方法がいくつか存在します。
今回はその中の一つ「切れ字」の意味や使い方などについて例文を交えながら簡単にわかりやすく解説していきます。
朝6時前に納品先に到着して、寝て待っていたけどもうこれ以上寝れそうにないから久しぶりに読書。
とりあえず今調べて分かったのは、俳句には切れ字という助詞、助動詞があって、かな、けり、もがな、らん、し、ぞ、か、よ、せ、や、つ、れ、ぬ、ず、に、へ、け、じ、等との事。勉強になったぞ! pic.twitter.com/p6BYy6t8A2
— こうへゐ (@tansansui17) December 20, 2017
ぜひ参考にしてみてください。
目次
切れ字とは?
まず初めに切れ字とは、「切れ」の直前に置かれた単語のことを指します。
例えば、俳句の中でも有名な句である松尾芭蕉の
古池や 蛙の飛び込む 水の音
という俳句があります。これは、古池は蛙が飛び込んでいる小さな音さえも聞こえてくるくらい静かだという場面を伝えています。
この俳句で切れ字に当たる単語は、「古池や」の「や」です。
ここに切れ字を入れることにより、「古池や」の後に間を持たせることができます。
この短い間で読み手は古池をより深くイメージすることができ、大きな感動を与えることができます。
切れ字の役割や俳句への効果
そんな切れ字には、どんな役割があってどんな効果があるのでしょうか?
切れ字の役割や効果は、主に以下の2つあります。
①文を言い切り間を持たせる役割
②余韻や感動を生ませる役割
早速解説していきましょう。
①文を言い切り間を持たせる役割
切れ字には、「文を言い切る役割」があります。
文を言い切るとは、どんなことかというと・・・例えば、先程の句。
古池や 蛙の飛び込む 水の音
ここで使われている切れ字は「や」です。ここに切れ字を持ってきた理由は、古池で文を言い切り、間を持たせたかったからです。
この俳句は、古池の静けさをよんでいますが、静けさを表現するためには古池をしっかりイメージとして持たせなくてはいけません。
そこで、切れ字の出番です。
切れ字を使うことにより・・・
古池や〜 蛙の飛び込む 水の音
と、「〜」のところに間を持たせることが出来ます。
この短い間で、読み手は、古池のイメージを強く持つことができ、下に続く「蛙飛び込む 水の音」に強く引き込まれてしまうのです。
②余韻や感動を生ませる効果
切れ字は間を持たせる役割があると解説しました。
その「間」によって生じる効果というのは、「余韻」や「感動」です。
切れ字を使って文を切断することにより、その「間」で、より深くイメージすることができ、読み手はそこに注目を集め、「余韻」つまりあとあとまで残る「感動」へ誘うことが出来るのです。
切れ字には「余韻」や「感動」を与えられる効果があるので、切れ字が使われている場所は、作者が俳句の中でも最も強調したい部分に使っていると言えるでしょう。
切れ字は全部で48個も!しかし、現在は3つのみ使われている!?
これまで解説してきた切れ字には、沢山の種類があります。
タイトルでも書いた通り、切れ字は全部で48個あると考えられている場合もあります。
それは、松尾芭蕉がこんなことを言っていたのです。
切字に用る時は四十八字皆切字也。用ひざる時は一字も切字なし
この意味は「切れ字として使おうとすればいろは48字全てが切れ字となり、切れ字として使わないとするならば1字も切れ字にはならない。」ということです。
いろは48字とは、いろはにほへとをすべて数えると48字で構成されています。
つまり、松尾芭蕉はこの世にある字は全て切れ字になりうると言っているのです。しかし、それでは多すぎて俳句を書く時に混乱してしまいます。
そのため、現在では切れ字は主に3つが使われています。
それは、「や」「かな」「けり」です。
次に、この「や」「かな」「けり」について詳しく解説していきます。
「や」「かな」「けり」の意味と例文紹介
切れ字として主に使われている「や」「かな」「けり」。これにはもちろんそれぞれ意味があります。
早速解説していきます。
①切れ字「や」の意味と活用
まず「や」は、主に上の句で使われ、作者が深く感動したことや呼びかけを表しています。
先ほども出てきた松尾芭蕉の下記の句。
古池や 蛙の飛び込む 水の音
これは、作者が古池の静けさに大変感動していることを「や」を使って表現しています。
他には、小林一茶の下記の句。
われときて あそべや おやのないすずめ
これは、「私のところに来て、親のいない私と遊ぼう。親と離れてしまった子雀よ。」という意味の俳句です。
「や」と切れ字を使うことにより、子雀に呼びかけているというのが分かります。
②切れ字「かな」の意味と活用
次に「かな」の意味ですが、主に俳句の一番最後に使われ、作者の感動を表しているのですが「や」よりも少し軽い感動の時に使います。
例えば、松尾芭蕉の下記の句。
おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな
この俳句は、「かがり火を焚いて沢山の人と賑やかに楽しくしていた鵜飼も絶頂を過ぎるとみんな帰ってしまってかがり火も消えてしまう。さっきまでわいわいと楽しかったものも一気に消えてしまうととても寂しいものだな。」ということをよんでいます。
この俳句は、寂しさや物悲しさを表しているので、最後に「かな」をつけることにより、余韻へと誘うことができます。
「かな」は「〜だな。」と似たような考え方です。
③切れ字「けり」の意味と活用
次に「けり」ですが、これも主に俳句の最後に使われ、断言するような強い調子を与えます。
また、過去を表す物でもあるので、過去のことを断定するような意味合いにもなります。
例えば・・・
桐一葉 日当りながら 落ちにけり
という俳句があります。
これは、「秋に入ったばかりの明るい静けさの中を、桐の葉が一枚、日の光を受けながら落ちていった。」という秋の始まりをしみじみとよんでいる俳句です。
桐の葉が日に当たりながら落ちていったという事実に感動したことを強調するために、最後に「けり」という切れ字を使ったのです。
以上、3つの切れ字について理解できましたか?
それでは、さいごに早速切れ字を活用した俳句を作ってみましょう。
切れ字を活用した俳句を作ってみよう!
早速覚えた切れ字を活用していきましょう!
切れ字を活用するためには、まず、自分が強調したい部分やイメージを深く持ってもらいたい部分を考えます。
ここで注意してほしいのが、切れ字を入れる場所です。
絶対にここだという決まりはないですが、
- 「や」は主に上の句
- 「かな」と「けり」は、最後
に付けることによって綺麗に俳句をみせることができます。
そして、自分の強調させたい、伝えたい部分に切れ字を付けてみましょう。
例えば
- 季語を強調させたいのならば、季語の後に「や」を入れるとそこに間ができて、読み手を引き込ませることができます。
- 自分が感じたことを強調したいのならば最後に「かな」をつけることにより、余韻を残すことができます。
- 自分の過去のことや断言したいものには、最後に「けり」を使うことによって、それを強く見せることができます。
俳句に切れ字を入れるだけで読み手がその俳句に持つイメージや感動が大きくて深いものに変わっていくのです。
先ほどから頻繁に出ているこの俳句。
古池や 蛙飛び込む 水の音
これがもしも・・・
古池に 蛙飛び込む 水の音
だとしたら、ただ蛙が飛び込んだ水の音が聞こえたのかなーくらいにしか感じませんよね?
「や」という切れ字を使うことにより、古池の静けさも伝わってきたのです。
切れ字には伝えたいことを伝える役割も持っているので、是非、みなさんも切れ字を活用してみてください。
さいごに
切れ字の意味や活用方法などについて解説しました。
切れ字は「や」「かな」「けり」の3つが主に使われています。
俳句を作るものにとって切れ字とは、作品全体のイメージを深く伝えるための技だったんですね。
【番外編】俳句における重要切れ字「十八字」も紹介!
ここでは、俳諧連歌で特に重要とされた18種類の切れ字のうち、下記で説明する「や」「かな」「けり」を除いた15個を紹介していきます。
【助詞】
・もがな
「もがな」は、詠嘆と願望を表す切れ字です。
松尾芭蕉の【春風に 吹き出し笑う 花もがな】という句は、「春風が吹いてパッと咲く花があったらよいのになぁ」という詠嘆と願望を詠んでいます。
・ぞ
「ぞ」は、強調や念押しを意味する切れ字です。
『おくのほそ道』の最初の俳句として知られている【草の戸も 住み替はる代ぞ 雛の家】という句は、「この草庵も人が住み替わる時が来たのだ」と強調しています。
・か
「か」は、疑問を表す切れ字です。
小林一茶の【これがまあ 終(つひ)の栖(すみか)か 雪五尺】という句は、「これが私が死ぬまで過ごす場所なのか」という疑問や諦観を表しています。
・よ
「よ」は、呼びかけや感動を意味する切れ字です。どちらの意味かは俳句によって異なります。
【毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは】という正岡子規の句は、「毎年のことだよ」という感動の意味で切れ字を使っています。
【助動詞】
・らむ
「らむ」は、「今は~しているのだろうか」という現在推量を表す切れ字です。
【鰯雲 故郷の竈火 いま燃ゆらん】という金子兜太の俳句は、「故郷のかまどの火は今燃えているのだろうか」と思いを馳せている意味になります。
・つ / ぬ
「つ / ぬ」は、どちらも完了を表す助動詞です。
大野林火の句を例に挙げると【子の髪の 風に流るる 五月来ぬ】では「風を感じて5月が来た」ことを強調しています。
・ず
「ず」は、打ち消しを表す助動詞です。
【風かほる 羽織は襟も つくろはず】という芭蕉の句は、「羽織もつくろわない姿に感銘を受けた」と切れ字を用いることで感情を伝えています。
・じ
「じ」は、「~しないだろう」という打ち消し推量を表す助動詞です。
【馬方は しらじ時雨の 大井川】という芭蕉の俳句は、「対岸のこの時雨を相手は知らないだろう」と「時雨」を強調するために切れ字を使用しています。
【形容詞の終止形】
・し
「白し」など形容詞の終止形があった場合は、切れ字になっている可能性があります。
ただし、助動詞の連体形も同じく「し」になるので、形容詞かどうかを確認しましょう。
【副詞】
・いかに
「いかに」は、疑問の意味を持つ副詞です。
【猿を聞く人 捨子に秋の風 いかに】という芭蕉の句は、「悲しみを誘う猿の鳴き声と捨て子の泣き声、どちらがより悲しいだろうか」と問いかけています。
【動詞の命令形】
・せ / れ / へ / け
「給へ」や「つくれ」など動詞の命令形は俳句の切れ字になる可能性があります。
品詞分解をしっかりと行って理解しましょう。