
日本の夏の風物詩「金魚」。
金魚の色鮮やかな姿とゆったりとした動きは、涼しさを感じさせてくれます。
泣きぼくろ二つありたる金魚かな 遊子#俳句#jhaiku #写真俳句 pic.twitter.com/3SG3ySHE0j
— 遊子 (@totoyushi) June 1, 2014
今回はそんな「金魚」をテーマにした俳句を20句ご紹介します。
夏の季語「金魚」について
「金魚」は、俳句では夏の季語です。
金魚は昔中国で「鮒(ふな)」を鑑賞用に品種改良して作られ、室町末頃に日本に伝わりました。
さまざまな金魚が日本でも作られるようになったのは、江戸時代に入ってからです。
金魚は古くから日本におり、縁日の金魚すくいでよく見かけるのは「和金(わきん)」という種類です。他に、目が出ている「出目金(でめきん)」など、金魚には色々な品種があります。
かつての日本では、「金魚」の入った桶を天秤棒に吊ってかつぎ、売り声をあげながら町を歩く、「金魚売」(きんぎょうり)がいました。
江戸時代を振り返る画像。
『『東都見立夏商人』「金魚売」(歌川国貞 画)の拡大画像』元記事 →『エアコンなくてもこんなに涼しい! 江戸時代の夏の過ごし方がアイデア満載で参考になる』 https://t.co/SThKctc6hP#江戸時代#歴史 pic.twitter.com/mTx4k9qgcu
— 江戸ガイド (@edo_guide) August 23, 2017
金魚を季語に使った有名俳句【10選】
【NO.1】 高浜虚子
『 いつ死ぬる 金魚と知らず 美しき 』
季語:金魚(夏)
現代語訳:いつ死んでしまうのだろうか。金魚と知らない美しさである。
いつ死んでしまうのか、金魚は自分の命のことを知らない。金魚の短い命のはかなさ、美しさを感じます。
【NO.2】種田山頭火
『 夜店の金魚 すくはるるときの かがやき 』
季語:金魚(夏)
現代語訳:夜店の金魚が、すくわれてしまうときに輝くことだ。
夜店で行われている、金魚すくい。網にすくわれた瞬間の金魚の鮮やかな色が、読み手の目に浮かびます。
【NO.3】中村汀女
『 やはらかに 金魚は網に さからひぬ 』
季語:金魚(夏)
現代語訳:やわらかに、金魚は網に逆らっていってしまった。
【NO.4】山口青邨
『 女だちやおしゃべり 金魚浮き沈み 』
季語:金魚(夏)
現代語訳:女性たちがおしゃべりをする中、金魚が静かに浮き沈みしている。
女性たちのおしゃべりの声と、静かに水の中で浮き沈みする金魚。静と動を感じさせます。
【NO.5】松本たかし
『 金魚大鱗(たいりん) 夕焼け(ゆやけ)の空の 如きあり 』
季語:金魚(夏)
現代語訳:大きな金魚の色は、夕焼けの空色のようだ。
「大鱗」(たいりん)とは大きな魚のことを意味します。
上の句を「金魚大鱗」(きんぎょたいりん)と七音の字余りとすることで、読み手に強い印象を与えています。
「大鱗」のような金魚の色を夕焼けの空に例えており、作者の色彩感覚の素晴らしさが伝わる句です。
【NO.6】吉屋信子
『 金魚売(きんぎょうり) 買へずに囲む 子に優し 』
季語:金魚売(夏)
現代語訳:金魚売が、金魚を買えずに囲んでくる子どもにも優しく接していることだ。
昔、下町で客寄せの声を上げながら、金魚売が金魚を売り歩いていました。
金魚売の声に寄ってきた子供達。お金を持っておらず見物するだけの子どもたちに、金魚売は優しく話しかけています。心が温かくなる句です。
【NO.7】井上弘美
『 六道(ろくどう)の 辻(つじ)に金魚の 売られけり 』
季語:金魚(夏)
現代語訳:六道の辻で、金魚が売られていることだなあ。
「六道の辻」とは、生前の行いの善悪によって死後住むことになる六つの世界へと通じる道への、分岐点のことです。
つまり、あの世とこの世の境目を意味します。
「六道の辻」にいる金魚売りから金魚を買う人は、この世の者かあの世の者か。
作者の想像力の高さを感じさる句です。
【NO.8】波多野爽波
『 金魚玉 とり落としなば 歩道の花 』
季語:金魚玉(夏)
現代語訳: 今手にしている金魚玉を取り落してしまったら、金魚も金魚玉も砕けてしまい歩道の花になってしまうだろう。
「金魚玉」とは、ガラスでできた球状のガラスの器のことです。
かつて日本では、そのガラスの器に金魚と水を入れ、家の軒下などに吊るして、鑑賞を楽しむ風習がありました。
買った「金魚玉」を持って歩いている作者。
この「金魚玉」を落としてしまったら、全て砕けて歩道の花になってしまうだろうと、ふと想像したのでしょう。
【NO.9】飴山實
『 金魚屋の とどまるところ 濡れにけり 』
季語:金魚屋(夏)
現代語訳:夏の路で、金魚屋が止まった場所の跡が濡れている。
桶に金魚を入れて売る金魚売。金魚売が去ったあとには、水の跡が夏の地面に残っています。
かつての日本で夏の風物詩だった、金魚売の様子が目に浮かんでくる句です。
【NO.10】政宗白鳥
『 金魚売りの声 昔は涼しかりし 』
季語:金魚売り(夏)
現代語訳:金魚売りの声は昔は涼しかったことだ。
金魚売りは、「キンギョエーキンギョエー」とゆったりとした独特の売り声で歩いていました。
作者は、金魚売りの声で昔は涼しさを感じたことを思い出しています。
金魚をテーマにした一般オリジナル俳句【10選】
【NO.1】
『 ただいまの 静かに響く 金魚鉢 』
季語:金魚鉢(夏)
意味:「ただいま」の声が、金魚鉢に静かに響く。
【NO.2】
『 きんぎょすくい わたしも金魚も ひっしです 』
季語:金魚(夏)
意味:金魚すくいをする私も、金魚も必死です。
小学生の作者にとって、金魚すくいは難しいもの。
自分と金魚どちらも「ひっし」に戦っている、とした楽しい句です。
【NO.3】
『 すくいたい 思い出いっしょに 金魚たち 』
季語:金魚(夏)
意味:思い出と一緒に金魚たちをすくってしまいたい。
「楽しかった思い出」と「金魚」両方をすくってしまいたいとする、面白い句です。
【NO.4】
『 金魚にはなれない 黒きスーツ着る 』
季語:金魚(夏)
意味:金魚には自分はなることはできないが、金魚と同じ黒いスーツを着る。
自分は自由に泳ぐ金魚のようになることができないと感じる、金魚と同じ黒色のスーツを着る作者。
黒色のスーツが、労働で着る物なのか葬儀で着るものなのか、読み手に色々な想像をさせます。
【NO.5】
『 小言かも知れぬ 金魚の泡かな 』
季語:金魚(夏)
意味:水槽で泳ぐ金魚が出している泡は、金魚の小言なのかもしれない。
金魚が息をするたびに口から出る泡を、小言なのかもしれない、と感じた作者の感覚が面白い句です。
【NO.6】
『 みづいろと そらいろの差よ 金魚玉 』
季語:金魚(夏)
意味:金魚玉の水色と空の色の差を、感じることだなあ。
切れ字「よ」を使い、「差であることだなあ」と詠嘆を表しています。
軒下に吊るされた「金魚玉」の水の色と境目がない程青い空、読み手にはっきりとその景色を想像させます。
【NO.7】
『 好きですと 金魚に言っても 仕方無く 』
季語:金魚(夏)
意味:「好きです」と金魚に言ってみても、仕方がないことだ。
ゆらゆらと静かに泳ぐ金魚に、「好きです」とつぶやいた作者。
ふと我に返り、「金魚に言っても仕方ないことなのに」と溜息をついているようです。
好きな人に伝えられない、切ない想いを感じさせます。
【NO.8】
『 金魚売並びて 祭りの幕あけり 』
季語:金魚売(夏)
意味:金魚売の店が並び、祭りの幕が開けたことだ。
夏祭りの会場で、あちらこちらに金魚売の店が並んでいます。
「夏祭りの幕が開けたのだ」と、わくわくした作者の気持ちが伝わります。
【NO.9】
『 出目金(でめきん)の 視野で世界を 見てみたい 』
季語:出目金(夏)
意味:出目金のような視野で、世界を見てみたい。
「出目金」は、目が左右に大きく突き出ている金魚のことです。
「出目金のような広い視野」で世界を見たい、作者の夢と希望にあふれる様子が伝わる句です。
【NO.10】
『 待ちわびる 金魚すくいの できる日を 』
季語:金魚(夏)
意味:金魚すくいのできる日を、待ちわびている。
金魚すくいを行えた、かつての楽しい夏の日。
その日が再びやってくるのを、作者は強く待ち望んでいます。
以上、金魚を季語に使った俳句集でした!
今回は「金魚」の句をご紹介しました。
「金魚」の俳句は、「涼しさ」「優雅さ」「切なさ」など様々な情景を伝えます。
昔から変わらない、ひらひらとした尾びれ、美しい色で私たちを癒してくれる「金魚」。
ぜひ、夏の優美な美しさを伝える「金魚」の俳句を楽しんでください。