【黛まどかの有名俳句 20選】現代俳句を代表する女流俳人!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の十七音に季節を表す季語を詠み込む短文の詩です。

 

江戸時代に成立した俳句は明治大正を経て戦後の現代俳句までさまざまな作風が生まれています。

 

今回は、昭和中期から現代にかけての俳壇で活躍する「黛まどか(まゆずみ まどか)」の有名俳句を20句紹介します。

 

 

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ぜひ参考にしてください。

 

黛まどかの人物像や作風

 

黛まどか(まゆずみ まどか)は、1962年(昭和37年)に俳人の黛執の長女として、神奈川県の湯河原町に生まれました。

 

フェリス女学院短期大学を卒業後、就職した富士銀行時代に杉田久女の俳句と出会い、句作を始めます。

 

1990年に角川書店の創業者である角川源義が始めた俳句結社「河」に入会し、吉田鴻司に師事しました。1994年には「B面の句」で第40回角川俳句賞奨励賞を受賞し、女性会員のみの俳句結社「東京ヘップバーン」を立ち上げ、1996年に俳誌の出版も始めています。

 

キリスト教の聖地を巡るサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路や、韓国の釜山からソウルまで踏破するなど、海外での活動を評価され、2010年には文化庁文化交流使としてフランスで俳句を指導するなどの活躍をしています。

 

 

黛まどかの作風は、初期は恋愛を詠んだ俳句が多いものの、基本的に有季定型・旧仮名遣いの伝統的な俳句です。

 

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口語調や自由律俳句などさまざまな作風の俳人がいる中で、黛まどかの俳句は、伝統的な俳句が多いと言われています。

 

黛まどかの有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 とどまると 見せて漂ふ 花筏(はないかだ) 』

季語:花筏(春)

意味:留まると見せて漂っていく花筏だ。

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「花筏(はないかだ)」は川に散った桜の花が筏のように水面に浮かんでいる様子を表した季語です。桜の名所では一面の花筏で川の流れが止まって見えることもありますが、よく見ると動いているという風景を詠んでいます。

【NO.2】

『 バレンタインデー カクテルは傘さして 』

季語:バレンタインデー(春)

意味:バレンタインデーのカクテルには傘をさしておこう。

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この句には「バレンタインデーカクテル」という名称のカクテルの付属品に小さな傘がさされているという解釈があります。また、恋愛と傘に関連するものとして「相合傘のマーク」が思い浮かぶため、2人でカクテルを飲んでいる様子を相合傘に例えたのかもしれません。

【NO.3】

『 また同じ タイプに夢中 万愚節(ばんぐせつ) 』

季語:万愚節(春)

意味:また同じタイプに夢中になってしまったエイプリルフールの日だ。

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「万愚節」とは41日のエイプリルフールのことです。午前中は嘘をついてもいい日だと言われているため、嘘の告白をされて「また」喜んでしまった自身を省みているのでしょう。

【NO.4】

『 会ひたくて 逢ひたくて踏む 薄氷 』

季語:薄氷(春)

意味:会いたくて逢いたくて今にも割れそうな薄氷を踏んでいく。

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「会いたい」という言葉を、漢字を変えて2回続けることで、恋焦がれる様子を表現しています。また、薄氷を踏むという言葉からは会う勇気がないこと、許されない恋であることなど色々と想像できる一句です。

【NO.5】

『 交換日記 少し余して 卒業す 』

季語:卒業(春)

意味:交換日記のページが少し余ったまま卒業した。

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交換日記の日記帳を使い切らずに、少しだけ余ってしまったというところに卒業することへの寂しさを感じます。中学や高校の卒業後はそれぞれ進路が異なり、もうページが埋まらないのだろうという寂寥感を感じる歌です。

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作者の代表句の1つです。「B面」とはレコードやカセットテープにあった楽曲で、主題である「A面」の旅行が終わってもまだ夏休みは続くのだと詠んでいます。

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サングラスをしているとどこを見ているかわかりにくいものです。しかし、「彼」の仕草に敏感だろう作者は視線がこちらを向いておらず、誰か他の人を見ていることを感じ取っています。

【NO.8】

『 兄以上 恋人未満 掻氷(かきごおり) 』

季語:掻氷(夏)

意味:兄以上で恋人未満な彼とかき氷を食べている。

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小さな時から付き合いのある近所の年上の男性に恋をしている少女が思い浮かぶ句です。かき氷というすぐに溶けてしまうデザートが淡い想いを表しています。

【NO.9】

『 夏草の 雨にけぶれる 平泉 』

季語:夏草(夏)

意味:夏草が雨に煙っているように見える平泉だ。

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松尾芭蕉が平泉で詠んだ「夏腐や つわものどもが 夢の跡」が下地になっている一句です。芭蕉は夏草の茂る土地に諸行無常を感じていましたが、作者は夏草さえ雨で煙ってよく見えない風景を詠んでいます。

【NO.10】

『 シェパードが 先に着きたる 避暑地かな 』

季語:避暑(夏)

意味:走り出したシェパードが先に着いた避暑地であるなぁ。

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車やケージから出した犬が一目散に別荘に向かって走っていく様子が思い浮かぶ一句です。シェパードというと警察犬のイメージですが、この家庭では可愛らしい愛犬であるということもわかります。

 

【NO.11】

『 虫の夜の 寄り添ふものに 手暗がり 』

季語:虫(秋)

意味:虫が鳴く夜に寄り添うものは光が遮られて見えなくなった私の手元だ。

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「手暗がり」とは手で光が遮られて手元が見えなくなった状態のことです。虫が鳴く秋の寂しげな夜に手元が見えないという表現で不安さを表しています。

【NO.12】

『 円陣の わっとほどけて 天高し 』

季語:天高し(秋)

意味:円陣がわっと解ける天が高い秋の日だ。

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円陣を組む秋の行事というと甲子園などの学生の大会が思い浮かびます。円陣を組んでいた学生たちが一斉に持ち場に向かっていく様子が目に見えるようです。

【NO.13】

『 恋人を 待たせて拾ふ 木の実かな 』

季語:木の実(秋)

意味:恋人を待たせたまま拾った木の実であることだ。

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恋人との待ち合わせだったのか、デートの最中に拾ったのか、ふと童心に返った情景を表しています。「待たせて」とあるので恋人はともに拾わずに眺めていたのでしょう。

【NO.14】

『 縁側に 何でも干して 鵙日和(もずびより) 』

季語:鵙日和(秋)

意味:縁側に何でも干していこう。今日はモズの声が響く秋晴れだ。

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「鵙日和」とはモズの鳴き声が秋晴れの澄んだ空に響くことを意味する季語です。虫干しは7月から8月の土用干しが有名ですが、10月下旬から11月にも行われるためその時の風景を詠んだ一句になっています。

【NO.15】

『 水底の 砂踊らせて 水澄めり 』

季語:水澄めり(秋)

意味:水の底の砂が踊っている様子まで見えるほど水が澄んでいる。

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「水澄む」とは秋の澄んだ空気の中で水も澄んで見えることを意味する季語です。川の底の小石が踊るように動いていることも見渡せる清流が映像のように描かれています。

【NO.16】

『 かまいたち 鉄棒に巻く 落とし物 』

季語:かまいたち(冬)

意味:人にイタズラをするかまいたちが落し物を鉄棒に巻いている。

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「かまいたち」とは乾燥した空気で皮膚が裂ける現象ですが、ここで詠まれているのは3匹でイタズラをする妖怪の方でしょう。普段は転ばせたり切りつけたりしているかまいたちが、忘れ物を見つけて鉄棒に巻き付けたのだろうというユーモアのある句になっています。

【NO.17】

『 可惜夜(あたらよ)の わけても月の 都鳥 』

季語:都鳥(冬)

意味:明けることが惜しいこの夜だ。特に月に照らされる都鳥よ、どうか夜明けをむかえさせないでくれ。

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「可惜夜」とは明けるのが惜しい夜のことで、昔は夜に男女が会っていたことからよく使われた表現です。月が沈めば朝が来ること、伊勢物語で恋にからめて詠まれたことで有名な都鳥を詠んでいることから、離れがたいという強い感情を感じる句です。

【NO.18】

『 春隣 病めるときにも 爪染めて 』

季語:春隣(冬)

意味:春が近づいている。病気の時でもマニキュアで爪を染めよう。

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この句は作者が実際に入院している時の様子を詠んでいます。来客もなく見せる相手もいないけれど、それでもオシャレがしたくてマニキュアを塗っていたと自解で語っています。

【NO.19】

『 東京が じつとしてゐる 初景色 』

季語:初景色(新年)

意味:東京の街並みがじっとしているように見える元日の風景だ。

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元日から初売りが行われる最近では想像しにくい風景ですが、数十年前の元日はほとんどのお店が休みになり、閑散とした風景が広がっていました。「じっと」と詠まれるほど普段のにぎわいが嘘のような街並みだったのです。

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動向が気になっている人や、毎年凝った年賀状を送ってくれる人など、楽しみにしている年賀状があったのでしょう。この束の中にあるはずだと年賀状を仕分けしている様子が浮かんできます。

以上、黛まどかの有名俳句20選でした!

 

 

 

俳句仙人

今回は、黛まどかの作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。

現在も活躍中の作者はメディアや著書で精力的な活動を続けているのを目にします。
現代俳壇を牽引している俳人の1人ですので、ぜひ句集を読んでみてください。