【梅に関する有名俳句 30選】日本の春の風物詩!!季語を含んだ俳人名句を紹介

 

日本では、花といえば「桜」をイメージされる方が多いと思います。

 

しかし、平安時代初め頃までは、花は「梅」を主に指していました。

 

梅はまだ寒さが残る中、他の花に先がけて咲く花であることから「春告草(はるつげくさ)」とも呼ばれます。梅の花の色は、主に白、紅、淡紅があり、梅の種類は300以上あるとされています。

 

梅は、その香りと美しい花の姿が尊重され、日本の雅を好む多くの俳人に読まれてきました。

 

 

今回は、春の象徴である「梅」の有名俳句を30句紹介していきます。

 

俳句仙人

ぜひご一緒に梅の美しさを詠った句を味わっていきましょう。

 

梅を季語に使った有名俳句【前編10句】

 

【NO.1】松尾芭蕉

『 梅が香に 昔の一字 あはれなり 』

季語:梅(春)

現代語訳:梅の香りをかぐと、「昔」の一字がことさらあわれに感じられる。

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「昔」とは、ここでは故人を意味します。昨年なくなった故人を、梅の香りによって思い出し悼んでいる句です。

【NO.2】井原西鶴

『 梅の花 になひおこせよ 植木売り 』

季語:梅の花(春)

現代語訳:植木屋よ、梅の花をかついで届けてくれ。

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「になひおこせよ」は、「荷ひおこせよ」の意味です。菅原道真の和歌「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」を踏んで作られています。井原西鶴らしい、洒落に富んだ句です。

【NO.3】惟然

『 梅の花 あかいはあかいは あかいはな 』

季語:梅の花(春)

現代語訳:梅の花、赤いは赤いは赤い花だなあ。

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句の終わりの「は」「な」は、詠嘆を表す助詞と「花」を掛けています。平仮名で「あかいはあかいはあかいはな」と繰り返し、軽く楽しい句になっています。

【NO.4】小林一茶

『 せなみせへ 作兵衛店の 梅だんべへ 』

季語:梅(春)

現代語訳:兄さん見なさい、作兵衛のお店の梅だ。

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小林一茶独特の、方言を使った俳句です。江戸郊外の葛飾の地の方言を使っています。

「せな」は「兄」。「みせへ」は「見なさい」の意味です。「店」は「だな」と読みます。梅を見ながらのんびりと散策を楽しんでいる一茶の場面が、方言を使うことでよく表現されています。

【NO.5】正岡子規

『 蠣殻の うしろに白し 梅の花 』

季語:梅(春)

現代語訳:牡蠣(かき)を食べたあとの殻の後ろに、白い梅の花が咲いている。

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「蠣殻」は「かきがら」と読みます。食べた後の牡蠣の殻が地面に転がっていて、その後ろに梅の花が白くぼんやりと咲いています。

【NO.6】捨女

『 梅が香は おもふきさまの 袂(たもと)かな 』

季語:梅(春)

現代語訳:梅の香りを自分の袖にとめて、あなたさまを想うつてにすることだ。

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「きさま」は「貴様」のことで、「あなたさま」の意味です。梅の香りとともに恋しい人を想う女心が表現されています。

【NO.7】中村草田男

『 勇気こそ 地の塩なれや 梅真白(うめましろ) 』

季語:梅(春)

現代語訳:勇気こそ地面の塩となれ、梅が真っ白に咲く。

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「地の塩」は聖書マタイ伝の言葉で、世のために尽くし、献身する人のことです。

「梅真白」(うめましろ)の言葉で、勇敢な様子を表しています。

【NO.8】荒木田守武

『 とび梅や かろがろしくも 神の春 』

季語:梅(春)

現代語訳:空を軽々と飛んだ梅。神の春のことである。

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菅原道真の都から太宰府まで梅が飛んだという、梅の木伝説になぞらえて作られた句です。

【NO.9】内藤鳴雪

『 夕月や 納屋も厩(うまや)も 梅の影 』

季語:梅(春)

現代語訳:空には夕月がのぼり、納屋にも厩にも美しい梅の影がかかっている。

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「厩」は「うまや」と読みます。伝統的な日本の美の「夕月」そして、「梅」を「梅の影」とすることで農村の風情を醸し出しています。

【NO.10】飯田蛇笏

『 山川の とどろく梅を 手折るかな 』

季語:梅(春)

現代語訳:山を流れる川音がとどろく中、梅を手で折ろうとすることだ。

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山の中に咲く野生の梅。川音がごうごうと響いてくるような中、作者が梅を取ろうとする姿が浮かびます。

 

梅を季語に使った有名俳句【中編10句】

 

【NO.1】夏目漱石

『 佶倔な 梅を画くや 謝春星 』

季語:梅(春)

意味:曲がりくねった梅の枝を画いたであろう 謝春星は。

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この句は「きつくつな うめをえがくや しゃしゅんせい」と読みます。

「きつくつ」とは、曲がりくねっている、または窮屈であるという意味。「謝春星」とは、与謝蕪村の俳号です。

与謝蕪村の画く梅が「きつくつ」としていると夏目漱石が評している俳句です。

【NO.2】梶井基次郎

『 梅咲きぬ 温泉は爪の 伸び易き 』

季語:梅(春)

意味:梅が咲いた。温泉に入ると爪が伸びやすくなる。

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「温泉」は「いでゆ」、「易き」は「やすき」と読みます。梶井基次郎は、三十一歳の若さで亡くなり、俳句も多くありません。この句には繊細な作者の感覚がよく表れています。

【NO.3】水原秋櫻子

『 水滴の 凍るゆふべぞ 梅にほふ 』

季語:梅(春)

意味:滴り落ちる水も凍ってしまう夕暮れ時に、梅の香りが漂ってくることだ。

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水滴が凍ってしまうようなまだ寒さの中、梅が咲いている香りがする。梅の姿は見えませんが、梅のよい香りが感じられる句です。

【NO.4】山口青邨

『 草を焼く 煙流れて 梅白し 』

季語:梅(春)

意味:草を焼く煙が白く流れゆく先に、梅も白く咲いている。

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煙の白さと梅の花の白さが合わさり、読み手に思い描かされる句です。

【NO.5】石田波郷

『 梅の香や 吸ふ前に息は 深く吐け 』

季語:梅(春)

意味:梅の香りを吸う前には、息を深く吐け。

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梅のよい香りを吸う前に、まずは大きく息を吐け。と命令形を使うことで、読み手に梅の香りをより印象づけています。

【NO.6】尾崎放哉

『 児をつれて 小さい橋ある 梅林 』

季語:梅(春)

意味:子どもを連れて梅林を歩いていると、小さな橋があったことだ。

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小さな子供と梅林を散歩した時に、小さな橋がかかっているのを見つけた。ほのぼのとした風景が浮かんできます。

【NO.7】内藤鳴雪

『 野の梅や 折らんとすれば 牛の声 』

季語:梅(春)

意味:野梅を折ろうとすると、牛の声が聞こえてきた。

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野に咲いている梅と牛の声、田舎ののんびりとした春の風景を詠っています。

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松尾芭蕉晩年の句です。朝日が昇る様子を「のつと」という語を用い、とても印象的に表現しています。梅の香りに誘われるように、朝日が昇ってきたことだと作者は思いにふけっています。

【NO.9】与謝蕪村

『 しら梅に 明る夜ばかりと なりにけり 』

季語:しら梅(春)

意味:白梅が美しく光る夜明けとなったことだ。

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この句は、与謝蕪村の辞世の句で、病に臥せる与謝蕪村の枕元で門人が書き留めたものです。蕪村は、享年68歳。自分の夜は「しら梅に明る夜ばかり」となったと、自身の死を悟っています。

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この句は松尾芭蕉の弟子、服部嵐雪の詠んだ句で、寒梅の句として現在でも有名です。
この句は前詞に「寒梅」と書かれており、冬の最中に咲いている梅の花を見つけた時の喜びを詠んでいます。
「いちりんほどのあたたかさ」と平仮名で繰り返すことにより、梅を見つけた作者の心が、ほんのりと温まった様子が伝わってきます。

梅を季語に使った有名俳句【後編10句】

 

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「万歳」とは新年を祝う民俗芸能です。本来であれば新年に来るべきものが、山里であるために梅の花が咲く頃にようやく回ってきたと詠んでいます。

【NO.22】野沢凡兆

『 灰すてて 白梅うるむ 垣根かな 』

季語:白梅(春)

現代語訳:灰を捨てに行くと、灰が舞い上がって白い煙が上がった。そんな中で見る白梅はまるでうるむような色に見えた垣根であることだ。

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江戸時代では火鉢など炭を使う暖房器具が一般的でした。朝になって灰を捨てに行ったときに見た白梅の美しさに感動している一句です。

【NO.23】加賀千代女

『 手折らるる 人に薫るや 梅の花 』

季語:梅(春)

現代語訳:梅の花を手折った人により濃く薫る花の香りであるなぁ。

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梅の花の良い香りが、花を摘んだ人から一層濃く感じるようだと詠んだ一句です。梅の花を摘んでいる梅見の様子が見えるようです。

【NO.24】与謝蕪村

『 二もとの 梅に遅速を 愛すかな 』

季語:梅(春)

現代語訳:2本の梅の木が少し遅れて咲く様子を愛でているのだ。

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『和漢朗詠集』という歌集に「遅速」と「梅」が登場する慶慈保胤の詠んだ詩があります。この句はそれを踏まえたうえで、詩と似たような状況になった梅の花を興味深げに眺めている句です。

【NO.25】山口誓子

『 探梅や 遠き昔の 汽車に乗り 』

季語:探梅(冬)

現代語訳:梅の花を探しに行こう。遠い昔のもののような汽車に乗って。

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「探梅」とは寒い冬の間に咲く梅の花を探しに行くことを表す季語です。どこにあるかわからない梅の花を、遠い昔の記憶にあるような汽車に乗って探しに行こうというロマンのある句になっています。

【NO.26】森澄雄

『 白梅に 昔むかしの 月夜かな 』

季語:白梅(春)

現代語訳:白梅を見ていると、「むかしむかし」で始まる物語を思い出す月夜であることだ。

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昔話は「むかしむかし」という定型句から始まります。白梅と月夜を見ていたら、何かの昔話を思い出したのか、幼い頃に話を聞いた時を思い出したのか、懐かしがっている一句です。

【NO.27】飯田龍太

『 白梅の あと紅梅の 深空(みそら)あり 』

季語:梅(春)

現代語訳:白梅のあとに紅梅が咲く深い青空がある。

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白・赤・青とさまざまな色の移り変わりを詠んでいます。梅の花が次々と咲いていく背景に深い青空があるという写真のような一句です。

【NO.28】川端茅舎

『 朝靄(もや)に 梅は牛乳(ちち)より 濃かりけり 』

季語:梅(春)

現代語訳:朝靄に包まれていると、梅の花の白は牛乳の白よりも濃く見える。

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朝靄、梅の花、牛乳とそれぞれ色の違う「白」を対比させた句です。一見関係のなさそうな3つのものを白というキーワードで並べているのが面白い句になっています。

【NO.29】永田耕衣

『 白梅や 天没地没 虚空没 』

季語:白梅(春)

現代語訳:白梅が咲いた。天と地と虚空が崩れていくような地震だ。

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この句は作者が阪神大震災に被災したあとに詠まれました。白梅が変わらず咲いているなかで、自分が知覚できる世界の全てが揺れて消えていく恐ろしさが二句と三句の漢字のみで表現された句から伺えます。

【NO.30】金子兜太

『 白梅や 老子無心の 旅に住む 』

季語:白梅(春)

現代語訳:白梅が咲いているなぁ。老子が無心の旅に暮らしたように、自分も無心に俳句に打ち込んでいくのだ。

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この句は作者が俳句を始めた頃に読まれたもので、北原白秋の『老子』という詩を下敷きにしています。俳句の道に進むことを母親に反対されていた作者にとって、無心の旅と表現するほど決意が固かったことが伺えます。

以上、梅に関する有名俳句集でした!

 

 

俳句仙人

今回は「梅」の有名俳句を30句紹介してきました。

梅はその芳しい香りと美しさから、まさに「花木の王者」と言えます。そのため、数々の梅を詠んだ俳句には気品があふれるものが多くあるのです。

梅が咲いた時には、その美しい様子と香りを味わいながら、梅の俳句を楽しんでみてください。

 

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