【緑陰(木陰)の俳句 20選】夏の季語!!涼しい気持ちになるオススメ有名句&一般ネタを紹介

 

夏の涼しさを伝える季語して、「緑陰」という季語があります。

 

 

今回は、この「緑陰(木陰)」を詠った俳句を20句ご紹介します。

 

リス先生
有名俳句だけではなく、一般の方が作った作品まで紹介していくよ!ぜひ最後まで読んでね!

季語「緑陰(緑蔭)」について

 

緑陰(りょくいん)とは、初夏の青葉が茂った木々の陰(木陰)のことです。

 

緑陰は太陽の強い日差しを遮り、涼しい場所を人々に提供してくれます。炎暑の中、「緑陰」の風はとても心地よいものです。緑陰の中で、読書や親しい人との語らいをするなどして、人々は安らぐことができます。

 

また、緑陰は「三夏(さんか)」の季語です。三夏とは、陰暦で4から6月の三か月(初夏、仲夏、晩夏)のことをいいます。

 

ちなみに、「木陰」を用いる場合は「夏木陰(なつこかげ)」とするか、または夏の季語と合わせて用いられることが多いです。

 

緑陰(木陰)に関する有名俳句【10選】

 

リス先生
まずは有名俳人が詠んだ俳句を紹介していくよ!

【NO.1】高浜虚子

『 緑蔭や 人の時計を のぞき去る 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭で休んでいると人の腕時計をのぞいて去っていく男がいた。

俳句仙人

「緑蔭」の心地よい中、知らない男から腕時計を覗かれるという、思ってもみない出来事です。

腕時計を覗かれるというのは決して気持ちの良いものではありませんが、覗く男の時間を知りたいという思いも、何となく虚子はわかるのでしょう。

日常であった場面を、観察して詠う虚子の姿勢が感じられます

【NO.2】稲畑汀子

『 目つぶれば 睡魔ふとくる 緑蔭に 』

季語:緑蔭(夏)

意味:目をつぶると睡魔がふとやってくる緑蔭の中でのことだ。

俳句仙人

「緑蔭」は、夏の暑さから離れて涼しさを得ることができます。

緑蔭の中、瞼を閉じると睡魔がふと訪れる。爽やかな風が読み手にも伝わってきます。

【NO.3】上田明子

『 辞書を引く 女子大学の 緑蔭に 』

季語:緑蔭(夏)

意味:女子大学の緑蔭で辞書を引く。

俳句仙人

この句は倒置法を用い、「緑蔭に」と終わることで句の印象を強めています。「女子大学の緑蔭で辞書を引いた」と淡々と詠っていますが、読み手には映画のワンシーンのように情景が浮かんできます。

【NO.4】松本たかし

『 幹高く 大緑蔭を 支へたり 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭が大きな庇のように広がっている、それを大きな幹が高く支えている。

俳句仙人

大きく広がる緑蔭を「幹高く」支える、という視点が読み手にとって意表をつかされる句です。

【NO.5】結城昌治

『 緑陰に 置かれて空の 乳母車 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑陰に空の乳母車が置かれている。

俳句仙人

夏の暑さでかいた汗もすっと消える心地よい緑陰に、「空の乳母車」がぽつんと置かれています。乳母車に乗った乳児の姿がどこにいるのか、句からはわかりません。

子どもは乳母車から離れたところにいるのか、乳母車に乗ることがない程成長し乳母車のみが残されているのか、読み手の想像をかきたてる句です。

「乳母車」と名詞で終わる体言止めの方法を用い、「乳母車」の印象を強めています

【NO.6】西東三鬼

『 緑蔭に 三人の老婆 わらへりき 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑陰で三人の老婆が笑っている。

俳句仙人

緑蔭で三人の老婆が笑っているという、何気ない俳句に思えますが、なぜ「三人の老婆」なのか、謎が残る句です。

三人の女性が出てくる話は、古くは日本の『古事記』『日本書紀』、ギリシア神話の「三人の女神」など世界中にあり、この句もそれを彷彿とさせます。

さらに、「わらへりき」の語が意味ありげに感じられます。「わらへりき」の「き」は過去を意味する助動詞です。「わらへりき」と過去を示すことで、三人の老婆が消えてしまったような、読み手にとってまるで絵画を見ているような感覚を覚えさせる効果を生んでいます

【NO.7】星野立子

『 緑蔭に 染まるばかりに 歩くなり 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭に染まるように歩くことだ。

俳句仙人

緑蔭の下を歩いている作者。木々の美しい緑に自分も染まるようだと感じているのでしょう。鮮やかな木々の色が思い描かされます

【NO.8】沢木欣一

『 緑蔭に 赤子一粒 おかれたり 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭の中に、赤子が一粒置かれている。

俳句仙人

「赤子一粒」とあり、「一人」でなく「一粒」としたところにこの句の面白さがあります。

小さな赤ん坊は、まるで「一粒」の飴玉のように緑蔭の中に置かれているのです。

緑蔭の涼しさの中にいる赤ん坊のかわいらしい様子が伝わってきます。

【NO.9】中村草田男

『 チンドン屋 前後の荷解き 緑蔭へ 』

季語:緑蔭(夏)

意味:チンドン屋が前後の荷物を解き、緑蔭へ入っていった。

俳句仙人

「チンドン屋」とは、派手な服装をして鉦(かね)や太鼓を『チンチンドンドン』と鳴らしながら町中を歩く広告を宣伝する業者です。

体の前後につけた楽器などの荷物を下ろしながら、涼を求めて緑蔭に入って行った「チンドン屋」。

一息つく「チンドン屋」の様子が、色鮮やかに読み手に伝わってきます

【NO.10】飯田龍太

『 緑蔭を よろこびの影 すぎしのみ 』

季語:緑蔭(夏)

俳句仙人

「緑蔭」があるのは、夏の昼間、暑い盛りの時間帯です。「よろこびの影」とは、夏の日差しから逃れるため「緑蔭」に入った人々が、涼しさにほっと安らぎを得た姿と感じられます。

句の最後を「すぎしのみ」とすることにより、この句の場面を一つの絵画のように残すような効果を生んでいます

緑陰(木陰)に関する一般俳句ネタ【10選】

 

リス先生
ここからは一般の方が詠んだ俳句を紹介していくよ!

【NO.1】

『 緑蔭や みんな何処かで 大人しく 』

季語:緑蔭(夏)

意味:みんながどこかで大人しくなる緑蔭でのことだ。

俳句仙人

夏の日から遮ってくれる「緑蔭」の中に入ると、人々は静かに涼しさを味わいます。その一コマを詠った句です

【NO.2】

『 無言を以て(もって)緑蔭を分かち合う 』

季語:緑蔭(夏)

意味:無言のまま、緑蔭を分かち合う二人だ。

俳句仙人

高校生が詠んだ句です。

夏の強い日差しを避けるために緑蔭に入った二人。お互いに言葉を交わすことはなく、ただ緑蔭に流れる涼しい風を浴びているのです。

お互いに好意を持っているものの気持ちを伝えられない二人なのかと、読み手の想像を掻き立てる句です

【NO.3】

『 緑陰や 父に素直に なりし午後 』

季語:緑蔭(夏)

意味:父に素直になることができた緑蔭での午後のことだ。

俳句仙人

今までずっと反抗してきた作者は、緑蔭で、父に自分の気持ちを素直に伝えることができたのでしょうか。

息子を静かに見守ってきた父親の優しさが、緑蔭の様子と重なり伝わってきます。

【NO.4】

『 緑蔭の 近道のぼる 吉野山 』

季語:緑蔭(夏)

意味:吉野山へ、緑蔭の近道を登っていく。

俳句仙人

「吉野山」とは、奈良県の中央部にある大峰連山のことです。

北端は約8㎞に及ぶ尾根続きの山稜になっており、桜の名所としても有名です。

この句では、「吉野山」と名詞で終わる体言止めの方法を用い、「吉野山」への緑蔭の近道を印象づけています

【NO.5】

『 緑蔭に 晩年らしく 暮らしをり 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭で、晩年らしく暮らしていることだ。

俳句仙人

今まで働いてきた作者は、退職後自由に「緑蔭」の中で過ごしているのでしょう。

在職中には味わえなかった、ゆったりとした時間を「晩年らしく」と表現しています

【NO.6】

『 緑蔭や 居ずまひ美しき 盲導犬 』

季語:緑蔭(夏)

意味:居住まいが美しい盲導犬のいる、緑蔭であることだ。

俳句仙人

「盲導犬」は、目の不自由な人を危険から守り、安全に目的地へ誘導します。

主人が緑蔭で休んでいるのでしょうか、「盲導犬」はその傍らにそっと寄り添っています。

「居ずまひ美しき」とすることで、「盲導犬」の凛とした姿が印象的に伝わる句となっています

【NO.7】

『 緑蔭に ままごとの椀 残りをり 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭で、ままごとのお椀が残っている。

俳句仙人

作者が緑蔭へ入りふと下を見ると、ままごとのお椀が残っているのを目にします。

子どもが忘れていったお椀なのでしょう。ほのぼのとした場面を描いています

【NO.8】

『 緑蔭や ころころ笑う 娘たち 』

季語:緑蔭(夏)

意味:ころころと笑う娘たちがいる、緑蔭であることだ。

俳句仙人

高校生が詠んだ句です。「ころころ笑う娘たち」と、擬態語を用いることで少女達の楽し気な笑い声が詠み手にも伝わってくる効果を生んでいます。

「緑蔭や」と切れ字「や」を用いることで、「緑蔭」を印象づけています

【NO.9】

『 緑蔭の つづきのような 書庫に入る 』

季語:緑蔭(夏)

意味:緑蔭の続きのような書庫に入る。

俳句仙人

「緑蔭」は、日を遮り「暗」の場所となっています。

作者は、暗い書庫に入ってゆくことを「緑蔭のつづきのような」と表現しました。

読み手にまるで異世界へと続く道を入っていくような感覚を味わせる効果を生んでいます

【NO.10】

『 風薫る(かぜかおる) 木陰でめくる 愛読書 』

季語:風薫る(夏)

意味:風薫る中、木陰で愛読書をめくる。

俳句仙人

「風薫る(かぜかおる)」とは初夏の季語で、樹木の青々としげった葉の間を吹き抜ける風のことをいいます。

初夏のここちよい木々の間を吹き抜ける風が吹く中、木陰で愛読書を読む作者。

爽やかな初夏の情景が伝わってきます

 

 

以上、緑陰に関するオススメ俳句でした!

 

俳句仙人

今回は、緑陰(木陰)をテーマにした俳句を有名なもの10句、オリジナルのものを10句ご紹介しました。

初夏の青々とした樹木が作る木陰「緑陰」に入ると、その中は心地よい風が流れ、夏の暑さを忘れることができます。「緑陰」の中で、人々は疲れや悩み事などから解放され、リフレッシュできます。

「緑陰」(木陰)の俳句では、鮮やかな新緑と涼風を感じられる句が多くあります。

ぜひ、「緑陰」(木陰)の句で爽やかな気持ちを味わってくださいね