【七夕の有名俳句 30選】知っておきたい!!季語を含んだおすすめ俳句集を紹介

 

「七夕(たなばた)」とは、77日または旧暦の77(現代の8月上旬から下旬頃)に行われる伝統的な行事で、五節句の一つとされています。

 

 

今回は、そんな「七夕」に関する有名俳句【おすすめ30選】を紹介していきます。

 

俳句仙人

ぜひ参考にしてみてください。

七夕をテーマにした有名俳句集①【10句】

 

【NO.1】松尾芭蕉

『 たなばたや 秋をさだむる 夜のはじめ 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕の夜になった。夏から秋にかかる季節の始まりだ。

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こちらは芭蕉が51歳の時に詠んだ句です。77日は、現在の8月下旬頃なので、暑さも落ち着き、今年最初の秋を感じる夜となったと詠んだのでしょう。

【NO.2】松尾芭蕉

『 七夕の 逢わぬ心や 雨中天 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:今日は七夕。天の川を渡って二人が会えれば有頂天だが、今夜はあいにくの雨で、天の川の水かさが増して会えないだろう。その気持ちはまるで雨中天だ。

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「有頂天」の造語の「雨中天」をかけて表現しています。「有頂天」は現在、能天気に喜ぶ様子に使われていますが、元来は仏教用語で9つの天のうちで、最上の至福の天を指します。

【NO.3】水原秋桜子

『 七夕や つねの波漕ぐ わたし守 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕だなあ。いつもと同じように渡し船の船頭が船を進めている。

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七夕の夜に、天気が荒れることなく穏やかに、1年に1度の逢瀬ができることを詠んだ句に感じられます。

【NO.4】小林一茶

『 七夕や 野にもねがひの 糸すすき 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:今日は七夕だな。竹には願いの糸、野原にも願いの糸のようなすすきが揺れている。

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現在は笹に願い事を書いた短冊を飾りますが、昔は五色の願いの糸をかけました。青は「徳を積む」、赤は「父母や祖先への感謝の気持ち」、黄は「信頼」、白は「義理や決まりを守る」、黒は「学業の向上」と五色それぞれに意味があります。

【NO.5】山口青邨

『 七夕の 一粒の雨 ふりにけり 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕の日に、一粒雨が降ったのだなあ。

俳句仙人
現在の暦では、七夕に雨が降ることもありますが、旧暦の七夕に雨が降ることは珍しいことだったのかもしれません。

【NO.6】遠藤若狭男

『 七夕や 渚の誰も 歩み来ず 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕だなあ。渚に誰も歩いて来ない。

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普段は波打ち際にたくさん人がいるが、今日はみんな、空を見上げていて誰もいない。みな、七夕の逢瀬に今日は注目しているということを詠んでいるようです。

【NO.7】中村汀女

『 行人の 見る七夕を 結びけり 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:道を行く人が目にする七夕飾りを結んだことよ。

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道を通る人が、自分の結んだ七夕飾りを見ている様子が浮かぶ1句です。

【NO.8】水原秋桜子

『 七夕の 荒波をわたる 舟ひとつ 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕の夜に、天気が良くなく、荒れている天の川を渡る舟がひとつある。

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七夕の日の夜に雨が降り、織姫と彦星が会うための舟が、一生懸命天の川を渡ろうとしている様子が感じられます。

【NO.9】飯田蛇笏

『 七夕の みな冷え冷えと 供物かな 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕の夜、もう世の中は秋の涼しさを感じられて、神様や仏様へのお供えものも冷たくなっているなあ。

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「供物」は神や仏に供えるもののことです。七夕のお供えものを見て、もう外の空気も冷えているなぁと感じ、詠んだ句です。

【NO.10】日野草城

『 七夕や 逢へばくちびる のみとなる 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕だなあ。逢うときはいつも、口づけだけになる。

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七夕に、織姫と彦星が1年に1度の再会をすることを想い、2人が口づけする様子をイメージしたのでしょう。

 

七夕をテーマにした有名俳句集②【10句】

 

【NO.1】飯田蛇笏

『 七夕の 夜ぞ更けに けりおしまづき 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕の夜が深くなっていく、机のもとで。

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机に向かいながら、窓の外を見て、七夕の夜が更けていくことを感じ詠んだ句です。

【NO.2】山口誓子

『 七夕や 天皇の御名を 書しまつる 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕の日に、短冊に天皇のお名前を書いてお願いする。

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「おしまづき」とは「几」と書き、机のことを意味する単語です。七夕の短冊に、天皇の名前を書き、世の中の安寧を願ったように感じられます。

【NO.3】小林一茶

『 七夕や 涼しき上に 湯につかる 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕だなあ。もう涼しいこの時に、温泉に入っている。

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七夕の日に、季節も秋めいたことを実感しながら、温泉のあたたかさをしみじみと感じている様子が浮かびます。

【NO.4】中村草田男

『 七夕や 男の髪も 漆黒に 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕だなあ。男の濡れた髪も漆黒に輝いている。

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髪は女性の象徴です。女性の髪が濡れていれば、なお艶っぽく感じられます。七夕の日なので、髪を濡らしたまま逢いに行く相手は恋人でしょう。髪は女性の象徴という従来のイメージを読み換えた1句です。男性も、女性と同じように髪を濡らしたまま恋人のところへ急いで向かうのだということが感じられます。

【NO.5】正岡子規

『 秋近し 七夕恋ふる 小傾城 』

季語:七夕(秋)

意味:もう秋が近い。七夕に心が引かれる、若い遊女だ。

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「小傾城」とは、年の若い遊女のことです。遊女も、1年に1度の織姫と彦星の再会を願ったのでしょう。

【NO.6】高橋淡路女

『 七夕や 心もとなき 朝ぐもり 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕よ。今日は1年に1度の七夕の日なのに、朝から空が曇っていて不満である。

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1年に1度しか逢うことのできない織姫と彦星のことを想い、天気が悪くなりそうな空を見て、残念に思っている様子が感じられます。

【NO.7】正岡子規

『 七夕に まことの情を 尋ね見よ 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕の日に、本当の気持ちを問い、結ばれよ。

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織姫と彦星が出逢う七夕の今日に、相手に本当の気持ちを聞き、2人結ばれよ、と詠んでいるように感じられます。

【NO.8】正岡子規

『 七夕の 今宵にせまる 曇り哉 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕の今夜は曇りだなあ。

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1年に1度の七夕なのに、空が曇ってきていることを残念に思っている様子の句です。

【NO.9】山口青邨

『 七夕の 吹流しもて 街充たす 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕飾りの吹き流しで、街をいっぱいにする。

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七夕飾りの吹き流しには、織女にあやかって「裁縫や習い事の上達」を祈願する意味があり、織女が機織りで使用する糸がモチーフになっています。青()、赤、黄色さ、白、黒()5色の吹き流しは魔除けの意味も生まれます。

【NO.10】橋本多佳子

『 七夕や 髪ぬれしまま 人に逢う 』

季語:七夕(秋)

意味:七夕の日です。髪が濡れたままでもよいので、あなたに(亡くなった夫に)、逢う。

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作者は夫を亡くしています。亡くしたあとに、この句を詠みました。七夕の日だからこそ、もう一度あなたに逢いたい。洗った

髪が乾かぬまま恋しいあなたのところへいく。あなたを亡くして、時が経ち、洗い髪が濡れたまま人に会うくらい平気になりました。というような想いが込められています。

七夕をテーマにした有名俳句集③【10句】

【NO.1】秋元不死男

『 七夕や まだ指折つて 句をつくる 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕だなぁ。慣れないのかまだ指を折って文字を数えながら俳句を作っている子がいる。

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五七五の音に合わせるために、指を折って文字数を数えている様子を詠んだ句です。短冊に俳句を書こうとして色々試行錯誤している様子を眺めています。

【NO.2】石田波郷

『 七夕竹 惜命の文字 隠れなし 』

季語:七夕竹(秋)

現代語訳:七夕の飾りを付けた竹で、一際目を引くのが「惜命」という二文字だ。

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「惜命」とは命を惜しむという意味で、この俳句は作者が結核にかかり、療養している時に詠まれました。「快癒」などの希望を持つ言葉ではなく、「惜命」というどこか後ろ向きの言葉が目に入ったことから、作者の精神状態がわかります。

【NO.3】村上鬼城

『 七夕や 笹の葉かげの 隠れ星 』

季語:七夕(夏)

現代語訳:七夕だなぁ。七夕飾りの笹の葉の影に隠れた星が見える。

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七夕の夜は飾り付けられた竹や笹の葉があちこちで見られるため、空を遮っているように見えます。葉と葉の間からちらりと星が見えたことを「葉の影に隠れている」と表現した面白い句です。

【NO.4】星野立子

『 七夕や 父口ずさむ 祖母の唄 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕の日だ。父が口ずさんでいるのは昔祖母が歌っていた唄だなぁ。

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親子代々受け継がれていく習慣を詠んだ句です。どんな唄かは明言されていませんが、作者が聞いてすぐに祖母の歌っていたものだとわかるくらい頻繁に家庭で歌われていたのでしょう。

【NO.5】大野林火

『 七夕の 子の前髪を 切りそろふ 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕を迎えた子供の前髪を切りそろえてやる。

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七夕には裁縫の上達や字の上達など様々な願いが込められた神事でした。この句では前髪を切りそろえて身だしなみを整えてやることで、その子供が七夕に込める願いを真摯なものにしています。

【NO.6】杉田久女

『 七夕や 布団に凭(もた)れ 紙縒(よ)る子 』

季語:七夕(秋)

現代語訳:七夕だなぁ。布団にもたれ掛かりながら紙をよっている子供だ。

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「紙縒る」という表現から、七夕飾りの吹き流しのようなものを作っている様子が浮かんできます。布団にもたれかかりながらもくもくと作業をする子供を母親はじっと観察している句です。

【NO.7】鈴木花蓑

『 はなやかに 漸く更けし 星祭 』

季語:星祭(秋)

現代語訳:華やかだった七夕のお祭りがようやく更けていった。

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「星祭」は七夕の別名です。七夕は古来より76日の夜から7日の早朝まで行われていて、賑やかだったお祭りがようやく終わったという安堵感を感じさせる句になっています。

【NO.8】高橋淡路女

『 燈を消して うす闇たのし 星祭 』

季語:星祭(秋)

現代語訳:明かりを消して、薄闇でも楽しい七夕の夜だ。

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七夕祭りの明かりや星の光などを堪能している様子を詠んだ句です。明かりをつけて屋内で作業をするよりも、明かりを消して外を眺めた方が楽しいという作者の感情が伝わってきます。

【NO.9】高浜虚子

『 反故裏に 書集めあり 星の歌 』

季語:星の歌(秋)

現代語訳:反故にした紙の裏から書き集められたように七夕星にたむけた歌が出てきたよ。

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「星の歌」とは七夕星にたむけた歌です。室町時代頃には七夕の日に700種の詩や短歌を作って遊んだという記録もあり、七夕の日に歌を詠むのは一般的な遊びでもありました。

【NO.10】高橋淡路女

『 天上の 恋をうらやみ 星祭 』

季語:星祭(秋)

現代語訳:天上で繰り広げられる織姫と彦星の恋がうらやましい七夕であることだ。

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織姫と彦星は年に一度しか会えないとはいえ、大恋愛の末に結ばれています。空を眺めて輝いている2つの星を見ると、恋がしたいなぁとうらやましく思う作者の心情を詠んだ句です。

 

以上、七夕に関する有名俳句集でした!

 

さいごに

 

今回は「七夕」に関する有名俳句を紹介しました。

 

「七夕」は日本の伝統的な行事の一つ。作者によって「七夕」の様々なとらえ方、表現方法があります。「七夕」の言葉で、織姫や彦星の年に一度の再会や、様々な願いがイメージできるのです。

 

数々の俳人が詠った、「七夕の美しさ」「日本独特の感性の素晴らしさ」を、ぜひ味わってみてください。

 

俳句仙人

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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