
「七夕(たなばた)」とは、7月7日または旧暦の7月7日(現代の8月上旬から下旬頃)に行われる伝統的な行事で、五節句の一つとされています。
この七夕の願い事未だに面白い pic.twitter.com/LxdoFD4G84
— 🐋 (@sachikafka) July 21, 2016
今回は、「七夕」の有名俳句20選をご紹介します。
七夕をテーマにした有名俳句集【前半10選】
【NO.1】松尾芭蕉
『 たなばたや 秋をさだむる 夜のはじめ 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕の夜になった。夏から秋にかかる季節の始まりだ。
こちらは芭蕉が51歳の時に詠んだ句です。7月7日は、現在の8月下旬頃なので、暑さも落ち着き、今年最初の秋を感じる夜となったと詠んだのでしょう。
【NO.2】松尾芭蕉
『 七夕の 逢わぬ心や 雨中天 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:今日は七夕。天の川を渡って二人が会えれば有頂天だが、今夜はあいにくの雨で、天の川の水かさが増して会えないだろう。その気持ちはまるで雨中天だ。
「有頂天」の造語の「雨中天」をかけて表現しています。「有頂天」は現在、能天気に喜ぶ様子に使われていますが、元来は仏教用語で9つの天のうちで、最上の至福の天を指します。
【NO.3】水原秋桜子
『 七夕や つねの波漕ぐ わたし守 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕だなあ。いつもと同じように渡し船の船頭が船を進めている。
七夕の夜に、天気が荒れることなく穏やかに、1年に1度の逢瀬ができることを詠んだ句に感じられます。
【NO.4】小林一茶
『 七夕や 野にもねがひの 糸すすき 』
季語:七夕(秋)、すすき(秋)
現代語訳:今日は七夕だな。竹には願いの糸、野原にも願いの糸のようなすすきが揺れている。
【NO.5】山口青邨
『 七夕の 一粒の雨 ふりにけり 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕の日に、一粒雨が降ったのだなあ。
【NO.6】遠藤若狭男
『 七夕や 渚の誰も 歩み来ず 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕だなあ。渚に誰も歩いて来ない。
【NO.7】中村汀女
『 行人の 見る七夕を 結びけり 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:道を行く人が目にする七夕飾りを結んだことよ。
【NO.8】水原秋桜子
『 七夕の 荒波をわたる 舟ひとつ 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕の夜に、天気が良くなく、荒れている天の川を渡る舟がひとつある。
【NO.9】飯田蛇笏
『 七夕の みな冷え冷えと 供物かな 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕の夜、もう世の中は秋の涼しさを感じられて、神様や仏様へのお供えものも冷たくなっているなあ。
【NO.10】日野草城
『 七夕や 逢へばくちびる のみとなる 』
季語:七夕(秋)
現代語訳:七夕だなあ。逢うときはいつも、口づけだけになる。
七夕をテーマにした有名俳句集【後半10選】
【NO.1】飯田蛇笏
『 七夕の 夜ぞ更けに けりおしまづき 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕の夜が深くなっていく、机のもとで。
机に向かいながら、窓の外を見て、七夕の夜が更けていくことを感じ詠んだ句です。
【NO.2】山口誓子
『 七夕や 天皇の御名を 書しまつる 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕の日に、短冊に天皇のお名前を書いてお願いする。
【NO.3】小林一茶
『 七夕や 涼しき上に 湯につかる 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕だなあ。もう涼しいこの時に、温泉に入っている。
【NO.4】中村草田男
『 七夕や 男の髪も 漆黒に 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕だなあ。男の濡れた髪も漆黒に輝いている。
【NO.5】正岡子規
『 秋近し 七夕恋ふる 小傾城 』
季語:七夕(秋)
意味:もう秋が近い。七夕に心が引かれる、若い遊女だ。
【NO.6】高橋淡路女
『 七夕や 心もとなき 朝ぐもり 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕よ。今日は1年に1度の七夕の日なのに、朝から空が曇っていて不満である。
【NO.7】正岡子規
『 七夕に まことの情を 尋ね見よ 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕の日に、本当の気持ちを問い、結ばれよ。
【NO.8】正岡子規
『 七夕の 今宵にせまる 曇り哉 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕の今夜は曇りだなあ。
1年に1度の七夕なのに、空が曇ってきていることを残念に思っている様子の句です。
【NO.9】山口青邨
『 七夕の 吹流しもて 街充たす 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕飾りの吹き流しで、街をいっぱいにする。
七夕飾りの吹き流しには、織女にあやかって「裁縫や習い事の上達」を祈願する意味があり、織女が機織りで使用する糸がモチーフになっています。青(緑)、赤、黄色さ、白、黒(紫)の5色の吹き流しは魔除けの意味も生まれます。
【NO.10】橋本多佳子
『 七夕や 髪ぬれしまま 人に逢う 』
季語:七夕(秋)
意味:七夕の日です。髪が濡れたままでもよいので、あなたに(亡くなった夫に)、逢う。
作者は夫を亡くしています。亡くしたあとに、この句を詠みました。七夕の日だからこそ、もう一度あなたに逢いたい。洗った
髪が乾かぬまま恋しいあなたのところへいく。あなたを亡くして、時が経ち、洗い髪が濡れたまま人に会うくらい平気になりました。というような想いが込められています。
以上、七夕に関する有名俳句集でした!
今回は「七夕」の有名俳句20選をご紹介しました。
「七夕」は日本の伝統的な行事の一つです。
作者によって、「七夕」の様々なとらえ方、表現方法があります。
「七夕」の言葉で、織姫や彦星の年に一度の再会や、様々な願いがイメージできるのです。
数々の俳人が詠った、「七夕」の美しさ。日本独特の感性の素晴らしさを、ぜひ味わってみてください。