【鈴木ゆすらの有名俳句 20選】ソ連抑留俳句が有名!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説!

 

俳句は五七五の十七音に季節を表す季語を詠み込む文学で、江戸時代に成立しました。

 

明治大正を経て伝統俳句や自由律俳句など多くの作風が生まれていく中で、戦争を詠んだ俳句も登場します。

 

今回は、シベリア抑留にまつわる俳句で有名な「鈴木ゆすら」の人物像や有名俳句を紹介します。

 

 

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ぜひ参考にしてください。

 

鈴木ゆすらの人物像や作風

 

鈴木ゆすらは、1912年(明治45年)に現在の静岡県浜松市に生まれました。本名は鈴木八郎といいます。

 

「鈴木ゆすら」という俳号は1933年頃の「ホトトギス」への投句から見え始めるため、この頃から使用していたものと考えられます。

 

「ホトトギス」には師匠である浜松の俳人の原田浜人も参加していました。原田浜人が主宰する「みづうみ」に参加したほか、1943年頃からは『大日本報徳』という雑誌に投句していたことが確認できます。

 

その後は満州へと出兵し、終戦間際の194588日にソ連軍の侵攻に遭い終戦を迎えて満州の間島収容所へ送られ、のちにシベリアへと抑留されました。

 

シベリア抑留の最中に『捕虜百句』などに収録されるさまざまな俳句を詠んだことで、戦時中の俳句とは違った悲惨な状況をそのまま詠んだのが特徴です。

 

(1946年 抑留からの帰還兵 出典:Wikipedia)

 

1948年に復員し帰国を果たすと、故郷の浜松で『地方文化』という文化雑誌を発行したり、『美愛心』という画集を発行したりと文化普及につとめます。

 

戦後の俳句に関しては、水原秋桜子が主宰する「馬酔木」への投句が確認できます。その後も浜松で活動を続けましたが、2002年に亡くなりました。

 

 

鈴木ゆすらの作風は、「ホトトギス」や「馬酔木」への投句に代表される【写実的な伝統俳句】と、シベリア抑留時代の鬼気迫る状況を伝える【捕虜俳句】2つにわかれます。

 

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伝統俳句で写実性を育んでいたからこその抑留下の俳句の描写は、今なお捕虜体験の過酷さを物語るものになっています。

 

鈴木ゆすらの有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 捕虜冷えぬ 五体の火種 皆絶えて 』

季語:無季

意味:捕虜たちが冷えていく。五体の火種がみんな絶えてしまったように。

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シベリアという極寒の地で体温を奪われきってしまった捕虜たちを詠んでいます。「冷え」が季語ですが、ここではシベリアという土地の特性に由来する言葉のため無季の俳句です。

【NO.2】

『 手紙焼き 写真焼き兵 露にぬれ 』

季語:無季

意味:手紙を焼き、写真を焼いて兵たちは露に濡れている。

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少しでも暖を取るために大切な手紙や写真を燃やしているのでしょうか。「露」は秋の季語ですが、この俳句では結露や涙の比喩としての露と解釈して無季の俳句としています。

【NO.3】

『 生還の 望み枯野の 果てに消ゆ 』

季語:無季

意味:生還の望みはシベリアの枯野の果てに消えていく。

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「枯野」が冬の季語ですが、シベリアは永久凍土で一年中枯野のような様相です。当初は満州の収容所に送られた作者達が、シベリアに連れてこられた際に死を覚悟した絶望感が伝わってきます。

【NO.4】

『 酷寒や 眠れば死ぬる 虜囚の身 』

季語:無季

意味:とても酷い寒さだ。眠れば死んでしまうだろう虜囚の我が身だ。

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冬のシベリアは氷点下20℃まで下がることもあります。ろくな防寒対策もされていない捕虜たちは眠ってしまえば低体温症で死んでしまうと恐れていたことが伺える句です。

【NO.5】

『 死に水も 凍りて飲めぬ 捕虜ゆけり 』

季語:無季

意味:死に水を飲ませてやりたいが、凍ってしまって飲めないまま捕虜がまた死んでいく

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「死に水」とは臨終の間際に茶碗にいれた水を筆やガーゼで濡らし、唇を濡らすことです。極寒のシベリアでは死に水にと汲んだ水すら凍ってしまい、葬送もままならない虚しさを感じる一句です。

【NO.6】

『 春水の 浅くて鯉の むれてゐる 』

季語:春水(春)

意味:春の水はまだ浅く、鯉が群れているのが見える。

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1930年代の「ホトトギス」に投句された一句です。まだ水深が浅い春の川や池で鯉が戯れている様子が見えるというのどかな風景を詠んでいます。

【NO.7】

『 地にとどき 水にとどきて 藤見事 』

季語:藤(春)

意味:地に届き、水に届くほど大きく咲いた見事な藤の花だ。

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藤の花は地面に向かって垂れるように咲くのが特徴的です。水と出ていることから池か川があり、水面に届かんばかりに見事に咲いている藤棚の風景が浮かんできます。

【NO.8】

『 花冷の 寺に隕石を 見に来たり 』

季語:花冷(春)

意味:花冷えのする寒い日に、お寺にあるという隕石を見に来たのだ。

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この句は1960年代の「馬酔木」に投句されています。ここで詠まれている隕石は「笹ヶ瀬隕石」と呼ばれる1704年に静岡県の浜松市に落下したものです。「増福寺」という寺に安置されていたため、その隕石を見学にしにいった時の一句です。

【NO.9】

『 書を措きぬ(おきぬ) 炉端の蜂の いとなみに 』

季語:蜂(春)

意味:書を置いて傍を見た。炉端には蜂がいて、何やら忙しそうに動いている。

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机に向かっていたところにふと視線を送ると、何やら炉端で蜂が動いている様子を見つけたときの一句です。読み書きしていた書を置いて蜂を見物しています。

【NO.10】

『 ランプ釣れば 来る蛾懐かし 山の宿 』

季語:蛾(夏)

意味:ランプを釣ると、光に釣られてきてやって来る蛾が懐かしい山の宿だ。

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この句と次の句は1940年代の『大日本報徳』に掲載されている戦時中の俳句です。いつも通りランプを釣ると、いつも通り蛾がやってくるという山小屋でのひと時を堪能しています。

 

【NO.11】

『 山百合の 花盛りなり 谿(たに)暁けぬ 』

季語:山百合(夏)

意味:山百合の花が盛りを迎えている。谷には朝日が昇ってきた。

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山百合の花と朝日に照らされる谷を写実的に詠んだ句です。山岳写真のような美しい句で、山の朝の涼しい空気が感じ取れるようです。

【NO.12】

『 遊船に 肥舟遠く なりにけり 』

季語:遊船(夏)

意味:舟遊びをするために船が出たので、肥舟は遠くにいったようだ。

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「遊船」は納涼のために行う舟遊び、「肥舟」は肥料を運ぶための船です。景色やお酒を楽しむ舟遊びのために臭いを伴う肥舟を退避させたのでしょうか。

【NO.13】

『 雨つたふ ショーウィンドや 夜の金魚 』

季語:金魚(夏)

意味:雨が伝うショーウィンドウだ。夜に浮かぶ金魚のように光が照らされている。

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雨でぼんやりと煙るショーウィンドウを金魚に例えている一句です。雨が伝うショーウィンドウの内側の光やネオンサインが反射してキラキラとしている様子を詠んでいます。

【NO.14】

『 月薄し 田植終りし 夜の空 』

季語:田植(夏)

意味:月が薄く輝いている。田植えが終わった夜の空だ。

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薄曇りの空に輝く月を「月薄し」と詠んでいます。終戦後の1960年代に詠まれたもので、平和な水田地帯の夜の様子を水面に映る月と夜空で表現しています。

【NO.15】

『 よたよたと 稲架(はさ)がうつって をりにけり 』

季語:稲架(秋)

意味:よたよたと稲架が移動しているなぁ。

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「稲架」は「はさ」または「はざ」と詠み、刈った稲を束にして脱穀まで乾燥させるための道具です。「よたよたと」と表現されているので、持ち上げている人物が疲れているのか、子供など非力な人物なのかいろいろと想像できます。

【NO.16】

『 陸橋の 下ゆくバスや 霧くらし 』

季語:霧(秋)

意味:陸橋の下を行くバスがいるなぁ。霧で暗くて霞んでいる。

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「くらし」という表現から夜のように思えますが、霧は気温差のある朝方に発生しやすいため、朝の出来事かもしれません。陸橋の上から霧でぼんやりと見えるバスを見送る作者を詠んだ句です。

【NO.17】

『 かわと鳴く 烏やビルも 見えぬ霧 』

季語:霧(秋)

意味:「かわ」と鳴くカラスがいる。あたりはビルも見えない霧の中だ。

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ビルという表現からも伺えるように、終戦後に「馬酔木」に投稿された一句です。ビルも見えない濃霧の中で、鳴き声を上げて飛ぶカラスだけがはっきりと作者に認識されています。

【NO.18】

『 露しげき 朝の稲木を 結ひたしぬ 』

季語:露(秋)

意味:露が多く垂れている。朝の稲木を結い足している人達だ。

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「しげき」とは「繁く」でとても多くという意味です。「稲木」は「稲架」と同じもので脱穀までの乾燥のために使われるもののため、露で濡れてしまわないように稲束を干す間隔をあけている様子を詠んでいます。

【NO.19】

『 朝露に 俯き咲ける 茶花かな 』

季語:茶花(冬)

意味:朝露を受けて俯くように咲いている茶の花だなぁ。

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茶の花は冬に白い花を咲かせます。静岡県はお茶で有名な土地で、朝露が重くてまるで俯いているようだと朝の茶畑の風景を詠んだ句です。

【NO.20】

『 羽子日和 船は煙を はくはかぬ 』

季語:羽子/羽子板(新年)

意味:羽子板で遊ぶ良い日和だ。港に停まっている船は煙を吐いたり吐かなかったりする。

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羽子板で遊ぶ人と、港に停泊している船の様子から新年の風景を詠んだ句です。活気ある港町の様子が浮かんできます。

以上、鈴木ゆすらの有名俳句20選でした!

 

 

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今回は、鈴木ゆすらの作風や人物像、有名俳句を20句紹介しました。

捕虜生活中の鬼気迫るような俳句と、「ホトトギス」や「馬酔木」での写実的な伝統俳句から感じる印象の差が、シベリア抑留の悲惨さをより際立たせているのが特徴です。
同時代の戦争にまつわる俳句を詠んでいる俳人とぜひ読み比べてみてください。