【夕焼けの俳句 40選】知っておきたい!!季語を含むおすすめ有名&一般俳句を紹介!

 

世界でもっとも短い詩といわれている「俳句」。

 

日常のちょっとした出来事や風景、自然や季節の移り変わりを詠んだものが多く残されています。

 

今回のテーマである「夕焼け」は人に様々な気持ちや思い出を作るきっかけになります。人は夕焼けを見て何を思うでしょうか?

 

 

今回は、『夕焼けのおすすめ俳句(有名俳人名句と一般俳句作品)』を紹介していきます。

 

 

【CHECK!!】夕焼けに関する季語

 

夕焼/ゆやけ/夕焼雲/梅雨夕焼/冬の夕焼/寒夕焼/寒茜/春の夕焼/秋の夕焼

※夕焼は晩夏の季語で具体的には夏の終わりを指します。夕焼けに季節の言葉が付くとそれぞれの季節の夕焼けを指す季語となります

 

 

夕焼けのおすすめ俳句【有名俳句 20選】

 

【NO.1】村上鬼城

『 夕焼や 杉の梢の 凌霄花(ノウゼンカズラ) 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:夕焼けの美しいことよ。杉の梢に橙色のノウゼンカズラが咲いてより美しい。

俳句仙人
ノウゼンカズラは夏の花で季語にもなります。夕焼けとノウゼンカズラの色が重なり、緑の杉との色のコントラストが美しく描かれています。

 

【NO.2】山口青邨

『 ちぎれつつ 吹きとぶ雲も 夕焼し 』

季語:夕焼し(夏)

現代語訳:散り散りになりながら吹き飛んでいく雲も夕焼けに染まっていく。

俳句仙人
夏は台風の強風を受けやすい時期です。台風一過の風も強いですね。そのような風が雲をちぎりながら夕焼けの色に染まっていく様子は夏の様子そのものです。

 

【NO.3】種田山頭火

『 ほどよう御飯が炊けて 夕焼ける 』

季語:夕焼ける(夏)

現代語訳:良い感じでご飯が炊けたし、夕焼けにもなった。

俳句仙人
夕焼けが始まっているということは晩御飯の合図でもあります。主役のごはんが炊けて良い香りもしながら、オレンジ色の空も楽しんでいる様子が鼻でも目でも感じられる風景です。

 

【NO.4】飯田蛇笏

『 アカシヤに 夕焼雲の いなびかり 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:アカシヤの木に夕焼雲からの雷光が刺さった(ように見える)

俳句仙人
濃い緑色の葉をつけたアカシアの木と赤と黒の雲、白い光というコントラストが強い俳句です。目の前で雷が落ちたのを見たとは考えにくいので、比較的近くで落ちた雷がアカシヤに落ちたように見えたと考えられます。大胆に描かれたような景色が浮かびます。

 

【NO.5】尾崎放哉

『 ポスト立ち 居る坂道の 夕焼静か 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:ポストが立っている坂道の夕焼けは静かだ。

俳句仙人
ポストの赤と景色の赤が混じり、美しい色味のある句です。夏の比較的明るい時間であるのに静かですから、人が少ない地方で詠まれたのでしょう。作者が感動するほど美しい様子であったことが伝わります。

 

【NO.6】中村草田男

『 下雲へ 下雲へ夕焼 移り去る 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:下の雲へとだんだんと夕焼けが移って、夕焼けの様子が去っていく。

俳句仙人
もうすぐ夜になろうとしている様子が趣深く詠まれています。地平線近くが赤くなっていくのに対し、空の上の方は暗くなり星が見え始めています、その様子を夕焼けが去っていくと作者が惜しんでいます。夏の終わりの惜しみ方の一つですね。

 

【NO.7】中村汀女

『 地中海 夕焼も白き 船も消え 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:地中海の夕焼けも白い船も消えてしまった。

俳句仙人
地中海は美しい海岸線や海の風景で知られていますが、夕日も消えて寂しい様子が伝わります。夕焼けの赤と船の白が絵のように美しいことが伝わると同時に、ゆっくり自然と消えていく時間の流れが感じられる句です。

 

【NO.8】山口誓子

『 夕焼けて 水田紫 色となる 』

季語:夕焼けて(夏)

現代語訳:空が夕焼けになり、水田は紫色となった。

俳句仙人
色彩感覚が鋭敏な句です。空が夕焼けであれば、暗くなり始めている部分もあります。それが水田に映ると、土の暗い茶色と濃い赤が紫色のような明度の低い色になります。夕焼けがもうすぐ終わる様子が的確に表現されています。

 

【NO.9】原裕

『 はふられし 山羊のかたちに 夕焼雲 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:放り出されたような山羊の形になっている夕焼雲だ。

俳句仙人
たくさんのモクモクとした雲、つまりヒツジ雲が見えたのでしょう。この雲は秋に見える雲です。つまりもうすぐ秋が始まりそうな夏の終わりを描いています。夏の終わりと秋の始まりを巧みに混ぜた句ですね。

 

【NO.10】川端茅舎

『 蟻の列 いま粛然と 夕焼けぬ 』

季語:夕焼けぬ(夏)

現代語訳:アリの行列が今まさにかしこまり整列して、夕焼けに染まった。

俳句仙人
アリが一歩もずれることなく歩いている様子は夕焼けを厳かに受け止めていると、作者には見えています。アリの規則正しい様子が夕焼けと共に表現されています。アリの黒さは夕焼けによって焼かれているように詠まれているのも面白い点です。

 

 

【NO.11】茨木和生

『 夕刊の なき信州の 大夕焼 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:夕刊がない信州(長野県)の壮大な夕焼けだ。

俳句仙人
人影の少ない自然豊かな様子が「夕刊のなき」に示され、周囲の木々が夕焼けに染まる景色です。都会では見られない美しい景色であることが、作者の表現から伝わります。田舎さを伝える表現が面白いですね。

 

【NO.12】大串章

『 人参の 村は地中も 夕焼けし 』

季語:夕焼し(夏)

現代語訳:ニンジンを育てる村は土の中も夕焼け色になっている。

俳句仙人
ニンジンがすくすくと育っている様子と夕焼けが掛け合わせられています。ニンジンの旬は秋ですから、秋がすぐそこまで来ていることが分かります。秋の到来を楽しむかのような晩夏の表現です。

 

【NO.13】鈴木花蓑

『 夕焼けて 火花の如く 飛ぶ蝗(イナゴ) 』

季語:蝗(秋)

現代語訳:夕焼けの空に火花のように激しくイナゴが飛んでいる。

俳句仙人
イナゴは稲を食い荒らす害虫と共に、内陸部では貴重なタンパク源として扱われています。順調に育っている稲を食べようとしているイナゴがまるで空を焼いているような雰囲気です。それほどイナゴが激しくたくさん飛んでいることが伝わります。

 

【NO.14】阿波野青畝

『 夕焼に 海礁棋譜の 如くなり 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:夕焼けで見える海の岩たちは将棋の譜のようだ。

俳句仙人
赤い空を背景に、逆光で黒く突き出して見える様子が将棋盤の様子に似ているということです。水面から頭が出ている岩はたくさんあるのでしょう。将棋盤に見えるほどですから、背景となる赤い空も雲一つない美しい夕焼けであることが想像されます。

 

【NO.15】高野素十

『 西するも 東するも 夕焼けし 』

季語:夕焼け(夏)

現代語訳:西を見ても東を見ても夕焼けしている。

俳句仙人
夕焼けが迫りくる様子が率直に描かれています。西も東も夕焼け空ということは、陽が落ちきる少し前です。そして、見渡すかぎり夕焼けが見える見晴らしの良いところにいる様子が分かります。夕焼けの様子と共にすがすがしい景色が見える様子が感じられます。

 

【NO.16】山口誓子

『 夕焼けて 西の十万億土 透く 』

季語:夕焼けて(夏)

現代語訳:見事な夕焼けに、西方にあるという十万億土が透けて見えるようだ。

俳句仙人
「十万億土」とは仏教用語で、極楽浄土という意味で使われることが多い言葉です。あまりに見事な夕焼けに、あの向こうに極楽があるのではないかと感動した様子を詠んでいます。

 

【NO.17】波多野爽波

『 赤と青 闘つてゐる 夕焼かな 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:空で赤色と青色が戦っている夕焼けであることだなぁ。

俳句仙人
夕焼けの赤い色と昼の青空の青い色が戦っているように見えている面白い句です。徐々に赤く染まっていく空を、青が劣勢に立たされたと見るユニークさを感じます。

 

【NO.18】三橋鷹女

『 ゆふやけの 野のさみしさよ 眼をつむり 』

季語:ゆふやけ(夏)

現代語訳:夕焼けの野原の寂しさよ。目をつむっていよう。

俳句仙人
夕焼けの野原は夕日に照らされてどこか寂しげな雰囲気をかもし出しています。ずっと見ていると寂しくなってしまうので、目を閉じていようという孤独を詠んだ一句です。

 

【NO.19】大野林火

『 夕焼へ 叱りすぎたる 子の手執り(とり) 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:夕焼けの中を、叱りすぎたと思った子供の手を取って帰ろう。

俳句仙人
外で叱ったのか、叱った結果として家出してしまったのか、子供と手を繋いで帰っていく親子を詠んだ句です。夕焼けの中で仲直りをしているのでしょうか。

 

【NO.20】久保田万太郎

『 夕焼の すさまじかりし 語り草 』

季語:夕焼(夏)

現代語訳:この夕焼けの凄まじさは語り草になるだろう。

俳句仙人
夕焼けは雲の様子や湿度など様々な要因で色々な顔を見せますが、「すさまじかりし」と詠むほどに真っ赤な夕焼けだったのでしょう。後々の語り草になるほどの素晴らしい夕焼けを見られた喜びを感じます。

 

夕焼けのおすすめ俳句【一般俳句 20選】

 

【NO.1】

『 穀倉は 大夕焼の 中にあり 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
見渡す限りの稲が壮大な夕焼けになっている様子が描かれています。稲穂が赤く染まっているのですから、キラキラ輝いて美しいことを感じされてくれる句です。

 

【NO.2】

『 鉄(くろがね)の 富士を研ぎ出す 大夕焼 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
夕焼けで黒く見える富士山を鉄から研ぎだすとしています。洗練された富士山の美しさを言葉巧みに伝えています。

 

【NO.3】

『 遠き日日 思ひ出すため 夕焼ける 』

季語:夕焼ける(夏)

俳句仙人
夕焼けは昔を思い出すためにあるとしているところが面白い点です。夕焼けは物をオレンジ色に染めますが、その色は紙が古く茶色くなった様子にも似ています。それを逆手に取った表現です。

 

【NO.4】

『 大夕焼 叫びたくなり 手を拡ぐ 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
夕日と聞くと青春の言葉が思い浮かぶ方も多くいらっしゃると思います。青春の一つが「意味もなく叫ぶ」に繋がりますが、叫びたくなる気持ちを手を広げることにとどめています。作者が年齢を重ねて大人になった様子も感じられます。

 

【NO.5】

『 呼び戻す 私の昭和 大夕焼 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
作者の青春は昭和なのでしょう。壮大な夕焼けが青春のことを思い出させてくれています。青春ではなく昭和と詠むことでノスタルジーが伝わります。

 

【NO.6】

『 万人に 見えて一人の 夕焼かな 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
夕焼けは誰にでも見えますが、その感じ方は人それぞれです。泣く人も笑う人もいます。人は様々な思いを持っていることを思い出されてくれる句です。

 

【NO.7】

『 夕焼けて みんな詩人に なりたがる 』

季語:夕焼けて(夏)

俳句仙人
夕焼けの面白い面をあぶりだした句です。夕焼けは人をノスタルジックにさせますが、そうなると俳句を詠んでみたり格好いいことを言ってみたりしたくなります。面白がっていますが、作者もまた俳句を詠んでいるところがクスリとさせてくれます。

 

【NO.8】

『 夕焼を 廻って帰る ブーメラン 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
景色がすっかり夕焼けに覆われている様子が分かります。ブーメランは大きく回って飛ぶため、四方が夕焼けになっているということになります。辺りは真っ赤に染まる美しい様子がブーメランに乗って見えるようです。

 

【NO.9】

『 夕焼は 思い出染めて しまいけり 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
夕焼けで何かを思い出す人をいらっしゃると思います。その時思い出す景色は夕焼け色に染まっていることでしょう。夕焼けの印象も強いですが、同時にある思い出も印象深いことが伝わります。

 

【NO.10】

『 夕焼けが あるから言へる さようなら 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
年齢を問わず「暗くなる前に帰ろう」はよく言う言葉です。夕焼けは人と別れる寂しさもありますが、その時は別れの言葉をかける友人もいます。いつまでも話していたいけれど、別れである夕焼けがあるからこそ、楽しい時間があることを気づかせてくれる句です。

 

 

【NO.11】

『 夕焼に 染まりたる魚 釣られけり 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
魚が夕焼けに染まりキラキラ輝いている様子が美しく思い出される句です。

 

【NO.12】

『 夕焼や 魚になりたい 海月の子 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
クラゲは夕焼けでも水面で白く見えますが、魚は夕日にあたりキラキラと輝きます。ゆったりと泳ぐクラゲも素敵ですが、魚にしかない良さもあります。クラゲの視点で詠まれた独特な面白さがあります。

 

【NO.13】

『 十人が 黙す夕焼で ありにけり 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
夕焼けの雄大さは誰もが感じることであると示した句です。夕焼けを見たものは黙ってしまう程に美しく言葉がいらないものであることを伝えています。周囲の人の様子が夕焼けの美しさを表現しています。

 

【NO.14】

『 プロポーズ 吾に齎(もたら)す 大夕焼 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
非常におしゃれな句です。プロポーズを夕方にしたのでしょうか。応援するように素敵な夕焼けであったことが分かります。このプロポーズを受けた人も夕焼けを見るたびに思い出すでしょう。夕焼けの色は思い出を作る絶好の色でもありますね。

 

【NO.15】

『 夕焼けを 見ながら話す 帰り道 』

季語:夕焼(夏)

俳句仙人
帰らなければいけないけれど、まだ話していたい様子が感じられます。時間が経てば終わりが来ますが、それを気にするような仕草です。別れを惜しみながらも、夕焼けの物悲しさがあります。

 

【NO.16】

『 夕焼けの 雲脚早に 鉄塔越ゆ 』

季語:夕焼け(夏)

俳句仙人
夕焼けに浮かぶ雲の流れがとても早く、鉄塔を越えていく様子が「脚早」と表現されています。早い雲の流れは悪天候をもたらすこともあり、これから天気が悪くなるのかもしれません。

 

【NO.17】

『 夕焼けを 窓に飾って ラジオ聴く 』

季語:夕焼け(夏)

俳句仙人
窓から見える夕焼けを「飾る」と表現しているのが面白い句です。借景窓という窓から見える風景を絵のようにとらえる建築方法がありますが、俳句で表現しています。

 

【NO.18】

『 夕焼けの 二重奏かな ビルの窓 』

季語:夕焼け(夏)

俳句仙人
ビルの窓に夕焼けが反射して、空と反射した空の二重奏になっている様子を詠んだ句です。夕日自体がうつっていることもあり、まるで空が二つあるような雰囲気の句になっています。

 

【NO.19】

『 夕焼けを 見上げて今夜は カレーかな 』

季語:夕焼け(夏)

俳句仙人
夕焼けを見上げながら家路を急ぐとカレーの匂いがしてきた、という郷愁を誘う一句です。カレーの匂いは近隣の家からだったのか自宅からだったのか、どちらの解釈でも成り立ちます。

 

【NO.20】

『 西目指す バスに揺られて 春夕焼け 』

季語:春夕焼け(春)

俳句仙人
春の夕焼けがある西の方向に向かって進むバスに乗っている様子を詠んだ句です。「夕焼け」は単独では夏の季語ですが、「春」などの季節の単語を置くことでその季節の季語にもなります。

 

以上、夕焼けに関するおすすめ俳句でした!

 

さいごに

 

今回は、夕焼けをテーマに詠まれたオススメ俳句を40句紹介しました。

 

夕焼けの俳句は懐かしさ・寂しさ・青春など、様々な感情を呼び起こします。

 

夕焼けは老若男女問わず印象深く残ることが俳句からよくわかります。

 

リス先生
夕焼けを見たときはどのような気持ちになるのか探ってみるのも面白いね!ぜひ「夕焼け」をテーマにして俳句を作ってみてね!

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