「シャボン玉」は春の季語で、「石鹸玉」と書いても「しゃぼんだま」と読みます。俳句では主に「石鹸玉」を使う人が多い印象です。
石鹸玉は江戸時代から子供の遊びとして知られていて、季語としては大正時代頃から使われるようになりました。
今回は、「シャボン玉」を季語に含む俳句を20句紹介します。
【石鹸玉:4月の季語】子供の遊び、もしくはその遊びによってできたシャボン膜から生成される球体のこと。
ふりあふぐ黒きひとみやしやぼんだま(日野草城)
うすうすと幾つもあげぬ石鹸玉(原石鼎)
向う家にかがやき入りぬ石鹸玉(芝不器男) pic.twitter.com/1HqxoS5vUP— うちゆう (@nousagiruns) April 20, 2015
『広場の子食めや潰せや石鹸玉』
俳句甲子園にて、我が帝國の亜白真白の上記の句が最優秀賞をいただきました!初出場なのに!すごいぞ大文藝帝國民!
メルト pic.twitter.com/HhMQXBkn5q— 大文藝帝國@幕張総合高校文藝部公式 (@empire_15) June 11, 2017
シャボン玉を季語に含む有名俳句【10選】
【NO.1】山口誓子
『 石鹸玉 よろばひ出でし 無風かな 』
季語:石鹸玉(春)
意味:シャボン玉がよろよろと出てくる無風の外であることだ。
シャボン玉は風に乗って飛んでいくものですが、無風のため「よろばひ」と言われるほど頼りない様子で飛んでいます。家の中からシャボン玉の様子を見て外は風が出ていないのだなと観察しているのかもしれません。
【NO.2】高浜虚子
『 櫺子(れんじ)より 飛んで出でけり 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
意味:格子の窓から飛んで出てきたシャボン玉よ。
「櫺子」とは竹や木で格子を作った窓のことです。外に出てシャボン玉を吹くのではなく、窓の隙間から管を出して吹いている様子を詠んでいます。
【NO.3】日野草城
『 しやぼん玉 こころもとなく ふくれけり 』
季語:しやぼん玉(春)
意味:シャボン玉が心許なくふくらんでいる。
シャボン玉は丸くふくらむものですが、息の吹き込みが足りなかったのか、心許ないふくらみ方をしたようです。小さいものや形がいびつなものなど、色々なシャボン玉が飛んでいたのでしょうか。
【NO.4】芝不器男
『 向う家に かがやき入りぬ 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
意味:向こうの家に輝きが入っていくようなシャボン玉だ。
シャボン玉は特徴的な虹色の輝きをまとっています。向こう側にある家にシャボン玉が入っていってしまったのを「輝きが入っていく」と表現しているのが面白い句です。
【NO.5】中村草田男
『 夜半灯に 日の色現じ 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
意味:深夜の明かりで、まるで日の光の色を現したようなシャボン玉が飛んでいく。
深夜の真っ暗な中に、明かりに照らされて色付いたシャボン玉が見えたといえ幻想的な一句です。「夜半」とは午前0時頃のため、実際にシャボン玉が見えたというよりはこの明かりに照らされたらこのような色になるのだろうという想像を詠んでいるものと思われます。
【NO.6】中村汀女
『 しやぼん玉 吹くや一つの 窓領し 』
季語:しやぼん玉(春)
意味:シャボン玉を吹こう。ひとつの窓を占領して。
シャボン玉を窓から吹いて遊んでいる様子を詠んでいます。窓の外の風景とシャボン玉のコラボレーションを楽しんでいる様子が伺える句です。
【NO.7】原石鼎
『 うすうすと 幾つもあげぬ 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
意味:うっすらと見えるシャボン玉をいくつも空に上げている。
シャボン玉は日の光をうけて輝きますが、曇りの日など薄暗い場所ではぼんやりと見えます。この句はそんなぼんやりとしたシャボン玉が飛んでいる様子を表現しています。
【NO.8】松本たかし
『 流れつつ 色を変へけり 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
意味:流れつつ色を変えていくシャボン玉だ。
シャボン玉は七色に輝く性質の他に、向こう側にある景色をうつすため色々な色に見えます。流れていく間に色を変えていくシャボン玉を見つめている作者を詠んでいる句です。
【NO.9】橋本多佳子
『 しやぼん玉 窓なき厦(いえ)の 壁のぼる 』
季語:しやぼん玉(春)
意味:シャボン玉が窓のない家の壁をのぼっていく。
シャボン玉はうまくふくらませれば空へとのぼっていきます。この句では壁に沿って次々とシャボン玉が空に上がる様子を詠んでいます。
【NO.10】橋本多佳子
『 かぎりなく 出てしやぼん玉 落ちて来ず 』
季語:しやぼん玉(春)
意味:限りなく出てくるシャボン玉は地面に落ちてこない。
「かぎりなく」という表現からは、1つずつ吹いて作るシャボン玉というよりはいくつも連続で作れるシャボン玉が浮かんできます。ふわふわと風に流されていくたくさんのシャボン玉を見送っている句です。
シャボン玉を季語に含む一般俳句ネタ集【10選】
【NO.1】
『 シャボン玉 割れてピクリと 猫の耳 』
季語:シャボン玉(春)
シャボン玉を目で追っていたのか、割れた時に猫が反応しています。野良猫なのか飼い猫なのか、シャボン玉を飛ばしているのは子供なのか、想像がふくらむ句です。
【NO.2】
『 シャボン玉 地のキャンバスに 虹を描き 』
季語:シャボン玉(春)
シャボン玉は石鹸や洗剤などでも自作できます。地面に落ちて割れたシャボン玉の痕が虹色のシャボン液となって残り、絵のように見えたのでしょう。
【NO.3】
『 シャボン玉 吹く時人は 皆子供 』
季語:シャボン玉(春)
シャボン玉は子供の遊びですが、リラックスしている時に戯れに遊んでみた人もいるでしょう。そんな時はいつも童心にかえってふわふわと浮いているシャボン玉を見ているものだと詠んでいます。
【NO.4】
『 連れ立ちて 短き旅や シャボン玉 』
季語:シャボン玉(春)
どこからか飛んできたシャボン玉と短い旅路を楽しんでいる一句です。すぐに割れてしまいますが、ほんの少し一緒に歩いた様子を「旅」と例えている面白い表現になっています。
【NO.5】
『 シャボン玉 同伴勤務 テレワーク 』
季語:シャボン玉(春)
子供がシャボン玉を飛ばしているのか、背景にシャボン玉が映り込んでいるテレワークの様子を詠んでいます。テレワークが多くなった今ならではの句になっています。
【NO.6】
『 シャボン玉 ふわり日暮れの 交差点 』
季語:シャボン玉(春)
シャボン玉が飛んでくる交差点ということで、住宅街の中の交差点が浮かんできます。夕焼けに照らされてオレンジ色に輝いているシャボン玉が見えるようです。
【NO.7】
『 それぞれの 泡に虹あり 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
シャボン玉は石鹸や洗剤を原料として作られるため、虹色に輝いて見えます。ひとつひとつは小さい泡でも虹色が見えると面白がっている一句です。
【NO.8】
『 石鹸玉 まるく景色を 映しけり 』
季語:石鹸玉(春)
シャボン玉は向こう側の景色が映り込みます。丸く切り取られた景色が1個ずつ浮かんでいる様子を興味深く見守っている句です。
【NO.9】
『 電線に 触れて割らるる 石鹸玉 』
季語:石鹸玉(春)
シャボン玉は何かに触れると割れてしまいます。この句では割られると表現しているため、電線のある高いところまでのぼったのに割れてしまい残念に思っている様子が伺える表現です。
【NO.10】
『 石鹸玉 生まれてすぐに 消え去りぬ 』
季語:石鹸玉(春)
シャボン玉は長くはもたずにすぐに割れてしまうものです。そんなシャボン玉の様子にすぐに消えてしまう儚さを感じている一句になっています。
以上、シャボン玉を季語に含む俳句20選でした!
今回は、シャボン玉を季語に含む有名俳句とオリジナル俳句を10句ずつ紹介しました。
すぐに割れる性質や虹色に輝きながら飛んでいく様子などシャボン玉特有の風景を詠んだものが多いのが特徴です。
現在では春に限らずどの季節でも子供たちが楽しんでいる様子が伺えますが、ぜひ春の風景のひとつとして詠んでみてください。