「9月」は、日本では旧暦の9月を「長月(ながつき)」と呼び、現在では新暦の9月の別名としても用いられています。
「9月」の季語は「コスモス」「とんぼ」「彼岸花」「すすき」「月見」「葡萄」など、秋を感じるものが多くあります。
【コスモス:9月の季語】秋に桃色、白、赤などの花を咲かせる。花弁の形が似ていることから、秋桜とも。
コスモスや蝶も吹かれて風つよし(西山泊雲)
日曜の空とコスモスと晴れにけり(久保田万太郎)
コスモスの紅のみ咲いて嬉しけれ(原 石鼎) pic.twitter.com/ngj0h1KlQk— うちゆう (@nousagiruns) September 21, 2014
今回は、そんな「9月」の季語を使用したオススメ俳句作品(ネタ)を30句紹介していきます。
9月の季語を使った俳句おすすめ作品集【前編10句】
【NO.1】
『 「ありがとう」 初めての手話 秋の朝 』
季語:秋の朝(秋)
手話を勉強し始めた作者。最初の言葉は「ありがとう」だったのですね。最初に、「教えてくれてありがとう」を伝えることができますね。とても素敵な一句で、心があたたかくなります。
【NO.2】
『 かかし立つ 田んぼの中で さびしそう 』
季語:かかし(秋)
田んぼを守っているかかしの様子を詠んでいます。広く大きな田んぼなのでしょう。ぽつんと一人でたたずんでいるような姿は「さびしそう」ですよね。作者の優しさがあふれている一句です。
【NO.3】
『 夕方に 池に集まる とんぼたち 』
季語:とんぼ(秋)
とんぼといえば、秋を感じる生き物ですよね。夕方、「池に集まる」とんぼを見つけた作者。何をしているのかな?と、近くからそーっと観察している姿が目に浮かびます。
【NO.4】
『 さつまいも 今度はどんな かたちかな 』
季語:さつまいも(秋)
さつまいも掘りをしているのでしょう。次から次へと土から出てくるのはとても面白いですよね。作者が笑顔いっぱいで楽しんでいる様子が想像できます。さまざまな形があるさつまいも。「どんなかたちかな」の言葉がとても可愛らしいです。
【NO.5】
『 秋惜しむ 街から色が 褪せていく 』
季語:秋惜しむ(秋)
「秋」という季節が過ぎていくことをしみじみと感じている作者。秋から冬へと移ろう中、街や植物・木々の色が変わっていく様子をとても上手に表現しています。「褪せていく」という言葉のセンスが素晴らしいです。
【NO.6】
『 子どもらの 声集まりて 秋祭り 』
季語:秋祭り(秋)
お祭りといえば、やはり「子ども」たちの元気な声は心地良く、より一層盛り上がりますよね。「声集まりて」という表現から、子どもたちがだんだんと集まってきて、お祭りが盛り上がってきている様子を感じます。
【NO.7】
『 ぶどうがり 空にいっぱい なってるよ 』
季語:ぶどうがり(秋)
ぶどうがりにやって来た作者。上を見上げるとたくさんのぶどうがあり、とても嬉しい気持ちになったことでしょう。頭上にたくさんなっているぶどうの光景を、「空にいっぱい」という言葉で、とても上手に表現しています。心がほっこりする可愛らしい一句です。
【NO.8】
『 赤とんぼ ぶつかりそうで よけていく 』
季語:赤とんぼ(秋)
赤とんぼがたくさん飛んでいる、秋ならではの光景ですね。作者に向かって赤とんぼが飛んできたのでしょうか。「ぶつかりそうで」という表現は、臨場感があり、光景がとてもよく伝わります。赤とんぼは、作者と遊んでいるのかもしれませんね。
【NO.9】
『 十五夜の すすきがなびく 散歩道 』
季語:十五夜(秋)/すすき(秋)
十五夜といえば「すすき」ですよね。秋の収穫の感謝をこめてお供えする際に、稲穂がまだ実る前だったことからすすきを稲穂に見立てて飾った、と言われています。すすきが、秋の風に揺れてなびいている美しい光景が目に浮かびます。穏やかな時間を感じる一句です。
【NO.10】
『 秋の空 いろんな風が 明日へふく 』
季語:秋の空(秋)
秋の頃の空は、空気が澄んで、清々しく澄み渡った青空が広がります。美しい空をさまざまな「風」が心地良く泳ぐように吹いている、そのような光景が目に浮かびます。「明日へふく」という言葉が素敵で、作者の想いを感じます。
9月の季語を使った俳句おすすめ作品集【中編10句】
【NO.11】
『 校庭で 影おくりする 赤とんぼ 』
季語:赤とんぼ(秋)
「影おくり」とは、よく晴れた日中に自分の影をじっと見つめ、その後すぐに空を見上げると自分の影が数秒映るという現象のことをいいます。とてもよく晴れた日の校庭にやってきた赤とんぼ。影おくりをしているかのようにじっと動かない様子がみられたのかもしれませんね。
【NO.12】
『 きらきらと 光にゆれる すすきの穂 』
季語:すすき(秋)
秋ならではの植物、「すすき」。秋の風に揺られ、きらきらと光っているように見えたのでしょう。この時期ならではの、とても美しい素敵な光景に出会いましたね。
【NO.13】
『 秋の空 みんなでみるよ 夕日をね 』
季語:秋の空(秋)
きれいに澄み渡った秋の空。美しい空だからこそ、夕日の美しさも倍増することでしょう。作者はお友達と夕日を見る約束をしたのでしょうか。「みんなでみるよ」の言葉がとても可愛らしいです。
【NO.14】
『 一粒が 光るぶどうを いただきます 』
季語:ぶどう(秋)
秋の味覚、ぶどうを食す作者。丁寧に丁寧に育てられたきれいなぶどうは、宝石のような輝きを放っていることでしょう。「いただきます」と感謝の気持ちをこめて、一粒一粒大切に味わう作者の様子が目に浮かびます。
【NO.15】
『 読書する 秋の日差し 心地良い 』
季語:秋(秋)
秋は、〇〇の秋、という言葉がいくつかありますね。作者は「読書の秋」でしょうか。テラスで、秋の心地良い日差しをあびながら、ゆっくりと読書を楽しむ姿が想像できます。最高に幸せな時間ですね。
【NO.16】
『 とんぼがね 空いっぱいに とんでいる 』
季語:とんぼ(秋)
とんぼを見つけた作者。今、自分の目の前にある光景を素直な心で表現しています。大きく広い「空いっぱい」にとんぼがたくさん飛んでいるのでしょう。秋ならではの光景ですね。とんぼは、作者と一緒に遊びたかったのかもしれませんね。
【NO.17】
『 ゆらゆらと 色鮮やかな 野菊かな 』
季語:野菊(秋)
秋の心地良い気候の中、おだやかな風に吹かれて、ゆらゆらと優しく揺れる野菊の様子をとても上手に表現しています。「色鮮やかな」野菊が揺れる、美しい光景が目に浮かびます。
【NO.18】
『 猫じゃらし 友といたずら 帰り道 』
季語:猫じゃらし(秋)
猫じゃらしをみつけた作者。何やらいたずらを思いついたようですね。学校からの帰り道でしょうか。猫じゃらしを手に、楽しく笑いながらおしゃべりしている作者の様子が想像できます。さて、どんないたずらを思いついたのか、気になりますね。
【NO.19】
『 手のひらに 鉄棒のにおい 秋うらら 』
季語:秋うらら(秋)
「秋うらら」とは、心地良い秋晴れののどかな気候のことをいいます。気持ちの良いお天気の中、鉄棒の練習をしているのでしょうか。「鉄棒のにおい」は、一生懸命練習した証ですね。「がんばれ!」とエールを送りたくなる一句です。
【NO.20】
『 秋祭り かけ声響く 空の下 』
季語:秋祭り(秋)
秋祭りの様子を詠んでいます。おみこしのかけ声でしょうか。威勢の良い元気な声がたくさん響き、秋祭りをより一層盛り上げていることでしょう。その空間にいるだけで、たくさんのパワーをもらい、元気になりますね。
9月の季語を使った俳句おすすめ作品集【後編10句】
【NO.21】
『 手を伸ばし 星を集めて 天の川 』
季語:天の川(秋)
たくさんの星が集まっている天の川に向かって手を伸ばして、星を集める仕草をしています。かき集めてすくい上げられそうなほどの満天の星空が浮かぶ句です。
【NO.22】
『 なつかしむ 声に重なり 秋の蝉 』
季語:秋の蝉(秋)
懐かしんでいる声に重なって秋の蝉の声がするという一句です。再会を懐かしんでいるのか、前にも同じシチュエーションがあったのか、色々な解釈ができる句です。
【NO.23】
『 三日月や ビーフシチューを 煮込む夜 』
季語:三日月(秋)
三日月が出ている夜にビーフシチューを煮込んでいる日常を詠んでいます。三日月は21時くらいに沈むため、煮込んでいる最中はちょうど西の空に美しく輝いていたことでしょう。
【NO.24】
『 月見舟 水面がとうとう 照らされる 』
季語:月見舟(秋)
月見のための船の明かりか、月明かりか、水面が明るく照らされている様子を詠んだ句です。夜空ではなく水面に映る輝きに焦点を当てています。
【NO.25】
『 コスモスを 撮るコスモスに 見つめられ 』
季語:コスモス(秋)
コスモスの花を撮っている自分自身が、また別のコスモスに見つめられているという客観的な風景を詠んだ句です。擬人化することで、たくさんのコスモスに見つめられながら撮影している作者の様子が浮かんできます。
【NO.26】
『 ゆで栗の 黄金頬ばり 生きてゐる 』
季語:栗(秋)
茹でた栗は美しい黄色をしています。「黄金」と表現することでおいしさと贅沢さを感じていることを存分に表現している一句です。
【NO.27】
『 水底で 息しているような 無月 』
季語:無月(秋)
「無月」とは中秋の名月の日に雲で隠れて月が見えない状態を表した季語です。「水の底」と表現していることから湿気も高く、今にも雨が降り出しそうな日だったのかもしれません。
【NO.28】
『 絹衣の やうな雲なり 今日の月 』
季語:今日の月(秋)
「今日の月」とは中秋の名月のことを指します。絹の衣のような薄い雲がかかっているけれどどうにか見えているという写真のような一句です。
【NO.29】
『 秋分の 風に透く身や 清まるる 』
季語:秋分(秋)
秋分の日という季節の変わり目に吹く風で、心身が清められるようだと詠んでいます。風に透けるような身という表現からは心機一転という気概も感じられます。
【NO.30】
『 雨細し 日暮れは早し 九月尽 』
季語:九月尽(秋)
細い雨が降っていて、日暮れも早くなってきたと秋になったことを詠んでいる一句です。「九月尽」とは9月の最後の日という意味で、残暑も終わり10月という本格的な秋の季節に向かっていることを詠んでいます。
以上、9月に関するオススメ俳句作品集でした!
季節の変わり目である「9月」…。
少しずつ厳しい暑さがおさまり、朝晩、過ごしやすい涼しさを感じ始めると、夏から秋への移ろいを感じるのではないでしょうか。
さまざまな風景の色が少しずつ変わっていく様子は、少し寂しさも感じます。
自分の周りにある「秋」を探しながら、ぜひ一句詠んでみてください。