【西東三鬼の有名俳句 20選】「鬼才」と呼ばれた新興俳句の旗手!!俳句の特徴や人物像・代表作など徹底解説

 

俳句は五七五の十七音で構成される詩です。江戸時代の発句を発祥とし、明治時代に正岡子規によって「俳句」として整理されました。

 

今回は、昭和を代表する俳人である「西東三鬼(さいとう さんき)」の有名俳句を20句ご紹介します。

 

 

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ぜひ参考にしてください。

 

西東三鬼の人物像や作風

 

西東三鬼(さいとう さんき)は、1900年(明治33年)に岡山県津南市に生まれました。

 

本名を斎藤敬直(さいとう けいちょく)といいます。三鬼は両親を早くに亡くしたため、東京にいた長兄に引き取られました。

 

長兄の元で育った三鬼はその後、現在の日本歯科大学に進学。卒業後は長兄の勤務先であるシンガポールに渡って歯科医として働いていましたが、世界情勢の悪化を受けて1928年に帰国し、以降は日本で歯科医として働きます。

 

句作を始めたのは30代と遅く、外来患者の誘いで始めたと言われています。三鬼はさまざまな雑誌に投句を行っており、伝統俳句から新興俳句まで幅広く手がけています。

 

1935年には「京大俳句」に参加しますが、1940年の「新興俳句弾圧事件」に巻き込まれ、戦後の1945年まで句作を中断しました。

 

戦後は現代俳句協会や俳人協会の設立に関わる傍らで歯科医を続け、1962年(昭和37年)に亡くなっています。

 

 

西東三鬼は、シンガポールという海外での生活を経た後の30代という遅い句作の開始であったこと、そして特定の師の元につかなかったことから、自由でモダンな作風の句を多く残しています。

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三鬼は俳句に切れ字をあまり用いず、ありのままを詠む自由でモダンな作風の俳人として有名です。反戦・厭戦、エロスや中年感情、大胆かつモダンな感性で詠んだは、今なお私たちに大きな刺激を与えます。

 

西東三鬼の有名俳句・代表作【20選】

 

【NO.1】

『 春園の ホースむくむく 水通す 』

季語:春園(春)

意味:春の庭で、ホースがむくむくと水を通して動いている。

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見たまま、ありのままを詠む作者の作風がよく表れている一句です。ホースは水を通すと生き物のように動きますが、春になって水やりが必要になった生命感ある庭を表現しています。

【NO.2】

『 頭悪き 日やげんげ田に 牛暴れ 』

季語:げんげ田(春)

意味:調子が悪い日に限って美しいレンゲソウの花畑に牛が暴れて突っ込んでいくのだ。

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「げんげ」とは別名をレンゲソウといい、春に開花する花です。レンゲソウは戦前に牛の飼料としても育てられていたので、餌を求めて牛が突っ込んできてしまったと悪いことが重なる様子を詠んでいます。

【NO.3】

『 野遊びの 皆伏し彼等 兵たりき 』

季語:野遊び(春)

意味:野遊びをしているのに、自然とみな伏して匍匐前進をしている。彼らもまた兵隊であったのだ。

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平和な野遊びと、自然と匍匐前進の構えを取ってしまう「兵たりき」の明暗のような対比が冴える句です。平和なひとときにも、かつての戦争の名残を思わせます。

【NO.4】

『 仰ぎ飲む ラムネが天露 さくら散る 』

季語:さくら散る(春)

意味:ふり仰いで飲むラムネが天からの露のように感じる桜が散る季節だ。

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花見の屋台に売っていたのでしょうか、散っていく桜ごしにラムネを飲んでいる様子を詠んでいます。ハラハラと散る桜の花びらや空の色もあいまって、ラムネが天から落ちてくる露のように感じている句です。

【NO.5】

『 春を病み 松の根つ子も 見あきたり 』

季語:春(春)

意味:春に病気になって、横になって見ている庭の松の根っこも見飽きてしまったなぁ。

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作者の絶筆の句です。作者は41日に亡くなっており、闘病生活の中で季節の移ろう庭の風景を見続けていたからこそ「飽きた」とこぼしています。

【NO.6】

『 おそるべき 君等の乳房 夏来る 』

季語:夏来る(夏)

意味:女性たちが胸を強調する服を着る、おそるべき夏が来た。

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この句は終戦後に詠まれたもので、今までの女性観との違いに「おそるべき」と評している一句です。女性たちが自由にファッションを楽しめるようになった様子が伺えます。

【NO.7】

『 岩に爪 たてて空蝉 泥まみれ 』

季語:空蝉(夏)

意味:岩に爪を立てているようなセミのぬけがらが、泥まみれになっている。

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「空蝉」とはセミのぬけがら、または「うつしおみ」が転じたことで今この世に生きている人や現世という意味があります。セミのぬけがらの様子を詠んだと同時に、自分自身が岩に爪を必死に立てて泥まみれになって生きている、と解釈することも可能です。

【NO.8】

『 暗く暑く 大群衆と 花火待つ 』

季語:花火(夏)

意味:暗く暑い中で集まっている大群衆とともに花火が上がるのを待っている。

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「花火」は伝統俳句では秋の季語ですが、ここでは「暑く」という夏の季語と季重なりになっていること、近代から現代の歳時記では夏の季語として扱うことも多いことから夏としています。ひしめき合う大群衆の中で今か今かと花火を待っている様子が浮かんでくる句です。

【NO.9】

『 算術の 少年しのび 泣けり夏 』

季語:夏(夏)

意味:算数の問題を解いている少年が、解けずにしのび泣いている夏だ。

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少年が夏に算数をしている、という光景から、夏休みの宿題が思い起こされます。問題がわからなくて泣いているのか、宿題が終わらなくて泣いているのか、子供時代を思い出す人も多いのではないでしょうか。

【NO.10】

『 昇降機 しづかに雷の 夜を昇る 』

季語:雷(夏)

意味:エレベーターが、静かに雷が鳴り響く夜を昇っていく。

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この句は1940年の「新興俳句弾圧事件」の槍玉にあげられた一句です。作者は自解として「ありのままの雷雨の夜を詠んだだけである」と、曲解された解釈に反論しています。

 

【NO.11】

『 中年や 遠くみのれる 夜の桃 』

季語:桃(秋)

意味:もう中年になってしまった。遠くに実っている夜の桃が見える。

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この句は「夜の桃」が女性を表すという解釈もありますが、戦後まもなくに作者が句作を再開させたときの句であることを考慮する必要があります。戦時中は弾圧されていたため、「遠くみのれる」と述懐するかつての活発な俳句活動を「桃」と表現したのかもしれません。

【NO.12】

『 露人ワシコフ 叫びて石榴(ざくろ) 打ち落す 』

季語:石榴(秋)

意味:隣に住むワシコフが、叫びながら実った石榴を棒で打ち落としている。

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「ワシコフ」とは作者の家の隣に住んでいた外国人であったようです。妻を病気で亡くしていたようで、その悲しみから叫んでいた様子を詠んだとも言われています。

【NO.13】

『 梯子あり 台風の目の 青空へ 』

季語:台風(秋)

意味:梯子が立てかけられている。まるで台風の目の中の青空に向かっているように。

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台風の目の青空へ向かって昇っていくように立てかけられた梯子を詠んでいます。台風の目なのですぐにまた暴風雨が襲ってきますが、つかの間のさわやかさを感じさせる句です。

【NO.14】

『 秋の夜の 漫才消えて 拍手消ゆ 』

季語:秋の夜(秋)

意味:秋の夜に聞いていたラジオで、漫才が終わって拍手も消えてしまった寂しさよ。

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1950年という終戦後に詠まれた句です。娯楽があふれている現在と違ってラジオが主な娯楽でしたが、漫才が終わり拍手も消える瞬間の寂しさを、秋という寂しさと掛けています。

【NO.15】

『 秋の暮 大漁の骨を 海が引く 』

季語:秋の暮(秋)

意味:秋の暮れに、打ち上げられたたくさんの魚の骨を海が波で引いていく。

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秋の暮れというどんどん暗く寒くなる時期に、たくさんの骨があるというどこか荒涼とした風景を感じさせる句です。海に引き込まれた骨が海の底に沈んでいくほの暗さも感じます。

【NO.16】

『 水枕 ガバリと寒い 海がある 』

季語:寒い(冬)/無季

意味:高熱が出て水枕を使うと、ガバリという音がしてまるで寒い海に投げ出されたようだ。

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この句は「寒い」を季語として冬のインフルエンザなどの高熱と取るか、季節を問わずに高熱のときの心情として無季とするかで解釈が別れます。作者を一躍有名にした一句で、これまでの伝統俳句にとらわれない斬新な俳句です。

【NO.17】

『 わが天使 なりやをののく 寒雀 』

季語:寒雀(冬)

意味:私の天使であっただろうか、寒さに震える冬の雀の可愛らしさよ。

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冬の雀は羽根をふくらませることで防寒対策とするため、ころころと丸いシルエットになります。そんな可愛らしい雀がふるえている様子を率直に詠んでいます。

【NO.18】

『 クリスマス 馬小屋ありて 馬が住む 』

季語:クリスマス(冬)

意味:クリスマスの日に馬小屋があって、馬が住んでいる。

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「クリスマス」「馬小屋」といえばキリストの誕生の説話が思い起こされますが、この句は戦後まもなくに詠まれています。物資が足りず、馬も馬小屋にいなかっただろう戦時中に比べて、今はきちんと馬がいるという戦後復興を詠んだとも言われる句です。

【NO.19】

『 大寒や 転びて諸手 つく悲しさ 』

季語:大寒(冬)

意味:大寒の寒い日だ。転んで手をついてから起き上がるまでの時間に悲しみを感じる。

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最も寒いと言われる日に転倒したときの心情を詠んでいます。寒さが身にしみる中で、咄嗟についた手の痛みや起き上がるまでの心情などを悲しみと評している句です。

【NO.20】

『 限りなく 降る雪何を もたらすや 』

季語:雪(冬)

意味:限りなく降るこの雪は一体何をもたらすのだろうか。

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そのまま読むと豪雪地帯を詠んだ句に思えます。この句は戦後まもなくに詠まれたと考えられていて、視界を埋め尽くす雪と今後の見通しが不明な情勢を重ね合わせて、何もできない無力さを表しているとも言われている句です。

以上、西東三鬼の有名俳句20選でした!

 

 

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今回は、西東三鬼の作風や人物像、有名俳句を20句ご紹介しました。
大きな時代の過渡期である昭和を代表する俳人のため、世相を受けた俳句もいくつかあるのが特徴です。
昭和初期から戦後の俳句には、伝統的な俳句には見られない表現も多いため、興味のある方はぜひ読み比べてみてください。