個々それぞれ、さまざまな「日常」があります。
中学生にとっての「日常」はどのようなものなのでしょうか。
今回は、「日常」のさまざまな場面を詠んだ俳句作品を30句紹介していきます。
「お〜いお茶」の新俳句大賞のこの一句。
「平凡な 人生送る be動詞」
何か深い解釈が出来そうな出来なさそうな。奈良の中学生の作品。 pic.twitter.com/4t5MdLfu5w
— 上江洲康司〄Yasuji Kamiesu (@kamiesu) February 8, 2017
目次
中学生向け!日常を題材にした俳句作品集【前編10句】
【NO.1】
『 空に虹 みんな同時に 傘たたむ 』
季語:虹(夏)
空に美しい虹がかかった時の様子を詠んでいます。「みんな同時に」という言葉が、虹がかかった瞬間の様子をとても上手に表現しています。美しい光景が目に浮かぶとてもきれいな一句です。
【NO.2】
『 冬休み 星空を見て ココア飲む 』
季語:冬休み(冬)
冬休み、ゆっくりと星空をながめながらくつろいでいる様子がとてもよく伝わります。温かいココアを飲みながら、とてもリラックスしている作者が想像できます。とても素敵な良い時間を過ごしていますね。
【NO.3】
『 いわし雲 隣町まで 続いてる 』
季語:いわし雲(秋)
空に広がるいわし雲の様子を詠んでいます。「隣町まで」という言葉から、いわし雲がかなりの広範囲に渡って見えることがよく分かります。光景が想像できる、表現がとても上手な一句です。
【NO.4】
『 塾帰り 背中で花火 開きけり 』
季語:花火(夏)
塾の夏期講習等の帰り道でしょうか。今日は花火大会なのかもしれませんね。背中で美しくきれいに輝く花火を感じながら、塾で一生懸命勉強している作者。少し切ない気持ちを感じる一句です。
【NO.5】
『 ついにきた 待ちに待ってた 夏休み 』
季語:夏休み(夏)
作者の喜びの気持ちを表現した一句です。「ついにきた」「待ちに待ってた」という言葉から、作者のこの上ない喜びがまっすぐにとてもよく伝わります。
【NO.6】
『 こたつから 顔だけ出して 猫になる 』
季語:こたつ(冬)
寒い冬の時期ならではの光景ですね。「猫になる」という表現がとても上手で、作者の様子がとてもよく伝わります。こたつに入って、ゆっくりのんびり、まさに「猫」になっている作者の姿が目に浮かびます。
【NO.7】
『 ブザー鳴り 涙でにじむ 夏の空 』
季語:夏(夏)
部活動での試合の様子でしょうか。最後まで気持ちを切ることなく一生懸命頑張ったけれどもブザーがなってしまった。作者の悔しい気持ちがとてもよく伝わります。「涙でにじむ」という言葉から、この試合の結果が分かるとても表現が上手な一句です。
【NO.8】
『 せみの声 夜まで続く 大合唱 』
季語:せみ(夏)
夏の夜の様子を詠んでいます。夏と言えば「せみ」。朝からずっとないているせみの声は夜まで続いている、その光景を「大合唱」という言葉で表現しています。「うるさい」等のマイナスの言葉ではなく、作者のユーモアを感じます。
【NO.9】
『 花火見て 心の声が 声に出る 』
季語:花火(秋)
夏の夜空に大きくきれいに輝く花火の美しさに感動したのでしょう。「心の声」が声に出てしまうほどの美しさだったのかもしれませんね。作者の素直な気持ちを感じる一句です。
【NO.10】
『 飛びたくて 飛んでいるような 麦藁帽 』
季語:麦藁帽(夏)
風に飛ばされてしまった麦藁帽子の様子を表現しています。麦藁帽子自体が、「飛びたくて飛んでいるような」と感じた作者のセンスが素晴らしいです。主導権は麦藁帽子にあるような表現がとても面白いです。
中学生向け!日常を題材にした俳句作品集【中編10句】
【NO.11】
『 会いたいと 想いがつのる 夏休み 』
季語:夏休み(夏)
夏休みの期間中、学校がお休みで会えない大切な人への想いを詠んでいます。「想いがつのる」という作者の切ない気持ちがとてもよく伝わる一句です。
【NO.12】
『 雪の道 一人歩いて 振り返る 』
季語:雪(冬)
雪がたくさん降り積もった道を歩いている作者。後ろを振り返ると、自分の足跡がたくさん見えたでしょうか。それとも、新たに雪が降り積もり、もうすでに足跡が消えてしまっているかもしれません。さまざまな光景を想像することができる一句です。
【NO.13】
『 4階の 教室の窓 午後の虹 』
季語:虹(夏)
学校の教室の窓から見えた光景を詠んでいます。午後になって雨があがったのでしょうか。「4階の教室の窓」は、ちょうど良い高さできれいな虹が見えたことでしょう。表現がととてもきれいな素敵な一句です。
【NO.14】
『 春うらら 皆笑顔で おべんとう 』
季語:春うらら(春)
遠足や課外活動の様子でしょうか。天候に恵まれ、とても穏やかな心地良い環境の中で食べるおべんとう。「皆笑顔」という言葉から、とても幸せに満ちた光景が目に浮かびます。
【NO.15】
『 目覚ましが ほこりをかぶった 夏休み 』
季語:夏休み(夏)
夏休み期間中、時間にとらわれることなくゆっくり起きている作者の様子が想像できます。「ほこりをかぶった」というユーモアいっぱいの表現がとても面白いです。
【NO.16】
『 海に足 入れる瞬間 からが夏 』
季語:夏(夏)
夏の時期、海に足を入れてはじめて「夏」が始まるということをとても上手に表現しています。「海に足」ではじまる17文字のリズムがとても気持ちの良い一句です。海に足を入れて笑顔いっぱいになっている作者の姿が目に浮かぶようです。
【NO.17】
『 全員で 転がしました 雪だるま 』
季語:雪だるま(冬)
雪が降り積もった日。お友だち皆で雪だるまをつくった時の様子を詠んでいます。「転がしました」という表現がとても可愛らしく、皆でわいわい大笑いしながら雪を転がしている様子が想像できます。大きな雪だるまは、とても素敵な良い思い出になったことでしょう。
【NO.18】
『 ラムネ飲む カランコロンと 夏の音 』
季語:夏(夏)
夏のある日、ラムネを飲んだ作者が感じた想いを表現しています。「カランコロン」という気持ちの良い音。この音を「夏の音」と表現している作者の感性が素晴らしいです。とても美しい表現の句で、「カランコロン」の音が聞こえてくるようです。
【NO.19】
『 夏祭り 夜に外出 うれしいな 』
季語:夏祭り(夏)
夏祭りに行くために夜に外出したのでしょう。日中とは少し違う光景の中での外出はドキドキとわくわくがいっぱいだったことでしょう。「うれしいな」という言葉は、作者の想いがそのまま表現されていて、嬉しい気持ちや喜びがとてもよく伝わります。
【NO.20】
『 春うらら 木漏れ日がさす 散歩道 』
季語:春うらら(春)
心地良くのどかで暖かな天候の春のある一日の様子が表現されています。表現がとても美しく、太陽の日差しが木の間から漏れる光景が目に浮かびます。散歩道を穏やかに歩く作者の心地良さを感じる一句です。
中学生向け!日常を題材にした俳句作品集【後編10句】
【NO.21】
『 早桜 ひと知れず笑む 通学路 』
季語:桜(春)
通学路で早く咲いた桜を見つけて人知れず微笑んでいる様子を詠んだ句です。ああ桜が咲いているなぁと機嫌よく登校している様子が伺えます。自分だけの秘密の桜だと密かに思っているのかもしれません。
【NO.22】
『 志望校 受かり寝溜めの 春休み 』
季語:春休み(春)
志望校に受かり、今までの分を取り返すために寝溜めをしている春休みの子供の様子を詠んでいます。いままで早起きをして勉強していたのでしょう。春休みを十分に謳歌してこれからの新生活に備えています。
【NO.23】
『 シャンプーの 香り目に染み 初夏来たる 』
季語:初夏(夏)
シャンプーの香りが目に沁みて初夏が来たなぁと実感しています。暑くなってきて香りが合わなくなったのか、「目に沁みる」と表現しています。季節に合わせてシャンプーを変えているのかもしれませんね。
【NO.24】
『 手花火の ぽとりと落ちて また一年 』
季語:手花火(夏)
手花火とは手で持つ花火で、この句では線香花火だと思われます。線香花火がぽとりと落ちて、また一年が過ぎたと感じています。毎年線香花火をして遊んでいたのかもしれません。
【NO.25】
『 夏雨の 湿度切り裂く 通学路 』
季語:夏雨(夏)
夏の雨の湿度を切り裂くように元気な子供たちが通学路を歩いています。子供にとっては雨の湿気も何のその、今日も楽しく過ごしている様子が「切り裂く」という表現からわかる一句です。
【NO.26】
『 天高し ブラバンマーチの 聞こえきて 』
季語:天高し(秋)
秋の高い空にブラスバンドマーチが聞こえてきた様子を詠んでいます。秋ということもあり、運動会の連中をしていたのでしょうか。学校に住んでいると近くの家ではよく聞こえたことでしょう。
【NO.27】
『 薀蓄(うんちく)を 垂れるあいつや 美術展 』
季語:美術展(秋)
ウンチクを垂れるあいつがいるなぁと美術展を見ています。この句は学校で行われた美術展で詠まれた句で、「あいつ」は美術展に作品を提供したのでしょう。この作品は、と色々と話している様子が見て取れます。
【NO.28】
『 通学路 外れて田んぼの 霜柱 』
季語:霜柱(冬)
通学路を外れて田んぼの上に出来た霜柱を踏んでいます。霜柱を見つけると思わず踏みに行ってみたくなりますよね。子供たちの足跡が転々と霜柱の上に広がっている様子が伺えます。
【NO.29】
『 秋暮に 一人石蹴り 通学路 』
季語:秋暮(秋)
秋の暮れに1人で石を蹴って歩く通学路の様子を詠んでいます。「秋暮」「一人」という寂しさを感じさせる表現になっています。1人で石を蹴り続けて、通学路をゆっくりと歩いています。
【NO.30】
『 冬休み 三歩手前の テストかな 』
季語:冬休み(冬)
冬休みになる三歩手前にテストがあると嘆いています。このテストを乗り切れば楽しい冬休みなのにと皆が必死になっています。作者はどうにかテストを乗り切って年末年始を楽しめたでしょうか。
以上、日常を題材にした中学生向け俳句作品集でした!
今回は、「日常」を題材にした俳句作品を30句紹介しました。
一人一人異なる「日常」。そのさまざまな日常のワンシーンが切り取られ、個々それぞれの表現がとても面白く感じました。
「特別なことがないこと」が「日常」といわれますが、大なり小なり、みな毎日生きていく中で何かしら「特別」なことが起きているのではないでしょうか。
それをどう捉えるかの違いで、日々の生活の色が変わってくるように感じます。
あなたにとっての「日常」はどのようなものでしょうか。
今、目の前に起きていることをそのまま詠んでみるのも良いでしょう。