
ひな祭りは3月3日の桃の節句に行われる行事で、ひな人形を飾り女児の健やかな成長を願うお祭りです。
俳句においてひな祭りは「仲春」の季語に当たり、ほかに「ひな人形」「雛」「雛飾る」など多くの季語が存在します。
今回は、そんなひな祭りをテーマにしたオススメ俳句20句をご紹介します。
おはよう!今日の俳句は、世のお父さんの気持ちを代弁したぞい!聞いてくれ!
「ひな祭り 娘と乾杯 何年後」 #俳句 pic.twitter.com/TBhsIkXHo9
— ニッカウヰスキー【公式】 (@nikka_jp) March 1, 2015
ひな祭りを題材にしたおすすめ有名俳句【10選】
【NO.1】与謝蕪村
『 雛祭る 都はづれや 桃の月 』
季語:雛祭る(春)
意味:ひな人形が置いてある。このような都の外れでもひな祭りが行われているのだ。桃の節句の月である。
「雛祭る」の「ひな」に、田舎を意味する「鄙」が掛かっています。都のような豪勢なひな人形ではなくても、ひな祭りが行われていることへの感動の句です。
【NO.2】高井几菫
『 裏店(うらだな)や たんすの上の 雛祭り 』
季語:雛祭り(春)
意味:裏通りの小さな家だ。たんすの上に一対のひな人形が飾られているひな祭りである。
裏店とは、裏通りにある小さな家のことです。豪華なひな人形を置くスペースがないため、たんすの上に飾ってあります。今風に言うならば、テレビや棚の上のひな人形でしょうか。
【NO.3】小林一茶
『 ひな祭 外から見よと 火のとぼる 』
季語:ひな祭(春)
意味:ひな祭りを家の外からも見てほしいと、灯りがついた。
家の外から見られる位置にひな人形が飾ってあったのでしょう。外からもよく見えるように灯りをつけて、ひな人形の存在をアピールしています。
【NO.4】高浜年尾
『 老いゆくは 淋(さび)しきものよ ひな祭 』
季語:ひな祭(春)
意味:老いていくのは淋しいものだ。ひな祭りを見ていると痛感する。
ひな祭りで子供たちがはしゃいでいる姿を見ているのでしょうか、自分自身の年齢と照らし合わせて、年月が経つのを噛みしめています。祝われる子供の立場から、祝う大人の立場への変化を淋しく思う句です。
【NO.5】正岡子規
『 おびただしく 古雛祭る 座敷かな 』
季語:古雛祭る(春)
意味:とても多くの古いひな人形を祭る座敷であることだ。
現在でも人形店や一部の宿のイベントで数多くのひな人形が飾られることがありますので、そのようなイメージの俳句です。「おびただしく」という言葉から、見渡す限りどこにでもひな人形が飾ってある印象を受けます。
【NO.6】森澄雄
『 北信濃(きたしなの) 雪のなかなる 雛まつり 』
季語:雛まつり(春)
意味:北信濃では、雪の積もる中である。ひな祭りであることよ。
3月3日は平地では春の陽気が漂ってくる季節ですが、雪深い地域ではまだ降雪があったり、雪解けが遠かったりします。長野県北部ではまだ雪が溶けず、真っ白な雪の中のひな祭りを思い浮かべる句です。
【NO.7】阿部みどり女
『 雛まつり しづかなる日の 海荒るる 』
季語:雛まつり(春)
意味:ひな祭りだ。静かな陽気の日なのに、海は荒れている。
春はその陽気とは裏腹に、海が荒れやすいことで知られています。お彼岸のころが最も荒れやすく、「彼岸潮」という季語もあるほどです。この句でも、陸の上は静かな日なのに海は荒れるという春の気候を歌っています。
【NO.8】山口青邨
『 若き父 鯛を釣り来と 雛まつり 』
季語:雛まつり(春)
意味:若いお父さんが、お祝いの料理に使うだろう鯛を釣りに来た。ひな祭りだなぁ。
ひな祭りの食事といえばちらし寿司ですが、おめでたいという験担ぎから鯛のお吸い物を出す家もあります。海釣りが得意なお父さんなのでしょうか、娘のために鯛を釣って帰るぞという気概を感じる句です。
【NO.9】会津八一
『 君に似よ 我に似よとて 雛まつり 』
季語:雛まつり(春)
意味:君に似てくれ、私に似てくれと願うひな祭りである。
夫婦で互いに似てくれと願っているのか、お母さんに似るといいねと願っているのか、一家団欒の光景が目に浮かびます。娘の成長を祈る気持ちを強く感じる一句です。
【NO.10】右城暮石
『 実物の 餅反り返る 雛祭 』
季語:雛祭(春)
意味:作り物でない実物のお餅を供えたら、乾いて反り返ってしまったよ。ひな祭りの最中に。
ひな祭りのお餅ということで「ひし餅」のことでしょう。最近はイミテーションや似た形のお菓子で代用されますが、本物のお餅をお供えしたら乾いて反り返ったひし形のお餅になってしまったというユーモアあふれる句です。
ひな祭りを題材にした一般俳句ネタ【10選】
【NO.1】
『 初めての 口紅引かれ 雛祭 』
季語:雛祭(春)
意味:初めての口紅を引かれて恥ずかしそうにしているひな祭りであることだ。
ひな祭りのために着物を着たのでしょうか、初めての化粧で緊張している子供が目に浮かびます。口紅を引かれたまさにその瞬間を切り取ったような俳句です。
【NO.2】
『 雛祭り 雨雲こないで 願う孫 』
季語:雛祭り(春)
意味:ひな祭りに雨雲がきませんようにと孫が願っている。
雨のひな祭りにならないように、子供がお願いしています。桃の節句はちょうど春が近づき天気が不安定になりやすい時期なので、「雨雲こないで」の部分から必死さが伺える句です。
【NO.3】
『 ひな祭り 今年も届いた 祖母のすし 』
季語:ひな祭り(春)
意味:ひな祭りだ。今年もおばあちゃんのお寿司が届いた。
ひな祭りのお寿司なのでちらし寿司か、家族特有のお寿司でしょうか。祖母の手作り寿司がひな祭りのご馳走の定番なのでしょう。届けられるくらい近くに住んでいることから、時間が経つと郷愁とともに思い起こされる味になる句です。
【NO.4】
『 ひな祭り 幼きころを 懐かしむ 』
季語:ひな祭り(春)
意味:ひな祭りだ。幼い頃にお祝いされていたことを懐かしく思いながらおひな様を見ている。
年を取り、ひな祭りを懐かしんでいます。小さい頃でもひな祭りの賑わいや料理、お菓子は、いつまでも記憶に残っているものです。さまざまなことを懐かしむ、追憶の一句です。
【NO.5】
『 間仕切りの 取り払はれて 雛まつり 』
季語:雛まつり(春)
意味:間仕切りが取り払われて、大広間にして行われるひな祭りであることよ。
大きなひな壇のあるひな人形を飾る場合は、間仕切りを取り払って大きな広間にしてから飾られます。現在では古民家や宿など一部の家屋でしか再現できませんが、親族が集まってお祝いをするイメージの句です。
【NO.6】
『 雛祭り 箱入り娘 顔を出す 』
季語:雛祭り(春)
意味:ひな祭りの時期が来た。箱入り娘であるおひな様が顔を出すよ。
ひな人形を「箱入り娘」と例えているのが面白い句です。ひな人形は箱に入れて保管されているため、女雛はまさしく箱入り娘と言えるでしょう。
【NO.7】
『 甘いもの たっぷり供え 雛祭 』
季語:雛祭(春)
意味:甘いものをたっぷりと供えるひな祭りであることだ。
ひな祭りでは、雛あられやひし餅、甘酒など甘いものがたくさんお供えされます。子供心にお供えが終わったあとに甘いものを食べられるのが嬉しかったのが思い起こされる一句です。
【NO.8】
『 ちらしずし 集ってピース ひな祭り 』
季語:ひな祭り(春)
意味:ちらし寿司を前に、家族そろってピースをして写真を撮るひな祭りであることだ。
ごちそうであるちらし寿司を前にして、家族写真を撮る微笑ましい一コマです。お祭りの雰囲気も手伝って、「ピース」という言葉からとても楽しそうな光景が目に浮かぶ一句になっています。
【NO.9】
『 扇越し そっとささやく 雛祭 』
季語:雛祭(春)
意味:おひな様が扇越しにそっと何かをささやいている。ひな祭りだからだろうか。
女雛は扇を持っています。そんなひな人形が、まるで扇越しに何かをささやいているような、1年で1回だけの神秘的な体験を思わせる句です。
【NO.10】
『 住み古りて 吾れも移民や 雛祭 』
季語:雛祭(春)
意味:もう長年住んでいて、私も移民であることだ。異国の地でひな祭りをしていると実感する。
外国で詠まれた一句です。異国の地でもひな祭りの習慣を続けていると、異国の風習に慣れながらも祖国の風習も捨てられない「移民」という自分自身を実感する、体験してみなければ読めない俳句でしょう。
以上、ひな祭りをテーマにした俳句集でした!
今回は、「ひな祭り」をテーマにした俳句を、有名なもの10選とオリジナルの俳句10選にわけて紹介してきました。
今回は「ひな祭り」という季語限定の紹介でしたが、桃の節句に関する季語は「ひな人形」や「雛の客」など多くあります。
ひな祭りの時期にはぜひ一句詠んでみてください。